オタク達はシユガ王国に向かうようです
戦闘を終えたシズナ・ソラは血で染まった防具を外すと自らが師匠、鈴木の前で着替ようとしていた。
「「ふぁ!?」」
鈴木と山田が突然のシズナ・ソラの行動にガン見しているとシズナ・ソラが視線に気が付く。
「師匠?何か?」
「ひゃい!?」
鈴木は紅潮し声が裏がえってしまう。すぐさま平静を装い紳士的―――(女力士ではあるが)らしく振る舞うよう努力する。山田も続き紳士的―――(少女ではあるが)に振る舞うのだが―――顔がニヤついていた。
「にゃんでもないでつ。ささ、早く着替えて下さいでつ。」
「?」
シズナ・ソラはアイテムポーチから替えの魔装束、[ギア・ウェア]を取り出す。ギア・ウェアは敏捷力があがる魔装束である。他に魔力の上がるマナ・ウェア、攻撃力が上がるパワーズ・ギアの2つも持っている。これらは15年前に帝国で開発され王国の冒険者も重用するようになった。
「よいしょっ」
シズナ・ソラはギア・ウェアに着替えようとしてふと、今日履いているのが[くまさんパンツ]である事を思い出した。多少恥ずかしいが、師匠も山猫様も女性であるので大丈夫と判断し着替えた。
「師匠、お待たせしました!…師匠?」
「………………ハッ!?でへ、でへ。にゃんでもないでつぞー!!でへ!」
鈴木、山田、シズナ・ソラは一応レッドオーガ、レッドトロールの耳を切り取り始める。シズナ・ソラ曰く魔物の討伐証明をギルドに出せば報償金が出ると言う事である。鈴木、山田は文無しのため、あくせくと切り取り始める。
「生まれて始めて働いたでござるな♪労働って素晴らしいですな♪」
「ですなぁ♪しかし結構腰に来ますなー♪」
などと一見普通の会話をしているが、鈴木と山田はひそひそと[くまさん・パンツ]の感想を述べあっていた。背後からシズナ・ソラが声をかける。
「師匠はこれからどうされるのですか?」
山田と鈴木はシズナ・ソラに背を向き相談する
「これからの予定ですか…山猫氏、なんかありますかな?」
「うーん。とりあえず世界を色々見て回るってのはどうでござろう。」
「ですな。ではシズナちゃんにこの周辺の事を教えてもらいましょう」
「あーシズナちゃん。私達は遠い国から来たんです。だからこの周辺の地理に詳しくないんです。大体の地理と今いる場所は何て言うのか私達に教えてくれないですか?」
鈴木はなるべく女としての口調を心がける。実は男なんですなどとは言えないし、今はバレてはいけない気がするのであった。
「は、はい。そうだったんですか。ええと、まず私達が今いる場所はチコの村。シユガ王国首都ア・ジニアから歩いて2日くらいの場所になります」
「シユガ王国…?」
「はい、シユガ王国は南北に長い地形でして、その南に首都ア・ジニアがあります。そこから西に向かうとチコの村があるのです。」
「ほー。そうだったんですか。」
「えと、シユガ王国は大陸で言うと南に位置します。私の知る限りですが王国をふくめて、4つの大国があります。王国の東にグランデア帝国、西に真・聖王国―――真聖王国との国境には蛮族の支配する地域があります。
北にはジュモー獣王国があります。ジュモー獣王国の周辺には数国の小国がありますね。あとは"空白の地域"とされている場所もあります」
「なるほど、大体分かりました。では山猫氏、どうしますか?」
「そうでござるねー。聖王国の回りには蛮族とか出るらしいし…獣王国か王国か帝国ってところでござるかね」
「師匠、でしたら王国が一番近いので良いかと思います!王国出身なので、案内は任せて下さい!」
「山猫氏いいですか?」「そいつは重畳でござる!」
「では、師匠。王国に向かうとしましょう。」
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鈴木と山田はシズナ・ソラの案内により2日かけて王国に到着した。道中は1人が夜警に立ち、残り二人一組で雑魚寝をしていた。。
最初の日は「夜警を師匠に巻かせる訳には行きません!」等と言われたが、鈴木は「弟子を守るのもまた師匠の務め!私が夜警に立ちます!」等といい山田とシズナ・ソラが就寝した。
次の日は「今日は私が夜警に立ちます!」と言われたのだが「シズナ氏には道案内と言う仕事を頼んだ手前、ゆっくり休んで欲しいんでござる」
と言い、鈴木とシズナ・ソラが就寝した。
ちなみに夜警等と言っているが――――自宅警備員だった彼らには大層な護身術は無い。夜警などと言いながらその目はシズナ・ソラと言う美少女の寝姿を脳内カメラで保存していたのである。
1人は雑魚寝アングル、1人はさながらアイドル撮影のオタクのように様々なポジションを取りながら一晩中脳内撮影をしていた。
王国に到着した時には鈴木と山田は興奮の余り寝れず、目には熊が出来ていた。
「夜景はどうでしたか?山猫氏」
「夜景異常無し!でござるよ鈴木氏!」
「師匠、山猫様、夜警ありがとうございました!」
「「こちらこそご馳走さまでした!」」
「?」
シズナ・ソラは師匠達の優しさに感激しつつ、国門に二人を案内するのであった。