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立ちはだかる友

火山の国軍の兵士たちは、20年前と比べてすっかり堕落していた。

前女王サンの時は統率の取れていたのに、愚王の前では力を持つ兵士もその力を十二分に発揮できていない。

俺たちの姿を見て、逃げ出すものがほとんどだった。


「ロット!王を探すんだ。俺はあちらへ行く。そっちは頼んだぞ!!」


反乱軍を散り散りにさせ、王を探すことにした。

奴を殺さなければ、この国は元には戻らない。


「待て。」


俺の前に立ち塞がる。

敵の影。


「…アロット。」


王国軍の鎧を身にまとったアロットがそこにいた。


「あまり驚いてないみたいだな…俺がこうしてお前に対面していることを。」


「…そこを退け。アロット。」


「そっちこそ…退け。」


俺たちは互いに譲ろうとしなかった。

思えば、孤児院にいたときからアロットとはくだらないことで競争した覚えがある。

懐かしいのと同時に切なくも思った。

何故アロットが王に味方を…?

ともに反乱軍として戦おうと決意したではないか…。


「言っておくけど、説得は無駄だと思ってくれ。俺は王を裏切るつもりはない…。」


「アロット…」


腰に携えていた剣を抜き、アロットは俺に剣先を向けた。

睨みつけてはいるが、どこか寂し気な眼差し。


「…何か…あったのか…?」


「…レーニアが…重い病を患ってしまったんだ…。レーニアの病を治すことができるのは、草原の国から招かれた国王直属の医師だけだ。お前達を殺せば、レーニアを救ってくれると約束した…だから、俺はお前を殺す。」


アロットはギリッと奥歯を噛みしめ、涙を流した。

両親のいないアロットに、家族の愛情を教えてくれたクリシス郷。

アロットの最愛の女性、レーニア。

彼もまた、自分の大切なものを守るために戦っているのだ。


「剣を抜けよ…ロシェ。戦おう。」


「…俺は…。」


「お前の村に火をつけたのは俺だ。お前の大切な人々を殺したのは、この俺だよ。」


挑発だと理解していた。

だが、火災により亡くなった村人たちの笑顔が俺の脳裏を過った。

目の前にいる人物を友人ではなく、仇として見てしまう自分が許せなかった。


「…アロット…っ!!」


俺が剣を構えたのを見て、アロットは意味深に微笑む。


「国王に刃向かう反乱軍の哀れな漆黒の刃よ。このアロット・クリシスが、今ここで、貴様の行く手を阻んでやろう。」


アロットは素早く動き、俺の懐に飛び込もうとする。

俺はそれを避けた。だが、避けられることを見越してかアロットはすぐに動きをやめ左手の剣を俺へ薙いだ。

頬と髪が掠り、はらはらと俺の黒髪が床に落ちた。


「お互い成長したようだな…」


皮肉を込めて言ってみた。


「みたいだな…」


「ふざけて兵士の真似ごとをした…子供の時が懐かしいよ。」


「…俺は、お前とは違うよ。あの時を懐かしむなんてことはできはしない。」


アロットの頬を涙がつたった。


「お前を倒さなくてはいけないんだよ…」


アロットの剣撃を避け、俺はアロットを傷つけない方法を探した。

アロットには俺たちの村に火を付けた理由があった。

その理由を知らなければならない気がした。


「よそ見ばかりして、余裕だな!戦いには集中しろ!」


隙を突かれた。

アロットの剣が真っすぐに、俺の左胸をとらえ、飛んでくる。


「…!?」


徐々に左胸が真っ赤に染まる。

痛みが走り、思わずうずくまった。


「…ロ…シェ?!…心臓が…!?俺は…?俺が…!?」


先程の勢いは何処へ行ったのか、アロットは剣から手を離しわなわなと震えだした。


「…アロット。」


息苦しいが、何とか動くことができた。

ゆっくりと、アロットに近付く。


「ロシェ…ごめん…。レーニア、すまない。お前を救うことができなかった。」


アロットは膝から崩れ落ち、頭を抱えた。


「アロット、俺は大丈夫だ。落ち着け。」


「俺は…俺は…。」


「…駄目か。アロット、俺は今から王をさがし、全てを終わらせる。お前はここで待っているんだ…。すぐに、反乱軍の医療班をお前のもとに向かわせる。分かったな?」


しっかりと聞いているのかどうかは分からなかったが、俺はアロットを残し、王をさがしに部屋をでた。




「使えない男だな…。」


二人の戦いを、廊下の影から密かに見守っていた男がいた。

赤黒い髪、灰色の目付きの悪い男。

その正体はベルク・ヴォルガン。

愚王パイルの実子である。

泣き崩れるアロットを指さし、近くに控えていた兵士に冷酷に指示をした。


「奴を始末しておけ。親父め…医者はとっくの昔に死んでるんだから、騙さずにさっさと殺せって言ったのによ…。」


一度舌打ちすると、彼方から聞こえてくる反乱軍の雄たけびに恐怖する。

次に殺されるのは自分かもしれない。

なんで、庶民に殺されないといけないんだ…。

ベルクは手下を押し倒すようにかき分け、自室へと急いだ。




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