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反乱への決意

「はっ、はっ…っ!!」


逃げまどう男の前に、俺は立ち塞がる。


「待て、盗んだものを返してもらおうか。」


「な、なんのことだ?」


目を泳がせ、必死にこの状況を打破しようとしている。


「悪いことはいわない。罪を認めたほうがお前のためだ。」


「くそっ!捕まってたまるか!!」


男は来た道を戻り、俺から逃げようとする。

しかし、すぐに立ち止まった。

反対側の道を塞いでいた者にやっと気付いたようだ。

立ち塞がる金髪の青年を見て、男は逃げる気力を失ったのかがっくりと膝を落とした。

金髪の青年―ロットはゆっくりと俺を見て悲しげに微笑む。


「この辺も、盗みが多くなったな。」


「あぁ、この10数年間で、ますます貧困は増し、国民は飢餓に苦しんでいる…国民を守るはずの国王は贅沢三昧だがな。」


嘲笑をこめた俺の言葉にロットは機嫌を悪くする。


「許せない…いくら王だからって、こんなことをしていいのか?」


「…。」


何も答えない俺にロットは舌打ちし、壁を殴った。

エーデがいなくなった日から、約10年たった。

ロットも俺も、子供とはいえない年になっていたエーデはもう帰ってこないと分かってはいたが、どこかでエーデが帰ってくるのを俺たちは三人で過ごしたあの家で待っていたのだ。

エーデの行っていた仕事は、俺たちが引き受けた。

事情を知らないロットには用心棒だと偽っていたが…実際、殺しをする必要があることはほとんど無かった。

そのため、俺たちは窃盗犯たちを追い払うだけに留めた。


「そろそろ行こうか。」


「あぁ。」


用心棒の仕事が終わった後、俺たちはある事をいつも行っていた。

反乱計画を刻々と練っていたんだ。




村の廃墟街にある古ぼけた屋敷。

そこに国王政権に異を唱えた者たちが集っていた。

反乱軍の秘密の場所である。

正門は大きな鍵が掛けられている。門から少し行った先に塀に穴が開いているところがある。

大人一人がやっと入れるような大きさだ。

先にロットをくぐらせ、周りを気にしながらあとに続いた。

ここは、昔名高い豪族の別邸だった。

今や豪族は死に、管理するものもいないため荒れ放題になっている。

玄関を三回叩くと、玄関が少し開き中にいる人物が顔を覗かせる。

俺たちの姿を確認すると、口を開いた。


「紫の騎士に続け。」


「我らの“山”を取り戻せ。」


仲間かどうかを見極めるための合言葉を言い、屋敷の中へ入る。

様々な村、町に住む者の中から腕に自信のあるものが集結していた。

凄腕の殺し屋。

百発百中の弓の使い手。

名門貴族きっての剣士。

怪力男。

そして、その中にはかつての俺の友もいる。


「遅かったな。ロシェ。」


そういって、アロットは昔と変わらぬ笑みを俺にみせた。


「すまない…仕事をしていてな。」


「あはは。それはお疲れ様だったな。」


最初、アロットが俺たち反乱軍に加わりたいとやってきたときは驚いた。

話によると、国王に養父を処刑されてしまったらしい。

その恨みを晴らすために、アロットはどこからか俺たちの話を聞きつけ、王都から離れたこの村にわざわざ通っているのだ。

俺は昔のように、アロットと語り合えるのが嬉しかった。


「アロットさん。俺、作戦を練ってきたんです。少し見てもらえますか?」


ロットはそういって手にしていた何枚かの資料をアロットに見せた。

アロットを引き取ったのは、名高い軍人のクリシス卿だ。彼は武闘派として有名だが、それと同時に賢明でサン女王の懐刀とも呼ばれていた。

策略などの知識にも長けており、アロットもクリシス郷に自分の持つ知識を教え込んだという。

処刑されてしまったのは非常に惜しい…。


「…という作戦なんです。」


「なるほど…さすがロット。この作戦、俺は賛成だ。ここに集う武力や兵力を最大限に活用できて、被害は最小限に抑えられる…俺にはこんな作戦思いつくことはできないな。」


「そんなに褒めないでくださいよ…」


アロットに褒められ、ロットは少し照れたような笑みをみせる。

他のメンバーもロットの作戦を感心した様子で見つめていた。


「さぁ、はやく話しあいを終わらせようか。」


「…どうしたんだ?アロット。今日はいつになくはりきっているみたいだな。」


からかい半分にそう告げると、アロットに代わり、別のメンバーが彼を小突きながら言った。


「聞いてくれよ、ロシェさんよぉ。こいつ、新婚らしいぜ。」


「可愛い嫁さんのことがほっとけないから、はやく家に帰りたいんだってさ。」


「おいおい…からかわないでくれよ…。」


困ったように微笑むアロット。

あまり幸せそうな様子はなかった。今回の反乱が成功しない限り、幸せな生活を送るのは難しいからかもしれない。


「ほぉ、まさかお前が結婚をしていたとはな…。」


「…黙っていて悪かったよ。いつか言わなきゃとは、思っていたんだけどさ。」


申し訳なさそうにアロットは言い、照れながらも教えてくれた。


「…レーニアって言うんだ。俺にはもったいない、本当に綺麗で素敵な女性なんだよ。…守るものができたから、強くなれるってことなのかな…。」


アロットだけではない。

他の反乱軍のメンバーもそれぞれ、守りたいものがある。

必ず国王の暴政を止めて見せよう。

アロットの微笑みを見て、俺は改めて反乱への決意を固めた。


その後、俺たちは深夜までロットの考えた作戦を練り、その日の話し合いは解散を迎えた。









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