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第31話 叫び

 その後、晴都は今回の騒動を受け、騒音の苦情問題を解決するため、生徒、教員、地域の人を集めて鼎談を開くことを決めた。生徒大会でこれは承認された。近隣住民が何に困っているのかを直接聴き、対策を考えることを目的とした鼎談は、地域の人とのコミュニケーションや情報交換も図れるため、誤解も無くなり、ハンマーヴィランやバールヴィランのように強硬手段に出る地域の人は居なくなった。

 そして、永夢は授業に出席することは無くなった。



 数日後、秋津高校は平穏を取り戻したように見えた。体育館のギャラリーでは、ダブルダッチ部が次の大会に向けて練習をしていた。

「先輩!ここはどう跳ぶんですか?」

「先輩!ここの縄の回し方を教えてください!」

廉は後輩に引っ張りだこになっていた。その後輩の中に、真佑もいた。

「大変だねぇ、廉ちゃん。」

友祢は意地悪そうな笑顔で廉を見た。

「あ、まっきー!もう、助けてよ〜!」

「廉ちゃんは僕たちの代の中でもうまいからね。廉ちゃんのパフォーマンスを見て入部した一年も少なくないんだから。」

「ま?ついにおいらのカッコよさに時代が追いついちゃったかな〜」

廉が短くなったシャツの裾を下に引っ張りながら胸を張った。

「体は大きくなっても中身は子どものまんまだな、廉。」

すると、ギャラリーの入り口から聞き覚えのある声が聞こえた。斗織だった。

「斗織!」

廉は斗織の方へ走って行き、飛びついた。

「重っ!お前太った?」

「はぁ!?おいらは成長期なんです〜」

「てか、まだ新しい服買ってないのか。赤いパンツが見えてるぞ。」

「…!斗織の…エッチ…!」

廉と斗織が話しているところに、友祢が来た。

「もしかして斗織、跳びに来たの?」

友祢は斗織に聴いた。

「ああ。この運動用の義足を履いての練習も兼ねてな。」

斗織は左脚の義足を、ズボンの裾を上げて二人に見せた。

「じゃあおいらたち、また跳べるの?」

「うん、そうだね。」

友祢の言葉に、廉は満面の笑みを見せた。友祢は廉の頭を撫でようとしたが、廉の背が思ったより高かったため、肩を組んだ。

「廉…その、ありがとな。あの時、お前が俺を叱ってくれなきゃ、俺はダブルダッチを諦めてたよ。」

「ううん。斗織が頑張ったからだよ。おいら、またこの三人で跳べるの、すっごく嬉しい。」

「廉…お前、成長したな。」

「そりゃあおいら今、成長期だから。」

「ふっ、そうだな。」

斗織は廉の頬を撫でようと手を伸ばした。

 その時だった。廉がいきなり座り込み、苦しみだした。

「だ、大丈夫!?廉ちゃん!」

「おい、廉!」

友祢は廉の背中をさすった。友祢は、舜多が言っていたことを思い出した。斗織は、左脚を失くしたあの日を思い出した。廉は叫びながらのたうち回った。廉の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。他の部員も心配そうに集まってきた。

「もしもし、永夢くん?」

真佑は人混みから離れて電話をしていた。その様子を見ている人は誰も居なかった。廉の叫びは窓ガラスを割るほど大きくなっていった。その瞬間、部員の誰もが目を疑った。

 廉がヴィランになったのだ。

 部員はすぐに入り口から避難した。そして、ギャラリーに公安調査官たちがやって来た。

「おいまっきー!逃げないと!」

斗織は、入り口からギャラリーに残っている友祢に声をかけた。しかし、廉の叫びで声はかき消された。友祢は耳を塞ぎながら、ヴィランになった廉の方へ歩み寄った。

「これは迷惑極まりないわ!今すぐヴィランを駆除しなさい!」

桜子は体育館の外から、ギャラリー内にいる調査官たちにイヤホンを通して指示した。しかし、桜子のイヤホンからは廉の叫び声しか聞こえない。ギャラリーにいる調査官たちも、友祢がいるため攻撃が出来ない。その時、割れた窓ガラスから何者かが侵入し、廉に蹴りを入れた。叫び声は止まった。侵入して来たのは紫の複眼をしたアキツフューチャーだった。アキツフューチャーが廉にとどめを刺そうとした時、友祢が間に入った。

「待って!殺さないで!彼は、僕の友達なんだ!」

アキツフューチャーは、友祢の言葉も聞かず、友祢を蹴りで突き飛ばした。

「大丈夫、お前は殺さない。しかし、全くお前は間抜けだなぁ。部活の時から思ってたけど。まぁ、兄も間抜けだったがな。なぁ、シャウトヴィラン?」

アキツフューチャーはシャウトヴィラン、廉に囁いた。すると、桜子が掃滅弾を突きつけながらアキツフューチャーに歩み寄った。

「何が目的なの、十六夜永夢…いや、ナイトメアヴィラン!」

桜子はアキツフューチャーに問うた。するとアキツフューチャー、永夢は素早く桜子の足を捌き、掃滅弾を奪い、桜子に突きつけた。

「それを撃ってみろ。お前の首が飛ぶぜ?」

その時、いつの間にかリベルライザージョーカーとジョーカーヴィラン、燦之嬢がアキツフューチャー、永夢の背後に立ち、永夢の首を絞めていた。

「瞬間移動魔法か、チートだろ…」

永夢は呆れたように呟いた。

「大丈夫?」

リベルライザージョーカー、舜多は倒れている友祢に肩を貸した。

「う、うん…」

舜多は友祢のシャツをめくった。永夢に蹴られたところが腫れていた。

「保健室で手当てした方が良い。廉くんは、俺たちが必ず助ける。」

舜多は友祢に言った。友祢は頷き、入り口にいた斗織の所へ行った。

「大丈夫か?」

斗織は心配そうに友祢に肩を貸した。

「うん。あとはリベルライザーに任せよう。」

友祢は微笑んだ。

「おいサイキック!」

すると永夢はそう言った。その時、サイキックヴィランが体育館の方から上がって来た。

「氷魔法!」

燦之嬢は永夢の首を絞めながらサイキックに氷魔法を施したが、サイキックの歩みが止まることは無かった。

「止まれ!」

舜多はサイキックに向かって走り出した。

「待て!」

燦之嬢が舜多に叫んだ時にはもう遅く、サイキックは舜多に触れた。

「ジョーカーを殺せ。」

そしてサイキックは呟いた。舜多は杖を落として青いリベルライザーの姿に戻り、燦之嬢に向かって走り出した。アキツフューチャーの姿の永夢を押しのけ、燦之嬢にパンチをした。サイキックも、すかさず燦之嬢に蹴りを入れた。

「おい待て」

燦之嬢の言葉を聞かず、舜多とサイキックは燦之嬢をリンチする。

「さて…あとはこいつか…」

永夢は廉の方を見た。しかし、そこに廉はいなかった。

「一体、どこに!?」

永夢は気配を感じて上を向いた。廉は永夢の頭上に跳び、そのまま永夢を蹴った。永夢はギャラリーの割れた窓の外に飛ばされた。その時、フューチャーベルトも飛ばされ、永夢はナイトメアヴィランの姿になった。

「おいらの…おいらの大好きな兄貴を…馬鹿にするなぁ!!」

廉は追い討ちをかけるために永夢の所へ行った。

「うぜぇんだよ、お前!!」

すると永夢は廉に霧のようなものを吐いた。廉は人間の姿に戻り、眠りについた。

「本当は黒霧で永遠に眠らせたかったが、ただの眠りにつく白霧にした。その方が痛めつけ甲斐がある。」

永夢はナイトメアヴィランの姿のまま、倒れている廉の手脚や顔を踏みつけた。

「フューチャーパンチ!!」

すると、廉を痛みつけていることに夢中になっていた永夢は、先程飛ばされたフューチャーベルトを拾って装着した百瑚にパンチを食らわされた。そのまま倒れた永夢は、人間の姿に戻った。

「弱い者いじめに夢中で俺たちに気づかなかった、ってか?間抜けだなぁ。」

百瑚の隣には想もいた。

「酷いことを…」

百瑚は、顔や手脚が血だらけで原型を留めていない廉の様子を見て、悲しみと怒りに震えた。そして、いつの間にか永夢の周りは調査官たちに囲まれていた。

「俺がこんなことで倒れると思うか?」

永夢はナイトメアヴィランの姿になり、白霧を吐いた。

「やば!」

想はその場を去った。調査官たちは、予め準備していたガスマスクを付けた。

「くそぉ!」

永夢はその場を離れようとした。掃滅弾を撃とうにも、校舎が掃滅弾の爆発に巻き込まれる恐れがあるため、思うように撃てない。その時、永夢に銃弾が撃たれ、永夢は転んだ。撃ったのは、リベルライザーマザーだった。

「リベルライザー…!サイキックが洗脳したはずじゃ…」

「どうやら洗脳時間には個人差があったことを知らねぇみたいだな。サイキックならどっか行ったよ。」

疑問に思っていた永夢に、リベルライザーマザーの後ろからガスマスクを付けた燦之嬢が答えた。

「永夢くん…どうして…」

舜多は呟いた。

「ハッ…万事休すか。」

永夢は人間の姿に戻り、座り込んだ。すると、マザーガンを下ろした舜多が永夢の方へ歩み寄った。その時、空から爆弾のようなものが落ちて来た。

「危ねぇ!!」

燦之嬢はすぐにジョーカーヴィランになり、校舎の上に防御魔法を施した。爆弾は防いだが、かなりの衝撃だった。すると、誰かの攻撃により防御魔法が破られた。モジャコヴィランとサイキックヴィランだった。

「逃げるわよ。」

モジャコヴィランは、胸の二つのミサイルを発射し、煙に巻いた。気づいた時には、永夢の姿さえ無かった。

「とにかく今は廉ちゃんを…!」

燦之嬢は廉に回復魔法を施した。しかし、体がボロボロになっているため、未だ意識が戻らなかった。

「調査官が先程救急車を呼んだわ。もうすぐ来るはずよ。」

桜子は燦之嬢に言った。

「公安は念のため近隣の警護を!また何かあってからじゃ遅いわよ!」

「はい!」

調査官たちは次々に散らばっていった。

「でも、フューチャーベルトが戻って来て良かった。」

百瑚はフューチャーベルトを外しながら言った。

「あれ、リベルライザーは?」

百瑚は辺りを見回した。リベルライザーの姿がもうそこには無かった。

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