俺の名前
玉座の間にいたパイル国王は徐々に大きくなっていく叫び声に驚き怯えていた。
この場所は城の中でも丈夫に作られている。
ここなら万が一火矢を放たれても生き延びることはできるだろう。
それに、玉座の間は国王の指輪に次ぐ、王権の象徴のような場所。
何時からだったか、指輪は彼の前から姿を消してしまった。
王権に縛られたパイル王は玉座の間から離れることができなかったのだ。
ガチャ
重厚な扉が開き、入ってきたのは金髪の青年。
「見つけたぞ…国王パイル・ヴォルガン。この国の皆のため、あなたを殺す。」
「お前は…。何故…あの時死んだはずでは…?」
パイルには重なって見えた、二十年前自分が殺した女王サンと今自分の目の前にいる青年とが。
剣を構え今にも切りかかろうとするロットにパイルは眼の色を変えた。
「や、やめろ!!お前は父を殺す気か…!?」
「え…!?あなたが俺の父だって…?」
「ロット!しゃがみ込め!!」
突如響いた声に素早く反応し、ロットはしゃがみ込んだ。
彼の頭ギリギリを通過したのは、見覚えのある剣。
王家の紋章が刻印された彼の親友のお気に入りの剣。
その剣は人々の恨みを買い続けた愚かな王の心臓に深々と突き刺さったのだった。
「ロシェ…。」
「大丈夫か…ロット?」
「…あの男…自分のことを俺の父親だって…俺はいったい…?」
ここまでか…。
偽り続けるのは、いつか限界が来ると思っていた。
こんな城の中で、俺たちの親の仇の死体の目の前で、嘘がばれる日が来るとは因果なものだ。
俺はロットに向かい静かに跪いた。
「…あなたの母の名はサン・ヴォルガン。確かに、この国の先代女王だ。…そして、あなたは死んだと思われていたこの国の王子。」
「…!」
「俺はあなたの母から、あなたを守るよういわれている。だから、俺はあなたを守る。」
立ち上がると、俺は王の亡骸へと近づきマントをはぎとった。
「…だが、王は恨みを知らず知らずのうちに買う存在だ。それにパイル王派の人間が命を狙ってくるかもしれない…。だから、だからこそ俺が王の影武者となり、あなたを守る。」
大きく目を見開く。俺の言葉に驚いたようだ。
「…!?そんなことをしては、今度はお前の命が狙われるじゃないか!!」
悲しいのか辛いのか、それとも怒っているのかこの玉座に響き渡るような大きな声は震えていた。
そっと微笑み、諭すように俺は言った。
「そんなことは分かりきっている。これが俺の守りかただ。」
「ロシェ…」
「頼む。分かってくれ。」
「…分かった。じゃあ俺は宰相になる。このくらいの我がままは聞いてもらう…一つ教えてくれないか?俺の本当の名前は…?」
「…ジルベル。ジルベル・ヴォルガンだ。」




