第35話 露わ
トイレに行った舜多は、道に迷ってしまった。すると、誰もいない裏路地のような所に出た。
「え…ここどこ?もうすぐそこが住宅街なんだけど…」
舜多が途方に暮れていると、FQアイランドの塀の外にヴィランを見つけた。
「あのヴィラン…まさか!」
舜多はそのヴィランの近くまで走った。
「変身!」
舜多はリベルライザーに変身し、そのヴィランの所へ向かった。そのヴィランは、マルリカヴィランだった。
「なんだ、あの時の小物怪人かよ。」
「小物って何だよ!まぁ、そうなんだけど…別に今は襲ったりしねぇよ。」
マルリカはその場に座り込んだ。
「にしても、ナイトメアの言う通りだったな。今日、FQアイランドにリベルライザーが来てるって。」
「ナイトメア…お前らニビルの目的は何だ!何しに来た!」
舜多はマルリカの襟元を掴んだ。
「別に大したことじゃねぇよ。それに俺、超人類になったはいいけど、上司にこき使われて、ろくに休暇も取れないし、給料の割に重労働だし…一緒に入った兄弟も改造手術に失敗して…」
「うわぁ、それブラック企業じゃん。違法だよ、それ。」
舜多はマルリカを突き飛ばして哀れんだ。
「改造手術してる時点で違法だろ!…給料高いっていうから入ったのに…」
「…なんか、お前も大変だな。何でニビルなんかに入ったんだよ。まさか、お金のためか?」
「ああそうだよ!!俺には金が必要なんだよ!!悪いか!!ったく。あのナイトメアって奴、俺にこんなこと押し付けやがって。」
マルリカは手に持っていた瓶を見た。
「それは?」
舜多はマルリカに聴いた。
「俺がお前に言うと思うか!あぁ苛立つ腹立つ原辰徳だよ!あのナイトメアって奴、俺より年下の癖に幹部だからって偉そうに。あ、そうだ、リベルライザー。お前にいいこと教えてやるよ。」
「え?」
「ナイトメアは今、ある人を探してるらしい。ニビル発足に関わる人らしい。」
「誰だよ、それ。」
「俺みてぇな下っ端が分かると思うか!?」
「だったら言うなよ!」
「くそ!こうなったらストレス発散に暴れてやる!」
そう叫ぶとマルリカはFQアイランドの敷地内に入った。
「あ、待て!」
舜多はマルリカを追いかけた。
「おらぁ!!リア充共が…!!」
そう叫ぶと、マルリカは様々なアトラクションを壊していった。逃げ惑う人々の中に、うずくまる小学生の兄弟と、二人に覆い被さるように守る母親がいた。その三人の上から、マルリカが壊したアトラクションの瓦礫が降る直前だった。
「あ…!」
その様子を見たマルリカは、その落ちて来る瓦礫を粉々にして、うずくまっている親子を守った。その親子は驚いた様子だったが、すぐに逃げ出した。
「マルリカ…」
その様子を見ていたリベルライザー姿の舜多は、驚いた。リベルライザーの気配に気づき、マルリカはリベルライザーの方を向いた。
「お、覚えとけよ!」
そう言ってマルリカはどこかへ消えた。その時、舜多は、周りがスマートフォンのカメラを向けた人たちに囲まれていることに気づいた。
「あ、えっと…」
舜多が困っていると、どこからか声がした。
「はーい!リベルライザーのゲリラヒーローショーはこれでおしまいでーす!それじゃあみんな、またね〜!」
何がなんだか分からないまま、舜多は何者かに手を引っ張られ、裏路地に来た。
「一体なんなんだよ!」
舜多は手を振りほどいた。手を握っていたのは、友祢だった。
「友祢、どうして…」
「どう?僕、ヒーローショーのお姉さんをイメージしたんだけど。結構サマになってなかった?」
友祢は微笑んだ。
「あ、ありがとう…」
舜多は変身を解いた。舜多の顔は涙で濡れていた。
「ちょ、ちょっと舜多!」
友祢は戸惑ったが、ハンカチを取り出して舜多に渡した。
帰りのバスの中も、舜多の隣は空席だった。行きのバスの中の騒がしさとはうって変わって、疲れからか誰の声も聞こえない。すると、舜多の隣に誰かが座ってきた。舜多が横を向くと、肩に手を置かれていたため、舜多の頬に人差し指が刺さった。
「と、友祢…」
友祢はシーっと、人差し指を口の前に持っていった。
「みんな、寝ちゃったみたい。」
友祢は舜多の耳の側で囁いた。
「ぅあっ…ちょ、お、俺、耳弱いんだよ。」
「ふふっ、可愛い。」
「だ、誰が!」
舜多は赤面して声を荒げそうになったが、すぐに抑えた。
「舜多は何乗ったの?」
「お、俺はコーヒーカップとか…」
「誰と?」
「え、一人だけど…?」
「それ絵面ヤバいよ。てか、全然楽しくなかったでしょ。」
「あ、うん。みんな、絶叫系行っちゃうし…」
「そうだね…今度は一緒に行こう。」
「え、誰と?」
「僕と、舜多だよ。」
「え…いいの?」
「あ、秀飛くんも誘おうか。」
「あ、あのさ。」
「何?」
「俺、そんなに人と話すの得意じゃないし、陰キャだし…いくら命の恩人とはいえ、こんなに友祢にお世話になるのは悪いよ。友祢は、本当は、ノリが良くて馬が合う勇佑くんや雅玖くんと一緒がいいんじゃ…」
「だーかーら、何度も言ってるけど僕が舜多と居たい、って思ってるの。だから舜多はそんなことで悩まなくていいよ。」
「そ、そう…あ、ありがとう。」
「ふふっ、やっぱり舜多は…」
友祢の声が聴こえなくなったかと思うと、肩に何かが寄りかかった。それは友祢だった。眠りについたみたいだった。
「俺は…守りきれるのかな…こんなに俺を思ってくれてる、大切な人を…」
そう思っているうちに、舜多も眠りについた。
大学教授の天海陸は、今日も終電で誰も待っていない家に帰る。無人駅を出ると、街灯の明かりだけが頼りの、薄暗い道を歩く。家であるアパートの明かりが見えた時、道路に誰かが倒れていた。
「あ、あの…だ、大丈夫ですか?」
陸はその倒れている人に声をかけ、肩を叩いた。陸には、その人は女子高生に見えた。
「怪我とかは無いかい?家はどこだい?」
「あの…肩を、貸して、貰えませんか…?」
「あ、あぁ。」
陸はその女性の腕を自分の肩に回し、女性を立ち上がらせた。
「私の家、この角を曲がった所で…」
そう女性が言ったため、陸は角を曲がった。すると、そこにはヴィランがいた。
「サンキュー、真佑。」
そのヴィランはナイトメアヴィランだった。ナイトメアはそう呟くと、陸と真佑を催眠ガスで眠りにつかせた。
二年生の遠足から一週間後、現影が特研の部室を訪ねた。
「あら、現影。久しぶり。」
部室にいた百瑚は、現影に挨拶をした。
「百瑚先輩、久しぶりです。ちゃんと話すのは中学以来でした…っけ?」
「そんなことより、どうしたの?現影がこんな所に来るなんて。」
「はい、実は…餅搗舜多に会いたくて。」
「え、俺?」
同じ部室にいた舜多は、いきなり自分の名前が出て来て驚いた。
「永夢のことについて…聞きたいことがあるんです。」
「!!」
舜多は再び驚いた。現影は、舜多を屋上に続く階段の踊り場に連れて来た。
「永夢から聴きました。あなたのこと。」
現影は舜多に向かって言った。
「そして俺は、永夢に頼まれた。あなたが本当にこの世界に必要な存在かを確かめて欲しい、と。」
「え…何言ってるの?」
舜多は現影の言葉に戸惑った。現影は舜多の背後に周り、舜多に抱きついた。
「え、ちょっと、現影くん、駄目だよぉ…!」
すると、舜多の背中に触れていた現影の体の柔らかい感触が、硬く、冷たくなった。舜多の腰に回されていた現影の腕が、白くなった。
「本当の姿を、見せてくれ。」
現影が舜多に耳元でそう囁くと、舜多は膝から崩れ落ち、鼓動が早くなった。舜多は振り向いた。そこにはサイキックヴィランがいた。
「ま、まさか…」
舜多の息は更に荒くなった。
「流石リベルライザーだ。そんなすぐには洗脳できないか。メフィストの時のように…」
「う、う、うわぁぁー!!」
舜多はサイキックの洗脳に抗い叫びながら、屋上に出た。
「今、舜多くんの叫び声がしたけど、どうしたの!?」
踊り場に百瑚と想が来た。その時には既に、現影は人間の姿に戻っていた。
「しゅ、舜多さんが…!」
現影は腰を抜かして屋上の方を指差した。百瑚と想は屋上に来た。舜多は相変わらず叫んでいた。すると舜多の腰からリベルライザーのベルトが出て来て、リベルライザーに変身した。しかし、舜多はすぐにベルトを取った。するとリベルライザーの青い鎧が取れ、ヴィランの姿が露わになった。
「え…どういうこと…?」
百瑚は戸惑った。舜多は、蜻蛉の超人類、ドラゴンフライヴィランとなった。ドラゴンフライは尻尾を振り回して屋上を壊し始め、四本の羽で飛ぼうとした。
「とにかく、あいつを止めるぞ!」
「え、えぇ。…装着。」
想はイプピアーラヴィランに、百瑚はアキツフューチャーにそれぞれ変身した。舜多が飛び立つ前に二人は尻尾を掴んだ。
「そのまま抑えてろ!!」
すると、遠くから燦之嬢の声がした。燦之嬢はジョーカーヴィランになり、ドラゴンフライの羽を氷魔法で凍結させた。中庭に落ちたドラゴンフライを、燦之嬢は重力魔法で動きを抑えた。
「おい!こいつを巻けばいいんじゃねぇか?」
想は、近くに落ちていたリベルライザーのベルトを拾った。想はベルトをドラゴンフライの腰に巻いた。すると、リベルライザーの姿に戻った。舜多はしばらく呻き声を上げていたが、しばらくすると気を失った。
舜多が目を覚ますと、自分の部屋にいた。
「目ぇ覚ましたか。」
部屋には、燦之嬢がいた。
「さ、燦ちゃん…」
「お前、自分が暴れたこと、覚えてるか?」
「え、俺が…?」
「ハァ…どうやら、覚えてねぇみてぇだな。それとお前、明日は忙しくなりそうだぞ。リベルライザーを生かすか殺すか、明日決めるらしいからな。」
「え…?」




