オタク達は少女を助けるようです。
「……はぁっ!」
左右の瞳の色が異なる金髪の少女がその身体とは釣り合わない大槍を振るい戦う。余裕綽々と言わんばかりに。その大槍の前に次々に魔物は殺されていく。
「はっ八連槍を殺せえー!」
次々にサモン[中級魔召喚]する魔族は6年前八連槍に倒された第4魔将エープリルの配下だったダッツである。ダッツは復讐心に燃えていた。
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6年前魔王はシユガ王国侵略のためにエープリルに危険人物の排除を命じた。王国には勇者と呼ばれる存在がいる。勇者は10いる魔将の内でも対抗出来る者はいない。しかしながらエープリルは10魔将1と言われる知恵者であった。力で勝てぬなら頭を使う。エープリルはまず人間に変装し王国に潜入した。勇者と親しい者を拐い、弱みを握る事がまず計略の初発であった。人質の命の対価として自害を命じる、罠にはめる、または王国を裏切らせる、色々な手段が取れるからである。エープリルは機を狙い、旅をしていた勇者一行のおそらく一番弱いと思われる少女を目の前で拐う。人質の首に刀を当てた。
「初めまして。私の名前はエープリル。4魔将と呼ばれておる。クハハッ!さて諸君。この者の命が惜しければ、我が命じる事は絶対と思うがいいクハハハ」
「「「「「え?」」」」
勇者一行は驚いた。
「まずは、そうだな!王を殺せ!」
「ぷぷぷっwww」
小柄な少女、青髪のショートボブの娘は両手を叩いて笑う。
「はぁー私より接近戦に強い子を拐うなんてバカな魔族ですの」
胸が豊かなウェーブがかかった金髪の娘はやれやれと手を振る。
「今助けに行きますッ!シズナさん!」
一番背が高いであろう黒い長髪は腰まで伸びた勇者は叫ぶ。
「しーちゃん、大丈夫ですかー(棒)」
ピンク色の髪の目尻の下がった修道女らしき少女は演技くさい涙を浮かべている。
あまりに緊張がない勇者達にエープリルは面食らう。
「な、なにっ!?この娘がどうなっもいいのか貴様らッ?」
「…汚いです。"八触"」
「ッ?ぎゃああああ」
エープリルの右腕は八つに分断され円を描きながらダッツの足下に落ちた。
「は!?」
エープリルの側にいたダッツ達は己の将の腕が落とされる原因となった少女を見る。その小さな身体に似つかわない大きな槍を持っていた。血で赤く染まる槍には蜻蛉切と銘が彫られていた。
「き、きしゃまああ!ま、まさか!?きしゃまがは、八連槍りゃったのかああ!?」
「…うるさいです…"八蝕"」
「りゃっ!?」
エープリルは八に別れた肉片になった。
「エープリル様が…やられた!?」
ダッツ達は一瞬で肉片となったエープリルに目をやるとひいいい!?化け物!と散り散りに逃げていくが[悪魔]が追ってきて次々に同胞がその槍の犠牲になっていく。
「こ、このヤロー死ねっ!ぐはっ!」
「た、たしゅけ、たしゅけて…ぎゃっ!」
「なんでもします!ナンでもしま!じゅっ!?」
「俺、帰ったら彼女にプロポーズするんだ…ぐはっ!」
ダッツは仲間が殺されてゆくのをぼーっと眺めていた。逃げても殺されると悟ったからである。我先にと逃げ出した奴から殺されていったのである。ある者は槍で。ある者は剣で。ある者は拳で。ある者は魔法で。ある者は弓で。
「はは…ここで死ぬのか」
ダッツは全て諦めて笑った。我に帰った時、目の前に勇者と八連槍達がいた。
「殺せ……」
「うーんどうする勇者ちゃん?www」
青髪の少女は笑う
「あなたのアジトに案内してくれたらあなたを助ける、と言ったらどうしますか?取引致しましょう」
勇者は取引を持ちかけてきた。
「なっ!?」
ダッツは自分が己の力が彼らには像と蟻程の差をある事を理解させられていた。首を横に振れば、殺されるのは確定事項だろう。テレポートは俺は使えないので、もはや選択肢は無かった。
[死にたくない]と言う気持ちには抗えなかった。
「ほ、本当だな⁉わ、分かった。案内する」
「えぇ、契約です」
その日、4魔将団はあっけなく壊滅した。魔王軍の一つの軍がなくなったには激震が走った。
たった一人で1000人の魔族が殺された。
勇者が八連槍に言ったあなたが売られた喧嘩はあなたが買いなさい。との事を知っているのはダッツだけである。こうして、八連槍一人によって4魔将軍は消滅した。
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俺は強くなった。レベルは30になりサモン[中級魔召喚]を覚えた。八連槍の強さは知っている。万を辞して奴の前に立ったのだ。
サモン[中級魔召喚]レッドオーガ
サモン[中級魔召喚]レッドスライム
サモン[中級魔召喚]レッドトロール
次々と魔物を召喚するが奴の大槍の餌食となる者は少なくない。しかし、これで良いのだ。魔物をいたずらに突っ込ませている訳ではない。レッドオーガ、レッドトロールは体力攻撃力防御力に優れており、奴も複数体でかかられると厄介に思っているだろう。レッドスライムは[ファイヤボール]などの火魔法が扱えるが特別な性質がある。
エクスプロージョン[爆発]
"指令"によって大きな爆発音と共にレッドスライムが爆発した。
「死ねえ!八連槍!エープリル様と、同志の敵は取らせてもらうぞ!」
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["八蝕"]
八連槍 シズナ・ソラは愛槍[蜻蛉切]を振るう。
レッドトロールやレッドオーガは体力があり、八蝕では一撃死とはならないので厄介であった。
「…いきなり敵討ちって言われても知らないです…」
ギルドの要請で低級ポーションをチコの村に取りに行くよう頼まれたのであるが…ついていない事にここら辺には山賊が出るようである。いきなり毒矢が飛んできたかと思えば硫酸の落とし穴があったり魔物が挟み討ちにしてきたのである。
あぁレッドトロールが棍棒を振り上げている。うざったい。
["八蝕"]
シズナがなます切りにしようとした瞬間
エクスプロージョン[爆発]でレッドスライムが爆発した。
「ッ!?」
シズナはレッドトロールを盾にするがレッドスライムは次々と爆発する。
エクスプロージョン[爆発]
エクスプロージョン[爆発]
エクスプロージョン[爆発]
「きゃああっ」
連鎖爆発によりシズナの服は焦げ付き、自らの血で濡れた。
「貴様が強いのは知っている。だから手勝つために無慈悲になんでもさせてもらう。貴様が俺達にしたように、なっ!エクスプロージョン[爆発]]
「…ちっです」
シズナは舌打ちし、レッドスライムが爆発する前に倒そうとする。しかし近ずけばエクスプロージョン[爆発]でダメージをもらう。
そうこうしているうちに回り全てがレッドスライムに囲まれている事に気がついた。
「詰みだ、八連槍!」
ダッツは唱える!
エクスプロージョン[爆発]」
しかし、爆発は起きなかった!
「いたいけな少女をいじめるとは、許すまじですぞ!」
「あれ?しゃべれるでござるね。固有イベントじゃないパタンでござるか!」
「山猫氏、奴は退治するべきでしょう!殺りますぞ!」
「鈴木氏ぃまーたミンチになりたいんでござるかぁ」
「そこは選択肢がなんとかしてくれるですぞ!キリッ!」
「フラグですねwww分かります」
訳の分からない美女が近ずいてくる。スカート?の暖簾には横綱と書かれており、手には八連槍の落とした槍を持っている。それで戦うつもりなのか。
「誰だか知らないがじゃまするなら殺す!行け!レッドトロール!レッドオーガ!」
「………"無蝕"………」
槍を振るえばレッドトロールとレッドオーガは消滅した。
文字通り消えてなくなったのだ!
「…は?」
ダッツは目の前で起きた事が分からない。
目の前でレッドトロールとレッドオーガがあたかたもなく消えたのだ。まるで別次元に吸い込まれたのようかに思えた。美女は悔しい顔をしながら叫ぶ。
「"無蝕"なんだからねっ!」
次々と魔物は消滅させられた。ダッツは今ここでコイツを殺さなければならないと確信した。こいつは…こいつは…八連槍よりヤバい。ダッツは八連槍を囲っていた全てのレッドスライムを突撃させた。
「し、死ね!化け物!」
エクスプロージョン[爆発]」
「ズーっと"無蝕蝕歴無"なんだからっ!]
美女が槍を振いレッドスライム達は連鎖するドミノのように消えてなくなった。そしてその先に自分がいることに気がついた時、全てはもう遅かった。
「ひっ!助けて……」
刹那、ダッツは自分の体がなくなっていく事を感じた気がした。世の中には触れちゃいけないものがある。敵討ちなんて考えなければ良かった。そうすればこんな神か邪神に殺される事は無かった。あぁエープリル様、私もそちらへ参じます…
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八連槍 シズナ・ソラは目の前で起きた事に興奮を隠しきれなかった。たわわに実った双丘だけでなく顔もスタイルも見たこともない美女がふるったその強さはもはや英雄級と言われた自分が矮小と思う程であった。あれだけ苦戦した魔物が一撃で消滅した。
自分が極めたと思っていた、"八蝕"は極めた先に"無蝕"があると分かったのだ。
――この方から槍の扱いを1から学ぼう――
シズナソラは美女に向かって歩き出した。
「師匠!弟子にして下さい!」
「「えっ!?」」
鈴木と山田な同時に声を上げた。