表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

森のくまさん

作者: ヤマ

ハッピーエンドで終わる物語から一番遠い物語。

 ある日、森の中。

 赤ずきんは、熊に出会った。

 ちらほらと花の咲く道。

 その熊は――よだれを垂らし、こちらを凝視しながら、唸り声をあげている。

 赤ずきんはその場に立ち尽くし、熊を見つめている。

 ――過ぎていく時間。二人――正確には、一匹と一人の間に、少し肌寒い風が通り過ぎる。


「――――――」


 赤ずきんは、熊に問いかける。ここはどこなのかと。

 熊は――その問いに答えない。否、答えられない。

 そして熊はしばらくして――動き始めた。

 道沿いに、だんだんと奥に向かって。

 もしかして、森から出る道を教えてくれているなどと考えた赤ずきんは、そのまま熊についていき。

 すぐに道の幅も広くなっていき、出口だと思われたので、熊にここまででいいと伝え、赤ずきんは、時間的余裕も持っていたので、花を摘み、帰ろうとした。

 花を摘む。

 その後姿を、熊が見る。

 ある程度花も摘み終え、帰ろうと立ち上がり、熊に手を振った瞬間だった。


 ――何かが、飛んだ。

 何かが何なのかは分からないが――それでも、何かが飛んだことは確信できた。

 その直後。

 起こったことに、赤ずきんは一瞬――いや、一時、理解できなかった。

 いや――理解し難かった。それとも――理解したくなかった。

 熊の首が――飛んだ。




 男たちが、熊に寄っていく。

 幸い、というべきか、赤ずきんには気付いていなかった。

 男たちは熊に――熊だったものに寄っていき、そして。

 それを、切り刻み始めた。

 見るにむごたらしい姿になるまで、原型を留めないまでに。

 血が飛ぶ。肉が飛ぶ。

 意識が――飛ぼうとする。

 しかし、それを――許してくれない存在がいる。

 赤ずきんはその場に立ち尽くし、それを見ていた。

 飛ぶ血を。飛ぶ肉を。

 初めて見る――生き物の、血を。肉を。

 赤く、黒い、それを凝視して。視線を離せない。

 離そうとしても、放そうとしても――はなせない。

 誰かがそれを、許さない。

 切り刻まれた全て。

 切られ。切られ。切れる。

 容赦なく。振り下ろされ。

 やがて。

 男たちは怪しい目で赤ずきんを見て。

 顔を――歪めた。

 大人数でこちらに向かってきて。

 そして――醜いものを。

 赤ずきんに向かって――さした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ