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第40話 悲しむ人がいる限り

「『七つの子』は揃った。早速改造手術をする。」

七つのベッドの上に寝ている子どもたちを見て、信幸は言った。

「その前に信幸、紹介したい人がいる。新しくニビルに入りたいらしい。」

寺田は信幸に言った。すると研究室に入って来たのは友則だった。

「どういうことだ、友則。」

信幸は友則に向かって言った。

「俺も、先日の信幸の話を聴いて、感銘を受けたんだよ。だから、ニビルに入らせてくれないか?」

「まぁいいだろう。人手は多い方が良い。それに…」

友則は意外とすんなり受け入れられたことにホッとした。

「それに、裏切ろうものならいくらでも使い道はあるからね。」

その時、信幸のその言葉に友則は背筋が凍った。しかし、信幸の野望を止められるのは俺たちしかいないと、腹を括った。

「そ、そうだ!せっかくだから写真を撮らないか?」

するといきなり寺田が言い出した。

「おい森月。このカメラで撮ってくれ。」

寺田は部下の森月という男にカメラを渡した。

「じゃあ、撮りますよ。」

そう森月が言ってシャッターを押した。



「おい、マジでガチでやるのか?」

手術室に来た寺田は、友則に聴いた。手術台の上には舜多が寝ていた。

「あぁ。この子を陸から預かった。俺が責任を持って育て、守る。信幸の抑止力にいつかなるように。」

「…分かった。」

「さぁ、手術を始めよう。」

すると友則はベルトのようなものを取り出し、舜多の腰に巻き付けた。



「信幸。七つの子の改造手術は全て終わり、藤沢病院にいた子は元に戻しておいた。」

改造手術を終えた寺田は、研究室にいる信幸に言った。

「そうか。」

信幸は素っ気無い返事をした。

「あの、その抱えてる子は一体…」

寺田はさっきから信幸が赤子を抱えているのを気にしていた。

「ところで祢愛は、友則と結婚したんだよね?」

信幸は寺田に聴いた。

「あ、あぁ。そうだけど。」

寺田はいきなりの質問に困惑しながらも答えた。

「じゃあ、祢愛の子は私のものになるはずだ。祢愛と友則は天海舜多を養子に迎えたみたいだからね。」

「あ、あぁ。ってことはその子は祢愛の…?」

「友祢と言うらしい。友則の友に祢愛の祢だ。大方、あの二人の子なんだろう。」

「でも、何で信幸が育てることにしたんだよ。」

「父親になってみたいから…かな。昔から興味はあったんだ。人間を飼うことがどのくらい大変か。」

「あ、あぁ…」

その後、寺田は続ける言葉が見つからなかった。すると信幸は沢山の盗聴器と盗撮機を取り出した。

「寺田、餅搗友則の家にこれらを仕掛けて来い。」

「…は?」

「もし友則に何かやましいことが無ければ、こんなものは役に立たないはずでしょ?」

「お、おい、まさか、友則を信用してないのか?」

「私は誰も信用していない。使えるかどうか、それだけだ。」

「信幸…お前、変わったな。」

「これも進化のためだ。もし私に背いたら…分かるな?」

「…へいへい、分かりましたよ。」

そう呟くと寺田は沢山の盗聴器と盗撮機を全て持って行った。



 現在。

「…その後、私はヤゴに改造された基をアキツライザーにし、フューチャーベルトを渡した。それからテラファイト…寺田は信幸の思想に染まっていった。そして舜多が超人類の能力を発現した時に友則を超人類メフィストに改造し、それをサイキックが洗脳して舜多と戦わせた。祢愛も改造したが失敗した。寺田は最期まで人間だったが、いつしか超人類至上主義となり、どんな非道なこともするようになった。そして信幸は…メディアのみならず、公安や警察、更には国をも味方にしようとしている。私もご覧の通り、ニビルに狙われるようになった。」

陸の話が終わると、沈黙が舜多の家を覆った。

「…で、今の話が本当だとしたら、お前らは真木信幸の計画を止められなかったわけだ。」

燦之嬢は唐突に言った。

「ちょっと燦ちゃん…」

舜多は燦之嬢を止めようとしたが、燦之嬢は立ち上がった。

「その計画が止められなかったせいで、俺様は間違いを犯し、死ななくていい奴も死んだ!どう落とし前つけてくれるんだ?」

「ちょっと待てよ!燦ちゃん!」

舜多も立ち上がった。

「貴様はただアキツライザーとアキツフューチャーを作っただけで、結局舜多のことも人任せじゃねぇか!!」

燦之嬢は陸の胸ぐらを掴みかかったが、舜多が止めようとした。

「燦ちゃん!落ち着いて!」

「落ち着いてられるか!!それに舜多も!今日初めて会った人がいきなり父親面して来て、何とも思わねぇのか!!こいつはお前を捨てたも同然だぞ!?」

「前から!!」

舜多は声を荒げた。燦之嬢は陸の胸ぐらを掴むのを止めた。舜多は話を続けた。

「前から母子手帳を見て気になってたんだ。父さ…友則さんの血液型はBO型、か…祢愛さんの血液型はO型だ。だから俺の血液型はBO型かO型のはずなのにBB型。きっとあの日…俺が友則さんを殺した日、友則さんが俺に言いたかったことって、このことなんだろうな、って。」

「舜多…」

燦之嬢は座り、友祢の方を見た。

「おいまっきー。こんな奴のこと、鵜呑みにしなくてもいいぞ。」

燦之嬢は友祢の背中をさすった。

「いや、僕は信じるよ。」

友祢はあっけらかんに言った。燦之嬢は驚いた。

「な、ど、どうして!?だって信幸って奴は、お前の…」

「うん、お父さん。まさか、ニビルの首領だったなんてね。」

友祢は微笑んだ。

「それで天海陸さん。そのユニバースを倒す方法はあるんですか?」

「え?あ、あぁ。」

陸はいきなり名前を呼ばれて驚いた。

「ユニバースを倒す方法は三つある。一つは人間態のうちに殺すことだ。しかし、この方法はほぼ不可能だ。ユニバースは他の超人類とは違って、肉体が失われない限り死なないからだ。二つ目はもう一人のユニバースを創ることだ。ユニバースには他の超人類を変身不可能にする能力がある。それはアキツライザーやリベルライザーも例外じゃない。」

「あ!」

いきなり舜多が叫んだ。

「何だ、いきなり。」

燦之嬢は舜多の方を睨んだ。

「去年の文化祭で、どうしても変身できなかった時があったんだよ。その時、確か真木信幸…ユニバースが秋津高校に来ていたんだよ。」

「あ、そう。」

燦之嬢は、あまり役立たない情報だったため、素っ気無い返事をした。陸は話を続けた。

「そして最後の一つは、ダークライザーの力でユニバースの能力をコピーすることだ。」

「あ!」

いきなら基が叫んだ。

「今度は何だよ!?」

燦之嬢も思わず叫んだ。

「あの黒いリベルライザーみたいなの、まさかあれがダークライザー…?」

基は陸に聴いた。

「そうだ。触れた相手の能力とスペックをそのままコピーする。」

「通りで強かったわけだ…俺をコピーしたから。」

基は納得した。

「しかし、ダークライザーには欠点がある。それは、装着者の命を奪うことだ。生者がダークライザーに変身すると、変身を解除した瞬間に死ぬ。しかし、長所もある。それは死体にダークライザーのベルトを巻いてもダークライザーとして動くこと、ダークライザーに変身中に絶命しても一定時間は動くことだ。」

「一体誰だよ、そんな趣味悪いの考えたの。」

燦之嬢は身を引きながら陸に聴いた。

「信幸が考案し、寺田が作った。」

陸は答えた。

「とにかく、ニビルは恐らく、これから本腰を入れる。私は、私を傀儡にしたダークライザーでユニバースを倒す。それが私の贖罪だ。」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

陸の提案に舜多が割って入った。

「それじゃあ、陸さんは…」

「おい。」

すると今度は燦之嬢が割って入った。

「何一人で逃げようとしてんだよ。貴様、実の息子に、父親らしいことしたのか!?」

燦之嬢は舜多を指差して陸に言った。

「申し訳ねぇと思ってんなら、生きて償えよ!!」

「燦ちゃん…」

舜多は、燦之嬢が自分の罪を償うためにニビルと戦っていることを知っている。

「舜多…」

陸は舜多の方を見た。

「すまなかった…一人にさせてしまって…」

陸は深々と土下座をした。

「陸さん…俺は、今はもう『産まれて来て良かった』って思ってます。確かに『何で俺はリベルライザーに』って思って死にたいこともありました。でも、友祢が側にいてくれ、燦ちゃんが共に戦ってくれ、基さんに憧れ、そして、秀飛くんを守りたいと思い、特研に入部し、李杏くんに諭され、友則さんと祢愛さんがいつも家にいてくれ、そして、あなたが俺をこの世に産まれて来させたから、俺は今生きてて良かった、って思えるんです。…俺は一人じゃないんです。」

舜多は優しく、しかし力強く言った。

「だから、例えどんなに名誉なことでも、決して命を落としたりしないでください。悲しむ人がいる限り。」

「舜多…」

友祢は舜多の言葉に反応した。その言葉はまさに友祢が舜多に言ったことと似ていたからだ。舜多は、友祢が舜多の名を呟いたので、友祢の方を振り向いた。

「舜多にしちゃあ、まともなこと言うじゃん?」

友祢はいつもの微笑みを舜多に見せた。

「バーカ、受け売りだよ。心配性な誰かさんのな。」

舜多はジト目で友祢を見た。

「どっかの泣き虫さんを見てるとソワソワしちゃってね。」

友祢は微笑みながら舜多に言った。

「お前の方が絶対泣いてるだろ!」

舜多は立ち上がり、友祢を指差した。

「バ、バカ!そんなこと、ここで言わないでよ!」

友祢も顔を赤らめながら立ち上がった。

「お前ら…本当に仲良いな。」

燦之嬢は呆れながら二人を見ていた。

「誰がこんな奴と!!」

「誰がこんな人と!!」

舜多と友祢の声はハモった。

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