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第3話 特撮ヒーロー研究会

 文房具屋のガラスを割って侵入したそのピエロは、舜多がさっき見かけた女子高生の方へ歩き、彼女といた彼女の両親を攫い、店の前の道路の真ん中に叩き落とした。店内は騒然として、ピエロをスマートフォンで撮ろうとする人、一目散に店の奥へ逃げる人…。友祢は放心した舜多の手を掴み、店の奥へ逃げようとした。舜多は、目の前で見知らぬ女子高生と、彼女の両親がピエロに今にも殺されそうな風景をただ眺めていた。両親がいなくなった現実で頭の中がいっぱいだった。

「父さん、母さん、何処にいるの…?俺は、どうすれば…?」

その時、アキツライザーに助けられた時を思い出した。そして今、舜多には怪物を倒せる力がある。

「変身しないと…理不尽な目に遭っている人を助けられる…ヒーローに…!」

舜多は友祢の手を振りほどき、人の流れに逆らって走り出した。

「舜多くん!?舜多くん!!」

友祢はそのまま人の流れに押されていく。女子高生は、ピエロを止めようと立ち向かうも倒される。舜多は人混みの中で青いヒーローへと変身して、そのピエロにパンチを食らわせた。

「さあ早く、逃げて!」

舜多は三人の盾になりながらそう言った。女子高生らはピエロがいる方とは逆の方へ走るが、怪物が待ち構えていた。

「逃がさねぇよぉ?」

「ぁあ…!」

舜多が女子高生らがいる方を振り向いたその時、ピエロは舜多の首を目掛けて回し蹴りをした。舜多は文房具屋の窓ガラスにぶつかり、ガラスを割った。

「ぐっ…!」

首が焼ける様に熱く、動かすと激痛が走る。しかし、舜多は力を振り絞り、向かって来るピエロにパンチを入れた。ピエロは吹っ飛んだ。しかし、女子高生らを待ち構えていた怪人が、女子高生を攫っていこうとする。舜多は首を抑えながら怪物に向かおうとする。その時、何者かが、確実に怪物だけを地面に叩きつけ、女子高生を助けた。

「あれは…アキツフューチャー…」

舜多は、女子高生を助けた緑色の戦士が、アキツライザーの意志を継ぎ秋津高校の自由と平和を守る、アキツフューチャーだと分かった。女子高生は両親と共に逃げた。

「くそ…あんな青いヤツが来るなんて聞いてねぇぞ!おい、一旦逃げるぞ!」

怪物はピエロにそう言った。

「あ、待て!」

ピエロは壁を使い高く跳んでいった。続けて怪物も去ろうとした。

「…逃すかよ。」

アキツフューチャーは怪物の後を追い、捕まえた。

「な、おい!逃げる怪物を追っかけてくるヒーローが何処にいるんだよ!」

その怪物はアキツフューチャーに麻酔針を刺した。

「ぐっ…!」

怪物は逃げてしまった。舜多は元の姿へ戻り、友祢の所へ戻った。すると、廉と斗織がいた。

「おいらがしっこしてる間になんかとんでもないことになってるんだけどぉ!?」

「買い物はまた今度にするか。」

「あ、舜多くん!何処にいったか、心配だったよ!」

「ご、ごめん…」

舜多が店外の方を振り向くと、そこにアキツフューチャーはもういなかった。



「申し訳ございません、モジャコ様ぁ!」

「マルリカぁ…違うだろぉ、違うだろぉぉ!!」

アジトに戻ったマルリカという怪物は、上司のモジャコに怒られていた。

「で、でも、見たことのない青いヤツが出てきたものですから…」

「青いヤツ…?」

「なるほど、面白い。」

袖から白衣を着た人が出てきた。

「マルリカ、その青いヤツ、誰かに似てなかったか?」

「テラファイト様…そういえば、何処かで見たような…」

「フン、青いヤツが誰だろうと、関係ないわ!テラファイトもマルリカも、この私のために目標を達成しなさい!」

「勘違いするな。俺はお前と利害が一致してるだけだ。」

そう言い、テラファイトと呼ばれる白衣の男は去っていった。



 翌日のホームルームでのこと。

「みんなも知ってると思うけど、昨日、駅前の文房具屋『バツアク』で怪人騒ぎがあってな、みんなには注意してもらいたいのと、例の学校裏サイトには書き込まないようにしてほしいんだ。」

担任の山畑(やまはた)先生は、八組のみんなにそう言った。

「それと別件で一つ。委員会を決めなきゃいけないんだが、まずこの中からルーム長を決めちゃいたいと思う。立候補でも推薦でもいいから、誰かいないかな?」

手を挙げる人はいない。舜多は手を挙げようか迷った。隣の席の友祢はうたた寝をしている。すると、友祢の体がビクッとなり、友祢は目を覚ました。欠伸をしながら腕を上げて伸びをした。

「お、真木くん、やってくれるか?」

「ふぇ?はい…」

先生は友祢を指名した。クラスのみんなは拍手をした。友祢は訳が分からず、舜多に訳を聞いた。

「友祢くん、ルーム長になったんだよ。」

「え、僕が?…まぁ、いっか。」

「いいのか…」



 放課後、一年の各クラスのルーム長が集まって話し合う一学年幹事会が開かれた。幹事長は、即立候補した四組の小畠(おばた)李杏(りあん)になった。

「幹事会の仕事の一つにクラスマッチの主催がある。各クラスでクラスマッチ開催に賛成か否かを聞き、その数を集計して開催か否かを決定する。以上、本日の幹事会を終了する。」

李杏は幹事会の最後にそう言った。幹事会が終わると、李杏は友祢の所に来た。

「まさか真木友祢がルーム長になるとはな。」

「なんか僕もよく分からないうちになっちゃっててさ。」

「真木友祢は小学生の頃からそうだな。何処か抜けている。いつか酷い目に遭うぞ。」

「ありがとう!僕は大丈夫だから。李杏こそ、いつも『長』のつく役職やってるよね。」

「やりもしないのに文句だけ言う人にはなりたくないからな。それに俺が完璧ならば、誰も困らないだろう?」

「でも昔から僕の方がバレンタインデーに貰うチョコ多いよね。」

「それはあげる人が完璧な人間ではないからだ。」

「うわ出た〜屁理屈〜でも李杏のそういう所、好きだよ。」

「それより、真木友祢は部活は無いのか?」

「あ、そうじゃん!早く帰らないと廉ちゃんにいっぱい扱かれる!じゃあまたね!」

「真木友祢!」

「ん、何?」

「文化祭でのパフォーマンス、楽しみにしてるからな。」

「ありがとう、是非お楽しみに!」

友祢は李杏にピースサインをして走っていった。



 その頃、舜多は初めて部活へ行った。特撮ヒーロー研究会の部室は、社会科教室の後ろ、本棚が置いてある所にあるロッカーをどかすと、その本棚の裏にある。

「お、新入生だね!」

「あれ、あなたは昨日、怪人に…」

「そうなの、昨日怪人に襲われちゃってさぁ、立ち向かったんだけど、駄目だったわ。あ、ちなみに私は中林(なかばやし)百瑚(ゆうこ)。唯一の二年で唯一の女子部員です!よろしく!なんか首痛めてるっぽいけど、大丈夫?」

「あ、大丈夫です。ちょっと寝違えて…。俺は、餅搗舜多です。よろしくお願いします。」

「部長〜!新入生だよ!」

百瑚がそう言うと、部室の奥から部長が来た。

「俺は東沢(ひがしさわ)照貴(しょうき)。部長だ。まぁ、特研は部活じゃなくて、同好会なんだけどな。」

「え、そうなんですか?」

舜多が聞き返すと、百瑚が口を挟んだ。

「そうなの!しかも、秋津唯一の同好会でね、同好会は生徒会から予算が降りません…」

百瑚は露骨に肩を落とした。

「でもこの特研には、他の部にはないものがある。それは、人々を守る力だ。」

舜多はドキッとした。すると照貴は、鞄からベルトを取り出して腰に巻いた。

「装着。」

そう言い放ち、ベルトを操作した照貴は、アキツフューチャーになった。それを見た舜多は腰を抜かした。

「ええぅぇ!?せ、先輩が、アキツフューチャー…?!」

「今はね。」

そう言い、照貴は装着を解除した。

「このベルトはアキツライザーから貰ったもので、ヴィラン…あの白くて禍々しい怪人のことをヴィランと呼ぶんだけど、ヴィランに対抗できる力を持つアキツフューチャーになれるんだ。まぁ、これを貰ったのは二年前で、その時は二年の部員はいなくて、三年の先輩も夏に引退するもんだから、俺が二年もの間、アキツフューチャーとして活動してたんだ。アキツライザーの意志を継いでね。」

「ほら、いつまでも腰を抜かしてないで立ちなさい!」

百瑚に腕を引っ張られた舜多は、その勢いで百瑚の胸を触ってしまった。

「え、無い…」

舜多は思わず呟いた。百瑚は舜多の手を振り払った。

「あるわよ!!」

「無いからこうやって揉んでるんだろ!!」

「ちょ、先輩!どさくさに紛れて触らないでください!」

「とまあ、こんな風に緩くやってるから。宜しく、舜多くん。」

「あ、はい。」

「そういえば照貴先輩、例の裏サイトを調べてみたんですが、やっぱり私に罰を与える様に書き込みがされてました。」

「百瑚先輩、何かしたんですか?」

百瑚の言葉に舜多がそう言った。

「どうせ逆恨みとか、そんなとこでしょ。でもやっぱり、あのピエロ、深志生かしら?」

「その可能性は高いな。ただあのピエロは逃げ足が速いからいつも捕まえられないんだよなぁ…正体が分かればいいんだけど…」

照貴は頭を抱えた。



 部活が終わり、舜多は下校するために自転車置き場に来た。そこには、百瑚がいた。

「あ、百瑚先輩。さっきは、その、すみませんでした。」

「いいのよ。照貴先輩の方がよっぽどエロガッパなんだから。」

二人は通学路を自転車を押して歩いて帰る。

「舜多くんはどうして特研に入ろうと思ったの?」

「俺は、子供の頃からヒーローに憧れてて…それと、ある人と約束したんです。秋津高校の特研で会おうって。まぁ、その人とはまだ再会してないんですけどね。」

「そうなの。私もヒーローとか、特撮が好きで。でも子供の頃は特撮ヒーローは男子が見るものなんて言われていて、あまり人前では好きなんて言えなかったの。でも此処では秋津生がみんな自分の好きなことを追求しているし、この国の高校で特撮ヒーロー研究会があるのは秋津高校だけだし、入ったわけ。」

 その後、二人は好きなヒーローの話で盛り上がった。舜多は、好きなことを人と話せるって楽しいことだな、と思った。そして、四年前に会った兄弟と会えないことを少し残念に思った。

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