第15話 超人類への進化
昨日、ニビルのアジトに、気絶させた友祢を抱えたマルリカヴィランが来た。
「モジャコ様!テラファイト様!捕まえてきました!」
マルリカヴィランは嬉しそうに叫んだ。
「でかしたぞ、マルリカ。此れで準備は万全だぁ。」
テラファイトはマルリカヴィランから友祢を受け取った。
「でも、よく分かりましたね。此奴が何処に居たかとか、此奴がリベルライザーにとって大切な人だとか…もしかしてテラファイト様って…リベルライザーのファンとか?」
マルリカヴィランはテラファイトに意地悪そうに聞いた。
「まあ、そんなところだ…」
テラファイトは友祢を抱えたまま、自分の研究室に入った。
「舜多、先に行ってまっきーを助けろ。」
そして今日、ニビルのアジト前で、ジョーカーヴィランになっている燦之嬢は、リベルライザーに変身している舜多に杖を渡しながら言った。
「え、燦之嬢くんはどうするの?」
「俺様は、此奴らを足止めして蹴散らす。」
そう言って燦之嬢は、マーサナリーヴィラン達を氷魔法で作った氷で串刺しにしていった。
「…分かった。」
舜多は、燦之嬢から貰った杖でリベルライザージョーカーに超変身して、瞬間移動魔法でニビルのアジトの中へと入った。
秋津高校の中庭では、百瑚が装着したアキツフューチャーと、黒い誰かが戦っていた。
「よく見たら、リベルライザーに似てる…でも、色が黒い…何なの、此奴?」
百瑚は疑問に思った。其の黒いリベルライザーは、百瑚と良い勝負だった。
「此奴、私と同じ截拳道…でもね、私の方が強いわ!!フューチャーパンチ!!」
そう叫んで、百瑚は黒いリベルライザーにフューチャーパンチを入れた。黒いリベルライザーは吹っ飛び、爆発した。校舎から見ていた生徒達から、歓声が上がった。
「ふん、どんなも」
其の瞬間、百瑚は壁に叩きつけられた。其の衝撃によりベルトが外れて、装着が解除された。
「おい!百瑚!」
想が百瑚の体を起こした。
「一体今のは…」
想が状況を飲み込めないでいると、砂埃の中から何かが迫って来た。
「私だよ!!」
砂埃の中から出て来たモジャコヴィランは、百瑚と想を潰そうと拳を構えていた。万事休す、と思った想は目を瞑った。恐る恐る目を開くと、目の前にはアキツフューチャーの後ろ姿があった。
「お前の力はそんなもんか…?」
アキツフューチャーを装着していたのは照貴だった。照貴は、モジャコヴィランのパンチを手で受け止めていた。そして、モジャコヴィランに膝蹴りを入れた後、回し蹴りをして吹き飛ばした。
「其れ位強くないと…心は躍らないわ!」
モジャコヴィランは照貴に向かって、胸に付いている二つのミサイルを飛ばした。ミサイルの爆発による爆風で、アキツフューチャーの姿は見えなくなった。すると爆風の中から、脚を引きづっている照貴が現れた。
「はぁはぁ…流石幹部ヴィラン…強さが違う…」
「安心しなさい。たっぷり可愛がってあげるから。」
そう言ってモジャコヴィランは照貴の前に瞬間移動をした。
「しょ、照貴先輩!」
百瑚が叫ぶと、照貴は腰に再びフューチャーベルトを巻いた。
「装…着…!」
アキツフューチャーを装着した照貴は、モジャコヴィランのパンチを素早く避けた。
「おい、アキツフューチャーの力はこんなもんか…?」
照貴は呟いた。
「もっと力を寄越せよ…」
照貴は呟きながら、ベルトに手を当てた。
「でなきゃ俺はずっと…あの日から…変われねぇ…!!」
其の時、アキツフューチャーの体が光り、緑色の体に赤い線が入り、橙色の複眼が赤くなった。
「あれは…一体…?」
想は驚いた。
「アキツフューチャー…?でも、アキツフューチャーというより、怪物…」
百瑚も開いた口が塞がらなかった。
「フン、姿が変わった所で、私の心は躍らないわよ!」
モジャコヴィランが照貴に向かって走ると、照貴は目にも留まらぬ速さで跳び上がり、モジャコヴィランの首を両脚で、両脚を両手で掴んで、転ばせた。そして其のまま、自分の拳をモジャコヴィランに何度も何度も叩きつけた。モジャコヴィランはもう一度、胸の二つのミサイルを飛ばした。照貴はミサイルに押されて空高く飛んだ。
「ザマァ見なさい。」
モジャコヴィランは立ち上がり、黒いリベルライザーが爆発した所から、黒いベルトの様なものを回収した。其の時、先程のミサイルがモジャコヴィランに向かって飛んで来て爆発した。
「上で軌道を変えたんだよ。」
空から校舎の屋上に降りてきた照貴は、そう言った。
「ば、馬鹿な!?此のミサイルは、新幹線よりも速いのに、軌道を変えることなど…」
モジャコヴィランはよろめいた。
「ま、いいわ。私の心を躍らせてくれてありがとう。」
そう言ってモジャコヴィランは瞬間移動で何処かへ消えた。
「逃がすかよ。」
照貴も素早く移動して、モジャコヴィランの体にくっ付いた。取り残された想は、百瑚を起き上がらせた。
「兎に角、保健室へ…」
想は百瑚を保健室へ連れて行った。生徒達の興奮は冷めやらない。教師達は授業に戻るようにと生徒達に声を掛けている。公安調査官達は、中庭に散らばった死体を、何事も無かった様に片付け始める。血痕も、高圧ホースの水で洗い流していた。
瞬間移動したモジャコヴィランと、モジャコヴィランにくっ付いていた照貴は、ニビルのアジトの中にある、体育館の様に広い部屋に来た。瞬間移動が終わると、其の反動で照貴は地面に転んだ。二人共、疲弊している。
「御苦労様、モジャコ様。」
其の部屋に居たテラファイトは、疲弊している照貴の腰からフューチャーベルトを奪い取った。
「か、返せ…」
照貴は最後の力を振り絞って、テラファイトの脚を掴んだ。
「返せ…だと?其の言葉は本来、俺ちゃんが言うべき言葉ではないか?」
「な、何のことだ…?其れはアキツライザーから貰った…」
其の時、照貴の背後の扉から、リベルライザージョーカーが入って来た。
「お前は…ゔっ」
照貴がそう言い終わらない内に、モジャコヴィランが照貴の首を絞め、気絶させていた。
「先輩…!どうして此処に…」
舜多はそう呟いた。テラファイトは、フューチャーベルトを持ちながら、舜多に近づく。
「素晴らしい…!他のヴィランの力も使いこなせる様になったとは…!流石、俺ちゃんの最高傑作…!」
テラファイトはリベルライザージョーカーを見るなり、そう叫んだ。
「どういうことだよ。」
舜多はテラファイトに聞いた。
「なぁ、不思議だとは思わないか?何故いきなりそんな姿になれたのか。何故人外の力を手に入れられたのか。それは餅搗舜多、お前が、俺ちゃんの作った超人類、ドラゴンフライだからさ。」
テラファイトは意気揚々と答えた。
「は…?冗談も程々にしろよ。俺はお前のことなんか知らない。」
「なら其のベルトを外せ。」
テラファイトはリベルライザージョーカーのベルトを指差した。
「お前が、その…リベルライザーになっている時にだ。今迄外したこと無いだろう?いつも体内にあるからなぁ。」
テラファイトは舜多に向かって早歩きをして、リベルライザージョーカーのベルトを掴み、外した。すると、リベルライザージョーカーの赤い鎧は溶けて、白い蜻蛉の怪物になった。テラファイトはすかさず、舜多の前に手鏡を出した。舜多は手鏡を見た。其処には、醜い蜻蛉の怪物が居た。
「此れが…俺…?」
テラファイトは直ぐにリベルライザーのベルトをドラゴンフライヴィランの腰に巻き付けた。すると、元の青いリベルライザーに戻った。
「此のベルトは、俺ちゃんがドラゴンフライの為に作った特製ベルトだ。」
テラファイトはフューチャーベルトを自分の腰に巻きながら言った。
「お前が…俺をヴィランに…リベルライザーにしたのか…?どうして!?」
舜多はテラファイトの肩を掴んだ。
「おいおい、白衣が汚れるだろ、全く。」
テラファイトは舜多の手を退けた。
「餅搗舜多。お前は実験体に選ばれたんだ。十五年前にな。」
「もしかして…『七つの子』って…!」
「ほう、もう其処まで辿り着いていたのか。そうだ。我々は、人類を進化させて超人類にする為の実験をしていたのだ。ホモ・サピエンスを超人類に進化させる為には、オプファーというニビルの首領の血を引いた、限られた超人類の脊椎が必要だ。しかし、第二次性徴期を迎えていないホモ・サピエンスにオプファーの脊椎を移植しても、超人類には進化しない。第二次性徴期を迎えて分泌される性腺刺激ホルモンにオプファーの脊椎が反応する時、其の時が超人類に進化する時だ。」
舜多はハッとした。そういえば自分がリベルライザーになれたのは成長期の時だった、と。
「ちなみに此のことは、ニビルの奴等以外にも知っている人は居る。例えば、本郷基、とかな。」
「アキツライザーが…でも、『七つの子』に俺の、餅搗舜多の名前は無かった!」
「お前が誰から聞いたかは知らねぇが、お前はある実験体と間違えられたんだよ。何しろ、オプファーの脊椎を移植する改造手術を行ったのは、その『七つの子』等が零歳やら一歳やらの時だからな。顔で区別が出来なかった。」
「其の改造手術をしたのはお前なんだろ!?」
「あ、そっか。全部俺ちゃんのせいだ!ハハハハハ、モジャコくん、全部俺ちゃんのせいだよ、グフッ。」
「私に振るな。」
舜多と照貴が出られないように、部屋の入り口に立っていたモジャコヴィランは、高らかに笑うテラファイトを冷たくあしらった。
「別に俺は此の体になったことを今更悔やまない。此の力のお陰で助けられた命もあるから。」
「でも助けられなかった命もある、違うか?例えば、ホッパー、コブラ辺りかな?」
テラファイトは舜多に質問した。
「…其れは、秋津高校に送ったスパイからの情報か?」
舜多は怒りを抑えて言った。
「ビンゴ!!流石俺ちゃんの最高傑作!そうだ。でも其の様子じゃあ、スパイが誰か迄は分かって無いようだな。」
「お前の目的は何だ!?其れと、いい加減友祢くんを返せよ!」
「真木友祢は我々にとっても大事だ、簡単に死なせやさせない。餅搗舜多、お前と同じ第一級特異点として、厳重に保管している。さて、話も此れくらいにして、映画鑑賞と行こうか。」
テラファイトが指を鳴らすと、壁から巨大なスクリーンが出て来た。其処に映し出されたのは、手術室の様な場所だ。何人かの人に囲まれて、手術室の中央に誰か寝ていた。舜多は目を凝らした。何処かで見た様な顔だった。
「餅搗友則。君もよく知っているだろう?」
テラファイトは舜多にそう言った。其処に映っていたのは餅搗友則、舜多の父親だった。




