狐に包まれる〜十五夜〜
「ただいま〜」
夏の間、残業続きで、ようやく落ち着いた秋口・・・
心地良い月光に照らされて、帰宅する。
「おかえりなさい!」
ほのかな色気を醸し出す、雪狐が、僕を出迎えた。
雪狐の尻尾が、ぶんぶんとふれている。
「そういえば、満月がきれいだな・・・」
言うと、雪狐は、お団子が山と積まれた皿を持って来る。
「そう言われると思って、お月見の用意をしていました♪」
山盛り・・・
夕飯がいらない・・・
しかし・・・
満月が、心地良い・・・
すす・・・っと、雪狐がすり寄る。
「来年は、この子と一緒にお月見できますね、旦那様♪」
僕は、無言で雪狐を抱き寄せる。
もう一人じゃない・・・
そう感じる・・・
そんな時だった・・・
プルルルル・・・
雪狐のスマホが鳴った。
「誰ですかね・・・」
雪狐は、電話に出る。
『今、満月です!
稲荷や妖狐は、発情するです!
赤ちゃんゲットのチャンスです!』
電話向こうで、まくしたてる「誰か」。
「あ・・・あの~・・・
葉狐様・・・?
それは、身籠ってない人に言ってください・・・」
プツッ・・・
ツー・・・
ツー・・・
ツー・・・
「誰?」
「稲荷神様です・・・」
雪狐は、苦笑した。
どうやら、稲荷神様はフライングしたらしい。