第47話 愛
秋津高校は、公安調査委員会の警護の下、避難所となっていた。勇佑と雅玖は積極的に、避難してきたケガ人の手当てをしていた。
「燦ちゃんもいればなぁ…」
雅玖は呟いた。
「おい、燦ちゃんのことは言うな。もういないんだから。」
勇佑は雅玖に釘を刺すように言った。
「でも…やっぱり燦ちゃんが死んだなんて…」
雅玖は神妙な面持ちをした。
「…俺だって、未だにバンドメンバーが死んだなんて思えねぇ。でも、最近ようやく実感が湧いたって言うか…もう部室に行ってもあいつらはいないんだよな、って思えてきて。それに、妹も…ヴィランに惑わされて…」
勇佑は言った。
「でも、過ぎたことを悔やんだところで、あいつらが帰って来る訳じゃねぇ。俺は今、目の前で苦しんでる人を助ける。それが俺なりの贖罪なんだよ。」
勇佑は雅玖を見つめた。
「…そうだな。」
雅玖は頷き、再びケガ人の手当てを始めた。
「死ねぇ死ねぇ死ねぇ死ねぇ死ねぇ死ねぇ死ねぇ死ねぇ!!」
ユニバースヴィランに変身している信幸は、ダークライザーに変身している想を何度も潰れるほどに殴った。ユニバースの体は、返り血で赤く染まった。
「この僕が負ける訳無い!!僕が一番なんだよ!!」
信幸は夢中で想を拳で潰した。
「もうやめて!!」
アキツフューチャーに変身している百瑚は、殴り続ける信幸を必死に止めようとしたが、圧倒的な力の差の前に止めることができない。その時、信幸の背後に何かが当たった。それは、照貴がつきつけた掃滅弾二発だった。
「てめぇが死ね。」
照貴は引き金を引いた。掃滅弾の爆発と爆風により、周りが見えなくなった。すると、信幸の前にアキツリベルライザーが現れた。そして、舜多は信幸の両目をライザーダガーで切り裂いた。
「目が見えない!!目が見えないよぉ!!」
信幸は叫んだ。周りが見えるようになると、倒れているユニバースの上にアキツリベルライザーが跨っていた。
「照貴先輩!退院して大丈夫なんですか?」
百瑚は驚いた。
「こんな時におちおち入院できる訳無ぇだろ。さて、あとは任せたぞ。アキツフューチャー。」
照貴は百瑚の胸を揉み下し、掃滅弾を渡して去った。
「ちょっ、先輩!」
百瑚は仮面の下で、顔を赤らめた。
「真木信幸、いや、秘密結社ニビル首領、ユニバースヴィラン!!俺は全てを終わらせるために来た。」
舜多は信幸に叫んだ。
「あ、そう。でも君は僕に勝てない。僕は人間の進化形の超人類として世界を統べる。僕が一番でなくてはならないんだよ。」
信幸は舜多に言った。
「お前が友祢みたいな喋り方をするな。」
「何で?僕は友祢の父親なんだよ。」
「だからこそだよ。お前に愛はあるのか?」
「愛?」
「友祢に対しての愛だよ。」
「僕はただ、人間を飼ってみたかったんだ。その中で親子愛とは何か、研究したかった。だから唯一超人類の材料にしなかった。ただそれだけだよ。」
「お前が愛を語るな。友祢はな、それでももしかしたらお前に愛があるんじゃないか、って思ってたんだよ。」
「愛とか、悲しんだり喜んだりって、非効率的じゃないか。」
「確かに愛は非効率だ。でも、だから心が温かくなる。生きてるって感じがする。俺は友祢に教えられた。自分らしいってことが、どんなに素晴らしいことか!」
「あのね、綺麗事なんて何とでも言えるんだよ。」
「綺麗事を実現するのが、俺の、リベルライザーの使命だからなぁ!!アキツリバティ!!」
舜多はそう叫び、信幸に必殺技を打ち込んだ。舜多は全身全霊をかけたため、変身が解除された。信幸は倒れたが、すぐに起き上がった。
「な、なんだ…体が思うように動かない…?」
信幸は両手を広げたり閉じたりした。
「いくら強くても、日が沈むまで戦えば疲れるだろ?それに、高校生の息子がいたってことは、お前はもう結構歳いってるだろうし。」
基は立ち上がり、信幸に言った。そして、先程舜多から渡されたマザーガンを、舜多に返した。
「舜多くん、ありがとう。マザーガンの回復能力のおかげで、元気になったよ。」
「いえ…あ、そうだ、これ、返します。」
舜多は基にライザーダガーを渡した。
「俺はもう、一人で戦えます。俺には、大切な人たちがついていますから。」
「そうか。」
基はライザーダガーを受け取った。そこに、百瑚が来た。
「想の敵を取るまでは、私も戦う!」
「先輩…」
「ユニバースは疲弊している。倒すなら今だ。」
「はい、基さん。俺はもう…覚悟はできています。」
舜多と基は再びベルトを出した。百瑚もベルトを巻いた。
「変身!!」
「装着!!」
「変身!!」
基はアキツライザーに、百瑚はアキツフューチャーに、舜多はリベルライザーに、それぞれ変身した。
「今から、俺や基さん、そして友祢、全人類、お前からの支配から解放される!!」
舜多は信幸を指差した。
「それはどうかな?人類は、僕の支配が無いとよりよく生きていけない!!」
信幸は素早く舜多を攻撃しようとしたが、舜多はそれより早く信幸のみぞに拳をねじ込ませた。その隙に、基は信幸に蹴りを入れた。
「人間に超人類は早過ぎた。人間は間違いながら進化する。それで十分だ。」
基は信幸に言った。
「力の無い者は泣き寝入りする!!だから僕は力を持った!そして一人ひとりにも力が必要だ!!」
信幸はそう叫び基にパンチをしようとしたが、基は避けた。そして信幸の背後から、百瑚が何発もパンチをし、照貴から貰った掃滅弾を信幸の首に付けて撃った。
「そんなことしても何も変わらない!!力の前に、それを使う人間がどうしようもなかったら、意味が無いのよ!!」
百瑚はそう叫んだ。信幸は脊髄を痛めた。
「クソっ…!ふっ、まぁいい。いいかな?正義が勝つんじゃない。勝った者が正義と呼ばれる。つまりこれからは僕が正義になるのさ!」
信幸はそう叫び、近くに落ちていた切れた鉄パイプを、攻撃しようと向かって来た舜多の腹に刺した。パイプは中が空洞のため、血が滝のように出た。
「…グッ!」
舜多は痛みで歩みを止めた。
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ…勝つのはお前じゃない…俺だ!!」
舜多はそう叫び、信幸が握っている鉄パイプが刺さったまま、信幸に向かって走り出した。鉄パイプが舜多の腹をより深く刺す。
「なっ…!」
その時初めて、信幸は恐怖を覚えた。
「僕が…負ける?」
その隙に、舜多は拳を鉄パイプに向かって勢い良く振り下ろし、鉄パイプを切った。そして、そのまま信幸にパンチをした。信幸は吹っ飛ばされた。舜多は鉄パイプを自分の腹から抜いた。
「だ、大丈夫か?舜多。」
基は心配した。
「大丈夫です。それより、決めましょう。」
舜多は基に言った。百瑚も、舜多の隣に来た。三人は信幸に向かって走り出した。
「「「トリプルライザーキック!!!」」」
三人のキックは、信幸に当たった。
「あぁ…僕が…負ける…嫌だぁ、嫌だ嫌だ、嫌だぁぁ!!」
ユニバースヴィランこと真木信幸は、爆発した。舜多の腹は、友祢の髄液のおかげで、もうすっかり治っていた。
これで、秘密結社ニビルは事実上壊滅した。
「さて、これであとは時間の問題だな。俺はもう少し世界をパトロールしてみるよ。じゃあ、またな。二人共。」
そう舜多と百瑚に言い、基は瞬間移動で去った。
「私も一回、秋津高校に帰るわ。報告しなきゃだし、ケガ人もいるだろうから。じゃ、また部活でね。」
そう舜多に言い、百瑚は秋津高校に向かって行った。ユニバースヴィランが爆発する様子を、物陰から撮影していた廉は、その動画をツッタカターに上げていた。そして、恐る恐るリベルライザーに近づいた。リベルライザーは、変身を解除して舜多の姿になっていた。
「…おい、リベルライザー。」
廉は舜多に話しかけた。舜多は廉の方を向いた。
「…まっきーをどうした。」
廉の問いかけに、舜多は黙ったままだった。
「…おい、何とか言えよ!」
廉は舜多に掴みかかった。
「友祢は…今世紀最大の大罪人、ニビル首領ユニバースヴィランの子だ。この意味、分かるよな?」
舜多は廉を見つめた。
「もう友祢は、秋津高校に帰ってこない。」
舜多にそう言われた廉は、舜多を掴んでいた手を離し、目を丸くした。
「そんな…だって、まっきーは、秋津にいる、って…また一緒にダブルダッチやる、って…」
廉は膝から崩れ落ちた。
「兄貴も斗織もいない。おいらは…ひとりぼっち…」
すると廉は放心したまま、近くに落ちていた、舜多を貫いた鉄パイプを拾った。そして、自分の腹に突き刺そうとした。しかし、廉は寸前で止めた。
「刺さないのか?」
舜多は廉に質問した。
「まぁ、そんなものでヴィランは死なないけどな。」
舜多は、既に治った腹をさすった。
「だって…死ぬしかないじゃないか…」
廉は嗚咽混じりに呟いた。
「お前の愛はそんなもんだったのか?」
舜多は廉に言い寄った。
「黎さんや斗織くん、友祢の気持ちを考えたことがあるのか?自分で死ぬなんて、自己満足だろ?」
「うるせぇ!!」
廉は舜多を殴ろうとしたが、舜多はそれをかわした。
「おいらは…どうすれば…」
廉は泣き崩れ、地面に額を付けた。
「そんなこと…俺を知りたいよ。」
舜多は廉を横目に、その場を立ち去った。
ユニバースヴィランが爆発してから数週間後、全国で復興が行われた。基も、復興を手伝った。桜子は、ニビル本部の家宅捜索後、全責任を自ら負い、公安調査官を辞職した。しかし、ニビルにあった改造手術法等の重要事項が書いてある書類は、陸が持ち去り消息を絶ったため、どこからも見つからなかった。また、舜多と友祢は、ニビルが壊滅してから消息不明となった。そのため秀飛は、児童養護施設で暮らすことになった。




