表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/173

第01話 100人それは群衆という

挿絵(By みてみん)

 マールは目を覚まし違和感を覚える天井を見てはっとする。

そして泣き腫らした目元を撫でながらここが故郷の自室だったことを思い出す。

五日前に母が倒れたと連絡を受け直ぐに故郷へと向かった。

だが、母はその後容態が急変し一日を経たず亡くなってしまった。

その後はこの地方の慣例に従って私の到着を待たず葬儀を行い、母の遺体は荼毘に付されてしまった。

その報告を受けた私は泣き崩れ、そのまま気を失ってしまったのだ。

私はむくりと体を起こす。服は寝間着に着替えさせられており、窓のカーテンの隙間から朝日が見える。

コンコンとノックの後、ふくよかな女性が入ってくる。


「マールお嬢様!」


女性は私の起きている姿を見つけると優しく抱きしめてくる。

侍女のファルーだ。


「お嬢様。よくお戻りになられました…」


ファルーに抱きしめられているとまた瞼が熱くなってくるのを感じたが、ファルーは抱擁を解き今度は私の両手を自分の両手で包み込む。


「お嬢様。積もる話はございますが、まずは奥様のもとへ行きましょう」


葬儀自体は終了しているが、荼毘に付された後の遺骨が教会の祭壇に慰霊の為に祀られている。葬儀に間に合わなかった者の為だ。

私はファルーに手際よく喪服の黒いドレスに着替えさせられた後、渡り廊下を通って館の隣に併設されている教会へと向かった。

教会の礼拝堂の前まで来ると前を進んでいたファルーが一度こちらを見てからゆっくりとその扉を開く。

扉を潜り一歩一歩確かめるように進むと白い花に包まれた母の肖像画が見えてくる。

その母の祭壇の横に神官長のサレムさんが白く大きな一輪の花を持って佇んでいた。


「マール様。献花をお願いします」


私は神官長サレムさんから花を受け取り母の祭壇に捧げ、膝を折り慰霊の祈りを捧げる。

見上げる肖像画の中の姿はいつもの柔らかな優しい笑顔だった。

私は愛してくれた母を労わろうと努力してきたが、恩に報いる処が死に目にも立ち会うことが出来なかった。

私はただひたすら祈ることしか出来なかった。


一頻り祈りを捧げた私の所にサレムさんが一冊の本を持って現れた。


「これはエミリー様の遺言によりマール様に必ず渡すよう言われていた本です」


サレムが差し出した本は分厚く、表題の記されていないものだった。


「本…ですか?」

「遺品の日記だと思われますが、私が目を通す訳にもいかず確かめてはおりません」

「ありがとうございます。分かりました。そちらの本を頂きます」


私は手を伸ばし受け取ろうと本に指先が触れた瞬間、本の中程のページの隙間が光り、カタカタと動き出す。


「えっ⁉」


突然の事態に私は本を受け損ねてしまい落してしまう。

本は床に落ちてもカタカタと動き、そのままひとりでにパラパラとページが捲れ始める。

私もサレムさんもファルーも驚きのあまりその様子を見守ることしか出来なかった。

そして、本は中程でページが捲れるのが止まり、そのページに魔法陣が映し出される。

その瞬間魔法陣から凶暴な光があふれ礼拝堂を飲み込んでいく。


「何⁉一体何が起きているの⁉」


私はとっさに眩しすぎる光に腕で目を守りその光に備えた。

直ぐに轟音のような力の波動が落ちるのを感じた後、緩やかに光が収まっていく。

私は薄っすらと目を開けていく。

徐々に礼拝堂の様子が見えてくる。しかし、その様子がおかしい。

私は目を大きく開いた。瞬いた後、もう一度大きく見開いた。


そこには先程まで存在しなかった群衆があった。

歳は十代後半前後。中には何人か赤ん坊もいた。

だが、異常なのは全員黒髪でシャギーカットで額の真ん中に前髪を垂らしており全員が全員同じような髪形をしていた。

その群衆の人々は周りを一回り伺いながら、徐に上げた両手を眺め、自分自身を確かめた後、一斉に叫ぶ。


「「「「「ステータスオープン!!!」」」」」


その叫びも空しく何一つ変化はない。次第に群衆が騒ぎ出す。

この人たちは何を行おうとしているの?

私は恐ろしさに後退るが母の祭壇があり、それ以上さがれず祭壇に寄りかかる形になる。


「くそ!ステータスが開かない!」

「ジョブが確認出来ない!!」

「ギフトは貰えているのか⁉」

「バブ―!」

「スキル!スキルは何が使えるんだ⁉」


群衆は口々に怒鳴る。


「あ、あっ、貴方達は一体何なんですか⁉」


私は恐怖のあまり群衆に叫ぶ。

すると自分自身を確かめていて群衆の顔だけがこちらに向く。

 怖い! ほんと怖い!

私は身を引き締める。群衆はゆっくりと私に向き直り、一斉に平手を私に向ける。


「ひっ!!!」


私は小さな悲鳴を上げる。


「「「「「鑑定!!!!」」」」」


群衆が叫び終わる前に私の意識は落ちた…



連絡先 ツイッター にわとりぶらま @silky_ukokkei

ツイッター慣れてませんがお気楽にお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 地の文が多過ぎず、少な過ぎず、なところ。登場人物一人ひとりの話し方も好き。 [気になる点] 無いです! [一言] 先に述べた通り、登場人物の話し方がとても好きです。なんというか、言葉だけで…
[良い点] おはようございます。先日イチャモン付けた無礼者、四月咲です。 改行や間隔を上手く使っているようで前より格段に読みやすくなったと思います。 [一言] 参考までに、わたしが気を付けている点を…
[一言] こんばんわ。 文章が詰まり過ぎな気がします。 文章の内容により改行を行って見やすくするといいと思います。 いきなりの苦言で申し訳ありません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ