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第12話 朱塗られた彼誰時

「じゃ、俺は引退するから、後は宜しく。」

文化祭から二日後の放課後、特研の部室で、照貴は舜多と百瑚にそう言った。

「アキツライザーとの特訓はどうだった?百瑚。」

照貴は百瑚に言った。

「アキツライザー、強かったです…。」

百瑚はがっくりと肩を落とした。

「でも、かなり鍛えられました!」

百瑚は直ぐに背筋を伸ばして、照貴に言った。すると、百瑚のスマートフォンが鳴った。百瑚はスマートフォンの画面を見ると、顔色を変えた。

「先輩、烏城前でヴィランです!行ってきます!」

烏城とは、秋津高校の近くにある、国宝の城である。百瑚はそう言って部室を出て行った。

「あ、じゃあ俺も行ってきます…先輩の姿をこの目に焼き付けて学びたいんで。」

舜多も、其れらしい言い訳をして、烏城へ向かった。百瑚はもう先に行ってしまっていた。舜多が校舎を出ると、燦之嬢に呼び止められた。

「烏城に行くんだろ?なら、俺様の瞬間移動魔法で行こう。」

燦之嬢は舜多に提案した。

「あ、いや、でも、心拍数を上げないと変身出来なくて…」

「しょうがねぇなぁ。」

燦之嬢は走る舜多の後を追った。暫く走った後、人目の無い所で、舜多はリベルライザーに変身して、燦之嬢はジョーカーヴィランの姿になった。燦之嬢は舜多を連れて、瞬間移動魔法で烏城へ移動した。烏城には、ニビルの戦闘員であるマーサナリーヴィランが何十体といた。

「おい、舜多。雑魚払いなら此れをを使え。」

燦之嬢は舜多に杖を投げて渡した。舜多は杖に意識を集中させた。

「超変身!」

青いリベルライザーは赤いリベルライザージョーカーとなった。燦之嬢は氷魔法でヴィラン達を動かなくし、舜多は重力魔法でヴィラン達を圧死させていった。

 すると、アキツフューチャーを装着した百瑚も、戦いに参加してきた。

「貴方達、何者?如何してヴィランなのにヴィランと戦ってるの?」

百瑚はリベルライザー達に問いかけた。

「俺は、リベルライザー。君と同じ、人間と自由と平和を守るヒーローだ。」

舜多はそう言った。

「俺様もそんな感じだ。」

燦之嬢も序でに言った。百瑚はヴィラン達を一体ずつ、フューチャーパンチとフューチャーチョップで倒していった。マーサナリーヴィラン達が残り数体という所迄来た時、ワゴン車の様な大きな自動車が何台もやって来た。そして自動車の扉が開かれたと思うと、中から銃を持った人達が出て来て、ヴィラン達を銃で撃った。舜多は驚いた。驚いている隙に、銃を持った人達はジョーカーヴィランに銃を向けた。

「やべ、逃げるぞ!」

そう言って燦之嬢は舜多諸共瞬間移動魔法でその場から姿を消した。

「撤収!」

銃を持った人達の一人がそう指示すると、彼等は一斉に自動車の中へ戻り、風の様に去って行った。

「何だったの…」

その場に取り残された百瑚は、そう呟いた。



「皆も知っていると思うが、白い体をした未確認怪物、通称ヴィランによって四月の部室棟火災や秋津祭での件が引き起こされたのは知っているだろう。それを受けて、今日から我が校及び我が校の周辺をヴィランから守る為、公安調査官の保護下に置かれる。」

文化祭が終わり夏休みも終わった二学期初日、始業式で松竹校長はそう言った。確かに校内の至る所に銃を持った公安調査官と思われる人たちが立っている。生徒たちの間に響めきが生じた。



 二学期になって席替えをして、舜多と友祢の席は遠く離れてしまった。『七つの子』の写真の件もあり、舜多は友祢に話しかけづらくなった。

 秀飛の両親が姿を消してから数日後から、秀飛は舜多の家に住む様になり、毎日の秀飛の弁当や保育園への送り迎えも、舜多がする様になった。舜多は、秀飛の両親はバットヴィランとコブラヴィランで、自分とアキツフューチャーが殺したとは秀飛に言えず、誤魔化し続けていた。

 友祢にも話しかけられず、秀飛にも真実を伝えられず、気づけば初雪も降り、街はクリスマスの雰囲気になっていった。世間では、リベルライザーよりもアキツフューチャーの方が人気があった。



 ある日の放課後、授業が終わり、友祢は担任の山畑先生に文理選択のアンケートを出しに研究室に行った。

「何か悩みとか、困ってることは無いか?」

山畑は友祢に聞いた。友祢は一回他所を向いてから、山畑の方を向いた。

「…先生、もし僕が怪物だったら、どうしますか?」

山畑は驚いた様な顔をしたが、直ぐに元の笑顔に戻った。

「真木君は私の生徒だ。それは変わらないよ。」

「…あ、変なことを聞いてすみません、先生。」

友祢は研究室を出た。そのまま部活に行く為、ギャラリーに行こうとした。

「うわぁ〜!」

その時、体育館の方から凛の叫び声が聞こえた。

「今の叫び声、何?」

友祢は急いで体育館に向かった。体育館の入り口前には、腰を抜かしている凛がいた。

「どうしたの!?」

友祢は凛を起こしながら言った。

「む、向こうに怪物が…」

すると体育館の影から、バラバラにした調査官達の体を肩に掛け、体は調査官達の血で赤くなったマルリカヴィランとモジャコヴィラン、更にリベルライザーのお面を顔に付けた白衣の人が出て来た。

「リベルライザーのお面を付けてるなんて、悪趣味な…」

友祢はそう呟いた。

「おい!アキツフューチャーにリベルライザー!いるなら出てこい!出てこないと、こいつらを殺すぞ!」

「きゃあ!」

マルリカヴィランは凛の胸ぐらを掴んだ。

「待て!」

その時、何処からともなく声がしたかと思うと、マルリカヴィランは突然やって来たアキツフューチャーのパンチによって吹き飛んだ。

「今のうちに屋内に!」

アキツフューチャーは友祢と凛に指示を出した。友祢と凛は体育館内に逃げた。

「照貴先輩から聞いた…あれは、ニビル幹部で圧倒的な力とバリアを持つモジャコヴィランと、その部下ですばしっこいマルリカヴィラン…それと、あのリベルライザーのお面の人は…誰?」

アキツフューチャーを装着している百瑚はそう呟いた。

「出たわね、アキツフューチャー。かかって来なさい!」

モジャコヴィランがそう叫んだかと思うと、モジャコヴィランの目の前に氷の壁が出来た。

「俺も交ぜてくれよ。」

その声と氷の壁を作った主は、体育館の屋根に座っていたジョーカーヴィランだった。ジョーカーヴィランは浮遊魔法で降りて来て、アキツフューチャーの隣に立った。モジャコヴィランはいとも簡単に氷の壁を破壊した。直ぐに燦之嬢は何枚も氷の壁を作ったが、モジャコヴィランに呆気無く壊された。

「いつも一緒にいるリベルライザーは?」

百瑚はジョーカーヴィランに聞いた。

「彼奴、今日学校に来てた筈なのに…」

「え、何であんたがそんなこと知ってるの?」

「え?…あ。」

百瑚と燦之嬢が話していると、モジャコヴィランが攻撃をしてきた。

「何処余所見してんのよ!」

モジャコヴィランに強力なパンチによって、アキツフューチャーとジョーカーヴィランは吹き飛ばされ、動けなくなってしまった。

「くっ…!た、たった一撃で…」

百瑚は唇を噛んだ。

「踊ったね?その心、踊ってるね?悪いけどね、あんたよりよっぽど心踊ってんだよ、私は!裏切り者のジョーカー諸共、私のこの胸のミサイルの餌食になりな!」

「ま、待て!」

モジャコヴィランがトドメを刺そうとした時、燦之嬢が止めた。

「何故リベルライザーが此処に来ないのか。それは、俺様が教えたお前等のアジトに向かっているからだよ。」

燦之嬢は早口で言った。

「何ですって?」

モジャコヴィランは一瞬止まり、考え込んだかと思うと、回れ右をした。

「ここは頼んだわ、マルリカ。」

「では序でに俺ちゃんも。」

この場をマルリカヴィランに託したモジャコヴィランは、背中にリベルライザーのお面を付けた白衣の人を乗せて、新幹線を思わせる速さで去って行った。

「ええ、何で俺が!?」

マルリカヴィランは慌てた。

「咄嗟の嘘を信じてくれてサンキュー…!」

そう呟いた燦之嬢は、雅玖に今日の部活は休むとスマートフォンで連絡をした後、透明魔法で姿を消しながら瞬間移動魔法でモジャコヴィランの後を追った。

「…お、覚えてろよ!」

取り残されたアキツフューチャーを暫く見つめていたマルリカヴィランだったが、そう叫んで煙幕を使って逃走した。

「はぁはぁ…な、何とか凌いだわ…それにしても、ジョーカーヴィランは秋津生なの…?それにモジャコヴィランのあの行動…よっぽどヤバいのがアジトにあるか、其れともリベルライザーが目当てか…」

百瑚は漸く立ち上がると、そう呟いた。



 其の頃、ヴィランが出現して公安調査官がいなくなった一棟の、八組の教室の自分の席に一人座っている舜多は、ツッタカターをスマートフォンで見ていた。文化祭が終わって暫くした時期から、ツッタカターでは李杏と瞬がヴィランだという噂が広がっていた。これを知っているのは極一部の人だけなのに、一体誰が言い始めたんだろうかと舜多は思っていた。そして舜多は、そんな噂を鵜呑みにして李杏と瞬の悪口を書いている、顔の見えない人達に怒りを覚えていた。

 舜多がツッタカターのタイムラインを見ていると、アキツフューチャーがヴィランを退避させたという、こんな書き込みがあった。

『アキツフューチャーのおかげでヴィランいなくなったぽいw』

『体育館前バラバラ死体いっぱいwww臭www』

『やっぱアキツフューチャーはすげぇよw』

「アキツフューチャー…百瑚先輩と燦之嬢くんがいれば、リベルライザーなんていらないよな…こんな新米、誰も知らないだろうし。」

此の数ヶ月で、自分の努力の対価になる名声を、アキツフューチャー程貰えないことに不満を覚えた舜多は、そう思った。

 そろそろ秀飛を迎えに保育園に行こうかと思い教室を出ようと椅子から立ち上がった時、教室に入って来た友祢と目が合ってしまった。

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