光の国到着
美衣子達が大地の国グランバールの地を後にしてから、はや二日。簡単に行けた、というか予定より早く着いた前の二つの国と違って、目指す光の国ライトニングフィールドは、なかなか見つからなかった。
ただ旅の小舟に乗っているだけの一行でさえ、疲れ始めていた。
「一体、どれくらい飛ぶんだ?」
パンパンが囁く。
美衣子達も分からず、途方にくれていた。
「今頃〜〜、mirikoworldのみんなは〜〜、何してるんだろうねぇ〜〜」
黙っていたワンメーが急に口を開いた。
「そうねぇ」
リースが考え込む。
「ダーク帝国の奴らに襲われたっていっても、もぉ倒しちゃってるわョ、きっと。ジース達もいるんだし。今頃、城の中で休んでるわョ」
「そうかなあ〜? そうだと〜〜、いいんだけど〜〜」
「そうョ。ワンメー。そんなに考え込まなくたっていいのに。まったく、心配し過ぎョ」
「そうだねぇ〜〜」
このワンメーとリースのやり取りに、美衣子達は吹き出してしまった。だって、まるでリースが、ワンメーの事を怒っているように見えたから。
「な、何だよ〜〜。みんな〜。笑わないでよォ〜」
なんてワンメーは言うが、美衣子達の笑いは止まらない。
クスクスクスクス。
アハハハハハ。
まるで雲まで突き刺すような、高らかな笑い声が聞こえる。
おかげで、さっきまでの疲れも吹き飛んだみたいだ。
旅の小舟は障害物もない空の上を、風を切って飛んで行く。
頬に当たる風が気持ちいい。
ビュッ。
「な、何?」
突然、小舟の飛ぶスピードが上がり、みんなは驚く。小舟は、そんな事とは知らずに、どんどん高度を上げて行く。
「いっ、一体何だ?」
「分からない」
パンパンと美衣子が、何かの故障ではないかと、辺りを見回す。だが、そんな気配はどこにもない。
「二人とも、あれを見て!」
前方を調べていた妖精達が二人に呼びかけた。
「何?」
「あれは!?」
光。そう、一面光輝いている大地が、そこにはあった。
「光の国、ライトニングフィールド!」
美衣子達は手を取り合って喜ぶ。
だが、それも束の間ーー、
ガクウン。
「キャアアアアアア」
一行を乗せた小舟が、その国に向かって一直線に落ち始めたのだ。
どうやらライトニングフィールドは、強力な引力を持っているらしい。
まさに気分は高速のエレベーター。
動く事もできずに、小舟は落ちて行く。
絶体絶命の大ピンチ。
美衣子達は、小舟から落ちないように、しっかりとしがみついていた。
もはや手立てはないのか。
今まさに、地面に激突する、と思われたその時、
ライトニングフィールドの光がクッションとなり、美衣子達は救われた。
金色の光の中で、彼女達は目を開ける。
「ここは?」
どこからか、力が沸いてくる。
その広野は、どこまでも果てしなく広がっていた。
「きれい」
一言、そう表す事しかできない大地だった。
小舟から降りた一行は、辺りを探索しようとバラバラに動き出した。
しかし、見渡す限り本当に何もない、光の大地なのだ。
人の気配も、建物も無い。
土も、緑も、花も木も、何も無かった。
あるのはただ、光だけ。
太陽の光もいらないような、金色の輝きだけ。
まさに夢のような世界だ。
周りが静かだと、急に寂しくなって、美衣子達はお互いの名を呼んだ。
「みーこ」
「パンパンーっ」
「フェア、リィ〜〜」
「ワンメー、カン。それにリースぅ」
離れた所から仲間の声が聞こえ、美衣子はホッとして彼らの側に行こうとした。
(救世主……)
「えっ!?」
どこからか声が聞こえる。
美衣子は足を止めて耳を澄ませた。
(救世主……)
その声は美衣子の心の中に直接話しかけているみたいだ。
「みーこ?」
彼女の声が聞こえなくなり、心配したパンパン達仲間が駆け寄る。
美衣子は、虚ろな目で立ち止まったまま。
声の主を探しているようだ。
(救世主)
だんだん、心の中の声が大きくなる。美衣子は、その声に導かれるままに歩き出した。
「ねぇ、みーこ、どこへ行くの?」
パンパンが止めようとするが、美衣子は歩みを止めない。仕方なく、パンパン達も後をつけて行った。
ザッ、ザッ。
光の広野を並んで歩く。
突然、美衣子の足が止まった。
「あ、ああ……」
目の前に現れた建物に、パンパン達は驚いた。
ただ一人、美衣子を抜かして。
そこには、ミリルーク城と同じ位の大きさの、聖なる神殿が建っていた。
ライトニングフィールドにある、ただ一つの建物。
ライトニングフィールドを覆っている光のおかげで、この神殿は隠されていたのだ。
美衣子達は、神殿の入り口近くに立つ。
人が出てきた。
長い黒髪の女の人。どうやらこの神殿の神官らしい。
「救世主。わたしの祈りに応えて、良く来てくださいました」
「救世主? みーこの事?」
パンパンが女性に尋ねる。
「ええ。その通りです」
女性はニッコリ笑い、美衣子の手を取った。
「さぁ、この神殿の中にお入り下さい」
ここで美衣子は気づいた。さっき、心の声で自分を呼んでいたのは、この人だと。
しかし、自分だけ神殿の中に入るの?
そんな様子の美衣子に、神官の女性は説明した。
「美衣子さん。あなたはこれからこの神殿の中で、救世主の資格試験を受けてもらいます。それが、あなたが真の救世主となる為に、必要な事なのですよ」
「資格試験?」
「救世主の!?」
パンパン達はさらに驚く。
女性は頷き、話を続けた。
「はい。ここライトニングフィールドには、あなた方のお察しの通り、最後の聖剣が眠っています。しかし、その聖剣、聖麗剣は、救世主にしか扱えないのです」
「えっ、それじゃ……」
「ええ。もし美衣子さんが本当に、救世主ミーアノーア様の力を受け継いでいるのなら、真の救世主になれるはずです。その時こそ、聖剣をお渡ししましょう。美衣子さん、どうしますか?」
女性が美衣子に決意を促す。
パンパン達も、彼女をじっと見つめている。
美衣子の表情が変わった。
「分かりました。その試験、受けます!」
「みーこ……」
事の成り行きを見守っていた仲間達が、心配そうな顔をする。
「大丈夫よみんな、心配しないで」
美衣子がとびきりの笑顔で、仲間達に言う。
「みーこ……」
パンパンが美衣子を抱きしめる。
「みーこ、僕達はここで待っているよ。だから、頑張って来てね」
優しい彼の腕に抱かれ、美衣子は勇気が沸いて来た。
「ありがとう。パンパン。わたし、必ず聖剣を持って帰ってくるね。だから、待っていて」
目と目を合わせる。
そして、美衣子は女性と共に、神殿の中に入って行った。
ビューン。
扉が閉まる。
残されたパンパン達仲間達が祈った。
(どうか、美衣子が無事、救世主として戻って来ますように)
そして、美衣子の救世主への資格試験が、始まろうとしていた。




