話せば解る ~小説と事務連絡は違う~
処女作が書籍化することになりました。
なので、それにちなんだお話をしたいと思います。
参考になれば幸いです。
おおむね、知らない方向けの書き方をしているので、知っている項目はスルーしてください。
まずは、作業環境を紹介します。
●スマホ
OS:Android
機種:Galaxy
ブラウザアプリ:Chrome
文書アプリ:Googleドキュメント
メールアプリ:Gmail
ファイル管理アプリ:マイファイル ※a
※a 圧縮(.zip)ファイルを解凍する機能がある(内蔵アプリでこの機能があるのは珍しい)
校正チェックアプリ:MetaMoJi Note Lite
●液晶ペンタブ(ワコム)
OS:Windows
イラストソフト:CLIP STUDIO PAINT(通称クリスタ)
追加プラグイン:PDF入出力プラグイン(有料)
校正チェックソフト:Adobe Acrobat DC(無料)
画像編集ソフト:トリミングとリサイズができるフリーソフト
●PC
OS:Windows
文書ソフト:Microsoft Office Word・Googleドキュメント(web) ※b
ブラウザソフト:Chrome ※b
画像編集ソフト:Microsoft Office Picture Manager
メール:Gmail(web) ※b
※b スマホと同一のGoogle垢利用
●よく使うショートカット
コピー:Ctrl+C
切り取り:Ctrl+X
貼り付け:Ctrl+V
全て選択:Ctrl+A
検索:Ctrl+F
置換:Ctrl+H
上書き保存:Ctrl+S
何故こんなことを書いているかというと、iOS端末(iPhone・iPad)は、シンプルな操作が売りなので、画像編集とファイル管理が得意じゃないのです。
・ピクセルや拡張子(画像形式)の確認
・データのフォルダ分け
・圧縮ファイルの解凍
などの、ファイル管理機能はPC(仲良しなOSはMac)ですることが前提なので、外部のアプリを使わないとできない気がします。
(iCloudDriveにアップロードすれば、iOS13以降、ファイルアプリでzip解凍はできるようです。ただ、アップロードはPC側でする気配を感じます)
書籍化作業の際、重いデータは圧縮ファイル形式で添付ないし、ダウンロードリンクが共有されます。
なので、「確認してください」系のデータを添付されても、圧縮ファイルだったらiOS端末では確認できない可能性があるのです。
それ以外の点を除けば、MacPCとiOS端末を持っている人はAppleID(iCloud経由)でデータ同期がしやすいのでやりやすいかと思います。
スマホとPC、どちらからも同じデータにアクセスできる状態にしておくのは大事だったりします。そのため、俺はGoogleドキュメントで普段小説書いています。同期さえすれば、スマホからでもPCからでも書けるからです。
作業効率がいいので、スマホとPCどちらもある方は、データ同期できるソフト/アプリで書くことおすすめします。
俺、返信が早いらしく、ほとんどスマホで確認している、と言ったら担当さんに驚かれました。(担当さんはiOS端末を利用しているので、スマホで見てると思わなかったそうです)
という訳で、Androidのスマホお持ちの方は、圧縮ファイルの解凍ができるアプリを入れておくと、書籍化作業の際、助かると思います。
液晶ペンタブはなくていいんですが、俺が校正のときに便利だったので念のため紹介しています。
校正は出版社さんと、書き手さんの環境によって臨機応変に対応してくれると思います。
俺の場合は、テレワーク基本の時期だったのでPDFでの校正でした。
最初、PDFに○×つけてください、と依頼がきたとき「???」となりました。
俺の中で、PDFは「読み取り専用」で編集するものではなかったからです。
家庭用WindowsにAdobe Acrobat DC(通称アクロバット)は内蔵されていません。(ビジネス用PCには入っていることが多くPDFの編集が色々できる。無料のがあるので、そちらで校正チェックできるようです)
たぶん、環境的に無理ですと相談したら、紙媒体でのチェックにするなど、対応してくれたと思います。
けれど、俺は試すだけ試してから相談しようと思ったのです。
最初に、PDF編集機能があるフリーソフトをいくつか試しました。試した結果、正常に保存ができず無理でした。
そこで、液晶ペンタブで使っているクリスタにPDFをドラッグしてみたのです。すると、プラグインを追加したら編集させてくれる、と表示されたので、購入しました。
おかげで、校正チェックしたPDFを無事提出できました。
iPadやiPhoneもクリスタ対応しているけど、どうなんでしょうね?
同じプラグインを追加したら、iPadでもできるのでしょうか。できるなら、PDF編集で校正チェックする方は検討してもいいかもしれません。
ただ、クリスタですると、入力時に解像度設定し、画像として読み込むのでデータが重くなります。デメリットが多少あるのです。
後日、AndroidのMetaMoJi Note Liteというアプリを試したところ、そちらの方がうまくPDF出力できたので便利でした。
AndroidやiOS用のPDFに書き込めるアプリの方が、PDFでの校正チェックはよいと俺は感じました。
PC(Windows)に関しては、Adobe Acrobat DCの[注釈]の鉛筆ツールが便利でした。
あ、ショートカットキーを紹介した理由を忘れておりました。
知らない方が多いと思ったからです。
俺の職場でも、ブラインドタッチできただけで、年齢問わず「おおっ」と感心する人がほとんどです。
つまり、最近の方は年齢に関係なくスマホ・タブレットに慣れすぎて、PC操作に疎いのが普通だということです。元々知っていたとしても、使う機会がなければ忘れてしまうものなので、仕方ないことだと思います。
なので、紹介させていただきました。誤字修正などに、検索と置換は便利なのでWindowsの方はお試しください。(恐らく、Macにも類似のショートカットは存在すると思うので、net検索してみてください)
そして、ほう・れん・そうを忘れないようにしてください。
報告・連絡・相談の略なんですが、これが苦手な人もかなり多いと思います。
お仕事になると、基本メールでしないといけないのですが、皆さんSNSが当たり前になっているので余計に慣れづらいと思います。
もしかしたら、ある程度SNSの連絡で済ませてくれる出版社もあるかもしれませんが、ほうれんそうが大事なのは一緒です。
報告はですね、進捗(進み具合)の報告も含みます。できたときだけすればいいものではないので、誤解なさらないでください。
担当さんはスケジュール調整をしてくれる人なので、遅れている場合などは特に、事情などもちゃんと知らせましょう。体調が悪い、上手く書けない、など素直に伝えるのが一番です。
そして、相談です。気になったことはちゃんと相談しましょう。
メールの文面だと、業務連絡になるので、五割増しで冷たい印象を受けると思います。
学生時代の話ですが、部活で部長をしてた際、提出物の締切催促を、必要事項だけ書いてメール送信したら、後輩にビビられた経験があります。(数年を経て、教えてもらいました。ちなみに、現在も後輩とは仲いいです)
敬語文面でも、クッション言葉を随所に入れなければ、こちらが何とも思ってなくとも、存在しない威圧を受信するのだと知りました。そんな俺が言うのです。信憑性はあると思います。
小説と違い、そこに感情を補足しないことが普通なので、威圧的な文面に感じるかもしれません。
けれど、相手は温度ある人間です。
怖くないです。事務的な文言だけで怖いのであれば、そう言ってみてください。社会で働いている方なので、可能な限り対応してくれるでしょう。
俺は、自分から季節の挨拶などを最後に添えるようにしています。
ほんの少しだけ仕事以外の話題を入れると、相手も返してくれるので温度を感じられて安心しますよ。まぁ、もしスルーされても、忙しくて端的にしか返せない状況だと判るので、業務上の相手を知るのに便利です。
連絡は、恐らく向こうからすることの方が多いので、こちらは見落とさないようにしましょう。
メールは数日に一度、迷惑メールフォルダを確認する癖をつけた方がいいかもしれません。圧縮ファイルが添付していたり、URLが本文にあるせいでメールサーバーによっては誤判定されている恐れがあります。
確認したら、見たかどうかだけでもいいので数日中に返信しておくといいです。メールは、SNSのように既読がつかないので、返信しないと読んだかどうか相手は分かりません。その感覚の違いに、どうぞ注意ください。
事務連絡文面と同様に、誤解しやすいのが、もう一つ。
校正です。
校正さんは一定の基準、「正しい日本語とされているもの」、または「文章表現で一般的なもの」かを確認されています。
相手はお仕事なので、苛めたくてしている訳ではありません。その基準と比較するのがお仕事なのです。
チェックの結果、
・ココはこう変える予定です(修正予定)
・一般的にはこうした方がいいと思うけどどうですか?(提案)
この二種類が書き込まれます。
で、後者の方が圧倒的に多くなると思うんですが、ここで「間違っているんじゃ」と凹んでしまわないでください。
小説はすべてを「正しく」する必要はないのです。
提案は間違っているからされている訳ではない、と忘れずに。自身の表現のクセを知る機会だと思ってください。
ちなみに、前者もそのままでいきたいときは修正を断れます。
どんな感じか、俺の場合を例にあげます。(他に例がないともいう)
俺の処女作は、主人公が現代若者口調なので、主人公視点だと地の文でも「い」抜き、「ら」抜きが多いんです。「てにをは」もあえて抜いたりもします。
なので、その部分に、どちゃっと「提案」がきたんですよね……
校正さんには本当に申し訳なかったです。いちいち書くの、めんどくさかっただろうなぁ……
せっかくしてくれた「提案」でしたが、主人公らしさがなくなると思った箇所は、スルーさせてもらいました。
読者様がこれまで問題なく読んでくれているので、提案を全部無視しても大丈夫だったと思います。
提案をどれぐらい受け入れるかは、好みでいいかと。俺は、読みやすくなる、と思った提案は受け入れました。
担当さんが校正で凹んでないか、凄く心配してくださったので、普通は誤解して凹むんだろうなぁと思いました。(一度、校正さんへの申し訳なさで凹みはしました。たぶん、コレは違う)
校正さんは味方です。自信をへし折りたい訳でも、喧嘩を売ってる訳でもないので、凹まず、怒らず、一度冷静になって見てみましょう。どうしてもそう思えないときは、一度、チェックするのを止め、思い切り気分転換しましょう。
俺も、途中、項目が多すぎて疲れたので、一度寝ました。(最初、フリーソフトで上手く保存できず何度もやり直したので、余計イーッとなってしまいました)
あとは……、あ、画像編集ソフト紹介した理由ですね。
なろう投稿者の方は、恐らく、みてみんのサイトを通じて小説本文内に挿絵を挿入できることはご存じだと思います。
他にも、活動報告とランキングタグにも画像挿入できるのです。
宣伝に活用できると思ったので、おまけで紹介しています。
書籍化する、ということはカバー絵ができるので、一見して判りやすくなります。なので、出版社へ使用許可を得て、情報解禁日以降に画像を使わせてもらうといいと思います。
□ランキングタグ設定(なろう公式マニュアル)
https://syosetu.com/man/ranktag/
上記でさらっと記載されている「HTMLタグ」。
コレなんぞや?、と思う方もいるやもしれません。
下記のようなものをHTMLタグといいます。(コピペして使えるので、お好きにどうぞ)
・文字リンク
<a href="サイトURL">文字</a>
・改行
<br />
・画像付きリンク(原寸サイズ)
<a href="サイトURL"><img src="画像のURL" alt="リンク名(任意)" /></a>
・画像付きリンク(サイズ指定)
<a href="サイトURL"><img src="画像のURL" alt="リンク名(任意)" height="高さ" /></a>
※「height="高さ"」は「width="幅"」でもいいです。
・画像だけ
<img src="画像のURL" alt="画像名(任意)" />
小説本文と活動報告内では、専用の画像挿入タグ(<iコード|ユーザID>)でも画像を付けれます。
□挿絵をつける(なろう公式マニュアル)
https://syosetu.com/man/sashie/
□活動報告(なろう公式マニュアル)
https://syosetu.com/man/blog/
ランキングタグ設定は上記以外になるので、画像を入れたいときは、みてみんで画像だけを表示したときのURLをコピーして貼り付ける必要があります。URLの末尾に画像の拡張子(.jpgや.pngなど)が付いているので、見分けやすいです。
で、みてみんのサイトの一枚あたりの画像容量の上限が3MBなんです。
カバー絵の画像をそのままもらっている場合、印刷用なのでもっと重いはずです。なので、リサイズなどで3MB以下に縮小する必要があります。
軽さを優先するならpngよりjpgで保存した方が、同じサイズ(ピクセル)でも容量は軽くなりやすいです。(一応画像加工にあたるので、使用許可とともに、出版社側に縮小加工していいか許可をもらった方が安全だと思います)
スマホはAndroid・iOSともに内蔵アプリでリサイズ(拡縮)機能を持っていることは少ないです。あって、トリミング(切り取り)でしょう。
なので、外部の画像編集アプリを使うか、PC側で画像縮小して、みてみんに投稿されるのがよいと思います。画像編集ソフトを紹介したのは、そういった理由です。
さて、俺なら事前にこういうこと知れたら嬉しいなぁ、と思ったことをつらつらと書いてまいりましたが、いかがでしょう?
何か参考になることがあれば、幸いです。
・ヲタクで過去にHP作成(HTMLタグ利用)を経験済
・業務メールをする仕事を経験済
・仕事でPDFを編集できるソフト(アクロバット)があると知っていた
個人的に上記が、書籍化するにあたっての俺のアドバンテージだったと思います。過去の経験が、まさか人生の予定になかった書籍化作業に活きるとは思っていませんでした。
仕事しているときも、ヲタクでよかった、と思うことが何度かあるので、ほんと人生何が役に立つか判りませんね(笑)
どんな経験でも無駄になることはない、と歳を重ねるごとに思います。
なろうの性質上、書籍化は学生の方も経験するかもしれません。そういった方の一助になれいば幸いです。
ここからは、余談です。
人によっては「ふざけんな」と思われるかもしれませんが、実は……なろう経由での書籍化打診は三回きました。
連載始めて五ヶ月弱ぐらいに一件、一年数ヶ月ぐらいにほぼ同時に二件ありました。
一件目は、確かブクマが九千台になった頃だったと思います。
特定のカテゴリで月間一位、四半期五位以内のこともあった後なので、その辺りが要因でお声がかかったのでしょう。
ここからは俺の主観です。
グループ会社が、俺が仕事で知る限り、フットワークは軽いがアフターサポートが期待できない企業でした。その出版社が同じとは限りませんが、お声がかかったのが早かったことからすると、著者の地力頼りの可能性を感じました。そんな地力があると思えるほど、俺は自分に自信はありません。
あとは既刊を確認するかぎり、俺の好みの絵にならなさそうな気がしました。
けれど、書籍化できるのはありがたいので、悩みました。
結局、書籍化にはなりませんでした。
このとき、既に書店アプリでの配信の話を受けていたので、単に、条件不一致で駄目だったのです。俺の主観で断った訳ではないです。
そりゃ企業さんは権利全部欲しいですよね。当然です。
で、二件目と三件目です。
これは数日違いで、きました。もう書籍化無理かもしれない、と思っていたところだったので嬉しかったです。
けれど、また駄目かもしれない、とも思いました。
このとき、既にコミカライズの話が進んでいたからです。
権利をすべて得られないのであれば、また条件不一致になるかもしれない可能性が高いです。
一方の出版社は、コミカライズもアニメ化も視野に入れて、すべてメディアミックスしたいのだろうなぁ、と扱っている既刊の展開の仕方で予想がつきました。(好きな作品が最低二作品、各媒体でメディアミックス展開している出版社でした)
そして、やはり条件不一致となりました。
もう一方の出版社も、利益をあげたいだろうからきっと同じだろうなぁ、としょんぼりしていたのですが、担当さんがとてもいい方で「それでもいい」とおっしゃってくれました。この担当さんからの依頼が一番作品愛を感じる内容だったので、俺としてもとても嬉しかったです。
他の出版社の打診内容は、レーベルに合う作風だから、客層が広く人気だから、といったような「利益になる」感がありました。それも充分、光栄なことだとは解っています。けれど、「この作品が好きだからウチで本にしたい!」というお声に出会えたのです。こんな奇跡を逃す手はない、と思いました。
書籍化するには、ことごとくタイミングが悪かったんだと思います。けれど、最終的に作品を本当に好きな担当さんに付いてもらえたので、安心して任せることができました。
俺はこれでよかったと思っていますし、とても幸運なことだと感じています。
幸運を得ても、「それから」どうしていくかが大事だと書籍化作業に携わって感じました。
俺はこれからも、書籍化に携わってくださる方たちに感謝と敬意をもって接していきたいと思います。
今後書籍化される方も、担当さんたちと意思疎通の齟齬なく、お互いを尊重して、良好な関係を築けることを祈っております。