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集う仲間達

 サイーダが息を引き取ってから数日後。

 聖地ミリルークには、あの懐かしい顔ぶれが勢揃いしていた。

 ダークキング率いる黒魔族との決戦の後、mirikoworldの大地に散っていた戦士達が、女王サイーダの死と、新たな戦いの始まりを知って戻ってきたのだ。

 ミリルーク城の門の前に、みんなが並んでいる。

 一同、サイーダ様の死を悼み、手を合わせた。

 しばらくの沈黙の後、目を開ける。


 みんな、それぞれ変わっていた。

 ジースとアヤは結婚して、今は一人の子供を持つ父と母になっているし、パンパンと妖精達は新しい持ち歌と音楽を用意していた。

 ワンメー、カン、リースは少し大きくなっているし、小人達もカッコ良くなっていた。そしてうさちゃんは、前よりも女性っぽく、色っぽくなっている。

 そんな近況を報告しあっていると、水仙人が出て来た。


「久しぶりじゃなみんな。しばらく見ないうちに、ずいぶんと成長しておるの」


 まるで、お爺さんが久しぶりに会った孫に話しかけているような口調だ。

 サイーダと水仙人の事実を知った戦士達は、気を使っていたのだが、


「どうした? 遠慮する事など無いぞ。サイーダ様の事なら気を使うでない。わしも、覚悟していた事なのだから」


 そう言って水仙人は笑った。安心したジースは言う。


「良かった。落ち込んでいるのかと思っていましたから、お元気そうで何よりです。俺も、久しぶりにみんなに会えて嬉しいです」

「そうじゃな。けどジース。お前さん子持ちになって剣の腕は落ちていないかのう? 息子にも、教えるつもりかの? アヤと二人で……」


 からかうような水仙人の言葉に、ジースとアヤは驚いて顔を見合せた。で、少し苦笑しながら答える。


「大丈夫です。子育ての間に、ちゃんと稽古していましたから。子供の将来の事は、あいつがやりたいと言ったら、やらせるつもりです。それに、水仙人様もお子さまが生まれた後に、戦っておられたと聞きましたが」

「そうじゃな。まぁ、お前さん達の子供じゃ。きっと立派な剣士になるじゃろう」

「ハハハハハハ……」


 そんな水仙人とジースのやり取りを、仲間達は和やかな雰囲気で見ていた。


 やがて、城の中からたくさんの兵士や女官達が出て来て、二列に並ぶ。

 ファンファーレが鳴り響き、緊張が走った。


「女王様が、おいでになられました」


 一番最前列にいた兵士が叫ぶ。

 その直後、どっと押し寄せる歓声。

 ジース達もそちらを見た。


 城の入り口に一人のシルエット。

 髪は腰まで伸ばしている、サラサラのストレートヘア。白いドレスに花の刺繍があしらわれている。袖口はふわふわなフリルがついている。首にはパールのネックレス。それが彼女の美しさをより引き立てていた。そして注目は頭の上に被せられた金色に輝く(かんむり)

 サイーダから力を受け継いだ美理子が、新女王として、mirikoworldのみんなに認められたのだ。


 美理子は真っ直ぐ、戦士達の下へゆっくりと歩み出る。

 ジース達も、今までの彼女にはなかった高貴さを感じていた。


「久しぶりね。みんな……」


 その声からも、女王としての気高さと温かさが分かる。


「立派になったね。美理子」


 事前に美理子から、自分は女王になったけど今までと同じように仲間として過ごしたいと言われていた戦士達は、敬語は使わなかった。


「ええ。みんなも、ぐんと成長したみたい」

「それはそうさ」


 と、パンパンが言う。


「あの戦いから、もう一年経っているんだから」

「そうね……」


 あれから、もう一年か。懐かしい。日がたつのは早いなと美理子は感じていた。

 その時間を破るように水仙人が言う。


「さあ、女王。感激に浸るのはこれ位にして、早く人間界にいるみーこを、こちらの世界に呼びよせないと」


 美衣子、と聞いて美理子の目が真剣になる。


「そうね。わたし達だけじゃ、この戦いは勝てない。彼女の、救世主の力を借りないと……」


 そう言うと美理子は、一人の女官を側に呼んだ。


「何でしょうか。女王様」

「あなたにお願いがあるの。人間界へ向かって、みーこを呼んで来て欲しいの」

「ええっ!?」


 女官は驚いていた。まさか自分にそのような役目がくるなんて。

 心配する女官に美理子は笑って言う。


「大丈夫よ。人間界につながるゲートは、わたしが開くから。わたしは女王として、ここを離れる訳にいきません。だから、あなたに頼みます。行ってくれますか?」

「は、はい」

「では、お願いね」


 女官の答えを聞き、美理子は両手に気を溜めて、目の前に軽く放った。


 ポン。


 縦三メートル、横一メートルの卵型のゲートが現れた。

 中は暗く、何も見えない。

 が、周りから優しい光が漏れている。


「じゃ、頼んだわよ」

「はい、必ず美衣子殿を連れて戻ります!」


 女官はゲートに飛び込んだ。


「みーこ……」


 後に残った者達は、彼女の到着を待ちながら、城の中で時間(とき)を過ごしていた。



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