第23話 涙で濡らさせない
ボマーヴィランによって壊されたイオソモールの外には、もう野次馬は居なかった。モール内にも客は居なくなったのは、全て公安調査官が避難させ、イオソモールから半径五百メートル内を立ち入り禁止にした為だ。避難して客が居なくなったと知った凛は、舜多を誘き寄せる為の餌として置いてきた友祢の元へ行くと、リベルライザーマザーも居た。凛は攻撃をする。
「危ない!!」
舜多は咄嗟に友祢を庇った。すると、背後で爆発が起こり、舜多は傷を負った。するとボマーヴィランの姿の凛が直ぐにリベルライザーの首を掴み、地面へ叩きつけた。其の後、顔面を何度も踏みつけた。
「ぐぅわあぁー!!」
舜多は痛みのあまり叫んだ。
「真木友祢!!今君の大切なものを壊してやる!!」
凛は、仮面が割れてドラゴンフライヴィランの顔が覗いているリベルライザーを何度も蹴った。リベルライザーはもう叫ぶこともなく、ただ凛の足蹴にされていた。
「ハハハハハッ!!どうだ!真木友祢!!」
凛はこれでもかと舜多を蹴った。
「ハァ…残念だよ、リベルライザー。君が、こんな所で倒れるなんてさ。残念だよ。いつもそうだ。李杏も君も。」
友祢は溜め息をつきながら言った。
「ヒーローが死んでどうするのさ。ねぇ、聞こえてるでしょ?」
友祢の声は次第に震えてきた。
「君には僕がついてるって言ってんだよ…だから立てよ…!!」
友祢は声を震わせながら叫んだ。
「僕を独りにするなよ、舜多ぁ!!」
「そうか…其れが、君の本音だったんだな…」
舜多は凛の足を、動けないように掴んだ。
「彼奴とお前にはなぁ、決定的な違いがあるんだよ。」
舜多は声を震わせながら凛に言った。
「彼奴は、お前と違って俺を助けてくれた。誰かの為に自己犠牲も厭わなかった俺を、彼奴は唯一心配してくれた。皆を君が助けるなら、僕は君を助けたい…みたいなこと言ってたよ。嬉しかった。でもお前は…!前に部活の先輩達にやられて嫌だったことを、又違う誰かにやっている!!他人の痛みが分からないなら…俺が分からせる!兎に角俺は、彼奴を…友祢を…!!もう涙で濡らさせない…!!」
すると舜多はマザーガンを取り出し、銃口をボマーの体にくっ付けて発砲した。ボマーは吹き飛んだ。
「う…ぅうわあぁぁぁ!!!」
凛は発狂して、無闇矢鱈に大量の爆弾を生成して爆発させた。
「危ない!!」
舜多は友祢を庇った。イオソモールは跡形も無くなった。舜多は瓦礫の下敷きになったが、其の下に居る友祢を傷つけまいと、必死に耐えた。
未だに発狂している凛の所へ、マルリカヴィランが来た。
「おい、ボマー!!ジョーカーを追うぞ。人間共に超人類を渡すわけにはいかない。解剖でもされたら…っておい!話聞いてるか!?」
マルリカはボマーを叩いた。我に返った凛とマルリカは、舜多が辺りを見回した時にはもう居なかった。
「きっと燦之嬢くんと公安が目当てだ、追いかけなきゃ…うっ…!」
舜多は友祢を庇っていたため、酷く傷を負っていた。変身が解かれ、其の場に倒れ込んだ。
「舜多!!」
友祢は舜多に寄った。
「ハァ…ハァ…助けなきゃ…」
舜多が苦しみながらも立とうとした時、目の前にアキツライザーが現れた。
「其の体でどうするんだ?」
基は変身を解きながら舜多に言った。
「俺は…燦之嬢くんを助けなきゃ…」
舜多は再び立ち上がろうとした。
「ジョーカーヴィランは簡単には公安の手には渡らないだろう。しかし、ニビルの手に渡って再改造を受ければもっと厄介な敵になる。ジョーカーヴィランを生け捕りにして公安に渡すか、其れが駄目なら…」
「其れは…其れだけは駄目です…!俺がリベルライザーとして戦ってるのは、皆を助けたいからで…」
「俺もそう思ってた時期があったよ。でも舜多くん、其れは机上の空論に過ぎない。本当の意味で皆を救うことは出来ないんだ。第一君にそんな大層な力があるのか?未だあのライザーダガーも使いこなせていないようだし。変身。」
そう言うと基はアキツライザーに変身した。
「俺はジョーカーヴィランを捕らえに行く。君は休んだ方が良い。其の体で行っても何も出来ないだろう。」
基はそう言って飛んでいった。
「クソ…!俺がもっと強ければ…皆を助けられる力があれば…ライザーダガーを使いこなせれば…!」
舜多は自分の無力さに嘆いた。
「そんなことないよ、舜多。」
友祢は舜多に寄り添った。
「燦ちゃんもそんな簡単に死ぬような人じゃないし、アキツライザーやニビルだって直ぐには殺さないよ。燦ちゃんは強いんだから。兎に角今は休もう。ね?」
舜多は小さく頷いた。
長野市へ向かう高速道路には、燦之嬢を捕らえてある公安の自動車が走っていた。すると、後ろから車の上を跳びながら何かが近づいて来た。マルリカヴィランとボマーヴィランだった。
「此処でジョーカーを奪い返せば、幹部昇格も夢じゃねぇ!そしたらがっぽがっぽだぜ!!」
マルリカはそう言いながら、燦之嬢が乗っている公安の自動車の上に立った。
「おいボマー!爆発させろ!」
マルリカはボマーに指示した。すると調査官達は車窓から身を乗り出し、マルリカに向けて発砲した。
「うぎゃ!」
マルリカは道路に転がり、走っていた別の自動車に轢かれた。其の間、ボマーは公安の自動車を爆発させた。しかし、瞬く間に火は水で消された。水を出したのは、ジョーカーヴィランへと変身した燦之嬢だった。
「いってぇ〜なぁ…!!」
燦之嬢は水を凍らせ氷柱にし、ボマーへ突き刺そうとした。すると、燦之嬢の背中を、高速道路下に隠れて居たサイキックヴィランが触った。
「大人しく俺達ニビルの指示に従え。」
そう呟く声が聞こえたと思うと、燦之嬢は意識を失い、サイキックの言いなりになった。
「十分でカタをつける!!マルリカは時間を稼げ!」
サイキックはマルリカにそう言った。すると、黒いリベルライザーが出て来て燦之嬢の体を触ったかと思うと、ジョーカーの瞬間移動魔法を使い、サイキックと燦之嬢とボマーを含む四人を消した。
「クソ…!言われなくても分かってんだよ、俺より年下の癖に、上司だからって調子乗るんじゃねぇ!!」
マルリカは調査官達の拳銃を次々に壊し、歩けないように脚の骨を折っていった。
「さて、時間稼ぎは此れくらいでいいかな。」
「待ちなさい!!」
マルリカが撤退しようとした時、何処からか声がした。
「お、お前はアキツフューチャー!」
マルリカは高速道路下から跳んで来たアキツフューチャーを見て、そう言った。
「お前はボマーが始末した筈…!」
「そうね、あの爆発はかなり痛かったわ。でも、倒れてるわけにはいかないの!!」
「ん?お前、いつの間に女になったんだ…?でも胸は無いしな…」
「失礼ね!!ちゃんとあるわよ!!」
「まぁ俺も貧乳は嫌いじゃない。其の仮面の下の顔を拝ませて貰うぜ…!」
そう言ってマルリカは百瑚の方へ跳んだ。百瑚は此処で戦うのはまずいと、冬の田圃の上へ跳び降りた。
「貴方のことは先輩から聞いてるわ、マルリカヴィラン。いつも姑息な手を使う下っ端小物ヴィランってことを!」
百瑚はマルリカに何発もパンチをすると、全弾命中した。
「クソ…ぅうおぉおららららららららららららあぁ!!」
するとマルリカはアキツフューチャーに膝蹴りと肘打ちとパンチを何発も入れた。
「ぐっ…!!」
百瑚は怯んだ。
「ん?もしかして、ボマーに受けた傷が未だ癒えてないんじゃないかぁ?」
マルリカは、手応えがあったアキツフューチャーの右腰を執拗に攻撃し始めた。
「おらっおらっおらっおるぁぁー!!どうだ!」
マルリカの攻撃に、百瑚は右腰を押さえて倒れた。
「トドメだ…アキツフューチャー!!」
すると、マルリカの手に激痛が走った。
「っつ!何だこれ、鱗?」
マルリカは痛みの正体が何かの鱗だと分かった。手から鱗を引き抜き、再びアキツフューチャーにトドメを刺そうとしたら、其処にアキツフューチャーは居なかった。
「クソ…!でもまあ、良い時間稼ぎにはなった。」
アキツライザーが公安調査事務所に行くと、其処に人の気配は無かった。建物の中に入ると、其処に居る人々は全て倒れていた。
「此れは…!」
「俺の力さ。」
アキツライザーが驚いていると、奥のカウンターからヴィランが黒いリベルライザーを連れて来た。
「俺はナイトメア。催眠ガスを撒けるのさ。ガスを吸った人間は眠り、悪夢を見る。悪夢に打ち勝つ強い心を持たない限り、永遠に悪夢からは覚めないのさ!」
そう言ったナイトメアは、アキツライザーに催眠ガスを吸わせた。しかし、アキツライザーは眠らなかった。
「生憎俺はそんなものにはかからないよ。」
「だろうな、テラファイト様が恐れていただけのことはある。ダークライザーを連れて来て正解だった。」
「ダークライザー?」
ナイトメアの隣に居るダークライザーと呼ばれた黒いリベルライザーは、アキツライザーに向かって来た。
「じゃ、此処は頼むよ。」
そう言ってナイトメアは何処かへ消えた。
「俺に勝負を挑むとは、大した度胸だな!」
そう言って基はダークライザーに向かって蹴りを入れ、蹴られる場所を腕で守ったダークライザーを吹き飛ばした。
「もう終わりか?なら俺はジョーカーのほ」
其の時、アキツライザーを何かが突き飛ばし、其の儘入り口のガラスを破り外へ放り投げられた。
「な、何だ?」
直ぐに受け身をとった基は、攻撃が来た方を見た。すると、其の攻撃はダークライザーによるものだった。
「俊敏さ、正確さ、攻撃力…此奴、かなり強い…!」
基は素早く立ち、ダークライザーにファイティングポーズをとった。




