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異世界転生100~私の領地は100人来ても大丈夫?~ 野生の転生者が100人もやってきた!?  作者: にわとりぶらま


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第69話 物流経路と販路と商品開発

「えっ? あの赤ん坊、壁を這いずり回って来たの…何それ、恐ろしいわ… 本当に人類なの?」


「そや、色が白いからまだマシやけど、あれで黒かったら、サブいぼでるわ」


「それに、あの人たち全員が、赤ん坊の恰好をして迫って来たって… マールちゃん、大変だったわね…」


 祝賀会の翌日、執務室のソファーで、私とカオリさん、トーカさんとでここ数日の出来事の報告を、セクレタさんにしている。ツール伯のお見合いの件は、昨日の内に大体話してしまったので、今はそれに伴って起きた騒動の報告である。


「それはもう大変でしたよ…セクレタさんのお願い券やお金を差し出して、あやしてくれだの、子守歌歌ってくれだの…」


私はあの時の騒動を思い出して、溜息をつきながら説明する。


「まぁ、渡した数とお願いされた数が合わないと思っていたけど、まだ隠し持っていたのね… それより、仕事の方はどうだったの?そんな状態だったから、出来なかったんじゃないの?」


「そこはトーカさんが手伝ってくれたり、また書類のやり取りを行ってくれました。また、仕事の現場確認もカオリさんが行ってくれましたので、問題なく行えましたね」


私はそう言って、カオリとトーカを見る。


「まぁ、うちは仕事の進み具合を確認して、数とか報告するだけやったし」


「私も帝都の法務関係の書類仕事と比べれば、かなり楽だったわ」


カオリは少し照れながら、トーカは少し自慢げに答える。


「二人とも、マールちゃんを手伝ってくれて、ありがとうね。これはご褒美よ」


セクレタさんはそう言って、二人に紙切れを渡す。


「うわ、これ、セクレタさんのお願い券やんかぁ~ 実はうち、ちょっと欲しかってん!」


カオリは渡されたお願い券を眺めて、まるでお小遣いを貰った子供の様に喜ぶ。


それに比べて、トーカは怪訝な顔をして、お願い券を見る。


「いや、ちょっと私、こんなの渡されても…そのマールにあやして貰ったり、子守歌歌ってもらったりして欲しいとは思わないんだけど…」


その言葉を聞いて、私とセクレタさんがぷっと吹き出す。


「ト、トーカさん…だから、それは本来の使い方じゃないんですって」


私は口を押さえながら説明する。


「ま、まぁ、あの人達の間違った使い方しか見てないから…仕方ないわね…」


セクレタさんも口を隠して言う。


私達のその様子に、トーカの耳はみるみる赤くなって行く。


「ちょ、ちょっとした勘違いよ!」


トーカは恥ずかしさを誤魔化すように言い放つ。


「まぁ、最終的に私が裁断を行うことがあるので、完全に間違いではないのですが、本来は生活環境の改善とか、この辺りで取り扱っていない物の買出しなどが、本来の使い方ですね。トーカさんも今の環境に不便な事や足りない物があったら言ってください」


 私は笑いを静めて、本来の使い方をトーカに説明する。すると、トーカはお願い券をじっと眺めた後、懐にしまう。


「分かったわ、考えて置く」


そう言うトーカの顔は少し嬉しそうに見えた。


「さって、報告も終わりましたので、次は今後の方針、計画についてですね」


私は気持ちを切り替えて話す。


「皆さんのお陰もあって、転移魔法陣も完成し、殆ど時間も経費も掛けずに帝都との物流経路を作る事が出来ました。今後はこの物流経路を使って、帝都との交易を行っていく事になります」


「それなら、これからはじゃんじゃん儲かるって事やな?」


カオリはニコニコ顔で期待するが、直ぐにセクレタさんに否定される。


「それがそうともいかないわ、まだ物流経路が出来ただけで、販路が出来たわけじゃないから」


「それに帝都では陸路だけではなくて、運河を使った海上輸送もあるから、物流量も結構差があるわね」


トーカも付け加える。


「陸路と海路でそんなに運べる量ちゃうの?」


「えぇ、私は書類上でしか見てないけど、一桁…下手すれば二桁違うわね」


 トーカの説明に、船による輸送のない陸路だけの、この領地では想像がつかなかったが、そこまで差があるとは、私も驚いた。


「私もそこまで差があるとは知りませんでした。これでは物流量による優位性は殆どありませんね。でも、そこまで運ぶのは当家では穀物ぐらいですが」


私も思った事を口にする。


「まぁ、そこは大きな商館と張り合っても仕方がないわね」


「そうですね、辺境領主にとっては、これでもかなり価値のある物流経路ですから」


セクレタさんの言葉に、改めて転移魔法陣の有用性を確認する。


「それで、これから主要な商品となる鉄材や鋼材などはどうなっているのかしら?」


「毎日、一樽分ぐらいは出来ていますね。といっても、鍛冶工房である程度消費もしていますので、全部が全部というわけでは無いですね、今の所、週で数えると3~4樽分ぐらいでしょうか?」


セクレタさんの問いに私は資料を捲りながら答える。


「それだと、週に一回、売りに行けばいいぐらいね」


「なんか週に一回は勿体ないなぁ~ ここで採れた野菜とか積んで毎日とかあかんの?」


「野菜は単価が安いから、あまり有益には思えないわね…」


カオリの問いにセクレタさんが返す。


「ここにしかない特産の物なら、やる価値はあるんですが…」


 私はそう言いながら、ここでの特産品を作る事を考える。今、豆の作付けを大量に行っているので、転生者達の好きな味噌や醤油を作れば特産品になるだろうか? でも、そもそも、味噌や醤油は需要がそこまであるのだろうか?


「昨日のあれ、なんて言ったかしら、炭酸飲料ってのはどうなの? あれなら特産にならない?」


「それよ! 私も昨日飲んだ時にこれはいけると思ったのよ!」


トーカの何気ない呟きにセクレタさんが反応する。


「昨日の今日だから、私も調べられていないのだけど、あれってどう作るのかしら? 簡単に安くできるの?」


「あれはただの水に魔法でシュワシュワさせとるだけやし、後は砂糖とか果物とか香辛料加えたら簡単に出来るんちゃう?」


カオリは気楽に簡単そうに言う。


「なるほど、それなら帝都で荷を下ろした後に買って来たらなんとかなりそうね。それにこれからは砂糖をここで作っていくのもいいわね」


「そうですね。サトウキビは流石に無理ですが、甜菜ならいけると思います。まだ、作付け時期は間に合うでしょうかね?」


 後で、リソンに聞いてみよう。本来であれば開墾に時間がかかって到底無理であるが、あの人達の速さなら、作付け時期さえ合えばなんとかなりそうである。


「なぁなぁ、帝都からの買い付けもするんやったら、帝都から物を買うて来て、それを売って儲けるのはあかんの?」


カオリが一時期、私も考えていた事を言う。


「それですが、少量ならいいんですが、大大的には出来ないというか…やりたくないんですよ」


「なんでなん?マールはん」


カオリは首を傾げる。


「帝都で安い物を買ってきて、ここで売ると、ここの地場産業が衰退しちゃうんですよ…」


「それに、ここの人達はそんなにお金を持っていないから、購買力があまりないのよ」


私の説明にセクレタさんが補足をしてくれる。


「あぁ~なるほど、商売人やったら、それでもええかもしれんけど、マールはんの立場やったら…それは出来ひんな… 領主様も大変やね」


そう言って、カオリがうなだれる。


「それなら、ここの人達に帝都での商品価値のある物を作ってもらうように推奨して、購買力を付けてもらうしかないわね」


真剣な顔をしたトーカがそう呟く。


「トーカさんなら帝都暮らしが長いので、どんな物が需要があるか分かりますよね? まとめて置いてもらえますか?」


「えぇ、分かったわ、お兄様にも聞いておくわ」


トーカは少し微笑んで答える。


「カオリさんは、トーカさんからもらった資料を基に、皆さんと相談して、作れそうな物を試作してもらえますか?」


「うん! 分かった! うちにまかせとき!」


カオリも元気よく答える。


「セクレタさんは皆さんの補助をお願いできますか?」


「えぇ、いいわよ。まかせて」


セクレタさんも機嫌よく答える。


「では、ある程度、品物がまとまったら、皆で帝都に販路開拓、商談にいきましょう!」



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