表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/6

購入不可避

 冒頭から始まる音楽。


思わず釘付けになった。


その……「カッコイイ」に。


人によって感想は様々だろう。

私の第一印象はひたすら「カッコイイ」だ。


(すげえ……なんか……この音楽好みだ……)


好みなんてのも人それぞれ。

でも何故か、この映画が大ヒットしているという理由が分かるような気がする。

ちなみに映画が開始してまだ数分たらず。

私はその時点で、既に「ミュージカルには興味はない」という前言を撤回していた。


 とんでもなくカッコイイ冒頭から、物語は紡がれていく。

時代的には……古き良きアメリカ、という感じだろうか。


(ふむふむ、ストーリーはどんな感じだっけ……確か実在した興行師の……)


ちなみにだが、私は映画を見る時……一回で理解できるようにかなり気構える。

字幕で表示される文字を一字一句逃さまいと……


(あれ? このストーリー……)


物語が進むにつれ、なんだか今まで見てきた映画と違う気がした。

本当にこれは私個人の印象だが……


(なんか……観るっていうより感じろ! って気がする……)


ちなみに映画が開始してまだ三十分も経っていない。

この映画のストーリーは至ってシンプルだ。しかし決して単純という意味ではない。


(お、また歌が……)


度々申し訳ないが、私にとってミュージカルは退屈な物だ、という印象があった。

歌が流れている間は物語が進行しない、と決めて掛かっていたからだ。大して見たことも無いくせに良く言う……と思われるだろうが……。


(……この歌もいいなー……なんか癒される……ぉ、次の展開が……)


私はこの時、まったく気にもしなかった。

後から考えれば、かなりの超展開の筈だったのだ。しかし違和感が全くない。

私が見たい場面を見せてくれる……そんな印象を持った。


(あー、男はそうだよな。いくら奥さんが幸せって言っても……納得できないよな……)


あまり言うとネタバレになるので、あらすじ的に言うと……一人の男が自分の家族を幸せにしてやるぜ! と奮起する感じだ。


(……どうなるんだろ)


先程も言ったが、この映画のストーリーそれ自体はシンプルだ。

しかしかといって、次の展開が余裕で予測できるシンプルとは違う。

あまり上手くは言えないが、予想は出来るが、そんなヒマはない! と言えばわかるだろうか。


そうだ、予想する時間など無い。

展開から目が離せない。そしてたたみかけるかのように、歌とダンスが始まり物語はさらに展開していく。


(ぁ、また神曲が……やば……サントラ買お……)


私がサントラを買うのを決意したのは……男がアイデアを閃いた時。


(あぁ、もう歌終わる? 終わりそう? 終わっちゃう?)


もっと聞いていたい、っていうかずっと歌だけでもいい!


ってー! また展開が……!


【注意:わけわからんと思いますが、ご容赦下さい……】



 次の瞬間、私は先ほど(ちゃこ)が言ってきた注意事項がどういう事なのか理解した。

映画の中で観客が総立ちし拍手をした瞬間、私は……


(あぶねえ! 拍手しそうだった!)


リアルの映画館で突然拍手しようもんなら、異様な目で見られる事は必至だ。

しかし体はうずうずしている。今すぐ、映画の中の観客達に混ざりたい。そして感動を共有したい。


(いいな……映画じゃなくて普通のミュージカルだったら……拍手出来るのかな……)


既に私はミュージカルの虜になっていた。

歌が楽しみで仕方ない。かといってそれ以外の場面が退屈というわけでも無い。

本当にいい意味で休む暇がない映画だ。たとえ今日が徹夜続きの朝だったとしても、私は起きていられる自信がある。



 そして物語は不穏な空気を醸し出しつつ、クライマックスへと。

何度も言うが、私はカッコイ物が大好きだ。そんな私に共感できる人なら、絶対この映画はハマる。

だって終始カッコイイ。歌もダンスも……主人公の生き方も、周りの登場人物達も。


(あぁ、そうか、こうきたか……)


 いよいよ物語はラストに近づいていく。

主人公は様々な体験を経て、大切な物を思い出した。


私はその時、本当に感覚的にだが……自分の世界が広がるのを感じた。

大袈裟かと思われるかもしれないが、本当にそう思ったのだ。



 


 ※





 映画が終わり、私と(ちゃこ)は映画館のホールに戻ってきていた。

ちゃこは大層ご機嫌で、さっきから映画の歌の一つを鼻で歌い続けている。


「ご機嫌だな……ちゃこ」


「当たり前にゃ。君はどうだったにゃ? 面白かったにゃ?」


うむ……面白かった。

だがその前に……いろいろと語りたい!


「おちつくにゃ。家に帰ったらどれだけでも……ぁ、とりあえず余ったポップコーンの袋貰ってきたらどうにゃ?」


むむっ……確かに。

映画に夢中でポップコーン全然食ってなかったもんな。

お姉さんにもらってくるか……。


「すみませーん、袋ください」


「どうぞー」


お姉さんは普通に袋をくれる。当たり前だが。


「さーって……じゃあ家に帰って語るとするかにゃ?」


「いや、ちょっと待ってくれ。映画のサントラ欲しい」


その時、私は確かに感じた。

腹の中で猫が震えるのを。


「にゃんてこった……き、君! 君は最高の友にゃ!」


何だいきなり……いや、でも売ってるかな……。

あれだけ面白かったら、もう皆買っちゃうから……


「い、急ぐにゃ! CDショップへ!」


「お、おおう」


私はお姉さんにもらった袋にポップコーンを入れつつ、CDショップへと早歩き!

どうでもいいが、映画を観た後って……なんか映画の影響とずっと同じ体制で座ってたのもあって……体を動かしたくなる。そう、私は今かなり踊りたい気分だ! 踊るスキルなど無いが!


 この大型ショッピングモールには当然CDショップも健在している。

しかし目的のCDはあるだろうか……もし「売れきれましたー」とか言われたら泣いてしまいそうだ。


 そっとCDショップ内へ。

私はその瞬間、こう叫びたかった。


(店員さん……神!!)


そう、目的のCD……今見た映画のサントラは平積みにされ、専用のコーナーが設けられていた!

なんてこった……しかも今は期間限定で少しお安くなっている!


「店員さんにお礼言うにゃ!」


「まあオチツケ、焦ったら負けだ」


私は一枚CDを取ると、そのままレジへ直行。

そこで私は気が付いた。今、この私の状況……店員さんにモロバレでは?!

なにせ手にはポップコーンが入った袋。そして購入するCDは映画のサントラ。

店員さんはこう思うに違いない。


『コイツ……絶対いまこの映画見てきただろ……』


うぅぅぅぅ! その通りさ! 今この映画みたさ! だから何だ!

ちょろい客だなんて言わせない!


「まあ、ちょろいにゃ。でもそれがどうしたにゃ! 僕たちはひたすら王道を行けばいいにゃ!」


ぁ、ハイ……いや、まあ……買うけども。


 そのままレジでCDを提出。

その瞬間、店員さんの目が一瞬……私の持つポップコーンへと注がれ……


今……なんか一瞬店員さん笑った気がする! っていうか凄い笑顔だ! 微笑ましい物を見るかのように!


「お、おちつくにゃ……店員さんは基本スマイルにゃ……深読みしすぎるとドツボにゃ……」


「う、うむ……」


お金を用意しつつ、店員さんが商品を袋に入れてくれるのを待つ私。


「お待たせしましたーっ」


「は、はひ……」


やっぱり店員さん……なんか凄い笑顔……!

うぅぅ、悪かったな……映画見てすぐサントラ買って!

私の気のせいかもしれないけど、店員さんがいじめる!


「き、きっと気のせいにゃ……店員さん、ただスマイルをくれてるだけにゃ……」


そのままサントラを無事購入。

寄り道する事なく駐車場へと直行し、さっそくパッケージを開ける私。


うへへへへ、さっそく車のオーディオで聴こう、そうしよう。


 エンジンを掛け、カーナビの中にCDを投入。

しばらくすると、あのカッコイイオープニングの曲が再生される。


お、おぉぉぉぉ、そうだ、この曲だ……この曲が好きだ!!


「ところで、君は気づいたかにゃ?」


「ん? 何を?」


猫はモゾモゾと私のお腹のポッケから出ると、助手席へと鎮座する。


「あの主人公、ウル〇ァリンの人にゃ」


「……ん?! ぁ、そうだ……あの人か」


マジか、今気づいた。

そういえばそうだ。え、メッチャ歌上手いよな……。


「基本的に皆上手いにゃ。それもにゃんだけども、ストーリーも良かったにゃね」


「うむぅ、確かにいい話だった」


主人公は最初、家族を守る為に奔走した。

でも物語が展開していくにつれ、主人公は……


「あんまりいうとネタバレになるにゃ。それに、彼が辿った人生を寄り道と言う人も居れば、きっと決してそうではないって言う人も居ると思うにゃ。君はどっちかにゃ?」


「んー……私はどちらかと言うと寄り道派かな……奥さんに寂しい思いさせたのは事実なんだし……」


「そうにゃね。でも彼は思い出したにゃ。自分が何のために夢を追いかけていたのかを……」


お前、いいこと言うな。


いや、それもなんだけど……なんかあの言葉が……凄い心に響いた。


「どのセリフにゃ?」


「それは……」


【注意:ぜひ映画を観てください!】




 ※




 そのまま車を運転しつつ、映画のサントラを聞き続ける。

今なら鮮明に思い出せる。どの曲がどのシーンで流れた曲なのかを。


「初ミュージカル、どうだったにゃ?」


「面白かった……一気に好きになったわ」


「それは良かったにゃ。君の世界は確実に広がったにゃ」


うむぅ、それな。

私はあの映画を観てる時、それを感じた。

確かにあの瞬間、私の世界は広がったのだ。

具体的に何がどうなった、なんて言えないけども……。


「そういえばアンタ……猫だよね」


「何言ってるにゃ。当たり前にゃ」


いや、こいつは宇宙人だ。

決して猫ではないが……。


「猫の事も……少し考えを改めようと思ってしまった」


「ウフフ、映画の影響強すぎるのもどうかと思うけども、それで人生いい方向に行くなら……大歓迎にゃね」


なんだかいい事言って纏めようとしてる感は否めないが……。


「じゃあ次は何見に行くにゃ?」


「あー……次かぁ、次……」


って、ん?!

あんた……まさか住み着く気?


「ふふふ、君はまだ映画の入り口をノックしただけにゃ。映画の道はまだまだ……これからにゃ!」



そんなこんなで……私と奇妙な宇宙人の共同生活はまだ続くようだ。


私の映画ライフは……始まったばかりなのだから。

これにて入門編は終了です。

でも連載はまだ……いつかまた書き出します。

再び私の心が震えたら……奇妙な猫と共に映画ライフを送る事になるでしょう。


ちなみに実際この映画をオススメしてくださったのは「小説家になろう」のお気に入りユーザー様です。


いい小説ライフを……そしていい映画ライフを。


今回はこれで失礼します。ではでは!(*'ω'*)ノ


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ