謎解き開始
ウイングスの国王様からもらった石板。そこにはこう文字が記されていた。
〈3 のけれどんっうやぷくまうつ〉
「どういう意味かしら?」
「さぁ……」
美衣子もパンパンも、フェアとリィも、動物トリオも頭を閃かせ、考える。
しばらくの間、ため息と諦めの声が聞こえていた。
「何で〜〜、数字の三が〜〜、頭に乗っているんだろうね〜〜。それに〜〜、他の文字と〜〜、離れているの何故だろう〜〜」
「そんなの分っからないわョ。ワンメー。ちゃんと考えなさいよ」
「リ、リース。そんな言い方ないよ。ワンメーだってちゃんと考えていると思う……よ」
「カン、あんたねェ。何でそこで声が小さくなっちゃうわけ? アタシ別に怒ってなんかいないのョ」
「そ、そうなんだ」
動物トリオが、イライラしてきたようだ。
と、その時、その時間を破るように、美衣子が叫んだ。
「分かった!!」
おっ、と仲間達が彼女を見る。
フェアとリィが、どうやるのと急かした。
美衣子は、石板の文字を指さしながら説明した。
「いい? ワンメーの言った通り、この数字の3というのがヒントだったの。フェア、この中から、烈風剣という文字を探して」
「え、えーっと。あっ、左から三番目に〈れ〉が、それからまた三番目に〈っ〉が、〈っ〉から三番目に〈ぷ〉が……。あっ、という事は……!」
「そう。みんな三個ずつ飛んでいるのよ。これを正しい文字にすると、〈烈風剣山の洞窟〉になるわけ」
「さっすが、みーこ!」
フェアとリィが感心して、彼女を褒め称える。
「そんな、ワンメーの一言がヒントになっただけだよ。それがなかったら、解けなかった」
「また謙遜して〜〜」
「ハハハ」
一気に笑いが起きる。
そんな中、パンパンがそっと呟いた。
「ところで、その山の洞窟って、何処にあるんだろう」
その一言に、一同は黙ってしまう。
しかし、ワンメーが沈黙を破った。
「心配ないよ〜〜。ボクが町の人達に〜〜、情報聞いて来るからあ〜〜」
ワンメーは、そのテンポの遅い喋り方とは裏腹に、口が達者で、情報を集めるのが上手い。ちなみに足も早い。人々は、その可愛い姿と喋り方に、油断してしまうのだろうか。
「じゃあ〜〜、ボク早速行くね〜〜」
「あっ、アタシも行くゥ」
「ぼ、ボクも……」
ワンメーに続いて、カンとリースも町の中に消えた。やはり動物トリオは、三匹一緒なのが心地いいみたいだ。
さて、取り残された美衣子達。彼女達はそこらへんにあった切り株に座って雑談していた。妖精達も空に浮いているのは疲れるらしく、美衣子とパンパンの膝の上に座らせてもらっている。
時間の流れが、なんだか早く感じる。
たった15分過ぎただけだったのに、一時間位待っていたようだ。
それだけみんな楽しみにしていた。
「お待たせ〜〜!」
ワンメーの声が聞こえて、美衣子達は立ち上がった。
遠くから走って来る三匹の姿が見える。
息が切れて上手く話せないワンメーに代わり、リースが説明する。
「あのねェ。アタシ達が仕入れてきた情報によると、山の洞窟は、ウイングス城の建っている山の裏側にあるんだってェ」
「山の裏側!?」
パンパンが聞き返す。
「うん。ウイングス城に行く時に、道が二つに分かれていたよねェ。その道に沿って行くらしいョ」
「そうなのか」
そこまで話した時、リースが険しい顔つきになる。美衣子達もそれを察知した。よほど重要な事なのだろうか。
「あのねェ。ここから大事な話。その山の洞窟だけど、沢山モンスターが棲みついているから気をつけてって」
「も、モンスター!?」
「うん。この国は、過去にダーク帝国に狙われた事があるらしくて、その時にモンスターが洞窟に棲みついたらしいョ。ううん、過去じゃなくて、今もかも。聖空間全体が、危ないって話だから」
「何だって!? それじゃダーク帝国は、聖空間もろとも支配する気なのか?」
「多分……、そうかも……」
リースはだんだん元気がなくなった。
聖空間全体が狙われているなんて、ダーク帝国とは、どれ程の規模の国なのか。
ワンメーとカンも、黙ったままだった。
「大丈夫だよみんな! そうなる前に、聖剣を集めて、ダーク帝国を倒せばいい」
ダーク帝国の巨大さに気落ちしていた一同の耳に、力強い声が響いた。
「みーこ……」
我らの救世主が、そこにはいた。
彼女の瞳は迷いも曇りもない。
「みんな、下を向いちゃ駄目だよ。まだ何も終わっていない。これからなんだから」
「みーこ、そうだね」
美衣子に励まされ、パンパン達はやる気を取り戻す。
「それじゃ、洞窟に向けて進みましょう!」
「オーッ!!」
そしてパーティーは、洞窟に向けて山を昇っていった。
ゴゴコゴゴコ……。
暗雲が立ち込める、聖地mirikoworld。ミリルークの城にいた兵士、戦士、女官一同は、不安な予感に胸を押さえながら立ち尽くしていた。
雲行きが怪しい。
ビカッ!
遠くの空に稲妻が光る。
「はっ……!」
女王美理子が何かの気配を感じ、城の外へ飛び出した。
「あっ、女王様」
慌てて他の者も後を追う。
ビカッ! ビカッ!
雷の音があちこちで鳴り響いていた。
と、突然ーー、
ゴゴコゴゴコ。
地響きが起こり、地面がぱっくりと割れた。
長い線を描くように、真っ直ぐに伸びて行く。
一同は間一髪の所で避けた。
邪悪で大きな気を感じる。
周りはダーク帝国の兵士、邪兵士で囲まれていた。
「だ、誰っ!」
美理子が叫ぶ。
稲妻の光が一人の男の姿を照らした。
「あなたは……?」
「フフフフフフ」
うっすらと笑みを浮かべ、その男は近づいて来た。
少しずつ姿が見える。
真ん中分けのその髪に、軍服っぽい青い服が良く似合う。そして、その高貴さを引き立たせるマント。手には細い二本の剣。黒き闇を宿したその瞳は、どこか悲しげで、でも殺気に満ちていた。
「フハハハハハ」
高笑いを上げながらその男は言った。
「俺はダーク帝国国王、アルビネット・サタンの息子、王子アージェス・サタン!」
「王子……」
自分と同じ位の年の美少年の言葉に、美理子は戸惑った。
「mirikoworldの女王美理子。大人しくこの地を我がダーク帝国に委ねよ!」
「な、何ですって!?」
美理子は戦慄を覚えた。やはりサイーダ様の言った通り、ダーク帝国はmirikoworldを狙って来たのだ。
アージェスは話を続けようとする。
美理子は、彼の言葉に惑わされないよう、強い気持ちで彼を見つめていた。