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第20話 カけた者

 ヴィラン大量虐殺事件の翌日、秋津高校の全生徒と全教員が強制登校させられ、体育館に集められた。ギャラリーや入り口には武装した公安調査官が沢山居る。

「あれ、部長。結局来たんですか?」

体育館に来た百瑚は、照貴を見つけて声を掛けた。

「公安の奴等が握っている情報を得る為だ。」

照貴はそう言った。

「桜子先輩、きっと責任を感じてるから、自分がちゃんとしなくちゃいけないから、あんな平静を装ってるんだと思いますよ。」

百瑚は照貴にそう言った。

「そんなことは分かってる。彼奴は、それなりの覚悟があって調査官になったことも…。」

照貴は百瑚と目を合わせずに応えた。

「照貴先輩って、桜子先輩と知り合いなんですか?」

百瑚は照貴に質問した。

「あぁ、1年の時から。」

照貴はそう呟いた。



「舜多くーん!」

体育館に来た舜多は、誰かに呼ばれた気がした。すると、背後から何者かが抱きついてきた。

「まだお礼を言って無かったよね。昨日は助けてくれてありがとう。」

抱きついてきたのは友祢だった。

「あ、うん。」

「それにしても、何だろうね、話って。」

舜多は、いつもと雰囲気が同じ友祢に違和感を覚えた。

「友祢くん…大丈夫?」

舜多は友祢に質問した。

「え?何が?」

「だって、昨日あんな目に遭って、あんなものを見て、きっと友達だって…」

「うん。でも、泣いてる暇なんて無いから。」

「…強いな、友祢くんは。俺は…あの血塗れの校舎が目に焼き付いて、今でも思い出すよ。」

「其れが普通だよ。」

舜多には、友祢が少し哀しそうな顔をしているように見えた。

「前から着席してください。」

すると、スピーカーから声が聞こえた。生徒達は次々に座っていく。武装した調査官を引き連れて前方に現れたのは、桜子だった。

「秋津高校の諸君、改めて私の自己紹介をします。私は、長野県公安調査委員会に所属する、朝比奈桜子です。私は、ヴィランの調査の為、此の高校に潜入していました。」

生徒から響めきが聞こえた。

「桜子…」

友祢は呟いた。そういえば桜子は友祢の恋人だったな、と舜多は思い出した。

「昨日、私達はヴィランの侵入を許してしまった。其れにより、多数の死傷者を出してしまった。此処に居る諸君の心と体に深い傷を付けてしまったこと、お詫びします。」

桜子は深々と礼をした。

「あ、謝った。」

百瑚は思わず呟いた。照貴は微動だにしなかった。

「しかし、安心してください。私達は、去年の秋津祭で現れた巨大ヴィランの残骸や、今回のヴィランの飛び散った血液から、人間とヴィランを見分けることに成功しました。そもそもヴィランとは、秘密結社ニビルが生産している生命体です。ニビルの首領、ユニバースの子供であるオプファー等の脊髄を人間に移植することで、ヴィランになります。ニビルの人達はヴィランのことを超人類と呼んでいますが、あの力は人間にとって脅威にしかなり得ません。」

「え、そうだったの…?」

友祢は舜多に囁いた。

「俺も初耳だよ。」

舜多はそう囁き返した。桜子は続けて説明をする。

「本題に入ります。私達の長年の調査の結果、ヴィランには、ある特徴があることが分かりました。其れは、全てのヴィランの血液型にO型は無いことです。此処からは推測ですが、ユニバースの血液型がAB型であることにより、オプファーの血液型にO型は無くなり、其の骨髄を移植することによって血液型が変わることがあると考えています。其処で、全生徒全教員の血液検査をします。もし、過去に白血病や骨髄及び血液等に因り血液型が変わる原因が無いにも関わらず、血液型が変化した者がいれば、公安調査委員会が拘束します。勿論、現在入院中の生徒や教師も検査します。又、検査を拒否した者はヴィランと見なします。」

生徒達から更なる響めきが生じた。

「確かに、骨髄移植に因り血液型が変わらないこともあります。ですが、ヴィランが此の中に居る可能性が少しでもあるなら、私は此の調査に賭けます。」

桜子は堂々と話した。

「では、入り口前に止まっている何台かの自動車に一人ずつ入ってください。血液を採ります。」

そう言った後、桜子は公安調査官達に、生徒や教師を誘導するよう指示を出した。生徒や教師は調査官達の指示に従い、次々と血液検査用の自動車に入っていく。

「…なんか、大変なことになっちゃったね。」

友祢は歩きながら舜多に言った。

「うん…」

舜多は気の無い返事をした。舜多は、自分はB型として今迄恙無く生きてこられたから大丈夫だろうと思っていたが、心の何処かで、もしかしたら、と思っていた。其れよりも、舜多は燦之嬢と想の心配をしていた。


「ぅ…此処、何処だ?」

斗織が目を覚ますと、ベッドの上に寝ていた。側には、椅子に座りながらうたた寝をしている廉が居た。

「れ、廉…」

斗織は起き上がろうとした。すると、左脚に違和感があった。布団を捲ると、左の膝から下の脚が無かった。

「…は?」

すると、廉が頭を背後の窓にぶつけて目を覚ました。

「は…!おいら、いつの間にか寝てた!あ、斗織…!」

廉は斗織に話しかけた。

「…なぁ、廉。」

「な、何?斗織。」

「俺の左脚は…どうなったんだ…?」

「斗織…」

廉は唇を噛み締めて俯いた。

「…どうなったかって聞いてんだよ…!!」

廉は斗織の声に驚いて体をビクつかせた。

「斗織の脚は…ヴィランに…潰されたんだ…」

廉は今にも泣きそうになった。

「昨日…秋津高校の生徒十数人がいきなりヴィランに…なって…それで…」

「…ふ、ふふっ」

すると、斗織は笑い出した。

「ハハッ…そうか。俺はもう、跳べないのか。」

「で、でも斗織!今は高性能な義足とかもあるし」

其の時、突然斗織は廉の胸倉を掴んで壁に殴りつけた。

「俺の…俺達のパフォーマンスは…!!そんなもんで出来る程簡単じゃ無い!!もう無理なんだよ!!」

廉は斗織に圧倒され、嗚咽をし始めた。

「誰か一人でも欠けたらもう無理なんだよ!!」

すると今度は廉が斗織の胸倉を掴んでベッドに殴りつけた。

「何でやる前から諦めてんだよ!!脚が無くなった位で弱音吐くなクソ斗織!!」

そう斗織に叫んだ廉の顔は、涙と鼻水でぐしょぐしょになっていた。

「今は学校に行っておいら達の代わりに話を聞きに行ってるけど、まっきーだって、さっき、斗織なら又ダッチやってくれるだろうって言ってたぜ?お前はおいら達の期待を裏切るのかよ!!其処までクソとは思わなかったぜクソ斗織!!」

廉は斗織に怒鳴りつけた。

「お前に何が分かるんだよ!!あと鼻水垂れ流すなよ汚ねぇよ!!」

斗織は廉にそう怒鳴りつけ、廉を床に叩きつけた。

「いっ…グスン…ぅうわあぁぁん…」

すると廉は大声で泣き始めた。斗織は我に返り、廉を宥めた。暫くすると、廉は泣き止んだ。

「ご、ごめん。さっきは言い過ぎた。左脚が無くなって気が動転してて…」

斗織は廉に謝った。

「ううん、おいらも言い過ぎた。ごめん。」

廉も涙と鼻水を拭いながら斗織に謝った。

「俺…やってみるよ、ダッチ。」

「え…?今、なんて」

廉が聞き返そうとした其の時、病室のドアをノックする音が聞こえ、誰かが病室に入って来た。

「失礼します。秋津高校の生徒ですね?長野県公安調査委員会の者です。秋津高生の血液検査をしに来ました。」



 其の夜、友祢が帰宅すると、信幸がいた。

「あれ、父さん。帰ってたの?」

友祢は信幸に話しかけた。

「あぁ。ほら、秋津高校であんなことがあったからさ。此れからは、此の国の政治家や専門家達と協力して、ヴィランの研究をするつもりだよ。」

「じゃあ、此れからは一緒に居られる?」

「いや、明朝、直ぐに出発しなきゃいけない。家には暫く帰れないかな。」

「そうか…ねぇ、父さん。」

「なんだ?」

「前から気になってたんだけどさ、父さんってAB型じゃん?でも僕はO型でさ。AB型からO型は産まれないよね?僕って…」

「友祢。」

信幸は友祢の方を向いた。

「友祢は、父さんの子だ。例え、血が繋がってなくても。」

「父さん…父さんはいつもそうだ。そう言って誤魔化す。昨日だって、高校であんなことがあったのに、心配の一言も無い。…いや、分かってるよ。父さんがそういう人だってことは。…じゃあさ、初めての質問、してもいい?」

「…あぁ。」

信幸は頷いた。

「僕の本当の両親って、誰?」

信幸は少し視線を逸らした。そして、友祢にこう言った。

「友祢という名は、友祢の本当の両親の名前から一文字ずつ取ったんだ。其れ以上は…父さんにも分からない。」



 一週間後、通常授業が再開した。世界中では、秋津高校のことで持ち切りだった。信幸もテレビのニュースやワイドショーによく出るようになった。

「すげぇよ、世界中が秋津高校に注目してるぜ。」

相変わらず武装した公安調査官が居る校舎の中、一年八組の教室には、八組の生徒が集まっている。雅玖はツッタカターを見ながら友祢と話していた。今日は、いつも昼休み前にあるホームルームが、一時間目前にあるのだ。

「はい席に着いてくださ〜い。」

教室に入って来た山畑先生は、そう呼びかけた。生徒達が席に座ると、空席がいくつかあった。勇佑の姿も無かった。

「…一応言っておきますが、此のクラスから亡くなった人は、幸い出ませんでした。しかし、体や心に傷を負った人がいます。今日欠席している人は、そういう人です。」

すると、校内放送のチャイムが鳴った。

「諸君、おはようございます。」

スピーカーから、校長の声が聞こえた。

「本日は、朝比奈調査官から、連絡があります。」

「諸君、おはようございます。朝比奈調査官です。先日の血液検査に御協力頂き、ありがとうございました。今回の検査の結果、過去に血液型が変化するような事象が無い中、県に登録されてある本人の血液型のデータと変化していた者が一名いた。」

クラス中が響めいた。

「た、たった一名だって!?」

舜多は驚いた。

「其れは、一年四組、五十嵐燦之嬢!!」

「な、なんだって!」

舜多は教室を飛び出し、一年四組の教室へ走って行った。

「燦ちゃん…嘘だろ!?」

続けて雅玖も、教室を飛び出した。

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