幕間 15年前のとある出来事
「異世界転生くっ殺女力士!どすこい張り手†夢想Ⅲ、近日ベータテスト!くぅー我慢出来ねぇ!」
「英造氏、まーた通なゲームの話ですかな!」
「ゴブリンソフトさんはマジイカれてると思うでござる」
西暦2188年。33年の月日を経てブーブルはVR専用ゲーム機を世界に発表した。その7年後、ゲーム会社ゴブリンソフトが出したシリーズ物の第三作目が"くっ殺夢想Ⅲ"である。
夏休み。山田犬吉、鈴木英夫、そしてその友人田中英造は帰宅部仲間として仲が良く、こうして山田宅で話を咲かせていた。
「大体あれってR15でござるからなー。小生はまだ14でござるし…」
「遅生まれはいやですなー俺もまだプレイ出来ませんな」
「お前らと違って俺は4月生まれの15だからな!一緒に参加出来ないのはなんだが…法律だからな」
VR法律では様々なゲームジャンルに対応するため年齢制限を取り入れた。ゾンビゲー等のいわゆる暴力的なゲーム、そしてお色気ゲーム等である。日本では犯罪者撲滅の取り組みとして15歳未満はR15規定のVRゲームはそもそもログインする事が出来ないようにされている。
「お前ら、このくっ殺Ⅲの裏情報知っているか?」
「と言うと?」
「どこぞの掲示板にリークされてたんでござるか?」
「そうだ。製作初期のアルファテストのプレイヤーのリークがあった。今までもどこまでがR15かあの手この手でキャラクターやらシステム調整していた。しかし!!今回はR15を超える事を目標に開発しているらしい。そこで神ゲーと絶賛されていた。ムフフな神ゲだとな。例えばとあるNPCが服を着てないとかな」
「「それなんてエロゲ?」」
「単に設定ミスなのでござるか?」
「いや、アルファテストの段階では色々やりすぎてR30だおwwwとまで書かれていたな。そう言うNPCもいたらしいって話だが意図的だろうな」
「それじゃ、ベータテストじゃ規制されてしまいますしな」
「ちなみに俺の予想だが、裸だったのはプレイヤーだったんじゃないかと思ってる。ゲーム装備全部外したら、キャラクターによっては裸になるからなそれをNPCと勘違いしたのかもしれん。しかしここで重要なのは裸になれる、と言う事だ」
「つ、つまりドユコトでござるか?」
「ふっ。言わせんなよ。俺はそのキャラクターはアルファテストプレイヤーの情報で知っている。そのキャラクターでログインして…あとは分かるだろ?」
「この裏切り者ー!切腹するでござるよ!!」
「通報案件キターですな!」
「おいおい。悪く思うなよ?これが15の特権なんだ」
「し、死ねぇ!でござる!」
「まぁまぁ山田氏。後で英造氏の武勇を聞きましょう。しかし、くっ殺シリーズですか、これはこれからシリーズコンプしたいところですな」
山田は転げ回って咽び泣いた。涙に鼻水まで流してまで悔しがった。
「それで…話は変わりますが、英夫氏の母上は再婚されるんでしたかな?」
「ああ!そうそうお前いらに言わなきゃなら無いことがあった。俺、もうすぐ田中英造じゃなくなって、横瀬英造になるから間違わないでな!」
「プギャーwww寄越せ映像wwwスレ立てはしないでござるよ?」
「山田氏ぃ。笑うところじよないですぞ」
「ふっまぁいいさ。じゃあお前いら夏休みが開けたら武勇伝を聞かせてやるわ。そろそろ帰る事にするよ」
「プギャー!www」
「山田氏!まったく仕方ない。では休み明けに聞かせてもらいましょう、ご武運を!ですぞ。」
「分かった」
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夏休み某日。横瀬英造はベータテストプレイヤーとして運営が準備した会場にいた。
「異世界転生くっ殺女力士!どすこい張り手†夢想Ⅲのベータテストにご参加頂きありがとうございます。製作担当のペロペロです。はい。皆様にはこれより本作品の最終テストに参加して頂きます。まず番号の降られた席にお座り下さい。」
ペロペロは紫色のマスクをしてそこに舌と書かれたマスクをしている。スーツは緑色でマル秘と書かれた書類を立ち読みしながら語りかける。
俺はペロペロの言われた指示に従って席に座る。回りを見渡せば20人程の席に各々が座っている。年齢層は20代~40代程で、その中では俺が恐らく最年少であった。横瀬はVRゴーグルを着用する。
「アルファテストのプレイヤー様達により諸々の不具合修正を施しました。皆様には最終チェックと言う事で、ゲーム中の色々な場所に行って頂き、とある事をして頂きたいと思っております。はい。」
「…不具合修正だと?チッ」
俺がベータテストに参加した理由はいわゆる下心のみであったため、不具合と言う形で修正されるは非常に困る。思わず舌打ちする。
「また、当社としてキャラクターが裸になっているとの情報もありましたのでベータテストのプレイヤー様がたにはキャラクターのテストプレイもお願いしたいと思っております。キャラクターは当社で準備させて頂きましたのでそのチェックを御願いしたいと思っております。はい。それではそのキャラクターでまずログインして見て下さい」
「え?」
や、やりやがったなー!恐らく山田がリークしやがった。その情報からキャラクターチェックが入り恐らくほとんどのキャラクターが修正されてしまっただろう。山田に俺の目論見が木っ端微塵にされてしまった。俺はなんでこうなったと涙目になりながらVRゴーグルの横にあるスイッチを押す。
Now Loading……………
Game Start
ゲームの中にログインすると、俺は5感に風を感じた。腕を伸ばし、深呼吸すれば、いい匂いすら感じられる気がする。なるほど、これは神ゲーだ。
「えーでは説明しますです、はい。皆様のライフポイントは99となっておりますです。それが無くなりますと現実世界でも死にます。はい。そして。ベータテストプレイヤー様がたには色々とやってもらいたい事があります、はい。オーダーしてメニューバーの中にクエストを用意しておきました、はい。」
「ちょっと待て!現実世界でも死ぬってどう言う事だ!?」
猫耳力士が叫ぶ。
「えーVRゴーグルを着けてゲーム起動した段階で皆様にはゲーム世界に来たと理解してもらえればいいですか?はい。」
「ばかなッ!オーダー!オーダー!オーダー!あれ?ログアウト出来ない?」
俺もオーダーして見たがログアウトアイコンが無かった。
「VR法違反よ!」
「不当にゲームに閉じ込めたらお前ら犯罪者だぞ」
「やってられるか!帰る!」
「死ね!糞運営!」
「分かりました、はい。パチリ。」
ペロペロが指を鳴らすと4人が糸を切ったように倒れた。
「な、何をしたんだ?」
「えー死んでもらいました、はい。現実世界でも死にますよ?なんども言わせないで下さい、はい。」
青年に答えた後、ペロペロは16人を一瞥し、言い放った。
「皆様にはそれぞれに生還するチャンスが与えられております。勿論、このゲームの世界で死なない限りではありますが―――――ミッション達成さえすればログアウトをお約束致しますそれでは皆様、ご武運を祈っております。はい。そうそう死にはしないと思いますが、特典もつけさせて頂きました。ではでは。」
ペロペロはお辞儀をするとログアウトした。
「な、なに言ってやがる!」
「俺、来週彼女にプロポーズする予定だったのに」
「とりあえず、やってみるであるか!」
「ママー!お家に返してー!」
それから…皆がパーティーを組み出した。
1人で運営の用意したミッションを達成するより効率の良い選択である。4人、4人、3人、3人、そして1人でやっていくと言う人である。
俺は…仲間を作れなかった。
なんでだ?みんなが下劣なものを見る目で俺を見ていた。
「な、なんで俺をパーティーに入れてくれないんだよ!!」
と言ったと思う。
「くっさ近寄んないで」
「だいたい顔が犯罪者なんだよな」
「なんか悪代官ぽいよね」
「鏡見てみろや!」
俺は…盾に映る自分の姿を見た。
眉毛が眉頭3cmほどしかなく、薄オレンジの平安装束を身につけて立鳥帽子をかぶる姿。見た目の腹黒さに俺は膝をつき頭に両手を抱えた。 そして絶望した。
「麻呂………………だと!?……………………」
ベータプレイヤーは各々リーダーを決め、バラバラに散って行った。衝撃のあまり石象となっていた横瀬英造はふらふらしながら立ち上がる。
横瀬英造は1人、パーティーを組むこと無く旅立つのであった。
横瀬は見た目ではあれですが、良い性格の持ち主です、多分w