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第11話 秘密結社ニビル

 秋津祭での巨大怪物事件から四年前。大学四年生の本郷基は、就職活動に勤しんでいた。

 そんなある日、家に帰る途中、基は突然頭痛がして、気絶してしまった。目を覚ますと、基は横になっており、何処にいるか分からなかった。

「目を覚ましたか。」

カーテンの向こうから声がした。その声の主はカーテンを退かして姿を現した。白衣を着て眼鏡をかけた、如何にもマッドサイエンティストのような人だった。

「俺ちゃんの名前はテラファイト。てぇん才科学者だ。」

「此処は何処だ!」

そう言って基がベッドから下りようとすると、体とベッドが鎖で繋がっていた。基は思いっきり引っ張ると、鎖は千切れた。

「こんな脆い鎖で繋げて、一体どういう訳だ!?」

基はテラファイトに掴みかかった。

「素晴らしい!!実験は成功だ!!」

テラファイトが唾を飛ばしながら言ったので、思わず基は一歩下がった。

「実験…?何のことだ!」

「本郷基。君は小学生の頃から截拳道を習い、中学から今日迄、陸上競技で全国へ行ける程の実力を持っている。その立派な運動能力を買い、我々の結社に入社させてやったのだ。今日から君はヤゴとして、我々の下で働く。ちなみに給料は高くつくぞ。」

「ヤゴ…?何でヤゴなんだよ。」

「それは俺ちゃんの趣味だ。良いだろう?」

テラファイトはそう答えて笑った。

「ていうか、我々の結社て何だよ。」

基はベッドに座った。

「秘密結社ニビル。企業秘密だが、我々が発見した改造手術法により、君や社員の殆どは超人類へと進化したのだ。」

「鳥人類…?」

「超人類だ!!今は実験段階だが、いつかこの手術法で我々ニビルは、世界制服をするのだ。」

「今時世界制服って…」

「世界制服と言っても、蹂躙ではない。誰もが超人類として進化し、人類をナンバリングして統制する世界を創る。それが我々の計画だ。」

「折角入社させて貰ったけど、家に帰らせてくれないかな?ちょっと考えたいんだ。」

基はベッドから立ち、その場を去ろうとした。

「待て。このまま帰す訳にはいかないなぁ。」

テラファイトは基を止めようとしたが、基はテラファイトを振り払った。

「そんな社会主義思想には共感出来かねるよ。」

「だったら貴様は、この弱者とマイノリティを蹂躙し、他国から攻撃される訳ないと考える、頭お花畑の此の国が良いのか?!」

「煩いなぁ。ニビルだか何だか知らないけど、寝言はネットで言えよ、おっさん!」

そう言って基は部屋を出た。部屋の外には、白いスーツを着た白い顔の怪物が沢山いた。

「マーサナリー共!其奴を押さえろ!」

テラファイトは外にいたマーサナリーヴィラン達に叫んだ。彼等は基に飛びかかったが、基の身のこなしに圧倒された。基は截拳道で次々とヴィラン達を倒す。すると目の前に、マーサナリーヴィランとはまた違うヴィランが現れた。

「私はモジャコ。どうやら貴方をお仕置きしないとイケナイみたいね。」

「モジャコ様だ!これで大丈夫だ!」

マーサナリーヴィラン達が次々に歓喜の声を上げた。モジャコヴィランは基に殴りかかろうとするが、基は避けた。そのままモジャコヴィランのパンチは硬いコンクリートの壁に穴を開けた。基は必死に逃げるが、モジャコヴィランは胸のロケットミサイルを発射した。基が後ろを振り返ると、ロケットミサイルが新幹線の速さよりも速く向かって来たので、素早く体を転ばせた。そのままロケットミサイルは、向こう側にいたマーサナリーヴィラン達に命中し、爆発した。基は素早く起き上がろうとしたが、モジャコヴィランの足蹴にされた。

「逃がさないわよ。殺さない程度に、いっぱい可愛がってあげる。」

モジャコヴィランは左足で基の股間を、右足で基の顔を何度も踏みつけた。基の顔は血だらけになった。

「ぅぁああ!!」

基はモジャコヴィランの体を吹っ飛ばした。基は立ち上がると、ヤゴヴィランへと変身していた。

「私の心を踊らせやがってぇ…!」

モジャコヴィランはもう一度、胸のロケットミサイルをヤゴヴィランに向けて飛ばした。するとヤゴヴィランは回し蹴りをして、ロケットミサイルの軌道を変えた。ロケットミサイルが爆発すると、ヤゴヴィランの姿は其処には無かった。



「それから俺は、ある人にアキツライザーになれるベルトを貰って、アキツライザーとして世界で戦ってるんだ。」

秋津祭の閉祭式が終わり、階段の踊り場で基は舜多に、自分がアキツライザーになった経緯を話した。

「アキツライザーに変身すると、少しの間だけど、光速で移動できるんだ。」

「す、凄い…」

基の話に、舜多は感嘆の声を漏らした。

「でも、ヴィランが現れたって、どうやって知るんですか?」

舜多は基に質問した。

「それは、SNSでヴィランの目撃投稿を見て、その国に飛んで行くんだよ。」

「え、国際問題にならないんですか?」

「なりそうだよね。でも、ヴィランを倒したらすぐにその国から出るから大丈夫だよ。それで、君がリベルライザーなのは、知ってる人はいないの?」

「はい。なんか、秘密にしておいた方が良いかなって。」

「うん、まあ、誰が敵か分からないからね。出来るだけ隠しておいた方が良いかもね。」

「あの、基さん。俺、ヒーローになれば、守りたいものを守れると思ってました。でも、出来ませんでした。それも何度も…。俺、もっと力が欲しいです!どうしたら良いですか?アキツライザーみたいに、負けなしのヒーローになりたいんです…!」

基は暫く考え込んだ後、懐から黒い何かを取り出して、舜多に見せた。

「それは、何ですか?」

「ある人からベルトと一緒に貰った、ライザーダガーだ。俺には使いこなせなかったから使ってないんだけど。どうやらこのダガーは、強い心と体を持つ人にしか使いこなせないみたいなんだ。だからこれを使いこなせれば、俺より強いヒーローになれるよ。其れ迄はただひたすら鍛えるんだ。色んな人や色んな価値観と出会って、自分の正義を貫くんだ。」

「俺の正義…」

そう呟いた後、舜多は気になっていたことを基に聞いた。

「あの、さっき燦…ジョーカーヴィランの杖を持ったら、自分の体が青から赤になって、ジョーカーヴィランの魔法が使えるようになったんです。」

「へぇ〜。そんなことが…」

「アキツライザーでも、そんなことがあるんですか?」

「いや、ヴィランと協力すること自体無いから、分からないな。そうか、ヴィランと共にヴィランと戦っているのか。」

「はい…」

舜多は俯きがちになった。

「いや、俺はいつも一人で戦ってきたからさ。君は、ヴィランと人間の架け橋のような存在になるかもしれない。ヴィランは、その超人的力の使い用で人を殺せるが、同時に人を守ることができ…」

基は急に話を止めた。其処に百瑚と照貴が来たからだ。基は立ち上がり、照貴の方へ駆けて行った。

「お、照貴。久しぶりだな。一年振りか?」

「はい。それで、基さん。前の例の話…」

照貴は基に返事をした後、少し小声で話した。

「あぁ。百瑚ちゃんにアキツフューチャーを継がせるんだろ?」

「え、百瑚先輩、アキツフューチャーになるんですか?」

舜多は驚いた。

「俺がこの夏で引退して、百瑚が部長になるからな。それにフューチャーベルトは、少し鍛えれば誰でも装着できるんだ。」

照貴は舜多にそう答えた。



 体育館のギャラリーで、引退する三年生とのお別れ会を済ませたダブルダッチ部の友祢は、廉と斗織と話していた。

「まっきーは桜子先輩の何処が好きなの?」

斗織は友祢に聞いた。

「何だよ藪から棒に。」

友祢は斗織に聞き返した。

「それ、おいらも気になってた!まっきーって、恋とかするんだなぁ、って。」

廉も友祢と斗織の間から割って出て来た。

「付き合って、って言われたからだよ。」

友祢は素っ気なく答えた。

「え、そんだけ?」

廉はキョトンとした。

「おーい!まっきー!」

ギャラリーの入り口の方から桜子の声が聞こえた。

「あ、桜子先輩だ。じゃ、おいらたちは御暇しよ。」

そう廉が言うと、斗織の手を引っ張って、友祢の元を離れた。友祢は入り口の外に出た桜子の所に来た。

「君には色々世話になったわ、まっきー。」

桜子は友祢の方を向かずに言った。

「うん。」

「でも一つだけ、分からないことがあるの。まっきーは、いつも自分の為に生きているように見えた。でも今日の、あの巨大怪物の件の時だけ、自分に不利益な『人助け』をしようとした。どうして?」

桜子は友祢の方を向き、質問した。

「さぁ…僕にも分からないや。じゃあまたね。たまには、部活にも顔を出してよ。」

そう言って友祢は去った。すると桜子はスマートフォンを取り出し、誰かと電話をした。

「引き続き真木友祢の調査を続行。」

そう呟き、桜子は通話を切った。



 帰路に着こうと校舎を出ようとした舜多の前に、独りの秀飛がいた。

「あれ、秀飛くん。どうしたの?」

舜多は秀飛の目線に合わせる様にしゃがみ、秀飛に問いかけた。

「パパとママがいないの。」



 舜多は秀飛の家にお邪魔した。舜多は秀飛の両親の携帯電話に連絡をしても繋がらず、秀飛の両親の職場に電話をしても居ないと言われた。子どもを置いていくなんて無責任な親だなぁ、と舜多は思いつつ、何か手掛かりは無いかと秀飛の家を物色していた。秀飛の両親の部屋に行くと、部屋に似合わない高い箪笥の上に白いファイルがあった。舜多は其れに目が止まり、そのファイルを開いた。すると其処には、秘密結社ニビルについて書かれていた。舜多は驚愕した。秀飛の両親は、ニビルの科学者テラファイトの部下だと書いてあり、バットとコブラと呼ばれていると書いてあったからだ。

「まさか…今日のあのヴィランは…」

ファイルを読み進めていくと、テラファイトは秋津高校にスパイを送り込んでいることも分かった。舜多は混乱した。そして、裏表紙の裏には若かりし日の秀飛の両親とテラファイトと思われる人物、七人の乳児が写った写真が貼ってあり、その下にはこう書いてあった。

『人類進化の鍵になる七つの子

 ・日向現影

 ・五十嵐燦之嬢

 ・小畠李杏

 ・十六夜永夢

 ・御代田黎

 ・御代田廉

 ・真木友祢』

「燦之嬢くんに李杏くん、それに、友祢くんまで…いや、それよりも…」

「お兄ちゃん?」

「うわ!」

急に秀飛に話しかけられて、舜多は驚いた。

「何か分かった?」

秀飛は舜多に聞いた。

「いや、分からないなぁ。警察に捜索願を出すかなぁ…」

すると目が潤っている秀飛は、舜多にしがみついた。

「ねぇお兄ちゃん、パパとママが帰って来る迄寂しいから、一緒に居て?」

「え、う、うん、いいけど。」

どうせ帰っても誰も居ないし、と舜多は思った。そして舜多は、衝撃の事実に動揺しながらも、この小さな子を守ろうと決意した。

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