第27話 生徒大会
人の流れに逆らい体育館に向かった百瑚は、サイキックヴィランに出くわした。
「装着。」
百瑚は走りながらアキツフューチャーへと変身し、サイキックに向かって殴りかかろうとした。
「残念だけど、アキツフューチャーに洗脳の様な特殊攻撃は効かないわ!!」
するとサイキックは、百瑚のパンチを両手の平で受け止め、そのまま百瑚の手首を持って膝蹴りを入れた。
「ウッ…!」
百瑚はその場に蹲った。
「残念だけど、俺は洗脳の一発屋じゃないんだよ。特研の部長さん。」
サイキックはアキツフューチャーの胴体を踏みながら呟いた。
「…!どうして私のことを…」
「この程度なら、ハンマーに勝てそうもないな。」
そう言い放つと、サイキックは百瑚を蹴飛ばし、どこかへ行ってしまった。
想から秋津高校にヴィラン出現の連絡を受けるまで、舜多は発熱した秀飛の看病をしていた。連絡を受けるとすぐに秋津高校に向かって走り出し、リベルライザーへと変身した。家屋の屋根やビルの屋上を跳び、ジョーカーヴィランの重力魔法によって浮いているハンマーヴィランを見つけると、勢いをつけて蹴りを入れた。
「ライザーキック!!」
ハンマーには当たったが、そこにマルリカヴィランが現れた。
「お、覚えとけよ!!」
マルリカは煙幕を使って、ハンマー諸共姿を消した。
「秋津高校周辺の警備を強化しなさい!」
桜子は部下の公安調査官たちに指示をした後、リベルライザーに掃滅弾の銃口を突きつけ話しかけた。
「あなたは一体何者?人殺し?それとも正義の味方気取り?」
リベルライザーは少し桜子の方を向いたかと思うと、すぐにジャンプをして去った。
翌週、正式に永夢と真佑が特撮ヒーロー研究会に入部することになった。部室には百瑚と想も居り、舜多は遅れて来た。
「お、遅れてすみません!!」
舜多は息を弾ませていた。
「やっと来た!じゃあ今の最強スペックのヒーロー議論は置いといて、自己紹介しようか。」
百瑚はそう言い、自己紹介を始めた。
「私は部長の三年五組中林百瑚。さっきも言ったけど、今は私がアキツフューチャーをやっているわ。よろしくね。」
「俺は三年四組の鹿金想だ。」
続けて想も自己紹介をした。
「お、俺は二年八組、餅搗舜多です!よろしくお願いします!」
「餅搗…舜多…?」
永夢は舜多の顔を見つめた。
「もしかして、舜多くん…?」
「あ…!」
舜多は目を丸くした。
「もしかして…十六夜永夢くん?」
永夢は立ち上がり、舜多に抱きついた。
「久しぶり…舜多くん!!」
「え、なになに?知り合い?」
百瑚は二人を見て不思議に思った。
「はい、俺の人生に欠かせない人…かな。中学の時、いじめられていた俺を、舜多くんが救ってくれたんです。」
永夢は少し顔を赤らめながら答えた。舜多も少し恥ずかしくなった。
「そうだったの。舜多くんも、根っからのヒーロー気質だね〜。」
百瑚は舜多を物珍しそうに見つめた。
「失礼しまっす!」
部室の入り口から威勢の良い声が聞こえてきた。
「誰だろう?」
百瑚は入り口の方へ行った。真佑は、いつまでも舜多にくっついている永夢を引き剥がすかのように、二人の間をわざと通った。
「嫉妬してんのかよ。」
「そんなんじゃないよ。」
真佑は永夢からの質問に顔を合わせずに答えた。舜多はどうすれば良いか分からずにただ立っていたが、百瑚が誰かを引き連れて部室に戻って来ると、すかさず百瑚に声を掛けた。
「先輩!さっきの、誰だったんですか?」
「あぁ俺っちっすか?俺っちは生徒会長の三年四組、細萱晴都っす。」
百瑚の後ろを付いてきた、黒縁眼鏡にツーブロックの、いかにも真面目そうな男の子は、自己紹介をした。
「生徒会長が、こんな同好会に何の用なんだ?」
想は晴都に聞いた。
「まぁまぁそう面倒臭がらずに。俺っちは、来週の生徒大会で、今のこの秋津の現状について、生徒たちに説明する義務があるっす。その時、今までヴィランと戦ってきた特撮ヒーロー研究会にも協力して欲しいっす。」
「そういうこと。なら、部長の私が出るわ。」
「ありがとっす!」
その後、百瑚と晴都は、隣の教室に行き、打ち合わせをした。
「先輩、生徒大会って何ですか?」
真佑は舜多に質問した。
「生徒大会っていうのは、年に数回、全校が集まって行われるんだけど、文化祭とか予算とか、生徒会の大事なことを、生徒が議論や討論して決めるんだよ。最後は議案を多数決で決めるんだけど、そもそも定足数出席してないと、大会自体が無効になるんだ。最近は定足数ギリギリの出席で生徒会が問題視してたけど、新入生が入学したり中退した人がいたりするから、どうなるかね。」
舜多は、生徒大会を知らない二人に説明した。
「へぇ、なんかめんどくさそ。」
永夢は呟いた。
「何言ってるの!特に今回はきっとヴィラン関係のことだから、大事だよ!あ、舜多先輩、説明してくれてありがとうございます!」
真佑は永夢に熱弁した後、永夢の頭を下げさせながら、舜多に深々と礼をした。
その後、残った部員は、再び最強スペックのヒーロー議論を始めた。十分程して打ち合わせが終わると、百瑚と晴都は部室に戻って来た。
「では来週、よろしくっす!」
晴都は元気良く百瑚に言った。
「ええ。それにしても、生徒会も大変ね。最近、近隣住民からの苦情もあって。」
百瑚は同情するように言った。
「そうっすね。 楽器の音、ボールの音、生徒の声、音楽プレーヤーの音…近隣住民からうるさいと言われてるっすが、窓を閉めても、これから夏になって熱中症になっても困るっすから、夏までにはなんとか解決したい所っす…」
晴都は少し元気を無くした。
「しかし!今は目の前のことに集中しまっす!では改めて…来週の生徒大会、よろしくっす!」
すぐに声の元気を戻した晴都は、元気良く部室を出た。
「あんなのが生徒会長だと、少しは期待できるな。やる気だけで空回りしそうだが。」
想は頬杖をつきながら呟いた。
「いいじゃない、元気があれば。さて、来週は忙しくなるわよ〜」
百瑚はストレッチをする振りをした。
翌週、体育館での生徒大会には、全校生徒のほとんどが参加した。しかし、例年を下回る入学者数と退学した入学者数もあり、人数だけで見ると、それ程の人数ではなかった。
「これより、第一回生徒大会を開きます。第一号議案、ヴィランに関する校則。生徒会長の細萱くん、特撮ヒーロー研究会長の中林さん。お願いします。」
議長がそう言うと、前の議長席の隣に座っていた百瑚と晴都が立った。まず、晴都がマイクの前に立ち、話し始めた。
「今、秋津高校やこの街は、未曾有の危険に晒されています。悪意あるヴィランが蔓延り、公安調査委員会の手が追いついておりません。そこで、生徒会から正式に、ヴィランに関する校則を提案します。主な内容は、悪意あるヴィランを倒すため、公安調査委員会、アキツライザー、アキツフューチャー、リベルライザー、そして、我々に協力してくれるヴィランに協力及び支援することです。」
先週の口調や雰囲気とは全く違う晴都の様子を見て、百瑚は驚いた。参加している生徒たちはどよめいた。
「それでは、質疑応答に移ります。質問、意見があれば挙手をし、マイクマンにマイクを渡されたら年組名前を言ってから発言をしてください。」
議長がそう言うと、すぐさま手を挙げた生徒がいた。廉だった。
「はい!二年三組、御代田廉です!おいらは、ヴィランと協力するのには反対です!みんなも、この秋津で、何度も何度もヴィランを見たと思います!その度にヴィランは悪いことをしてます!悪いヴィランは全部駆逐すべきです!」
廉が熱弁し会場がどよめくと、晴都が答えた。
「ご意見、ありがとうございます。しかし、実際に害を及ぼさないヴィランも確認しております。私たちは、ヴィランは人間と同じく、悪いヴィランも居れば良いヴィランも居ると考えております。」
「他に何かあれば挙手をお願いします。」
議長がそう言うと、勇佑が手を挙げた。
「二年八組の藤沢勇佑です。俺のバンドメンバーは、ヴィランに殺されました。しかし、そのヴィランもまた、他の俺のバンドメンバーでした。あの日、人間に化けていたヴィランの中には、俺の友達もいました。俺は、ヴィランが全員悪者だとは思いたくありません。きっと、良いヴィランもいるはずです。俺は、生徒会に協力します。」
「ヴィランに裏切られたんだよ、お前。」
廉が勇佑に野次を飛ばした。勇佑は無視した。
「そうだ!ヴィランは悪い奴だ!殺してしまえ!」
「ヴィランにも良い人はいるだろ!」
体育館はヴィラン擁護派と反対派に分かれ、騒然とした。百瑚も、この状況に戸惑った。
「発言する時は、挙手してください!!」
議長が叫んでも、静まる様子は無かった。
「このままじゃ、一向に終わらない…」
舜多が立ち上がろうとすると、後ろから肩を叩かれた。
「ここは俺様の方が説得力があるだろ?舜多は座ってろ。」
そう囁いたのは燦之嬢だった。燦之嬢は、舜多の肩をポンポン叩いて座らせると、晴都の前のマイクに向かって歩き出した。スタンドからマイクを取り、叫んだ。
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!!」
生徒たちは一気に静まり返った。
「一人じゃ何も出来ない癖に、こうゆう時に限って言いたい放題言いやがって。そんなに信用できねぇなら、これからヴィランがどんな奴か、俺様が見せてやるよ。」
「ま、まさか…燦ちゃん!」
舜多には悪い予感がした。しかし、その予感は当たってしまった。燦之嬢はその場でジョーカーヴィランへと変身したのだ。




