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裏切りの炎


「アロットさんって、良い人だよね。」


隠れ家からの帰り道、ふとロットが呟いた。


「褒められたことがそんなに嬉しかったのか?」


「…まぁね。俺の名前はアロットさんから来てるんだろ?」


「…あぁ。」


「すごい人だ…あの人は、アロットさんから受け継いだ名前に恥じないように、俺は愚王を倒して、国民に平和な毎日を過ごしてもらえるように誓うよ。」


その言葉を聞き、俺は曖昧に微笑んだ。

この時、はっきりと気づくことができなかった。

この反乱計画をたてたメンバーの中に、裏切りものがいたなんて…




その夜は夜にも関わらず、明るかった。

俺たちの村全体が、ごおごおと、炎をあげて燃えていた。




「国王。ご命令の通り、村に火を放ち反乱軍を壊滅させたと、連絡が入ってきました。」


眼鏡をかけた、気弱そうな文官サランが国王へそう告げた。


「ご苦労だったな、サラン。下がれ…それと、お前も御苦労だったな。アロット。」


ねっとりと、蛇のような目線を傍らに控えていた青年にむけた。

青年の名前は、アロット・クリシス。

反乱軍の一人、ロシェの親友のその人だった。


「…。」


「お前の働きのおかげで私に刃向おうとしていたバカな連中を潰すことができたのだからな…大義であったぞ。」


ギリッと拳を握りしめ、アロットは感情を押し殺していた。

孤児院にいた彼を引き取ったのは、クリシス卿という貴族だった。

クリシス卿は彼を、我が子同然に接し、愛情を注いだ。

しかし、そんなクリシス卿も、国王により殺された。

そんな彼が何故、国王に付き従っているのだろうか。


「どうした?アロット。何か文句でもあるのか?…妻の病を治したくないのだな?」


「…!?い、いいえ。文句などございません。」


アロットの妻のレーニアはある病にかかっており、早急に治療しなければ死に絶えてしまう。

パイル王専属医師がその病を治すことができた。

王はアロットに言ったのだ、妻を助けたければ私の命令を聞け、と。

言うなれば、アロットはレーニアを人質にとられていたのだった。


「信頼しているぞ…アロット。」


アロットはギリッと両の拳を握りしめた。

爪が皮膚に食い込み、指の間から血が滴り落ちる。


―すまない、ロシェ…


友人を裏切った自分、国王に逆らうことができない自分を許すことが出来なかった。






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