レナに会いに
悲しみの大地。
戦いで死んだたくさんの人々が眠るお墓のある場所。
そこに新しい墓が建てられていた。
先ほどまでそこで祈っていた人は、美理子達の到着を前に道を開けてくれた。
大勢の人が訪れたのだろう。
花でお墓が埋め尽くされていた。
水仙人の墓。
彼とサイーダの墓は、他の人達の魂を見守るように大地の真ん中に建てられていた。
一般の墓よりサイズは大きめ。
これは人々も納得している。
ダークキングにより国が傷ついた時、共に復興の為努力してくれた二人を、国民は今も尊敬していた。
その思いは受け継がれている。
美理子達に。
「水仙人様、サイーダ様……」
美衣子が、水仙人愛用の杖を墓に供える。
サイーダの墓には花束を。
「わたし達はこれから、ライトニングフィールドの神官の下に向かい、聖剣の事について聞いて来ます。それから、魔空間に行きます。ですから、見守っていて下さい」
戦士達が手を合わせる。
きっと二人は、空の上から見ていてくれている。
そう思うと、勇気が湧いてきた。
ミリルーク城に戻る。
広場では、兵士達が旅の小舟を準備して待っていてくれた。
噂を聞きつけた人々も、女王美理子と仲間達の旅立ちを見送ろうと、続々と集まって来る。
「お帰りなさいませ、女王様」
「ただいま。これが、小舟?」
まじまじと、小舟を見てみる。
パンパン達が聖剣探しに行った時より、大きくなっていた。
内装も変わっている。
驚いたのは、鍛練場とお風呂ができた事だ。
「水を貯めるタンクを増やしましたので、お風呂もシャワーも使えますよ」
「今まで、シャワーしかなかったから、助かるわ」
「女王様達の旅が、少しでも快適に過ごせますように、我々も全力を尽くします」
「ありがとう」
美理子の微笑みに、兵士達は赤くなって照れた。
美しい……。
それでも一人が気を取り直し、咳払いをすると、他のみんなも我に返った。
「皆さまのお荷物は、中に入れてあります。いつでも、ご出発の準備はできていますよ」
「そう。いろいろとありがとね。じゃあみんな、行きましょう!」
戦士達は小舟に乗り込む。
小舟というより、この大きさじゃ立派な船だ。
兵士達の隊長が言った。
「全員、女王様達の旅の無事を祈って、敬礼!」
手を振る人々と、敬礼する兵士達に見送られ、美衣子達は旅立って行った。
船は空高く、帆に風を受け進む。
雨はもう、すっかり上がっていた。
「天気が良くなって良かったね」
と、パンパンが言う。
「そうね」
と窓から外を眺めていた美衣子が答えた。
「それよりさ、これから会う神官の女の子の事を聞かせてよ」
「うん、オレも聞きたい」
「ボクも」
うさちゃんとジェルとマーキスだ。
美理子やジース、アヤなど城に残っていたメンバーも興味津々だ。
「えっとね。名前はレナ。年は分からないけど、若く見えたよ。前髪パッツンで、黒髪で長かった。目が、大きかったよね」
「うんうん、それから?」
「それからねェ、羽の先端に針がついたものを使って戦ってたよォ。何て言う武器だろう。聞きそびれちゃった」
美衣子とリースが説明する。
美理子達にも、彼女の特徴が伝わったようだ。
「まあ、何にせよ、会って見れば分かるわよォ。大丈夫。そんな悪い子じゃないからァ」
「そうね」
美理子達は期待している。
見た事ない世界に行ける事。
新しい出会いがある事。
話を聞いただけじゃ分からない。
船はウイングスの上空を飛んでいた。
「ここが、アージェスが生まれた場所……」
美理子が感慨深げに呟く。
それはちょっとした美衣子達の思いやりだった。
ライトニングフィールドに行く前に、ウイングスとグランバールの上空を経由して行くようにと、インプットしておいたのだ。
自分達の見た景色を、美理子達にも体験して欲しかったから。
「良かったら、甲板に行ってみたら? その方が良く見えるんじゃないかな」
フェアのその言葉に、ジース達は美理子の手を引いて甲板に上がって行った。
後に残った美衣子達はクスクス笑う。
ああでも言わないと、美理子が遠慮して、景色を良く眺めようとしないから。
女王の立場も分かる。
しかし、その立場に囚われて、自分の気持ちを押さえつけてしまっては、可哀想だと思ったから。
ざわざわ。
美理子達が戻って来る。
うさちゃんが興奮気味に言った。
「聞いてよ。美理子ったら手すりから身を乗り出して、思わず落ちそうになったのよ」
「ええーー!」
それに反論したのは当の本人だ。
「落ちそうになってないよ。ちょっと顔を出しただけ」
「でも、嬉しかったんだよね」
「う、うん」
「あ、大丈夫よみーこ。そんな顔しないで。うさちゃんは、ちょっと大袈裟に言っただけ」
「そう。いざとなったら、俺とアヤが側にいたしね」
呆気に取られたような、複雑な顔をした美衣子達に、ジースとアヤのフォローが入った。
「ごめんね。みーこ、パンパン、それにその他」
「もう。うさちゃん、冗談きついよ。僕ら、焦っちゃったじゃん」
「それに、アタシ達はその他じゃないわョ」
「アハハハハハ」
一気に笑いのツボに入る。
(良かったね。美理子)
嬉しそうな親友の姿に、美衣子も微笑んだ。
それから数日、戦士達は鍛練場に行ったり、部屋でくつろいだり、お風呂に入ったり、それぞれ快適な時間を過ごした。
改装された船は居心地がいい。
時折、美理子が水晶玉でmirikoworldの様子を見るが、そちらも変わりはないようだ。
この水晶玉は、サイーダから譲り受けたもの。美理子は毎日タオルで拭き、大切に使っていた。
そして、いよいよ目的の大地が見えてきた。
相変わらず、光に包まれた美しい大地だ。
事前にパンパン達から、この大地の引力が凄いと言う事を聞いていたメンバーは、思いつくものに掴まった。
ガクン。
急降下が始まった。
力を入れて掴まっていないと、体が浮きそうだ。
初めての美理子、うさちゃんは悲鳴を上げている。
フワッ。
やがてスピードが緩み、船はゆっくりと到着した。
一行は船から降りる。
「美衣子さん!」
レナが出迎えに出てくれていた。
美衣子、パンパン、ワンメー、カン、リース。フェア、リィが彼女の下に駆け寄る。
「久しぶり、レナ。元気そうで何よりだよ」
「ええ。美衣子さん達も。それから」
レナは美理子の前に踊り出て、一礼する。
「ようこそいらっしゃいました。mirikoworld女王、美理子様。あなたとお目にかかれる日を、楽しみにしておりました」
美理子は微笑み、レナに握手を求める。
「はじめまして、レナ。以前みーこ達があなたのお世話になったそうで、お礼を言わせてもらうわね。ありがとう」
「いえ。わたしは自分の役目を果たしただけです」
「それと、これからもよろしくね。仲良くしていきましょう」
「はい!」
レナは立ち話も何だからと、美理子達を神殿へと案内した。
美理子達は笑ってついて行く。
良かった。
美衣子が言っていたみたいに、いい子のようだ。
それにしても、
「本当に、光の国なんだな」
ジースが言う。
美理子達も同じ事を考えていた。
そこにパンパンの説明が入る。
「そう。僕らも最初はそう思った。けど、突然霧が晴れるみたいに神殿が現れるんだ。ほら、ね」
「あ……」
目の前に神殿が現れた。
入り口でレナが手招きする。
「さあ皆さん、中にお入り下さいませ」
戦士達は、神殿の中に入った。




