第22話 頼み
「なんか、イオソモールの方でヴィランが出たらしいな。」
休み時間、雅玖がツッタカターを見ながら友祢に言った。
「へぇ〜。」
友祢は気の無い返事をした。
「お!リベルライザーもいんじゃん!今話題の。ヴィランに攻撃されて死にそうだけど。」
「え?」
友祢は雅玖のスマートフォンの画面を覗き込んだ。其処には、イオソモールに居るリベルライザーとヴィラン数人と大勢の公安調査官達の動画が上がっていた。
「色んな色の仮面を被って人殺してるヴィランだっけ?」
雅玖は友祢に聴いた。
「違うよ、どちらかといえばヴィランを殺してるかな。」
「ていうか、桜子先輩からあんなこと言われても、いまいち実感わかねぇよな。いや、ヴィランが居ることは分かるんだけど。」
「そりゃいきなり色んなことが起きたらついていけないよ。でも実際、死んだ生徒も居る。ダッチ部にも居たよ。」
「そ、そうか。」
「てか、さっきから何してるの?」
「あ?さっきの桜子先輩の脅迫音声をツッタカターにあげてるんだよ。彼奴、燦ちゃんに、ヴィランになったら秋津生を殺すって言ったんだよ。全く、お前の彼女はおっかないな。よくあんな女と付き合ってるな。」
「いや、桜子は先週のアレ以来連絡が付かなくて…其れ迄はそんな殺害予告するような人じゃなかったよ。」
「どっちにしろ、此の音声で公安の信用は下がるかもな。実際俺は引いたし。」
友祢はスマートフォンを耳につけ、窓の方を見ていた。
「やっぱ繋がらないか…ねぇがっくん、僕、次からの授業、切るよ。」
「は?…お前まさか、イオソモールに行くのか?止めとけよ。お前が例えヴィランだとしても、公安かリベルライザーかヴィランに殺されるのがオチだ。」
「そうかもしれないけど…でも、助けられる命があるなら助けたい…って、彼奴なら言うだろうから。」
そう言って友祢は荷物を背負って教室を出た。
「まっきー…彼奴、変わったな。」
雅玖はそう呟いた。
「はぁはぁ…ったく、無駄な体力使わせやがって…」
イオソモールの駐車場で、ボマーヴィランになった凛の攻撃から舜多を守った燦之嬢は、そう呟いて直ぐに人間の姿に戻った。
「おい舜多、彼奴を絶対止めろよ。あと、彼奴の爆弾攻撃は強烈だからな。」
そう言って燦之嬢は倒れた。近くには公安調査官達が来ており、ボマーヴィランによって氷の壁が今にも壊れそうになっている。
「兎に角リベルライザーにならないと…変身!」
再びリベルライザーに変身した舜多は、燦之嬢を担いで逃げようとした。しかし、ボマーが氷の壁を壊し、客が避難しているイオソモールの方へ爆発を活用して物凄い速さで飛んで行く。此の儘燦之嬢を担いでボマーを追いかけるには、舜多の体力が少なかった。しかし此処で燦之嬢を置いていけば、公安に捕まる。
「どうすれば良い…どうすれば!!」
ボマーは更に遠ざかり、調査官達は更に近づく。
「此処で止まってたら、俺も捕まる…!燦之嬢くん…絶対助ける!!」
舜多は其の場に燦之嬢を置き、ボマーヴィランを追いかけた。
「ジョーカーより僕を選んでくれたんだね、舜多くん!!」
凛はそう叫んでイオソモールの壁に爆発で穴を作り、モール内に入った。其の棟は、客が避難しており人が居なかった。舜多も凛が作った穴に入った。舜多はさっきの凛の攻撃を受けて、体力が消耗している。
「こんな状態で凛くんを止められるのか…?いや、やるしかない…燦之嬢くんの助けを無駄にしない為にも!」
舜多はボマーの方へ歩き出した。
「ねぇ、舜多くん。」
凛は舜多に話しかけた。
「あ?何だよ。」
「一緒にご飯に行けなくて、ごめんね。」
「其れ、今言うことかよ…別に俺は誰かとご飯に行きたいわけじゃないよ。其れより、秋津生を沢山ヴィランに改造したのも、凛くんの仕業なのか?」
「心外だなぁ。あれもテラファイトの指示さ。僕はスキー教室のしおりを見せただけだし。」
「やっぱあの時に…急に睡魔が襲ったのもお前か?」
「あれはナイトメアの仕業だよ!」
「ナイトメア?」
「テラファイトの部下の超人類だよ。人を眠らせたり悪夢を見させたり出来るんだ。僕や秋津生を超人類へ改造したのも彼だよ。」
「随分とペラペラ喋ってくれるじゃん。」
「だって僕、舜多くんのこと、好きだもん。頑張ってる舜多くんも、笑ってる舜多くんも、あと、苦しそうな舜多くんも。…僕ね、もしなれるなら、舜多くんみたいなヒーローになりたかった。でもなれなかった。いつも誰かを信じてないと不安で体が動かないんだ。だから友達も出来なくて…でも、テラファイトは僕を褒めてくれた。友達になってくれるって言った。だから僕は、友達の為なら何でもやった!だから…僕は、友達の最期の頼みを聞くよ。」
すると凛はリベルライザーの胸倉を掴んだ。そして、爆弾をリベルライザーの体に密着させて爆発させた。舜多は其の爆発で吹き飛んだ。
友祢がイオソモールに着くと、野次馬が集まっている場所があった。其処では、公安調査官がイオソモールへの立ち入りを禁止していた。其れよりも、巨大なイオソモールが半壊している方に目が向いた。
「此れもヴィランの仕業?彼処に舜多くんが…」
友祢はイオソモールに入ろうとした。しかし、公安調査官に止められた。
「駄目だよ、入っちゃ。」
「でも、中に…友達が!!」
「今、我々が救助に当たっている。安心して待っていなさい。」
友祢は仕方無く後ずさった。其の時、イオソモールで爆発が起こった。
「又爆発だよ…」
「公安はちゃんと助けてくれるんだろうな?」
友祢の周りから口々に声が聞こえた。
「おい、あれ何だ?」
すると、野次馬の内の一人がイオソモールの方を指差して言った。其れは、此方へ向かって来るボマーヴィランだった。公安調査官達はボマーに向けて射撃をしたが、ボマーが爆弾を使って防いだ。爆発で辺りが見えなくなったかと思うと、友祢は誰かに掴まれた気がした。視界が開けると、ボマーに腕を掴まれていた。
「ほっそい腕だな。腕を離したら爆発させるよ。」
凛は友祢にそう脅迫し、友祢を連れ去った。
「民間人が一名、ヴィランによって連れ去られました。今から後を追います。」
調査官の一人はトランシーバーのようなもので桜子に連絡をしていた。
「慎重に動きなさい。一人だけを殺さずに連れ去ったのなら、其のヴィランは恐らく無差別に人を襲うタイプではなく、個人的な恨みで動いている可能性が高い。兎に角、相手に気づかれないようにしなさい。」
トランシーバーからは桜子の声がした。調査官達はボマーに気づかれないように、イオソモールへ入っていった。
ボマーヴィランに攻撃された舜多はリベルライザーマザーに変身することで体力を回復していたが、外的な傷は癒し切れていなかった。そして、ボマーを探す為にイオソモール内を歩いていた。すると、曲がり角から誰かの足が出ていた。其の足の主は倒れているようだった。
「まさか、未だ避難してない人が…!」
舜多は曲がり角を曲がり、其の人を助けようとした。しかし、舜多は其の人を見て驚いた。其処には、服が破られ、体中痣だらけで倒れている友祢が居た。
「友祢くん!おい、しっかりしろ!!」
舜多が友祢の体を揺らすと、友祢が目を覚ました。
「ん…?あれ、舜多くん…?」
「良かった…!ほら、起きられるか?」
舜多は胸を撫で下ろし、友祢を起こした。
「うぅ、寒!!」
友祢は寒さの余り体を震わせた。
「取り敢えず、近くの洋服屋の洋服を拝借しよう。」
服が破れてパンツ一丁の友祢は立ち上がり、近くの洋服屋に行こうとした。
「駄目だよ、ちゃんとお金は払わないと。」
舜多は心配そうに友祢の後を追った。
「真面目か!!緊急事態だし、一着や二着貰ってってもいいでしょ、これじゃあ僕寒いし。それとも、僕のヌードを観てたいの?」
「は!?違うし。でも何で友祢くんが此処に?しかも服が破れて。何があったの?」
友祢は着る服を選びながら、舜多の質問に答えた。
「心配でさ、舜多くんのことが。なんか、居ても立っても居られなかった、っていうか。で、見事に凛くんに捕まって、強姦された。」
「え!?体は大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、慣れてるし…」
舜多は掛ける言葉が見つからなかった。友祢は、突然黙った舜多を見た後、又服を選び出した。
「僕ね、小学生の時、虐められてたんだ。」
暫くの沈黙の後、友祢が口を開いた。
「と、友祢くんが…?だって友祢くんはどう見てもカースト上位の人みたいじゃん。コミュ力とか、友達の多さとか、スタイルの良さとか、ファッションセンスの良さとか。」
「えへへ、そうかな?」
友祢は服を選び、其の場で着た。
「ほら僕、髪の地毛が白だし、目赤いしさ。小学生の時は髪染めるのとか禁止だったから、いつも帽子被ろうと努力してたんだけど、帽子を隠されたこともあったよ。他にも、服を脱がされたりゴミを食べさせられたりとかさ。…でも、李杏が、いつも独りだった僕の味方だった。…いや、いつも公平に物を観てたんだ。」
「友祢くん…?」
「李杏はルーム長で、とても大人っぽかった。僕の帽子が隠された時も、一緒に探してくれた。探し出してくれた時も、『こんなの冠る必要は無い。其の髪を笑う奴が居ても気にするな、俺に言え。もう涙で其の綺麗な顔を濡らすな。』って。」
友祢は段々と早口になっていった。
「君は…舜多くんは、李杏に似てた。唯、李杏は自分の力を知っていた。舜多くんは自分の力を知らない。君が、誰よりもヒーローらしい優しさと逞しさがあることを。だから、その…死なないで欲しい。僕は君の味方だよ。孤独が辛いのは僕も分かる。だから君を」
「友祢くん!!」
舜多は大声を出した。友祢は驚いた。
「そんなの分かってる。友祢くんがこんな僕を気にかけてくれてるのは嬉しいよ。…友祢くん、少し休んだ方が良いよ。俺がモールの外まで連れて行くから。」
「其処かぁ!!」
其の時、背後から凛の声がした。




