第36話 悪夢に侵される
ツッタカターには、舜多がリベルライザーに変身した後にドラゴンフライヴィランになった動画が載せられていた。それが波紋を呼び、公安調査委員会と秋津高校職員会は対策を練るため、翌日に緊急会議を開いた。そのため、授業は休校、生徒は自宅待機となった。会議では、リベルライザーを駆逐するか、協力要請をするかで平行線になっていた。桜子は、リベルライザーを駆逐しようとしていた。
「リベルライザーは排除すべきです!彼は青い仮面を被って制御しているようですが、もしまたあのように暴走したら…」
「いや、リベルライザーはヒーローだ。協力してもらった方が良い。」
小中教頭は桜子に言った。
「それにリベルライザーは我々の生徒だ。排除は出来ない。」
松竹校長もそう言った。
「それは教員目線の主観的な意見だわ。私は世界の平和について話しているの。」
桜子は一蹴した。
「あの…」
すると、山畑先生が恐る恐る挙手をした。
「それなら、本人に直接聴けば良いのでは無いでしょうか。本人のいない所で会議していても、埒が開かない気がして…」
桜子は山畑先生を睨んだが、しばらく考え込むと、口を開いた。
「分かりました。あなた、餅搗舜多の担任よね?今すぐに彼を呼びなさい。」
「はい。」
自宅待機していた舜多は、山畑先生に呼ばれて秋津高校へ向かった。玄関の扉を開けると、そこに永夢がいた。
「あ…!」
その瞬間、永夢は舜多を玄関に押し倒して扉を閉めた。
「…お前には、聴きたいことが沢山ある。」
舜多は起き上がり、永夢に言った。
「…はぁ。舜多くん。まさか本当に俺を疑ってる?」
永夢は頭をかいた。
「そうやって頭を触る時、嘘をついているか何かを隠している時…だよな?あの時からそうだった。」
「あの時…?」
永夢は少し口角を上げた。
「中学時代、俺と永夢くんは同じクラスだった。俺はお前がいじめられていたから、許せなくてお前の味方になった。」
「…そんなこともあったっけ。」
「でも、今なら納得できる気がする。お前はあの時、怪物扱いされていじめられていたからな。」
すると永夢は扉に寄りかかった。
「分かったよ。もう嘘はつかない。俺は利用してるんだ。現影、真佑、テラファイト…そして舜多…いや、リベルライザー。」
「永夢くん…俺も分かった。お前がまた誰かを悲しませるなら、俺はお前を止める。」
「でももういいんだ。俺は俺の生きたいようにする。もうお前はいらないよ。」
そう言うと、永夢はナイトメアヴィランになった。
「変身!」
舜多もリベルライザーに変身した。永夢は扉を蹴破って外に出た。
「待て!」
舜多は永夢を追いかけた。すると、舜多は何かにつまづいた。隠れていた真佑が舜多の脚をかけてつまづかせた。そして真佑は、護身術の要領でリベルライザーの腕を背中側に回して自由を無くした。
「そのまま捕まえてろ!」
すると永夢は、舜多と真佑に向かって黒い霧を吐いた。永夢は力尽きて人間の姿に戻った。黒い霧が晴れると、真佑と倒れた舜多がいた。
「黒い霧は、余程心が強くないと意識を失う…真佑、お前を何がそこまで強くさせる…?」
永夢は真佑に聴いた。
「私は、永夢くんの隣にいられれば、それでいいの。」
真佑は唇を永夢の唇に合わせた。すると永夢は舌で真佑の舌を舐め回した。
「ん…?ここは?」
舜多が目を開けると、友祢が立っていた。
「あれ、友祢。確か今日は自宅待機って…」
舜多は立ちながら言った。
「何言ってんの!もう終わったんだよ。何もかも。」
「え…?」
舜多は、友祢の言葉が理解出来なかった。
「舜多お兄ちゃーん!」
すると、秀飛が舜多に抱きついてきた。
「あのね、舜多お兄ちゃん。僕、もういじめられなくなったよ!」
「え、そ、そうなのか?」
舜多は戸惑った。
「おーい、まっきー!!」
すると今度は廉が友祢の名を叫びながら走って来た。
「あ、舜多くん!今まで酷いこと言って、ごめんなさい。でもおいら、もう体は元通りだから、これからはリベルライザーと協力するよ!」
廉は舜多の肩をポンポン叩いた。
「ったく、だから全て終わったって言ったろ?もう戦う必要は無いんだよ。」
すると、斗織が歩いて来た。斗織の脚は、元に戻っていた。
「おい餅搗舜多。リベルライザーとして頑張ったらしいじゃないか。」
するとどこからか李杏も来て、舜多にそう言った。
「舜多くん。僕、舜多くんにいっぱい迷惑かけた。だからこれからは舜多くんの言う通りに生きるよ。」
今度は凛も来た。いつの間にか八組の皆、山畑先生、特研の先輩たちも来ていた。
「舜多。」
舜多は名前を呼ばれて振り返った。すると、友則と祢愛がいた。
「お父さん、お母さん…」
舜多は涙が止まらなくなった。祢愛は舜多を抱きしめた。
「もう、一人で頑張らなくていいのよ。これからは皆で楽しく過ごしましょうね。」
「お母さん…」
舜多が祢愛の顔を見ると、祢愛の顔に黒い大きな穴が空いていた。祢愛の他の人も同じだった。
「う、ぅうわぁあ!!」
舜多は腰を抜かした。
「ねぇ舜多お兄ちゃん、お父さんとお母さんがいないんだ。どこ行ったか知ってる?」
さっきまで秀飛だったものが舜多に語りかけた。
「知ってるよね?知らないわけないよね?だってお前が殺したんだから!!」
秀飛だったものは悲鳴のような音を出してその場を転げ回った。
「ねぇ舜多くん、まさか、おいらたちと仲良くなりたいだなんて、思ってないよね?」
廉だったものが舜多に言った。
「まさかまさかまさかまさかまさかまさかおいらおいらおいらおいらおいらおいらたちとたちとたちとたちとたちとたちとギャハハハハハハハハハハハハハハ!!」
廉だったものはいきなり奇声を上げて自分の指、毛、耳、陰茎などを毟り始めた。
「その体、僕にちょうだい?」
凛だったものが舜多の顔を舐め回した。
「何で僕は幸せになれないの?何で舜?多くんは?幸せなの?ずる?いずるい?ずる?いず?るいずるい?ずる?いァァァァァァァァァァァァァ??」
凛だったものは舜多の股間を舐め回そうとして来たが、恐怖を覚えた舜多に突き飛ばされ、動かなくなった。
「俺を見なかったか、リベルライザー。」
李杏だったものが舜多に聴いた。
「俺がいないんだ。俺はどこへ消えた?それとも、お前が殺したのか??リベルライザーは人殺しだ??」
李杏だったものは舜多の周りをぐるぐる回った。
「弟!?を!殺し?や!がっ!?て?」
いきなり想だったものが叫び声のような音を出した。
「人を救えないならリベルライザーなんか辞めちまえ!!お前は生きてる意味なんかないんだよ!!」
友則だったものは舜多の方を見て言った。
「みんな待ってる。あなたに石を投げたくて、刃物を突き立てたくて、内臓を引き出したくて。みんなって?お前の好きな人たちだよ!!」
祢愛だったものは舜多の前で奇妙な踊りを踊り始めた。舜多は恐怖で言葉が出なかった。脚がすくみ、立つことさえできなかった。ただ涙がと尿が無意識に出ていることは分かった。
「ねぇ、舜多。」
友祢だったものは舜多の前に座った。
「これはナイトメアヴィランが見せている悪夢。」
すると、友祢だったものは友祢の姿に戻った。
「最初に舜多の望んだ架空の未来を見せ、その後に舜多の後悔や嫉妬、心の奥にある疑念や嫌悪を具現化させているんだ。分かる?」
「ち、違う…」
舜多は小さな声で呟いた。すると、友祢は舜多に抱きつき押し倒した。
「でも僕は違う。舜多のことを悪く言わないよ。」
友祢は舜多にまたがり、舜多の服を脱がした。いつの間にか友祢も裸だった。
「ご、ごめんなさい…ごめんなさい…」
舜多は硬直し、謝り続けた。
「謝らなくていいんだよ。だって舜多は…」
友祢は仰向けの舜多の裸体の上にうつ伏せになり、舜多の耳元で囁いた。
「永遠にここで僕とひとつになるんだから。」
友祢は舜多を抱きしめ、ディープキスをした。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
舜多は動けないまま、泣きながら許しを請いた。
「マルリカ、いつもの。」
ニビルの秘密基地で、モジャコヴィランはマルリカヴィランに指示をした。マルリカはモジャコのマッサージをした。
「このハゲー!!揉むところが違うだろぉ!?違うだろー!!」
モジャコはマルリカを殴った。
「お前みたいな役立たずを私がわざわざ世話してあげてるのよ?感謝しなさいよ!!」
「…モジャコ様。」
するとマルリカは液体の入った瓶を取り出した。
「あら、何?それは。」
「えっと…元気になる薬っす!」
「フン、気がきくじゃないの。」
モジャコはマルリカから瓶を奪って飲んだ。すると、モジャコの息が上がり、鼓動が早くなり、その場に倒れた。
「な、何だか知らないけど、ラッキー!!おい、阿婆擦れババァ!!今まで散々こき使いやがって!せいぜいリベルライザーにでも殺されるんだな!!」
そう言うとマルリカはモジャコに唾を吐き、どこかへ消えた。
「ま、待ちなさい…」
するとモジャコは叫び声と共に巨大化し、タイタンモジャコとなった。ニビルのアジトは破壊された。タイタンモジャコは地下にあったニビルのアジトから地上へ這い出した。無数のミサイルと触手、中心に大きな蕾のような球体があるその姿は、禍々しい植物のような姿だった。タイタンモジャコが現れたのは総合球技場アルヴィンだった。アルヴィンではサッカーの試合が行われており、避難の指示は出ているものの、観客がパニックになって思うように避難が進んでいない。
「野暮用で故郷に帰って来たが…こいつはとんでもないな。」
故郷に帰って来たアキツライザーはアルヴィンへ瞬間移動をして来た。




