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闇の王、襲来

 ミリルーク城、大広間。

 牢から戻って来た水仙人から、アージェスとデス隊との悲しいエピソードを聞いた美理子達。

 知らなかったとはいえ、シルバーウルフに合体してメンバーの二人を倒してしまったワンメー達動物トリオは、悪い事しちゃったかなという顔だった。

 綾乃はそんなワンメー達を慰める。


「ワンメー、カン、リース。あなた達が悔やむ事はないわ。それはきっと仕方がなかった事。いくら外の世界に憧れていたとしても、悪の帝国の一員として、この国を侵略しようとした事は事実なの。彼らも、それなりの覚悟は持っていたはず。もしかしたら、死ぬ事で罪を償おうとしていたのかも」

「そんな事〜〜、逃げたと同じだよ〜〜」

「そうよォ」

「そうね。けど、国王アルビネットに、魔空間の闇に、そこまで追い込まれていたとしたらどう? 自由になる方法が、それしかなかったとしたら?」

「それは……」

「わたしも、美衣子ちゃんに救ってもらうまでは、そうだった。アルビネットの言う事、やっている事が、正しいと思っていたの。そう考えると、アージェスもずっと苦しかったのかも」

「アージェス……」


 美理子がアージェスの心中を思い泣き顔になる。

 そんな彼女に、綾乃は言う。


「美理子様。確かに、アージェスとデス隊の間には、わたし達も近づけない程、強い絆がありました。しかし、彼らがいなくなってしまった今、アージェスの心を支えるのは、あなたしかいないんじゃないかと、わたしは思います」

「綾乃さん……」

「わしもそう思うぞ美理子。ただし、それには彼の決断が必要じゃ。今牢の中で迷っている彼が、再びダーク帝国に帰るか、それとも離れるか、それによって答えが決まる」

「はい。だからわたし達は、ここで様子を見ているんですよね」

「そうじゃ。じゃが、アルビネットにも警戒しないといけないぞ。いつ攻めて来るか分からんのでな」

「はい!」


 水仙人の言葉に、身を引き締める。

 アルビネットは、激怒しているだろう。

 怒った国王は、残酷で、容赦なく、何をするか分からない。綾乃から聞いていたものの、先ほどの朱利架達の小さい時の話を聞き、ますます恐怖を感じた。

 アージェスを牢に閉じ込めたという事は、人質としての意味もある。それでアルビネットの態度がどう変わるか分からない。もしかしたら、綾乃と同じように、裏切り者と認識しているかも。

 もし、そうなったら。

 美理子は右手の拳を握る。

 美衣子が話しかけた。


「大丈夫よ。アージェスの闇は、わたし達が消してあげましょう。そして、彼を守るわ」

「みーこ……」


 美理子には友情が嬉しかった。

 彼女が側にいるだけで、心強い。

 その時だった。

 牢を見張っていた兵士が部屋に飛び込んで来たのは。


「大変です! 王子アージェス・サタンが、脱出しました!」

「ええっ!?」


 美理子達が急いで牢に向かうと、すでにもぬけの殻。天井には、穴が空いていた。


「どうやら、あの天井の穴から逃げ出したらしいな」


 牢の中をよく観察したジースが言う。

 兵士が説明した。


「はい……。何か物音がしたので、牢に近づいてみると、すでに穴は空けられていました。自分は急いで鉄格子の扉を開こうとしたのですが、アージェスは笑いながら飛び上がり、穴の中へ消えました」

「それでお前さん、怪我はしとらんのか?」

「はい。何もされませんでした」

「ふむ。どうやらアージェスは、傷つける気はないようじゃ。だが、よもや逃げ出すとはの」

「水仙人様、彼は……」

「うむ。確かこの上は一階の通路じゃったな。目的は多分自分の剣じゃ。みんな、アージェスが出て来そうな場所を押さえるのじゃ!」

「はい!」


 各自バラバラに思い思いの場所に動き出す。

 水仙人と見張りの兵士だけ、その場に残った。


「ん? そう言えばこの牢の天井と、一階の通路の間には隙間がなかったかの」

「はい。狭い隙間ですが、頭を低くすれば動けるでしょう。敵が攻めて来た時の、隠し通路です。そしてその隙間は、隣の書庫に繋がっています」

「ん、もしかして……」

「水仙人様?」


 水仙人は書庫に向かった。

 確信はなかったが、アージェスがそこに現れる気がした。

 扉を開けて明かりを点ける。

 男の影がしゃがみ込んだ。


「そこで何をしておる。アージェス」


 水仙人に見つかり、隠れられなかったアージェスは、観念して立った。


「まだ怪我も治ってないじゃろう。牢の中で大人しくしていると思ったんじゃがな」


 ため息をつく水仙人に、アージェスが言う。


「あんた達には感謝しているさ。手当てもしてくれて。ただ、もうすぐ父上が来るんだろう。そうなる前に、俺はこの国から姿を消す」

「どういう事じゃ?」

「父上はきっと、俺の中に残っている闇を利用して、俺をあんた達と戦わせるつもりだ。そうなったら、俺はもう、逃れられない」

「それが、お前さんの答えか?」

「ああ。それと、俺の剣を返してくれ」

「わしらと戦う気はないのに、か?」

「自分の身を守る道具くらい、使わせてくれ」


 じっとお互いの顔を見つめる。

 嘘はついていない。

 アージェスの瞳が、そう語っていた。


 カチャッ。

 扉が開く音。


「あなたの剣は、ここにあるわ」


 剣を抱えて書庫に入って来たのは美理子だった。


「美理子。その剣を返してくれるのか?」

「ええアージェス。だけど、その前にわたしの願いを聞いて。わたしはあなたに、ここに残って欲しい」

「何!?」

「残って、わたし達と一緒に戦って欲しい。わたしの願いは、それだけよ」

「馬鹿な……」


 アージェスは驚愕した。

 自分がここに残れば、アルビネットによって全員殺されてしまうかもしれない。

 アージェス自身も、どうなるか分からないのだ。


「正気か? もし父上がここに来れば……!」


 アージェスの不安をかき消すように、美理子が優しく笑う。


「アルビネットの恐怖については、綾乃さんからだいたいの事は聞いてる。だからこそ、あなたの事を守りたいの。あなたを、アルビネットの道具には、させない」

「美理子……」

「彼女の言う事は本当よ。わたし達も、あなたの中の闇を消してあげたいの」


 入り口に美衣子以下、戦士全員が揃っていた。

 みんな、水仙人と同じように、アージェスがここにいるのではないかと、一階から駆けつけて来たのだ。


「ちっ。ぞろぞろと現れて……」

「アージェス」


 美理子がアージェスに近づく。


「みんな、わたしと同じように、あなたを心配してくれてるの。それにわたしは、あなたと離れたくない」

「え?」

「あなたの事が、好き……」


 突然の美理子の告白だった。

 アージェスは固まって動けなくなる。

 彼女はこの国の女王。しかし今は、ただの女として、アージェスの事を思ってくれていた。

 その事はアージェスにも伝わっている。

 彼はフッと笑った。

 諦めとも読める表情だが、その笑顔は優しい。


「ありがとう美理子。お前の気持ちは嬉しい。だからこそ、お前も、お前の仲間も、殺させる訳にはいかないんだ」

「あ、アージェス……」


 美理子の手から剣を受け取り、書庫から出て行こうとする。


「待ってアージェス!」


 美理子がアージェスの腕を掴んだ。


「離してくれ、美理子。全員死ぬぞ!」

「守るから! あなたの事も、みんなの事も、必ず守るから!」

「あ……」


 涙ぐんでいる美理子の中に、母の顔が重なる。

 その時ーー、

 アージェスの中の闇が、反応した。

 ミリルーク城の周りを、黒い闇が囲んで行く。

 ついに、アルビネットが乗り込んで来たのだ。


「mirikoworldの者共! 我が息子を、返して貰おう。今すぐ出て来い!」


 その声から察するに、相当な怒りを感じる。

 アージェスは、必死に闇を押さえようとしている。


「アージェス! 腹に力を入れながら、ゆっくり呼吸をするのじゃ!」


 水仙人の言う通りにやってみると、闇が少し治まった気がする。


「いい子じゃ。さあみんな、アージェスを城の中に隠し、わしらは外に出よう。アルビネットを、出迎えてやるのじゃ!」

「はい!」

「待て、美理子……!」


 アージェスが美理子を心配する。

 美理子は思い切り笑って見せた。


「大丈夫よアージェス。あなたは安心して城の中で待っていて」

「しかし……」

「みんなもいるから」


 美理子は戦士達を連れ、城の外へ走る。

 アージェスは、兵士達に連れて行かれた。

 外は小降りの雨になっている。

 アルビネットと邪兵士が並んで待っていた。


「お前が女王か。息子はどうした?」


 アルビネットが鋭い眼光で美理子を睨む。

 怯む事なく、美理子が言った。


「ダーク帝国国王アルビネット。アージェスは、あなたの道具ではありません。わたし達は、彼を守ると決めました。よって、この場には連れて来ませんでした」

「ふざけるな!」


 アルビネットの邪悪な気が、美理子達を吹き飛ばす。


「お前はどうあってもアージェスを渡さぬつもりか。ならば、死ぬがいい!」


 美理子達は立ち上がり、構えた。

 邪兵士達も命を待つ。

 聖地ミリルークを、緊張が包んだ。









 



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