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できる!独学魔導入門  作者: イズクラジエイ
第一章 独学の魔導士
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#01 『天職は頭上より来たりて』

 この物語は、流行のチート能力や、ハーレム要素はありません。コメディ要素はありますが、王道かつ、苦難と悲しみを乗り越える主人公カフワの成長を描く物語となっています。


 最近やる気出ない、なんて人に『忘れていた気持ち』を思い出すような、そんな話を目指しています。


挿絵(By みてみん)


 英雄は孤独である。孤独から学び、孤独に牙を研ぐ。いつしか、窮地に見舞われた大衆の中で、周囲に期待されその願いを叶えるべく、誰にも頼らず、考えぬいた末、起死回生の一手をうつのである。剣は私にこう語りかける。故あらば、もう一歩前へ出るのだと。

 ヴェルス・ゼーベックの手記より――


 ――これはそんな英雄に憧れる少年のお話。



 

 小柄ながらも生命力溢れる体つき、力強い眼差し、散切りの髪、腰に携えるのはおろしたての鉄の剣。この彼の名はカフワ・バジオラ。今日16歳を迎える勇敢なる戦士の卵だった。

 

「いくぜ! 俺は剣士としてこの剣一本でのし上がってみせる! 英雄ヴェルス・ゼーベックのように」


 そんな息巻く彼の住む国ここアラビカ王国では、古来より軍事、商業、民間レベルでの生活基盤にも魔導の力が根付いていた。しかし、英雄ヴェルスのように剣士として前線に出る者を特に勇敢と称える風習もあり、全体では少数派ながらも高い人気を誇る職業であった。

 

そう、英雄に憧れ彼はこの年、剣士の世界に入門したのだった。

 

 ――あれから一年。彼はどうなったかと言うと……


「……すいません。本当にお金は無いんです」


「マジだぜこいつ。1リューズも持ってやしねぇ」


ボロボロになった服、力ない眼差し、伸びっぱなしの髪に――たった今、折れて土に刺さった鉄の剣を横目で確認しながら、ただ謝っていた。


「剣士が一人で山の中を歩いているから、ちょっとは腕が立つのかと思ったら、3人がかりの必要すら無いひよっこだぜ。しかも粒なしだし」


旅の途中で山賊に襲われる――なんてよくある話だと思うが、行商人などと違って咄嗟の反撃をされやすい旅剣士は賊にとってはやっかいで襲われにくい。彼は初めて剣で命がけのやり取りをしたのだ。


「……うぅ」


 そこには絶望しか無かった。英雄に近づきたくて、剣を持っただけで強くなった気でいたあの日々。厳しい現実を突きつけられた瞬間だった。


「こいつ、震えて言葉も出ないか」

「もういい、他に金目の物も持ってなさそうだし、行くぞ」

「ああ、お前。剣士向いてないと思うぞ。なんつーか――始めっから腰が引けてるぜ」


そう言い捨てると、山賊は命までは取らず去っていった。機嫌が良かったこともあるが、あまり派手にやりすぎると各職ギルドへと高額の討伐依頼が出て動き難くなるためだった。




惨めだった。悔しかった。――もっと、強くなりたかった。




(まさか、あんな小さな短剣に手も足も出ないなんて……)


カフワは剣と同時に圧倒的絶望感で、心もバッキリ折られていた。


「少し前から薄々気づいてたけど――俺、剣の素質なかったんだろうなぁ……」


そうつぶやくと、カフワはただぼーっと暮れていく空を眺め、佇んでいたのだった。






 ――いつの間に眠っていたのか、疲れていたんだろう。気がつくともう夜明けを迎えようとしていた。


「新しい朝か。何か――そう、心を入れ替えて別の道を進もう。うん。いっそ、剣士とは逆に魔導士なんかを一から勉強してみようかな。」


――勇敢な戦士への憧れも、一流の剣士を目指す誇りも、古い夢を捨てて再出発するんだ。


 そう決心した時、カフワの頭になにかが、勢い良くぶつかってきた。


「!? っ痛って―」


頭にぶつかった『なにか』はそのまま近くの地面へ落ち、バサバサとはためく様な音が聞こえてきた。


「本?」


周りを見ても、上を見上げても朝焼けの遠い雲だけ。良くわからないが、空から本が落ちてきて頭に当たったという事らしい。奇妙な状況にも関わらず、カフワは自然と落ちた本に手を伸ばしていた。


「えーと? マドウニュウモン?」


 片手でなんとか持てる程度の厚みと重さのその本は、全体的に黒く、開いた最初のページには本のタイトルらしく、こう書かれていた。『独学魔導入門』と。さらにページをめくると『まえがき』があった。


「この魔導書は初めて魔法、魔導を学ぶ方から基礎を学び直したい方まで、独学でしっかりと学習できる入門書となっております。しかしながら、近年ではこの入門たる基礎を飛び越え、実践で学習する方針が――あ、聞いてます?」


「――うわ! この本喋った」


 その本は聞きごごちの良い女性の声で喋りだしたのだった。


「おどろいて閉じちゃったよ。読み上げ機能があるなんてさすが魔導書だな」


関心しながらも、そっとまた本を開いてみると――


「もう! 途中で閉じないで下さいよ。ちょっと説明が長かったかしら」


「いや、なんかびっくりしてつい。――ていうか、もう書かれている文章無視して喋ってない?」


「申し遅れました。私この魔導書の精霊カロと申します」


「はぁ。自我があるんだね。持ち主は誰なんだい?」


「? 持ち主はあなた様です。先程、魔導への入門を強く望まれたので抽選で当たりました」


「えぇ? 魔導ってそんなシステムなの? 初耳だよ!」


「はい! この本をちゃんと読んで私の話を聞けば、魔導士の基礎はバッチリです!」


「えぇ!? えーー?」


 こうして無事転職? を成功させたカフワは魔導士としての新しい人生を始めたのだった。

 突如、落ちてきた魔導書は魔導の世界に入門するには契約をしろと言う。


「ふふふっ。なんの疑いも無く契約してしまうとは馬鹿な奴」


カフワに訪れるさらなる苦難とは?


次回『入門の代償』


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