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第14話 闖入者

 特撮ヒーロー研究会の部室にいち早く来た百瑚は、部室に人の気配を感じた。

「誰?舜多くん?」

其の気配の正体は、なんと鹿金想だった。

「どうして此処に…?」

百瑚は想に聞いた。

「餅搗舜多に言われたんだ。来たい時はいつでも来い、って。俺も、何時迄も弟のことでクヨクヨしてられないからな。」

「それってつまり、入部するってこと?」

「あ?あぁ、まぁ、入部してやってもいいが…」

「本当?!やった!」

百瑚は喜びのあまり跳び上がった。其処に舜多が来た。

「何やってんすか、百瑚先輩。」

「え、あ、舜多くん…べ、別にぃ。」

百瑚は急に恥ずかしくなり、声が上ずった。

「あ、想先輩。来たんですね。」

舜多は想に気づいた。

「あぁ。それよりお前、目が赤いが、大丈夫か?」

想は舜多を心配した。

「あ、いや、大丈夫です。」

さっき迄泣いていた舜多は、目が赤くなっていたのだ。

「おい、舜多。」

すると突然、特研の部室に燦之嬢が入ってきた。

「燦之嬢くん、どうして此処に?」

舜多は燦之嬢に聞いた。

「先日のヴィランの奴らのアジトが分かった。」

「え!?」

舜多は、燦之嬢の言葉に驚きを隠せなかった。

「先日、この学校に二体のヴィランが来た時に、後をつけたんだ。そしたら、此処の地下にそれっぽい所があって…」

そう言って燦之嬢は、スマートフォンの画像を見せた。航空写真のアプリでアジトの場所を示していた。

「俺様の記憶が戻っていれば、もっと早く分かったんだけどな…」

「いや、ありがとう、燦之嬢くん。」

「ちょっと待って、舜多くん。此の人、何者なの?」

百瑚が舜多と燦之嬢の話に割って入った。

「俺様は五十嵐燦之嬢。ジョーカーヴィランです。」

「えぇ!?貴方があの…?」

百瑚はさっきよりも高く跳び上がった。

「まさか、これから其のアジトに行くの?」

舜多は驚いてる百瑚を他所に、燦之嬢に聞いた。

「まさか。但、情報を共有しておこうと思って。でも、此のままにしておく訳にもいかない。だから、この情報を公安の奴らに渡そうと思う。」

燦之嬢はそう言った。

「待て!」

其れ迄聞いていた想が声を出した。

「公安が二ビルと繋がっている可能性も無くは無い。それに、その情報を持っている貴様も疑われるぞ。」

「お、おう。そだな。」

想に言われて、燦之嬢は落ち着いた。

「ところで、二ビルって何だ?」

燦之嬢は想に聞いた。

「首領がユニバースヴィラン、其の部下で幹部のモジャコヴィラン、改造主任のテラファイト、戦闘主任のマルリカヴィランなどが所属する秘密結社よ。」

百瑚は口を挟んだ。

「やけに詳しいな。」

想は百瑚に言った。

「み、みんな、アキツライザーから聞いたことだからね。」

百瑚は慌てて言った。

「兎に角、アジトの場所は、此処だけの秘密ってことで。」

そう言って燦之嬢は、部室を出て行った。



「桜子は、もう就職先が決まったんだっけ?」

土曜日、友祢と桜子は秋津駅前で待ち合わせをして、クリスマスデートをしていた。

「ええ。」

友祢の質問に、桜子は答えた。

「あ。」

人形店の前を通った時、友祢の歩みが止まった。友祢と手をつないでいた桜子も、歩みを止めた。

「どうしたの?」

「いや、このパンダの縫いぐるみのキーホルダー、いいなって。」

「何、私へのプレゼント?」

「違うよ!舜多くんへだよ。」

「シュンタクン?」

「うん。僕と同じクラスの。」

「へぇ~。まっきーが人にプレゼントねぇ~。私にすらあげたことないのに。」

「舜多くんには、悪いことしちゃったから…お詫びとしてね。」

「って、人の話聞いてないし…」

友祢は其の人形店に入り、桜子も友祢に続いて入った。友祢はパンダの縫いぐるみのキーホルダーを買い、店員にラッピング迄してもらった。

「明後日、絶対渡さないと…」

友祢はそう呟いた。真剣な眼差しの友祢を他所に、窓の外はまるで白い空の破片が降っているような冬の様相に変わっていた。



 翌々日、電車が遅延して、道幅が狭くなる程の雪が積もった。自転車通学なのに一時間目が始まっても来ない友祢を、舜多は少し心配していたが、先週のあの二人と授業を切ったのだろう、と勝手な妄想をして心配を打ち切っていた。しかし、三時間目が終わり、昼休み前のホームルームの時間になっても、友祢は来なかった。

「誰か、真木くんについて連絡を受けている人はいないか?」

担任の山畑先生はそう言った。誰も友祢の所在を知っている人は居らず、教室の中がざわついた。其の時、舜多のスマートフォンが鳴った。友祢からのメッセージだった。舜多は驚きながら其のメッセージを開いた。

『コイツを助けたければ、貴様も知ってる我々ニビルのアジトへ来い。勿論、他言無用だ。教師や公安、警察に言ったらコイツを殺す。』

此のメッセージと共に、友祢が縛られて気絶している写真が送られていた。舜多は一瞬驚いたが、直ぐに返信した。

『何ふざけてんの?みんな待ってるよ』

すると、友祢から電話がかかってきた。舜多は電話に出た。

「舜多くん…助け…て…」

スマートフォン越しに、友祢の苦しそうな声が聞こえてきた。

「俺にこんなことして楽しい?」

「ほお。君は此奴を助けないのかな?」

舜多が言い返すと、友祢とは違う声が聞こえてきた。

「誰、あんた。友祢くんのお友達?」

舜多は、どうでもいいから直ぐにでも電話を切りたかったので、だるそうに答えた。

「友達、だと?違うな。俺ちゃんは友達などという非合理的なものは作らない。」

「じゃあ誰だよ。」

「俺ちゃんはテラファイト。二ビルのてぇぇんんさい科学者だ。」

「二ビル…だと?!」

舜多は身構えた。

「信じるか信じないかは貴様次第だ。但そうなった場合、誰が犠牲になると思う?真木友祢だ。」

電話越しの声はそう言って、通話は終わった。

「どうしたの、舜多くん。顔色が悪いよ?」

凛が舜多の顔を覗いて言った。

「友祢くんが…」

凛は、放心している舜多が持っているスマートフォンの画面を見た。凛は驚いた。

「し、舜多くん…これって…!」

凛はそう言って再び舜多の顔を覗いた。

「わ、罠とか、乗っ取りの可能性は…?」

凛は舜多に聞いた。

「電話越しからは、確かに友祢くんの声がしたんだ。…そうだ、友祢くんのツッタカター…!」

そう言って舜多は、友祢のツッタカターのアカウントを開いて、いいね欄を見た。其処には、友祢のアカウントがいいねをした呟きが並んでいた。

「友祢くんは毎日ツッタカターを見ていて、いいねをしょっちゅう押してるから…」

友祢のアカウントのいいね欄にある最新の呟きは、昨日の18時頃に呟かれたものだ。そして舜多は、廉の昨日の23時頃の呟きも見た。友祢のアカウントは、廉のアカウントで呟いた、部活のクリスマスパーティーについての呟きにいいねをしてなかった。

「こんな呟き、友祢くんなら直ぐにいいね押すのに…つまり、クリスマスパーティーの帰りに攫われたのか…?」

「でも、彼が何処にいるか分かるの?」

凛は舜多に聞いた。

「あ、あぁ。」

其の時、舜多は燦之嬢から聞いたニビルのアジトの場所を思い出した。其れと同時に、何故テラファイトは、俺がニビルのアジトの場所を知っているのを知っているかの様な文章を送って来たのだろうか、とも思った。

「まさか、ニビルと繋がってるのは燦之嬢くんで、これは罠…いや、そうだとしても…!」

舜多はスマートフォンを鞄に仕舞い、鞄を背負った。

「舜多くん!これが本当なら、公安の人たちに任せようよ。其れに友祢くんは、約束も守らない忌まわしい存在なんじゃないの?」

凛は舜多の腕を掴んだ。

「確かに友祢くんは、俺のことより部活の友達の方が良いみたいだけどさ…」

「じゃあどうして!?まさか、此れで舜多くんが助けたら、友祢くんは舜多くんのことを見直すとか思ってる…?」

舜多は一瞬止まった。舜多にとって、図星だったからだ。

「…そうか…そうだったんだ…」

舜多は呟いた。凛の手を振り解き、山畑先生の所へ行った。

「先生!俺…早退します!」

舜多は山畑の方をしっかり見てそう言った。

「どうしたんだ、餅搗くん。」

「『友達』を助けに行きます。」

山畑は暫く考え込んだ。

「あぁ、分かった。但し、授業を欠席するからには、必ずその友達を救ってこい。先生からの宿題だ。」

「はい!」

そう返事をして、舜多は教室を走って出て行った。



「いつの間にか俺は、見返りを求めてたんだ…人を助けたら…誰かが俺を見てくれるだろう、って…其れが嬉しかったのに…其れ自体が目的になってたんだ。だからあの時友祢くんは俺にあんなことを…!」

舜多は走りながら、抑えられない感情が頭の中を駆け巡っていた。息が上がり、人気の無い所でリベルライザーになろうとした時、ジョーカーヴィランが空から降りて来た。

「何処に行くんだ?舜多。」

「さ、燦之嬢くん…実は、友祢くんがニビルのアジトに拉致されたみたいなんだ。」

「まっきーが!?分かった、一緒に行こう。カチコミじゃあ!!」

舜多はリベルライザーに変身して、燦之嬢の瞬間移動魔法によって、二人はニビルのアジトの前に来た。其処には、ニビルの戦闘員であるマーサナリーヴィランが大量にいた。その先頭には、マルリカヴィランがいた。

「ようこそリベルライザー。それと、裏切り者のジョーカー。」

マルリカヴィランはリベルライザーとジョーカーヴィランにお辞儀をした後、二人に向かって走り出した。



 昼休みが終わる頃、中庭に見覚えの無いモノがあり、生徒達は写真を撮っていた。

「今日、どうしてまっきー来なかったんだろ…」

斗織と一緒にギャラリーから教室へ向かっていた廉は、そう呟いた。

「風邪でも引いてるかもしれないだろ。さっきも言ったけど。」

斗織はそう答えた。

「いや、分かってるんだけどさ、連絡くらいしてくれないとさ、おいら寂しくて…ん?あれ、何だ?それにどっかで見たような…?」

廉は中庭の方を向いて目を凝らした。其処には全身黒い誰かがいた。校内の警備をしていた公安調査官達が、其の黒い誰かに近づいた。すると、其の黒い誰かは素早く移動して、公安調査官の一人の心臓を抉り取った。

「ヒッ」

 廉は思わず目を瞑ってしまったが、其れよりも早く、斗織は廉の目を手で覆った。其の黒い誰かは目にも留まらぬ速さで、公安調査官達の頭を割ったり、手足をもぎ取ったりしていった。

「なんて残忍な…」

斗織は気持ち悪くなった。其の一部始終を動画で撮っている生徒もいた。其の時、其の黒い誰かに向かって蹴りが入れられて、黒い誰かは吹き飛ばされた。

「秋津高校でこんなこと…絶対に許さない…!!」

蹴りを入れたのは、アキツフューチャーを装着した百瑚だった。

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