信じる力
美衣子の心の強さと合わせて、ファイヤーストーンの輝きが強くなっていく。
(諦めない。わたしは絶対、諦めないよ)
その光は回りの戦士達を包み、アルビネットの電撃の威力を弱めた。
「み、みーこ……」
弱々しい声でパンパンが言う。
美衣子は笑って見せた。
「パンパン。わたしは諦めないよ。大切な人がいるから。守りたい物があるから。だからみんな、わたしに力を貸して!」
「うう……」
苦しみながらも、戦士達は気を高めていく。
美衣子の思いと一つになった。
「何っ!?」
アルビネットの電撃を、ファイヤーストーンの輝きが打ち消した。戦士達は荒い息を吐きながら座り込む。ただアルビネットも、電撃が消されるとは予想もしていなかったらしく、呆然としていた。
何故、傷つきながらも、ここまで戦えるのか分からない。
巨大な闇の力の前では、何もできないというのに。
「むむう……」
アルビネットは眉間にシワを寄せる。
黒い散弾銃を構え、発射準備に入った。
分からないなら、攻撃するしかない。
「止めろ! 父上!」
邪兵士に押さえられているアージェスが叫ぶ。
アルビネットは構うことなく、武器を美衣子達に向けた。
今、彼女達は動く事ができない。
「この距離で撃ったら、どうなるかな?」
カチャッ。
戦士達は目を見開く。
その時、
「ウオオオオオッ!」
アージェスが全力で邪兵士を退けた。
剣を構える。
アルビネットを止めるのは、自分しかいない。
「ブラッディ・クロス!」
渾身の十字架が、アルビネットに炸裂した。
アルビネットは銃を放つ事ができず倒れる。
「うう……」
頭を起こし見上げると、剣を携え歩いて来るアージェスの姿が見える。
怒っているのか、泣いているのか、複雑な表情をしていた。
「父上、これ以上、美理子達を傷つけないでくれ。俺も、父上を傷つけたくはない」
「アージェス……」
「父上は、闇に囚われているだけだ。俺が解放してもらったように、今度は父上を助けたい」
「アージェス、人は裏切るものだ。わたしは散々それを思い知った」
「けど人には、思いやる心もある。父上だって、それを知っているはずだ!」
「うっ」
「父上、俺はここにいる。側にいるよ。この者達も、父上を助ける為にきっと力を貸してくれる」
「そうか、だがな……!」
「えっ!?」
ポイッ!
アージェスは、不意に立ち上がったアルビネットに片腕を掴まれ、投げられる。
顔面を打つ直前に上手くガードした。
振り向くと、アルビネットが銃を構えている。
散弾銃じゃない。普通の銃だ。
アージェスは弾丸を剣で受け止めた。
その瞬間爆発が起きる。
アージェスは飛ばされ、後ろの壁にぶつかった。
「痛てて……」
アルビネットが向かって来るのが分かる。
その前に立たないと、と思ったのだが、
クラッ。
頭がふらふらする。
まさか、壁にぶつかった時、頭を打ったのか。
「アージェス?」
アルビネットの顔は、父親のそれだ。心配する眼差しで息子を見ている。
「あ……」
何か喋りたいけど、言葉がでない。
アルビネットは、息子の体を横にする。
「まさか、脳震盪か? 爆発のショックで、頭がふらふらしたか?」
「あ、うん……」
「そうか。手加減したんだがな。とにかく、お前はそのまま横になっていろ。その間にわたしが奴らを倒す」
「父上、止め……」
「下手に体を動かすな。いいな?」
最後に睨みをきかせて、アルビネットは美理子達の方に向かう。アージェスは手を伸ばすものの、目の前が真っ暗になり意識が途切れた。
「アージェス!」
美理子が叫ぶ。
彼が時間を稼いでくれなかったら、電撃のダメージを回復できなかったかもしれない。
その彼が倒れた以上、アルビネットを止めるのは自分たちの役目だ。
戦士達は意を決してアルビネットの回りを囲む。
「ほう、やるか」
「ええ。アージェスの思いは、わたし達が叶える!」
「ならば、来い!」
ダッ。
仕掛けたのはパンパン&フェア、リィ。うさちゃんだ。
ラブリーダンシングとスターライトイリュージョンが迫る。
アルビネットはバリアーで防いだ。
と、そこへ、
「バリアーを壊させてもらうわ! いくわよ、みんな!」
「うん、みーこ!」
「久々に登場。三魔法合体、ファイヤーハリケーンアタック!」
美衣子と美理子、小人達の合体技がバリアーに命中した。
バリアーは徐々にヒビが入り、パキンと割れた。
「何っ!?」
後はバラバラと崩れるだけ。
少し威力は落ちたものの、ファイヤーハリケーンアタックはそのままアルビネットに当たった。
「ぐっ」
後ろに引きずられるが、倒れず耐える。
綾乃の鞭も狙っていた。
「ウェイビーストーム!」
「グハッ……!」
床を転がる。
戦士達が見つめていた。
「何だ? こんな姿のわたしを嘲笑いに来たのか?」
美理子が首を振った。
「アルビネット。わたし達はあなたの過去を知りませんでした。ただ、暗い闇の王としか思っていませんでした。しかし、アージェスが語ってくれた事が本当だとしたら、わたし達はあなたを誤解していた事になります」
「それで? 真実を知ったからと言って何になるというのだ」
「アージェスはあなたを父親として慕っています。その絆は、とても深いものでしょう。ですから、わたしも彼の願いを叶えたいと思っています。彼を好きになった者として」
「何?」
「アージェスはあなたに、優しい王様に戻って欲しいと思っています。わたし達も、あなたならそれができると信じています。光は、闇に落ちる事があるけれど、闇の中で、光は輝く事もできるのです。だから……!」
美理子の優しさのオーラがアルビネットを包んでいく。その光の中で、アルビネットは昔を思い出していた。
(優しい王様か。そう言えば、爺にそんな事を言った事があったな)
穏やかな顔で、アルビネットは過去を回想していた。




