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第4話 誰が為の力

「それでは次のニュースです。地方都市である松本市にある松本駅前の文房具屋で、また未確認怪物が出現し、今回もアキツフューチャーによって対応されました。未確認怪物に詳しい真木(まき)信幸(のぶゆき)教授によると…」

「ん?」

舜多はテレビのアナウンサーの言葉を聞いて、テレビの方を見た。すると、テレビに見覚えのある人が映っていた。

「この人、何処かで…真木…あっ、友祢くんのお父さんだ。こんな仕事をやっていたのか。」

 文房具屋での件以来、舜多は両親の幻覚を見ることは無くなった。しかし、両親が出て来る夢から覚めると、虚しくなることがある。いつか帰って来ることを信じるしかないと、舜多は決意していた。



「じゃあ八組はクラスマッチ開催に賛成多数ってことで。」

ホームルームで友祢がそう言い、幹事会からの連絡は終わった。席に座った友祢に、舜多が話しかけた。

「ね、ねぇ、友祢くん。」

「ん、何?」

「友祢くんのお父さんって、教授なの?」

「そうみたいだね。僕もよく分からないけど。父さん、あまり家に帰って来ないし。」

「じゃあ、お父さんがどんな仕事してるとか、知らない?」

「知らないなぁ。」

チャイムが鳴った。ホームルームの次は昼休みだ。

「まっきー!一緒に食おうぜ!」

教室の後ろの方から雅玖が友祢に言った。

「うん。」

そう言って昼食が入っているビニール袋を持って席を立った友祢は、雅玖たちの方へ行こうとした。しかし、友祢は立ち止まり、舜多の方を向いた。

「このレビューは参考になりましたか?」

「あっ、はい。」

友祢は舜多に微笑み、雅玖たちの方へ行った。舜多も、凛の席に行った。

「…友祢くんとは、仲良いの?」

凛の所へ行くと、舜多は凛にそう聞かれた。実際舜多にとって、休み時間中に話すのは友祢くらいしかいなかった。それで仲が良いと言うのかは分からなかったが、舜多は、以前に友祢から友達と言われたことを思い出した。

「う、うん。」

「…そう。」

少し間を置いた後、凛は舜多に話しかけた。

「…僕と友祢くん、どっちの方が大事?」

「え?」

舜多は、言っていることがよく分からなかった。

「どっちが大事なんて…どっちも大事だよ。」

「ふうん…。」

その時、李杏が教室に入って来た。舜多は李杏の方を見ると、李杏は友祢と話していた。

「あの人は李杏くんで、この学年の幹事長だよ。」

凛は舜多にそう言った。友祢との話が終わると、李杏は舜多たちの方を少し見た。凛は目を見開いた。李杏が教室を出ると、凛は肩の力を抜いた。

「あの人、ちょっと苦手。」

「確かに、あの厳つい顔はちょっと怖いかも。」

「そうじゃなくて…」

凛は何かを言ったが、舜多にはよく聞こえなかった。



「あ〜、李杏ね。確かに少し顔は怖いけど、根は良い人だよ。ただ、正義感が強いだけで。」

授業終了後、友祢は舜多の質問に答えた。

「じゃあ僕、幹事会行ってくるから。このレビューは参考になりましたか?」

「とてもわかりやすかったので、星五つです。」

「そういうのは真顔で言うもんじゃないよ。舜多くんって、面白いなぁ。」

友祢は笑いながらそう言った。舜多は恥ずかしくなって下を向いた。



「全八組の投票結果より、クラスマッチ開催を決定する。種目と日程、各種目担当者は先程決定した通り。明日からはパンフレット作りに入る。以上、本日の幹事会を終了する。」

李杏はそう言って幹事会を終えた。李杏が廊下を歩いていると、凛と逢った。凛は少し驚いたような顔をして、通り過ぎようとした。

「待て。」

李杏は凛を呼び止めた。

「…な、何?」

「身の回りに罰を受けなければならないモノはいるか?」

「…やっぱり、あの裏サイトの管理人は、李杏くんだったんだね。」

「弱い者のためだ。」

その時、部室棟の方から爆発音のような大きな音がした。凛と李杏が窓から部室棟の方を見ると、黒煙が上がっていた。

「まさか…!」

李杏は階段を駆け下りて部室棟の方へ走っていった。

「あ、待って!」凛も李杏の後を追っていった。



 学校の北側にある部室棟は燃え盛り、次々と生徒たちが部室から出て来る。教師たちは怪我をした生徒たちの手当てをしながら、通報した消防車と救急車の到着を待つ。舜多たちの担任の山畑先生もそこにいた。無事だった生徒から、まだ中に人がいると叫ぶ声がする。李杏は、体に力を込めてバッタの怪物になったかと思うと、すぐに白いマントを羽織りピエロの仮面を付けて、部室棟へ向かった。

 照貴も生徒たちの騒ぎに駆けつけた。アキツフューチャーになって救助をしようと思ったが、部室棟の北側で部室棟の方を見ている二体のヴィランを発見した。

「装着。」

照貴はすぐにアキツフューチャーになり、二体のヴィランに蹴りを入れようとした。すると、二体のうちの一体のヴィランが、持っていた杖を一振りしたかと思うと、アキツフューチャーの体は跳ね返された。二体のヴィランのうち一体は、以前の文房具屋での件で照貴に麻酔針を撃ったヴィランだった。そして、杖を持っているもう一体のヴィランは、照貴にとって見たことのないヴィランだった。

「いや、そのピエロの格好は…あの時の…!」

「やれやれ、アイツのせいで俺様に冤罪がかかるじゃねぇか。俺様はジョーカー。そしてあっちはホッパーだ。」

「ジョーカーヴィランだろうがホッパーヴィランだろうが、どっちでもいい、そんなもの。」

照貴はジョーカーヴィランに蹴りを入れようとするが、脚が凍って地面とくっついてしまった。

「俺様の魔法さ。アキツフューチャーに精神攻撃は効かないらしいから、俺様の魔法は効くだろ?」

「おい、早くホッパーを探すぞ。」

もう一体のヴィランがジョーカーヴィランに囁いた。

「分かってますよ、マルリカ。一年四組小畠李杏、七つの子の裏切り者は罰を受けなければならない…!」

ジョーカーヴィランはそう言い、二体のヴィランはジョーカーヴィランの魔法によって消えた。照貴は凍った脚を動かせるようになったが、一足遅かった。

「逃がさない…!」

照貴は校内を探し、やっと二体のヴィランを見つけた。

「フューチャーパンチ!」

照貴は、気づかれないように背後からマルリカヴィランにフューチャーパンチを食らわせた。マルリカヴィランは校庭の方へ吹き飛んだ。そしてジョーカーヴィランの杖を弾き、動けないように固め技をかけた。その素早さに、二体のヴィランは為す術が無かった。

「体がくっついていれば、俺に魔法をかけたら一緒にかかるんじゃないか?」

すると照貴は、間髪入れずにジョーカーヴィランに膝蹴りをし、フューチャーパンチを食らわせた。吹き飛んだ二体のヴィランの行方を追おうとした照貴だったが、校庭の何処にもその姿は無かった。



 照貴がジョーカーヴィランとマルリカヴィランと戦っている頃、舜多も部室棟に駆けつけていた。そこでは、先日舜多に蹴りを入れたピエロが、部室棟に取り残された生徒たちを助けていた。そして、羽織っていた白いマントとピエロの仮面が焼け落ちて、バッタの怪物の姿がそこにはあった。生徒たちが困惑してる中、舜多は人混みから離れ、昇降口前の多目的用トイレで変身した。

「トイレで変身ってヒーローぽくないけど、人に見られてもな…変身!」

舜多は変身し、ホッパーヴィランの所へ行った。

「そこで何をしている!」

「俺のやることはただ一つ。弱い人々を守ることだ。」

「どの口が言う…!」

ホッパーヴィランは舜多にパンチされそうになるが、素早いジャンプでかわし、そのまま隣の体育館の屋根の上に立った。

「俺を構うより、もっと他にやることがあるだろ?お前も他の怪物と同じだな。」

「なんだと…?!」

すると、生徒や教師の人混みの中で、泣き叫ぶ廉の声がした。

「まだ中に…ェグッ…まだナガに友祢がァ…!!」

舜多が体育館の上を見ると、ホッパーヴィランはもういなかった。舜多は燃え盛る部室の中へ入った。二階建ての部室棟の二階の床は焼け落ち、その瓦礫の下に友祢はいた。

「友祢くん…!」

舜多は瓦礫を退かして友祢を抱えた。その時、舜多たちの上から部室棟の屋根が落ちてきた。それを見ていた生徒たちは驚愕し、廉は何度も友祢の名を叫んだ。しばらくすると、炎の中から友祢を抱えた青いヒーローが姿を現した。

「…しゅんた…」

「え?」

舜多には今、友祢が自分の名を呼んだ気がしたが、自分は今変身してるから、そんなことはないと思った。舜多は人混みの中にいた山畑先生と廉と斗織の所へ行き、友祢を渡した。

「煙を吸ってるかもしれないし、頭に怪我をしている。すぐに手当てを。」

山畑先生は養護教諭の先生を呼んできて、友祢を手当てした。

「今は応急処置しかできないけど、もうすぐ救急車が来るからな。」

「友祢ぇ〜…グスッ…良かったよぉ〜…グスッ」

「お前はいい加減泣き止め。」

泣いている廉にそう言った斗織は、辺りを見回した。そこに青いヒーローはもういなかった。



 消防車と救急車が来て、生徒たちの手当ての手伝いを終わらせた百瑚は、照貴を見つけた。

「先輩!何処行ってたんですか!?」

「いや、ヴィランと戦っててね。どうやら、ピエロの顔をしたヴィランがピエロの仮面を被ったヴィランを追っているみたいだな。」

「え、そうなんですか?でも、どうして…」

「ヴィランの考えてることなんか知るか。ヴィランは一体残らず殺さなきゃいけないんだよ。」

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