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異世界転生100~私の領地は100人来ても大丈夫?~ 野生の転生者が100人もやってきた!?  作者: にわとりぶらま


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第73話 柔らかい肉

「多分、この辺におると思うんやけど… もしかしたら、鶏舎の中におるんかな?」


カオリはそう言って、鶏達を放し飼いにする広場から、鶏舎の方に顔を向ける。


 私は今、カオリに案内されて、鶏を飼育している所まで来ており、私達二人の姿に気付いた鶏達が、柵の直ぐ近くまで、近寄って来ていて騒がしい。


「しかし、この鶏達。なんだか非常に人馴れしてますね。以前はこんなに寄ってこなかったのですが」


柵の向こう側に視線を移すと、何十羽の鶏達が、私達を見上げている。


「あぁ、その子らはおっちゃんが育てた世代やからなぁ 滅茶苦茶、人馴れしとるねん。まだ、柵の外側やからええけど、内側やったら大変やで」


 カオリがそう説明して、鶏達に視線を合わせる為、柵のそばでしゃがむ。すると、鶏達もそれに合わせるように、より柵に近づき、柵の隙間から顔だけ出して、騒ぎながらこちらを覗いてくる。


「人馴れしているようにも見えるのですが、これだけ騒がれているのは威嚇されているんですかね? 柵が無かったら飛び掛かってくるとか?」


「いや、この鳴き方はなんか強請っている時の鳴き方らしいで、警戒しているときはコッコッココケー!って鳴き方するらしいで」


 そう、カオリが伝聞形式で答えながら、頭を出した鶏の喉を指先でなでる。ここでの生活は圧倒的に私の方が長いはずであるが、いつのまにか鶏に関する知識はカオリの方が上になっていて、少し複雑な気持ちになる。そもそも、子供の頃に雄鶏の姿に苦手意識を付けてしまった為、今まであまり関わってこなかった為だ。


 そんな事を考えながら、鶏とじゃれるカオリの姿を見ていると、急に鶏達が頭をひっこめ、一斉に鶏舎の方へ駆け出していく。突然の事にカオリも立ち上がり、鶏達の駆け出す方を私と一緒に見ていると、鶏舎の中から鶏の世話をしているであろう作業員が、片手に桶を持ちながら出てくるところであった。


 何十羽の鶏達が、その作業員の所へ一斉に駆け出していき、その足元に絡むように付き纏う。作業員の方も付き纏う鶏達に注意しながら、広場に設置された餌箱に進み、腰を屈めて、掛け声を出しながら手に持っていた桶から、餌箱に餌を入れていく。すると鶏達はその餌箱に頭を突っ込み、一心不乱に餌をついばんでいく。


 その中の何羽かの鶏達が、餌箱の場所争いからはじき出されたのか、餌箱ではなく作業員の側をうろ居ついていた。そして、作業員の後ろにいた鶏が、作業員を見上げていたかと思うと、ぴょんと飛び上がり、作業員の肩に飛び乗ろうとする。人間であれば、ちゃんと着地出来なくても、手で掴んで着地位置を維持できるが、鶏ではそうはいかない。上手く着地出来なかった鶏は、飛行する事の出来ない羽根をバサバサとはためかせ、足の爪で作業員の背中を掻きながら落ちていく。他の鶏達も、順次、作業員の両肩や頭の上をめがけて飛び乗ろうと、挑戦しては落ちていく。


「なっ 大変やろ?」


カオリが作業員を眺めながら、私に声を掛ける。


「インコや文鳥みたいな小鳥みたいに、肩に乗ってくるのは可愛いんやけど、あの子ら、乗るの下手やし、重くて身体も大きいから、足の爪でひっかき傷だらけになるねん。私も前にやられて体中がひっかき傷だらけになったわ」


「なるほど、柵の内側にいると危険と言うのはこの事なんですね… 悪意だけではなく好意が良くない場合もあるんですね…」


自分自身で言っておいて、その言葉に色々思い当たる節があったが、その事は口には出さず、胸の内に留めた。私がそう考えている横で、カオリは作業員に向かって手を振る。


「おっちゃん! 大丈夫かぁ?」


カオリの言葉に作業員が気が付き、鶏を肩に載せたまま立ち上がる。


「カオリちゃんにマール嬢ちゃんじゃないか」


その立ち上がった作業員は、転生者の中に一人だけいた中年の転生者であった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



コンコンコン


「散らかっていて小汚い場所だけど、腰をかけてよ。まぁ、オーナーのマール嬢ちゃんに言うのはなんだけど…」


 私達はあの後、話をする為、中年転生者に鶏舎に併設された作業場に案内されていた。作業場と言っても、事務をする場所や、休憩する為の場所、ちょっとした炊事をする場所も設けられている。私はあまり足を運ばない場所では無かったが、前まではこの様に整備された場所では無かったはずだ。どうやら、私の知らない間に増設したようである…


コンコンコン


「大したものじゃないけど、これでも飲んでよ」


 そう言って中年転生者は、木製のコップを私とカオリに差し出し、自分の分も注いで一気に飲み干し、首にかけていたタオルで顔の汗を拭う。その様子を見て、私もコップの飲み物を口に含む。その飲み物はほんのり冷えていて、柑橘系の香りと、ちょっとした酸味のある物であった。


コンコンコン


「ところで、先程から扉をノックする音が聞こえるんですが、出なくてよろしいんですか?別に私に気を使わなくてもよろしいですよ」


私はコップをテーブルに置いて、扉に目を移す。


「あぁ、気にしなくていいよ。あれは鶏が中に入れて欲しくて、扉をこついているだけだから」


 中年転生者は笑って答える。鶏がそんな行動をするのが、少し面白いとは思うが、ちょっと紛らわしい。


「マール嬢ちゃんにカオリちゃん。ところで、今日はなんの用事で?」


「この前、おっちゃんが面白い事言うとったやろ?それで来たんや」


中年転生者の問いに、カオリが答える。


「面白い事って、養鶏の話かい?」


「そやそや、それそれ」


二人の会話に私は話が見えてこないと言う表情をすると、二人が説明をし始める。


「マールはん。こっちで養鶏って言うたら、ほぼ採卵目的やろ?」


「そうですね… 肉も食べますが、卵を産まなくなった廃鶏や雄鶏なので副産物扱いですね」


私はカオリの問いに答える。


「うちもこっちに来てから何度が口にしたけど、シチューの中に入っているのしか口にした事ないんやけど、鶏肉ってあんまり人気ないん?」


「そうですね、柔らかいむね肉なら調理次第では比較的食べる事がありますが、もも肉となると焼くだけでは硬すぎて嚙みちぎれないので、よく煮込んで柔らかくする食べ方しかしませんね…だから、出汁をとる目的では使いますが、肉をそのものを食べる目的ではありませんね。肉目的なら豚になりますね」


「やっぱり、そうなんかぁ~ うちも前に厨房に行って、焼いてもうたり揚げてもうたりしたけど、硬うて噛みちぎれんかったわ」


「あはは、カオリちゃんも現代っ子だから、ブロイラーの若鶏しか食べた事ないんだね。若鶏じゃない、成鶏や老鶏なんてそんなもんだよ」


私とカオリの会話に、中年転生者があははと笑う。


「では、そちらの世界では、主に肉目的で養鶏をなさっているんですか?」


「あぁ、そうだよ。かなり効率化していて、大体、卵から孵化して40~50日で鶏肉にしているね」


「「40~50日!?」」


私とカオリの驚きの声が重なる。そんな短期間で食肉用の鶏を育てている事に驚く。


「豚や牛と違って、短期間に育成できるし、若いうちに肉にしているから肉も柔らかいんだよ」


「そちらの世界の技術って凄いんですね…」


「いや、技術もあるけど、やり方の問題だね。だから、こちらの世界でもある程度、再現できているよ」


中年転生者は完了形で答える。完了形?


「食べてみる?」


中年転生者が微笑みながら、様子を窺うように尋ねる。


「うち、食べたい!」


私より前にカオリが勢いよく答える。


 中年転生者はカオリの返答を聞くと、部屋の片隅の炊事場に向かい、箱から毛をむしられた丸鶏を取り出して、切り分けていく。


「うち、手羽先も食べたい!おっちゃん、頼める?」


「えっ? そんな所も食べるんですか?」


私はカオリの言葉に疑問をぶつける。


「あはは、マール嬢ちゃんの立場の人なら、むね肉やもも肉だけで、そんな所までは食べないだろうね。手羽先は言わば、現場のご褒美、おやつみたいな物だよ」


中年転生者は笑いながら、手羽先を切り落とし、他の部位も切り分けていく。


「えっ? 皮をつけたままなんですか?」


鶏肉に皮をつけたまま、次の調理を行おうとする様子を見て、私は声を出す。


「あぁ、シチューとか煮込む場合は取った方がいいけど、焼くならつけたままの方が美味いよ」


 そして、暫くして後、香ばしい香りと共に調理した鶏肉が差し出される。いつもの焼いて食べる時の薄切りではなく、一口大に切り取った塊で皮も付いている。その隣にはタレの塗られた手羽先もある。


 私は用意されたフォークで、鶏肉を突き刺して口元に運ぶ。皮の香ばしいパリッとしった

食感のあと、シチューで煮込んだ時と同様の柔らかな肉の食感である。ただシチューの出涸らしの肉とは異なり、鶏肉の脂と肉汁が口の中に溢れてくる。


「これはいいですね。普通の焼いた鶏肉とは違って、嚙みちぎれて口の中にいつまでも残りませんし、煮込み料理の様に出涸らしではなく、ちゃんと肉汁も楽しめますね」


私はそう言いながら、次の手羽先に目を移す。


「やっぱり、手羽先はかぶりつくのがええな」


 どうやって食べようかと考えていた所、となりのカオリが手づかみで手羽先を手に取り、かぶりつく。私も戸惑いながらも、手羽先を手に取り、かぶりつく。


 醤油をつかっているのであろうか、甘辛いタレの味と、鶏肉の旨味が口の中に広がる。確かに美味しい。確かに美味しいのだが、ちょっと、これは食べづらい。私もなるべく頑張って食べたのであるが、お皿にもどした食べ残しを見ると、手羽先の先っぽと関節部分が丸々残っている。それに比べてカオリの方は骨だけになっていた。


「これを使って拭くといいよ」


 そういって、中年転生者はおしぼりを渡してくれる。私はおしぼりで指先を拭いた後、ハンカチを取り出して、口の周りを拭う。上手に食べたつもりであったが、ハンカチにタレの跡があり、私は汚れた部分を内側に折ってハンカチをしまう。


「普通のお肉も美味しいけど、やっぱり骨付き肉の方が食べ応えあるなぁ~」


「おっ、カオリちゃんもそうなのかい?」


カオリは渡されたおしぼりで、顔と手を拭きながら答える。確かに、この手羽先は中年転生者が言っていたように、現場だけで楽しむもので、上には上がってこないものであろう。


「で、マールはん。どない?」


カオリと中年転生者の視線が私に集まる。


「これなら、需要が見込めそうですね…」








鶏のモデルはうちで飼っている子たちです。


ほんと、もっと上手に乗ってくれ…

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