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第19話 平静気取りの隊長

 スキースノボ教室の翌週、一年八組は山畑先生の英語の授業を教室で受けていた。外は雪が降っている。ストーブに一番近くて窓にも一番近い舜多は、ストーブの暑さの中、外の雪景色を見ていた。すると、上から何か黒い影が落ちて来た。

「何だ?」

舜多は席を立って窓の下を覗いた。其処には、生徒が血を流して倒れていた。

「此の上って確か二組…」

「餅搗くん、席に座りなさい。」

山畑先生は舜多に注意した。

「先生…!二組からせ」

舜多が山畑の方を向いた其の瞬間、舜多の後ろの窓からガラスを割ってヴィランが入って来た。

「逃げろ、ヴィランだ!!」

「キャア!」

生徒達は悲鳴をあげる。

「伏せろ!!」

そう叫びながら、廊下側から、武装した公安調査官達が突入して来た。彼等はヴィランに向かってライフルを発砲した。舜多は危うくライフルの弾に当たりそうになった。舜多は床に伏せながら廊下の方を見ると、生徒が必死に逃げようとしていた。

「一体どうなってるんだ…いや、どうしたら…」

舜多は此の状況に困惑していた。さっきまで座学をしていたので息が上がっていない為、リベルライザーに変身することもできない。すると、廊下に逃げていた雅玖が、ヴィランに捕まりそうになっていた。

「ヤバ…」

恐怖のあまり、雅玖は動けないまま、人の流れに押されていた。其の時、生徒達がすし詰め状態になっている中、友祢は雅玖を押して身代わりになった。

「まっきー…!」

友祢はヴィランに捕まり、首を掴まれた。其の時、ヴィランに銃弾が当たった。舜多が、テラファイトが持っていた銃でヴィランを撃ったのだ。

「友祢から手を離せ!!」

「…舜…多くん…」

首を絞められて意識が朦朧とする中、友祢は舜多の影を微かに見ていた。

「助けないと助けないと助けないと助けないと!!」舜多の心臓は激しく脈打っていた。

「変身…!」

舜多はリベルライザーマザーに変身した。

「マザーパニッシャー!!」

舜多は友祢の首を掴んでいるヴィランに向かって撃った。撃たれたヴィランは、撃たれた所から体が腐っていった。舜多は、体力を相当使う、ヴィランの体を腐らせる必殺弾を撃ったため、人間の姿に戻り、力尽きて膝をついた。しかし、廊下にはまだ大量にヴィランがいる。生徒や公安調査官達が流した血の匂いも濃くなってきた。天井にもヴィランが引っ付いており、上から攻撃をしようとしていた。其の時、天井一面が凍り、ヴィランも凍って砕けた。燦之嬢がジョーカーヴィランになり、凍結魔法でヴィランを倒していた。

「クソ…!幾ら殺してもキリがねぇ…!!公安は当てにならねぇし、被害も広がるし…」

生徒達はパニック状態になりながらも、一階に降りて行くが、三階の窓から飛び降りたヴィランが一階から上って来た。二階や三階の窓から飛び降りる生徒もいた。其の瞬間、目にも止まらぬ速さで生徒達の上空を飛ぶ何かが居た。其の何かは的確にヴィランの息の根だけを止めていた。其の正体は、アキツフューチャーだった。アキツフューチャーの複眼は赤く、素早くヴィラン達の肩に乗り、脳と頸動脈に手を刺して回っていた。

「おいおい…此の儘じゃ俺様も殺されちまうじゃねぇか!!しかし、あの速さでよくヴィランだけをちゃんと殺せるな…」

燦之嬢は人間の姿に戻った。赤い複眼のアキツフューチャーは、ヴィランだけを殺して一棟の中を回っていた。



「速報です。長野県にある秋津高校で、十数体のヴィランによる襲撃があり、少なくとも三十名以上の死傷者が出ていると、長野県公安調査委員会が発表しました。詳細は明らかになっていませんが、秋津高校は一週間の臨時休校となり、周辺地域にも影響が及んでいます。」

其の夜、テレビのニュースは秋津高校で起こったヴィランによる襲撃の速報で持ち切りだった。

「やってくれましたねぇ…」

小中教頭は校長室で唸った。校長室には松竹校長もいた。すると、誰かがドアをノックした。

「誰ですか?」

校長はドアに向かってそう言った。ドアを開けて入って来たのは、桜子だった。

「明日、全校生徒を集めなさい。」

桜子は校長に言った。

「しかし!こんな状況で登校させるのは生徒や保護者にも負担かと…」

教頭が口を挟んだ。

「こうなってしまった以上、私達には全てを話す義務がある。そしてそれはヴィランを見つける方法も含む。」

桜子は淡々と話した。

「しかし…!」

「まぁ待て小中。」

校長が教頭を止めた。

「分かった。明日、全校集会を開くと、全生徒に連絡しよう。」

校長は桜子に言った。

「ご協力、感謝します。」

桜子は礼をした後、校長室を出た。

「校長。此れでは、公安の言いなりですよ。」

教頭は校長に言った。

「…今は、公安らに頼るしか無い。」

校長は唸った。



『餅搗舜多さん 明日9時に会議室に来てください。』

其の夜、舜多のスマートフォンに、秋津高校からメールが来た。

「休校じゃなかったのかよ…」

帰宅しても放心状態の舜多は、そう呟いた。

「お兄ちゃん…?」

秀飛は舜多が居る部屋に入って来た。

「あ、あぁ。今、ご飯作るから。」

舜多は重い腰を上げた。



 翌日、秋津高校の会議室に来た舜多は、驚いた。其処には、照貴と百瑚と想しか居なかった。

「そういうことか。」

照貴は呟いた。

「え、何がですか?」

百瑚は照貴に聞いた。

「全校生徒を集める前に、俺達特研を集めたんだ。」

照貴がそう言うと、会議室に桜子が入って来た。

「其の通りよ、照貴。」

桜子は武装した公安調査官を引き連れている。

「あの人って確か、ダッチ部のマドンナでミス秋津の桜子先輩…?!」

百瑚は驚いた。

「え…どうゆうこと…?」

舜多は訳が分からなかった。

「生徒を見殺しにして、よく俺達の前に来ようと思ったな、桜子。いや、朝比奈隊長。」

照貴は桜子に言った。

「私の話は兎も角、本題に入るわ。貴方達特研が得ているニビルの情報を私達公安調査委員会に教えて欲しいの。」

桜子は照貴を無視して話を続けた。

「無視かよ…」

照貴は呟いた。

「私は公安調査委員会で秘密結社ニビルを調査している、朝比奈桜子。ここ最近は校長に許可を得て、此の高校に生徒として潜入して居たの。」

「何で先生として潜入しなかったんだよ、どう見てもおばさ」

「しっ!」

桜子の話の裏で本人に聞こえないように呟いた想を百瑚は止めた。桜子は話を続ける。

「元々此の高校には、ニビルに関係する重要人物が居るから潜入した。しかし、ヴィランが頻発するようになり、もう貴方達生徒に何も隠す必要は無いと考えた私達は今日、全校生徒を集めてニビルとヴィランの存在を話すつもりよ。」

「其の重要人物って誰だよ。」

照貴は桜子に聞いた。

「其れはいくら特研にも教えられないわ。国家機密レベルの話だから。」

桜子は答えた。

「国家なんて、キナ臭いな…」

照貴は呟いた。

「だから其の時の為に、もし私達が知らない、貴方達が握っている情報があれば教えて欲しいの。」

桜子は特研の方を見て話した。

「情報って言われても…」

此処でリベルライザーや燦之嬢、想のことを話す訳にはいかないよな、と舜多は思った。

「分かった。だけどさ、その前に俺の要望に応えてくれないか?」

照貴は桜子に言った。

「いいわ。」

桜子は承諾した。

「明日、全校の前で、生徒や教師を見殺しにするような無能でごめんなさいって、謝罪をしろ。」

「それは出来ないわ。」

照貴の要望を、桜子は直ぐに拒否した。

「は?こんなに犠牲を出しておいて、謝罪の一つも無いのかよ。」

「形だけなら誰にでも出来るわ。それよりも、こんなに被害を出せば世界中から注目される。其処で、公安が発見した、人間かヴィランかを見分ける方法を使ってヴィランを選別して拘束する。そうすれば、世界中で人間の姿に擬態しているヴィランを炙り出せることが証明され、全世界から公安が称賛される。其の行動だけでも、今回の犠牲の対価になるのではなくて?」

「なっ…!」

舜多は驚いた。もし自分や燦之嬢や想がヴィランだと分かれば、公安に拘束されると思ったからだ。

「ふざけるな。なら何で犠牲を出す前に、ヴィランを炙り出さなかった?此の高校には、少なくとも今年の四月から、ヴィランが潜んでたんだぞ…!!」

「平和ボケした此の国では、自分の身の危険を感じない限り、他人事だと思う人が沢山居る。もしかしたら隣人はヴィランかもしれない、教師もヴィランでヴィランに支配されているかもしれない。そんな不安を持たさなければ、幾ら私達が動いても意味が無いのよ。」

「じゃあ貴様も俺達を騙す悪〜いヴィランかもな。」

「しっ!」

桜子が話している途中で野次を飛ばした想を、百瑚が止めようとした。

「まぁ、お前達が自分の事しか考えられない無能集団だって事は分かったよ。友達を亡くして傷心の生徒も居るのに、三年は受験期なのに、其れでもつまらない話を聞かせる為に集めさせるような無感情な無能だって事がな。」

照貴はそう言って会議室を出た。続けて想も退出した。

「私だって…部下を失って悔しいわよ…」

「え…?」

舜多には、桜子が何か呟いたような気がした。

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