第46話 リベルライザー
「まだだ…まだ足りない…!」
マルリカは街を彷徨っていた。そして、逃げ惑う人々を次々と殺していた。その人々の脊椎を、人間ヴィラン問わず食べていた。最強の超人類になるために。マルリカの姿は、ますます屈強なヴィランへと変貌しており、ロゴスヴィランへと姿を変えていた。
「貴様も…食ってやる…!」
マルリカがある人に手を伸ばした時、ある人は素早く避け、マルリカの背後に立った。
「何!?」
マルリカが振り向くと、ある人はドラゴンフライヴィランだった。
「ドラゴンフライ…リベルライザーかぁ?」
しかし、ドラゴンフライの周りが熱くなり、すぐにドラゴンヴィランへと姿を変えた。
「貴様も…超人を超えたか。ヴィランの髄液を飲んで。」
マルリカはドラゴンに呟いた。
「俺は…オプファーの髄液を飲んだ。しかも、最強のオプファーの、だ。」
ドラゴンの正体は舜多だった。
「いくら飲んだか知らねぇが、数ではこっちが圧倒的に多い!」
そうマルリカが叫ぶと、地面を叩いた。すると、地面が盛り上がり、コンクリートの塊が勢い良く舜多に向かっていった。しかし、舜多はそれを片手で掴むと、コンクリートの塊は舜多の手の指の間を通り抜け、六つに分かれた。
「俺はもう誰にも負けられない。」
舜多はマルリカに歩み寄った。
「あ、そう。俺はもう失うものが無い。貴様と違って何もかも失った。憧れのアキツライザーのようなヒーローにはもうなれない。だから最後まで悪役として足掻き続けてやる!!」
マルリカは周りの水蒸気を集め、沸点まで温度を上げた。湯気で周りが見えなくなった。
「アキツライザーに憧れたなら、どうしてこんなことをする!?」
舜多はドラゴンヴィランになったことで、五感が以前より研ぎ澄まされた。背後に気配を感じた舜多は、後ろへ蹴りを入れた。何かに当たった感触がしたが、それはロゴスヴィランの分身体だった。
「俺はヒーローになれなかった。あの日、デパートで弟とアキツライザーに逢った日から、憧れていた。…けど結局、憧れは届かないから憧れなんだよ!」
すると、マルリカが地面から舜多を攻撃した。舜多は飛ばされそうになったが、ドラゴンの硬い皮膚のおかげでビクともしなかった。
「弟もお袋もいないこんな世界に未練なんざ無ぇ!!俺の憂さ晴らしのために死ね!!」
マルリカは舜多の周りの地面のコンクリートを盛り上がらせ、舜多を潰そうとした。
「…円山…才智…」
マルリカは攻撃の手を止めた。確かに誰かに呼ばれた気がした。すると、コンクリートを蹴破って、ドラゴンヴィランが出て来た。
「思い出したよ。君は円山才智くん。違う?」
「…」
マルリカは黙った。
「…だったら何なんだよ?俺がその円山才智だから何なんだよ。」
「…え?」
「お前はいいよなぁ、舜多。憧れのヒーローになれたから。」
「…俺が、ヒーロー?」
「そうさ。悪いヴィランを倒す正義の味方。そして俺は悪の手先。」
「…」
「『リベルライザー』なんて大層な名前。羨ましいよ。」
「…俺は、そんな大層なものじゃない。」
「あぁ?」
「俺は、沢山の人の命を守れずに、沢山の人を傷つけた。秀飛の親や李杏くん、凛くん、燦ちゃん。李杏くんから授かった『リベルライザー』の名も、それに相応しいヒーローになれた気がしなかった。でも、こんな俺を認めてくれる人たちがいた。今はもういないけど、こんな俺を育ててくれた父さん、母さん。一緒に戦ってくれた基さんや先輩たち、燦ちゃん。そして、俺の大切な人…友祢。みんながいたから今の俺がいる。俺は独りじゃなかった。ただ、幸せから目を背けていただけなのかもしれない。だから、才智くんもきっと…」
「念仏は唱え終わったか?」
「え?」
「俺には何も無いことに変わりは無い。俺は…」
「あの時!!」
「…!」
「…あの時、約束したじゃねぇか。『一緒にヒーローになろう』、って。」
「…昔の話だ。」
「リベルライザーは『自由』の戦士。この力は、みんなの自由を守るために使う。それを脅かす者は許さない。」
「…俺は…超人類…いや、ヴィランだ。リベルライザーじゃねぇ。だから…貴様を倒す…!」
するとマルリカは舜多の胸ぐらを掴み、パンチをしようとした。しかし、それより早く舜多がパンチをした。
「あぁ…」
マルリカは倒れた。
「…才智くん。」
「同情なんかいらねぇ。それより早く首領を倒せよ。」
「…分かった。」
舜多はその場を立ち去った。
「…今、そっちに行くからな…これからはずっと一緒だぜ…空華…お袋…」
マルリカは、アキツライザーと舜多に会った日のことを思い出しながら、爆発した。
四年前。
アキツライザーがスパイダーヴィランに蹴りを入れた。
「「カッケー!」」
舜多と才智の声が合った。2人は顔を見合わせた。
「分かってるな、お前!」
才智は舜多の肩を叩いた。
「え、うん。」
突然才智に話しかけられた舜多は戸惑ったが、気持ちを共有できて嬉しかった。そして、スパイダーを倒したアキツライザーに、舜多は声をかけた。
「あ、あの!…助けてくれて、ありがとうございました!えっと…」
「アキツライザーだ。」
アキツライザーに変身している基は、舜多の目線に合わせるためにしゃがんだ。
「アキツライザーって、秋津高校非公認戦士の…?」
「よく知ってるな!でも今は、世界の平和のために飛び回ってる。では、またどこかで逢おう!」
そう言って、アキツライザーは姿を消した。
「なあ、アキツライザーって誰だ?」
才智が舜多に訊いた。
「アキツライザーってのは、去年現れた秋津高校のヒーローだよ!ちなみに、秋津高校には特撮ヒーロー研究会っていうのがあって、アキツライザーはそこによく顔を出すらしいよ!」
「秋津高校って、あの偏差値県内一の進学校か?お前、そこに行くのか?」
「うん、いっぱい勉強して入学して、部活でヒーローについて学びたいんだ!」
「じゃ、俺も秋津高校入ろうかな。」
「兄ちゃん、高校入れるの?」
才智の隣にいた空華が口を挟んだ。
「兄ちゃんに出来ないことはない!金ならほら、アテがあるしさ。」
その時、友則と祢愛が舜多を迎えに来た。
「あ、じゃあね!えっと…」
舜多は才智と空華の方を見て言った。
「俺は円山才智。こっちの弟は空華だ。」
「俺は餅搗舜多。」
舜多は両親と一緒に帰ろうとしたが、後ろから才智の声が聞こえた。
「なぁ、舜多!!今度会うときはよぉ、一緒にヒーローになろうぜ!!」
舜多は振り向き、才智を見た。才智は拳を上げていた。
「うん!!」
舜多も拳を上げた。
現在。
一日中戦い続けた基は、ついに疲労困憊し、体が動かなくなった。ユニバースに変身している信幸は、基にとどめを刺そうとしていた。その時、アキツフューチャーに変身した百瑚が、想の運転するバイクに乗りながら、ユニバースに攻撃をした。バイクを止めて降りた百瑚は、基のところに走り寄った。
「大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ。朝から戦いっ放しで、ちょっと疲れただけだ。」
基は息切れしながら答えた。
「でも、無闇に戦ってた訳じゃない。あいつの弱点を探っていた。ユニバースの力は、見た人を緊張させる能力だ。つまり、目を潰せば倒せる。」
基は百瑚に説明した。
「…目を潰せばいいんだな?」
すると、バイクから降りた想は呟いた。
「想!?どうして動けるの…?」
百瑚は不思議に思った。
「お前こそ、なんで動けるんだよ。」
想は百瑚に訊いた。
「それは、アキツフューチャーは、ヴィランの精神的な攻撃を受けないからよ。」
「…そう言えばそうだったな。…なぁ、百瑚。」
想は百瑚を見た。
「な、何よ…」
「『恐怖』ってのは、自分の身が危険に晒されるから起こる感情だ。死そのものより死に近づくという事実を怖がるのと一緒だ。だから俺は、恐怖しない。」
「…どういうこと…?」
「俺はこれから、命を懸けて、ユニバースヴィランを殺すからさ。俺には贅沢な最期だろ?」
「どうして…どうして想が死ななきゃいけないの!?そんないきなり…」
「死に場所を探してた…のかもな。それに、『死』に布石はあっても、伏線なんざ無ぇよ。」
「え…」
「百瑚…お前のこと、案外好きだったぜ。」
そう呟くと、想は懐からダークライザーのベルトを取り出した。
「それは、ダークライザーの…!」
百瑚は驚いた。
「装着。」
想が腰にダークライザーのベルトを装着すると、ダークライザーへと変身した。
「私の力を、そのダークライザーの力でコピーしようという魂胆か。でも、私の力をコピーして、君の体が耐えられるかな?」
信幸は、想の攻撃を避けた。
「触られなければ、どうということは無い。」
想の攻撃を避け続ける信幸を見ていた百瑚は、俯いた。
「こんなこと…こんなことって…」
百瑚は呟いた。仮面の下で嗚咽をしていた。
「百瑚。なんでヒーローは仮面を被るか、知ってるか?」
基は百瑚に質問した。百瑚は首を横に振った。
「それはな、表情を、心を見せないためだ。敵に心を見せたら利用される。だから、どんなハッタリでも、自信を持て。俺はそうやってこれまでやってきた。」
「…」
百瑚は立ち上がった。
「ありがとうございます、アキツライザー。」
そう基に言った百瑚は、ユニバースに向かって走った。そして、ユニバースに変身している信幸の首をパンチした。一瞬よろめいた信幸の脚を、百瑚はすかさず払った。
「今よ!!」
百瑚は想に向かって叫んだ。想は信幸に触った。
「うおおおぉぉぉぅう!!」
想は信幸の肩に前方から乗り、両目に向かって両拳を振り下ろした。
「うぐおぉぉぅぅうああ!!」
信幸は叫んだ。そしてすかさず、想の体を拳で貫いた。




