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異世界転生100~私の領地は100人来ても大丈夫?~ 野生の転生者が100人もやってきた!?  作者: にわとりぶらま


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第141話 苦心惨憺

「はぁ…」


 私は温泉館の受付で、深い溜め息を付く。カオリが旅立って一週間程経つが、私は未だに皆に事情を話せないでいる。やはり、改めて思うとカオリの存在は大きかった。彼女がいれば、皆の間に入って説得に協力してくれたであろうが、私一人で彼らの説得を行う事が出来るのであろうか…


 いつものお願いや説得であれば、彼らは拗ねたり、ごねたりするだけで、困りはするが特に大きな問題にはならない。


 しかし、今回ばかりは訳が異なる。下手な説明をすれば、彼らはここから立ち去ったり、もしかすると敵対するかもしれない… そんな事になったら、エミリーの最後のお願いが… 私にとっても大切なものが失われるかも知れない…


 私はどうして、いつも大事な時に思い悩んで、間違った決断ばかりしてしまうのかしら…長い年月を過ごしているというのに、積み上げていくのは失敗と後悔ばかり… あの時、別の決断を下していれば、私があんな思い違いをしなければ… その最初の失敗が、その後の人生にずっと尾を引いている気がするわ…


 私は自分自身の情けなさに、翼で顔を覆う。そこで、翼の内側に一本の黒くなった羽根を見つける。


 また、羽根が黒くなっている…黒い羽を見つける度に白く塗っているけど… 私の身体はどこまで持つのかしら… もう、かなりの羽根が黒くなっている。雲をつかむような事を続けて来た私だけど、心が持たないのかしら…


「セクレタさにゃ~」


 沈んでいる私に、アメシャが明るい声で近づいてくる。


「あら、アメシャ、もう交代の時間なのかしら」


私は普段の表情を取り繕って、アメシャに訊ねる。


「そうだにゃ、交代の時間にゃ」


アメシャは受付台に首だけ乗せてにっこりと目を細める。


「ごめんなさいね、アメシャ、貴方ばかりで、フェンやリーレンだと絡んでくるお客様が多いのよ…」


私は改めて、アメシャしか受付を任せられない理由を告げる。


「大丈夫にゃ、アメシャの場合だと、おやつを持ってきてくれる人が多いにゃ」


 アメシャは笑顔で答える。アメシャが喜んで受付の仕事を交代してくれるのは、おそらく

、それが理由であろう。


「たしか、ちゅるちゅるね。でも、知らない人からあまり食べ物を貰っちゃ駄目よ。何が入っているか分からないから」


「わかったにゃ! 気を付けるにゃ!」


 私は、日報を脇の収納ポケットに入れると、受付をアメシャと交代し、温泉館の表に出て、本館の二階の入口に向かって飛び立つ。


本館に降り立った私は、中へ進み、三階にある執務室へと向かう。


「あっ、お疲れ様です、セクレタさん。温泉館の方はもういいんですね」


「えぇ、アメシャが交代してくれたから、これで日報の処理が進められるわ」


私は二人に温泉館の分担を手渡していく。


「ほんと、済みませんね。セクレタさんに受付までさせた上に、事務処理まで手伝ってもらって」


「いいのよ、今の温泉館の受付には、普通の若い女性を立たせる事は出来ないから…」


 貴族と言えど、旅行先でお酒が入った状態なら、羽目を外す人も多い。また、様々なメイドなどの女性に目を光らせているので、なおさら普通の女性には立たせることが出来ない。


「でも、温泉館の収益が増えて、会計処理が煩雑になってきたら、このまま三人だけでは辛いわね」


トーカが現状の問題点を上げる。


「おじい様は接客で忙しいですし、おばあ様も今は礼儀作法の講習がありますし、ラジルの計算の練習を兼ねては… まだ、色々と早すぎますね…」


「確かに、項目について質問されたら、答えにくいわね」


トーカはふっと笑いながら言う。


「あのぅ~ マールさまぁ~」


ツヴァイが自分の存在をマールちゃんに気付いてもらいたそうに声をかける。


「なんですか?ツヴァイ」


マールちゃんはツヴァイに向き直って訊ねる。


「何かを判断する仕事は難しいですが、ただ単に計算していく仕事ならお手伝いできますが」


「えっ? 出来るんですか?」


マールちゃんはツヴァイの言葉に目を丸くする。


「はい、ずっと見てましたから」


「では、これをやって見せて」


 マールちゃんは日報のお土産屋の書類をツヴァイに手渡し、ラジルの席に座らせる。ツヴァイはペンをとると早速、カリカリとペンを走らせる。


「えっ? 計算尺なしで計算するんですか?」


「はい、無しで大丈夫ですよ」


 ツヴァイはペンを走らせたまま答える。私たちは、自分たちの仕事の手を止めて、ツヴァイの様子を見守る。そして、暫くした後、笑顔で書類を提出する。


「できましたぁ~」


マールちゃんは眉をひそめながら書類を受け取り、計算尺を使って検算し始める。


「うそ! あってる」


「マール、ちょっと私にも貸して」


目を丸くするマールちゃんから書類を受け取って、トーカも検算し始める。


「うわ…ホントだ…あってる」


二人はニコニコするツヴァイに視線を向ける。


「うふふ、これなら増員しなくても大丈夫そうね」


私は唖然とする二人に声をかける。


「姿も同じ、声も同じで、仕事の能力が上なら私の立場を奪われそうですよ… 頑張らないと…」


そう言ってマールちゃんは前のめりで仕事に取り組む。




「さて…今日はこれぐらいでいいですね。ツヴァイのお陰で捗りました」


マールちゃんは束ねた書類をトントンと整理する。


「いえ、マールさまの為ならこれぐらいの事、容易い事ですぅ~」


そう言って、ツヴァイが微笑む。


「では、いつもの通り、お風呂に行きましょうか」


そう言ってトーカが腰を上げる。


「セクレタさんはどうされます?」


「ん~ 私はもう少し、調べ物をしたいから、二人は私を気にせずに先に行ってちょうだい」


もういつもの事になっているので、二人は頭を下げて、執務室を立ち去る。


「さてと、始めましょうか…」


 私は、今ある自分の資産について調べ始める。大暴落でかなり目減りしたものの、普通の人から見ればかなりの資産がある。


彼らがお金で納得してくれる人物であればいいのだけれども…


 私はそんな事を考えながら、計算を始める。計算を始めて見ると、それなりの額はある。おそらく、全員に一生働かなくていいぐらいの金額は渡すことが出来る。しかし、自らこれぐらいの金額を稼げる彼らがこんなもので納得するだろうか?それよりも、このお金を使って、アンナちゃんに頼み込んで、彼らの為に地位や名誉を手に入れた方が良いのではないだろうか…


 いや、これだけの人数の地位や名誉となると、アンナちゃん自身にもかなりの迷惑をかけることになる。下手をするとアンナちゃんを良く思っていない輩に揚げ足をとられるかも知れない… 


 それは出来ないわ… アンナちゃんがあんなに頑張って漸く手に入れた幸せを、私の我儘の為に壊すことは出来ない。私はどうしたらいいのかしら…


 私がそう考えこんで、はぁと溜め息をつき、視線を下げると、床が青い光に照らされて光り始める。


 悪い時に悪い事が重なるものね…


私が視線を上げると、宙に青い光体が浮かんでいる。


「やぁ、セクレタ。久しぶりだね…」


青い光体から声が響く。


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