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第25話 不帰の客

 アキツフューチャーを装着している想は、燦之嬢を遂に見つけた。気絶している燦之嬢は、手足を鎖で拘束され、口にはガムテープが貼られていた。

「なんとまぁ古典的な捕まえ方だ。」

想は燦之嬢の鎖とガムテープを外そうと、燦之嬢に近づいた時、後ろから腰に蹴りを入れられた。想が振り返ると、アキツライザーが居た。

「紫の複眼はヴィランの証拠だ。お前は誰だ?」

基はアキツフューチャーに質問した。すると、部屋の奥から誰かが出て来た。

「どうやら、此処で争っている暇は無いみたいだ。」

想はそう言って振り向くと、ナイトメアヴィランとサイキックヴィランとダークライザーが居た。

「ダークライザー…!」

基は、さっき倒した筈のダークライザーが現れ、驚いた。

「あ〜、此れは悪いなぁ。相性が悪過ぎる。じゃ、後は頼んだよ。」

ナイトメアはそう言うと、何処かへ消えた。サイキックは燦之嬢の鎖を解いた。

「アキツライザーとアキツフューチャーを倒せ。」

サイキックは燦之嬢に触れながらそう言うと、燦之嬢はジョーカーヴィランになった。操られた燦之嬢は、アキツフューチャーとアキツライザーに向かって重力魔法を施し、二人の足を止めた。

「こんなもんか…?ジョーカーヴィランの力はぁ!!」

すると基は重力魔法を打ち破った。それと同時に、ダークライザーはアキツライザーに触ろうとした。

「同じ手を喰らうかぁ!」

アキツライザーは素早く避け、かかと落としでダークライザーの頭を地面に叩きつけた。ダークライザーは爆発した。

「あとはお前達だ。サイキックヴィランとジョーカーヴィラン!」

基が二体の方へ素早く移動すると、サイキックへ攻撃しようとした。

「ジョーカー!止めろ!」

サイキックがそう指示すると、燦之嬢は基の背後へ回り込み、基の肩に杖を置いた。

「氷魔法!」

すると凍ったのはサイキックだった。

「なっ…!確かに洗脳したはず…」

サイキックは混乱した。其の隙に基はサイキックを殴りつけた。

「誰を洗脳したって?」

すると燦之嬢は人間の姿に戻り、着ていたシャツを捲り上げた。シャツの下には防弾チョッキを着ていた。

「用心深い公安共が着させて来やがったんだよ。襲撃して来るヴィランや、公安が作った『秘密兵器』とやらで死なない為にさ。どうやら貴様の洗脳も、此れには敵わなかったみてぇだな。」

サイキックは燦之嬢の氷魔法によって脚が凍傷し、基のパンチによって立てなかった。

「おいナイトメア!居るんだろ?助けてくれよ…」

サイキックがそう叫ぶと、ナイトメアが部屋の奥から出て来た。

「情けねぇな、お前。」

そう言ってナイトメアは煙幕で姿を眩ませた。サイキックも居なくなっていた。

「おいアキツライザー。俺様を殺しに来たのか?」

燦之嬢は基に言った。

「…お前等が人間に攻撃した時…お前等は俺に殺されると思え。」

そう言って基は瞬間移動で姿を消した。



 舜多の傷や疲労は完全に治ってはいなかった。

「そんなもんか?リベルライザー!!」

ボマーヴィランの姿の凛は、何十個もの爆弾をリベルライザーに変身している舜多に投げ続けていた。

「ハァハァ…ぅうわあぁ…!!」

リベルライザーの仮面は割れていた。舜多は、投げられて来た爆弾を沢山抱えて、凛に投げ返した。爆弾は爆発し、凛は怯んだ。

「ライザーパンチ…!」

その隙を突き、舜多は凛にパンチをした。凛は転んだ。

「未だそんな力があったなんて…」

凛がそう呟いてリベルライザーの方を向くと、リベルライザーの仮面から覗くドラゴンフライヴィランの複眼から涙が流れていた。

「泣いてるの…?馬っ鹿みたい。何処に泣く要素があるの?」

凛は失笑しながら舜多に尋ねた。

「…痛いんだ。ヴィランを殴ったり蹴ったりすると…確かに、殴ったり蹴ったりしてる時は、息もあがって心臓の鼓動も激しくてアドレナリンが出てて、そんなに気にしないんだけど…」

「其れならヒーローに向いてないよ、舜多くんは。誰でも助けようとするしさ。ヒーローなんて辞めちゃいなよ。アキツフューチャーやアキツライザーも居るしさ。」

「いや俺は辞めない!…こんな力があるなら…俺は使いたい。凛くんだって、本当に俺を殺す為にヴィランになったの…?」

「此の世界は力を持つ人が生き残る!力を持たない人は蹂躙されるだけ…」

「確かにそうかもな…けど、力を持つ人が必ず倒れないとは限らないだろ。」

「君にも分かるはずだよ、舜多くん!だって僕達は同じじゃないか!」

「俺もそう思ってた。でも違うって分かった。二人共力を持った今、こうして対立してることが証拠だ。」

「僕はただ君を超えたかったんだ!!」

「だからあんなに被害を出したのか…?お前のやってることは、 あの日、お前の先輩達がお前にやったことと同じなんだよ…!」

「其処迄よ。」

すると、桜子の声が聞こえ、リベルライザーとボマーヴィランの周りは武装した公安調査官達が囲んでいた。

「人殺しを働いたリベルライザー、及びイオソモールを全壊させたボマーヴィラン!!我々人類の敵、今此処で駆逐する!!」

すると桜子は大きなライフルの様なものを取り出し、二人に向けた。

「我々公安が考案した、ヴィランを一撃で仕留める『掃滅弾』の試作品が完成した。試運転には丁度良い…!」

周りを囲む調査官達が二人に射撃した。舜多と凛は更に傷付き、其の場に跪いた。桜子は体勢を整えて掃滅弾を撃つ準備をしている。

「あの掃滅弾とかいう威力がどれ程のものかは知らないが…どの道此処に居てはマズい…!」

舜多は降伏して説得しようと、倒れながらも変身を解除しようとしてベルトに手を当てた其の時、桜子の掃滅弾から弾が舜多に向かって放たれた。

「え」

一瞬の出来事に舜多は動く暇も無かった。目の前が真っ暗になった。凛が掃滅弾を受け止めたからだ。

「凛くん…!」

「此れで…僕も…君みたいに…」

凛は掃滅弾を受け止めながら舜多に言った。

「僕は君に救われた…やっぱり舜多くんには敵わないよ…」

凛はそのまま調査官達の方へ走り出した。

「ば、爆発する…!退避!!」

桜子がそう叫ぶと、凛は掃滅弾によって爆発した。

「おい舜多、逃げるぞ!此処にもう用はねぇ!」

すると後ろから燦之嬢の声が聞こえた。舜多が振り向くと、ジョーカーヴィランとアキツフューチャーの姿の想が居た。



「どうやらジョーカーは奪還出来なかったみたいね。」

ニビルのアジトで、モジャコがナイトメアに薄ら笑いを浮かべながら言った。

「テラファイトの代わりになった幹部だとしても所詮は中学生…貴方に期待した私が馬鹿だったわ。」

「モジャコ様。御言葉ですが、ナイトメアは秋津高校の生徒十六人を改造し、同時に発現出来る技術を開発し、成功しております。其れにより世界は今混乱の中にあり、此れはニビルに大いに貢献しているのでは…」

サイキックはモジャコに言った。

「フン、そうだったわね。ナイトメア、サイキックに感謝しなさい。」

「其れでは、失礼します。」

サイキックはそう言って、ナイトメアを引き連れてモジャコの部屋を出た。

「ったく、あの巨乳ババァ!」

 イトメアは壁を殴った。



 帰宅した舜多は、自宅に燦之嬢を匿った。夜も更け、秀飛はもう寝ていた。

「ツッタカターに上がった、公安が燦之嬢くんを脅迫する動画、そして、リベルライザーが人間を殺した動画…国民に不信と不安が込み上げるのは分からなくは無いな。果たして、此れからどうなるのか…」

舜多は呟いた。

「俺様は未だ指名手配だし、真面に学校にも行けやしねぇ。迷惑になるが、舜多には感謝するぜ。」

燦之嬢は舜多に頭を下げた。

「よせやい。俺はただ、燦之嬢くんを助けたくて…」

「『燦ちゃん』でいいぜ、言いにくいだろ?」

「…うん、分かった。…燦ちゃん。」

「何照れてんだぁ?俺様に惚れたのかぁ?このこの」

燦之嬢は笑いながら、舜多の脇をつついた。釣られて舜多も笑った。



 翌日、桜子を交えた職員会議が行われた。

「二つ、報告があります。一つ、只今、警察とも協力して、五十嵐燦之嬢を捜索しております。二つ、我々公安調査委員会では、ヴィランを一発で仕留められる『掃滅弾』を開発しました。既に試運転にも成功しており、此れを量産すれば、ヴィランの大量掃討も夢ではありません。」

桜子は教師達に説明をした。

「…分かった。新年度も引き続き、秋津高校を守ってもらいます。」

校長は桜子に言った。

「ありがとうございます。」

桜子はお辞儀をした。

「生徒をあんなに見殺しにした癖に…」

「校長は何を考えてるんだ…」

所々から疑念の声が上がる。桜子は机を叩いた。

「文句があるなら、直接、大声で、私にどうぞ。」

桜子は大声で言った。一斉に静かになった。

「では一つ、宜しいですか?」

すると、山畑先生が手を挙げた。

「五十嵐くんが学校に通えるようには出来ないでしょうか?彼は秋津生です。例えヴィランだったとしても、其れは変わりありません。」

「何を言ってるの?そんなこと絶対に」

桜子が却下しようとした其の時、会議室の扉が開いた。入ってきたのは、真木信幸だった。

「いいんじゃない?五十嵐くんを拘束しなくても。」

「真木教授!!」

桜子を始め、教師達は驚いた。

「いやぁ、駅前の道が狭くてね、渋滞にはまっちゃって遅くなったよ。」

信幸は会議室に入って来た。

「しかし彼はヴィランですよ!?もし又何かあったら…」

桜子は信幸に言った。

「其れをどうにかするのが君達の仕事なんじゃないのかい?」

信幸はそう言い返した。桜子は言葉が見つからなかった。

「公安や警察、大臣や首相には僕から言っておくよ、朝比奈隊長。」

信幸は桜子の肩なに手をポンと置いた。



「真木教授!」

職員会議が終わり、桜子は信幸に声を掛けた。

「一体どういうつもりであんなことを…!」

「其のまんまだよ。其れより君は此の後、調査所に戻るんじゃなかったのかい?」

「し、しかし…」

「失せろって言ってんだよ…あれ、聞こえなかった?」

「…!!…失礼します…」

桜子は一瞬、今迄に感じたことの無い恐怖を感じた。いつも微笑んでいる教授が、一瞬悪魔に見えた。

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