魔城突入
道を塞ぎ襲いかかる邪兵士の数、およそ百人あまり。その中を、美衣子達は必殺技を使いながら突破して行った。
「アイソトニックブリザード!」
「ライディンスピリッツ!」
「ミラクルハリケーン!」
「ラブリー・ダンシング」
「スターライトイリュージョン!」
レナも綾乃も頑張る。
特に綾乃には強い意志があった。
ビジェの墓前に誓ったんだ。
必ず、奴隷の人々を解放して、自由にしてみせると。
その中にはビジェの家族もいるはず。
娘が城の兵士になると知った時、驚きながらも、喜んでくれた。
デス隊の例もあったから、奴隷の自分達でも、努力すれば認められるんだと思ったんだろう。
けど、ビジェは死んだ。
アルビネットに利用されて。
だから、彼女の家族だけでも救いたい。
それがビジェの為に、最後にできる事だから。
綾乃がそんな風に、妹分の為に動いているのと同じように、美理子の中にも、ある思いが浮かんでいた。
アージェスに会いたい。
自分達を守る為、無理やりアルビネットを連れて、ダーク帝国へと帰って行ったアージェス。
彼がいなければ、自分達は死んでいた。
そのお礼も兼ねて、今度こそ闇から、アージェスを解放するんだ。
好きになった人を助けたい。
しかし、そんな美理子や綾乃の思いとは裏腹に、倒しても倒しても邪兵士はまた出てくる。
「どうすんのォ。このままじゃきりがないわよォ」
「こうなったら〜、カン〜、リース〜、あれを使うよ〜〜」
「分かったよ。ワンメー」
動物トリオのワンメー、カン、リースは、合体してシルバーウルフになる気だ。
三匹の体が光り出す。
が、それを止めたのはうさちゃんだった。
「待って三匹とも! その技はあなた達の体力と精神力を使うんでしょう。だったら、今ここで使うより、いざという場面で合体した方がいい」
うさちゃんの言葉に、三匹は集中するのを止めた。
綾乃が敵の騎馬隊を発見する。
「みんな! 敵の狙いはわたし達の体力を消耗させること。馬を奪って、一気に魔城に突入しましょう!」
綾乃の声に頷き、騎馬隊に突進した。
馬を傷つけないように、兵士にだけ技を当て、馬から落とす。
馬の数が足りなかったので、みんなで相乗りした。
ジースとアヤとワンメー。うさちゃんと美理子とカンとリース。パンパンと美衣子と妖精達。綾乃と小人達、そしてレナという具合に。
「みんな、行くわよ!」
綾乃の馬を先頭に、四頭の馬が駆ける。
邪兵士が攻撃してくるが、構っている暇はない。
ダーク帝国で戦闘用に訓練された馬は、普通の馬より大きく丈夫で、人が二人くらい乗っても平気だ。
魔城に行かせまいと、邪兵士が重なって壁を作った。
それでも馬は進む。
綾乃が指示した。
「みんな、手綱をちゃんと握って。馬の脇腹を軽く蹴って。あの壁を飛び越すわよ」
綾乃の操る馬は、軽々と邪兵士を飛び越えた。
「みーこ。僕の体に手を回して。ちゃんと掴まっていて」
パンパンが後ろに乗っている美衣子を気にする。
美衣子がパンパンの体をギュッと掴んだ。
体が密着する。
フェアとリィは、美衣子の服の中に隠れた。
タンッ。
パンパンが手綱を握り、馬を軽く刺激する。
邪兵士の頭上を飛び超え、華麗に着地した。
ジースもアヤを気遣いながら壁を超える。
彼らが飛び超えた所で、邪兵士はもっと壁を高くしようと、仲間の背中をよじ登る。
そこで美衣子の魔法。
「フレィムガン!」
足元に当たり、邪兵士の壁は崩れる。
おかげでうさちゃん、美理子、レナは楽々と邪兵士を超える事ができた。
馬は魔城に向かい、走る。
倒れた邪兵士もすぐさま立ち上がり、戦士達の後を追いかけた。
タッタッタ……。
スピードを上げて馬は走る。
魔城の門が見えてきた。
綾乃達が馬に乗って来たのを見て、門番は慌てて門を閉めようとする。
「ウェイビーストーム!」
馬に乗ったまま、綾乃の鞭が門番に炸裂する。
なんて器用な女だ。
さすがはダーク帝国で、秘書にまで上り詰めた人。馬の扱いとか、戦闘の仕方とか、かなり努力したんだろう。
半分開いたままの門を、五頭の馬が駆け抜ける。
あとは魔城に入るのみ。
戦士達は馬を降りて、城の扉を思い切り引っ張った。
鍵が掛けられているようだ。
開かない。
仕方なく、綾乃が窓が開いていないか調べようとした時、
ガチャン。
扉が開いた。
アルビネットが開けてくれたのか。
招き入れられたという感じだ。
戦士達は入り口に立ち、深呼吸した。
心を落ち着ける。
そして、魔城に足を踏み入れた。
ギイイッ。
思ったとおり、扉は自動で閉まる。
もう後戻りはできない。
外に取り残された邪兵士は、闇さえあればどこからでも入ってこられる。
つまり、扉が閉まっていても関係ない。
暗い城内に、明かりが灯された。
アルビネットが誘っている。
しかし、戦士達はまず、奴隷の人々を解放する方を選んだ。
上に昇る階段が見える。
美衣子は綾乃の意見を聞いてみた。
「綾乃さん。これから何処に向かえばいいの?」
綾乃は少し考えて答えを出した。
「そうね。アルビネットがわたし達を誘っているのは確実。でも、そこには罠があるかもしれない。それより、奴隷の人々が大勢隠れていそうな場所は……」
「何処なの?」
「この城の中だと、やっぱり地下かな」
「じゃあ、早く地下に向かいましょう!」
「ええ、こっちよ」
上に昇る階段の裏側に回る。
そこには一ヶ所だけ、色の違う床があった。
その床を横にスライドすると、地下への階段が現れた。
「行きましょう!」
階段に身を踊らせる。
急ぎ足で駆け降りた。
広いスペースに出た。
天井は案外高い。
中にいた人々が一斉にこっちを見た。
全員疲れたような目で、痩せて頬はこけ、服は汚れていた。
体に傷を負っている者もいる。
綾乃が人々の中央に歩み出た。
「綾乃様だ!」
「綾乃様!」
ほとんどの人が綾乃を知っていた。
国王アルビネットの秘書として、何度か奴隷達の村に足を運んだ事がある。
そして、彼女がダーク帝国を裏切り、美衣子達と一緒にmirikoworldに行った事も、奴隷達は知っている。
だから、綾乃が自分たちを救いに来たと直感した。
だが、彼らは叫ぶ。
「綾乃様! 逃げて下さい! 我々の事はいいのです」
「そうです。そこにいるmirikoworldの戦士達と一緒に、早く!」
人々のあまりの叫び様に、綾乃は戸惑う。
「どうしたのです皆さん。わたしは、あなた方を救いに……」
「良いのです。我々はもう……」
その時、アヤが壁に固定されているある物を見つけた。
ランプが赤く光っている。
「ま、まさか……」
「時限爆弾!」
戦士達に動揺が走った。
さらに、階段から邪兵士がぞくぞく降りてくる。
アルビネットの声が聞こえた。
「綾乃。やはりお前は地下へ降りたな」
「アルビネット。ここに爆弾を仕込んだのは、あなたの仕業ですか。奴隷の人々を使って、わたし達を殺すように!」
「そう。その者達を城に呼んだのは、お前達をおびきだすオトリだ。これだけの人数を隠すには、地下のこのスペースしかないからな。必ず、地下に降りると踏んだぞ」
「くっ。わたし達は、罠に引っかかったのですね」
「そうだ。上へ昇る階段は、邪兵士が押さえている。お前達が助かるには、30分以内に、邪兵士を全て倒して逃げるか、爆弾を解体するしかない。ま、せいぜい足掻くのだな」
「30分……」
時間がない。
美衣子達は人々を部屋の隅に集めて、邪兵士の攻撃が当たらないようにした。
自分たちが前に出て、守る。
だって、残念ながら、誰も解体のやり方を知らないから。
人々は、震えながら戦いを見守っていた。
勇者達に、命と運命を託すしかない。
こんな不当な扱いを受けるなら、ダーク帝国なんて、出て行きたかった。
最初は、闇に惹かれて自らこの国に来たのに、わがままだって事は分かっている。が、もう絶えられない。
だから。
戦士達の為に、人々は祈った。




