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彼女は髪が綺麗だ  作者: シグレイン
7/7

2-2

次回の投稿は2月を予定しております。

「ねぇ、神垣さんはいらっしゃる?」

 次の日の昼休み。またしても僕の音楽鑑賞ランチタイムは妨げられた。ラフマニノフの前奏曲がちょうど盛り上がってきたところだったのに……。

 こんな横暴なことをするのはレイだろうと思って振り向けば、見知らぬ女子が目の前にいた。最近こういうの流行ってるの? 僕の席は教室の奥の方にあるから、彼女は僕に用があるみたいだ。

「神垣さんはいらっしゃる?」

 繰り返された。全く同じ展開だ。だがしかし、なぜそれをわざわざ僕に訊く?

「ドアの近くにいる誰かを捕まえて訊けばいいのに」

 とは言えないので、教室の片隅でいつも通り仏頂面で豪華そうな弁当を食しているレイを確認してから、

「あそこに」

 とジェスチャー。

「ありがとう。羽戸尊君」

 ちょっと待って、何で僕の名を知っているんだ?

 疑いを確かめるべく彼女に尋ねようとしたが、もう彼女はレイのところへ向かっていった。ここからは二人を見るだけでも不自然。仕方なくランチタイムを再開することにした。

 先ほど中断されてしまったラフマニノフのプレリュードをもう一回。『鐘』と呼ばれることもあるこの曲は、重厚な和音が特徴だ。この和音をしっかり鳴らそうとすると、ある程度の手の大きさが必要だ。一応この曲は、手が小さくても弾けるけど、作曲者がかなり大柄であった分、ラフマニノフの曲は場合によっては手が小さいとまったく届かないような和音もある。有名なピアノ協奏曲二番なんかはそうだ。手が大きくないと弾けないのはマイナスなんだけど、その響きはかけがえのないものだ。ラフマニノフの分厚い和音は、ロシアの広大な大地を彷彿とさせる。なんとスケールの大きい音楽であることか。しかし、それでいて繊細。メランコリックなメロディーは僕を魅了する。この前奏曲は奴隷がひたすら歩かされているような暗い音から始まる。おそらく極寒の冬の中、疲労の極致に達しながらなんとか歩いているのだろう。しばらく奴隷の重い足取りは続き、やがてアジタートの部分に移る。アジタートとは激しくなどと解されているけど、ここではそんな意味じゃない。何かが後ろから追いかけてくる。せまりくるそれに対する恐怖と、自然と早くなる足並を表しているのだ。きっと奴隷たちは逃げ出したのだろう。しかし、見つかってしまった。追ってくるのは主人なのだろう。音楽はしだいに緊張感をさらに高め、音域が一気に頂点へと駆け上がってから急降下する。そして、また冒頭のテーマがかっこよくなって再登場する。今度はただ歩かされているのではなく、鞭でも打たれているのだろうか、絶望に染まった足取りだ。絶望の中から遠いモスクワの鐘の音が聞こえて、この曲は静かに終わる。ラフマニノフの中で有名な曲だ。

 聞き終わると同時にレイの方を見やる。彼女はさっきの女子との会話を終えたのか、弁当を平らげている。唐揚げを口の中に入れながらなにか気配を感じたらしい。彼女は僕の方を向いた。当然目が合う。すぐさま思わず目を背けたけど、レイが見逃すはずない。弁当を持ちながらずかずかと大股でこちらに向かってきた。

「何?」

「何じゃないでしょ? さっきこっちを見ていたくせに」

「いやー、何を話していたのか気になっただけだよ」

「知りたい?」

 魅惑的な声色でそう訊かれたら頷くしかない。付き合いは浅いはずなのに、彼女はなかなかどうしてか、僕の扱い方を心得ているような気がする。

「知りたくないと言ったら嘘になる」

「では。特別に教えてあげるわ」

「特別ってなんだよ」

 とは思いつつも、口にしない。機嫌を損ねてしまったら絶対に教えてくれない。

「私、音楽祭でソリストやることになったわ。さっきの子、音楽部の子なんだけど、ピアノ協奏曲の伴奏するから弾いてくれって」

「いくらなんでも一か月前に言うってひどくない? 譜読み間に合わないでしょ?」

「それがね、昔弾いたラフマの二番だから弾けるのよね。あの曲得意だし」

 ラフマの二番とは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番のことだ。自信満々の言いぶりからして、彼女は出演を快諾したのだろう。

「何楽章やるの?」

「全部」

「全部? 長すぎじゃない?」

 ラフマニノフのピアノ協奏曲はそれなりに長い。全楽章やると三十分は必ず超える。それを一か月前で仕上げるとなるとなかなか大変だ。

「私はそんな大変じゃないわ。むしろワトソン君、君の方が大変なのではないかね?」

 ニヤッとレイが笑った。あ、これはまずい。椅子を引いてさあ立ち上がろうとしたが、逃げるには時間が圧倒的に不足していた。

「指揮するの、ワトソン君の仕事だよ。助手なんだからしっかりソリストをサポートしてくれよ」

 僕が唖然として口をポカーンと開けていると、彼女は席に戻ってしまった。問い詰めようとしたところ、ちょうど午後授業の開始を告げるチャイムが鳴った。

 いくら僕がワトソン役だからと言って、勝手に決めすぎだよ、ホームズ。


「それは酷い。あんな女に振り回されてる場合じゃないよ。指揮しないって言いなよ――っていうか、何ですぐに断らなかったの?」

 その日の夜、電話で星奈に相談したところ、僕が怒られてしまった。

「いや、断る前にチャイムが鳴っちゃったから言い出せなかったんだよ」

「ほんとタケル君はイエスマンよね。まあそこがいいんだけど」

「ん? なんか言った?」

「なんでもないよ」

 星奈が珍しく動揺していて、強引に話題を変えてきた。

「そ、そういえば、ゴールデンウイークに沖縄に行ったんだけど、そのお土産今度持ってくね。いつ空いてる?」

「日持ちするものだったら音楽祭の後がいいかな。今更断るわけにもいかないし、譜読みしないといけないから……」

「アクセサリーだから、全然持つよ。じゃあ、音楽祭終わったら持っていくね」

「うん、ありがと」

 どうして学校で手渡ししないのか、頭上に疑問符を浮かんだ。

「じゃあ、もう夜遅いし切るね。指揮楽しみにしてるから頑張って!」

 その言葉を最後に電話は切れた。

僕は自室のベッドに寝っ転がり、スマホを手放し、床から楽譜を拾った。

今回指揮する羽目になった、ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番。よく聞いたからだいたい頭の中に入っているけど、指揮するとなると話は別だ。それぞれの楽器の音をしっかり把握しないといけない。だけど、総譜(オーケストラの楽器それぞれの楽譜をまとめた楽譜)をあまり見ないせいか、譜読みがしにくい。だから、今回は二台ピアノ版もうまく使っていこう。そう思い、ネットから楽譜を探して印刷。プリンタが動いている間に、レイ経由で音楽部の人と連絡を取る。いつ合わせるか、スケジュールを決めないといけないからだ。

最終的に、来週のはじめにはもうオーケストラと合わせ、再来週にはソリストも交えることになった。一刻も早く譜読みを終わらせないといけない。

 改めて見ると、伴奏パートはそんなに難しくなさそうだ。実際に手を動かしてみるか。僕はピアノがある部屋へと移動する。

 久しぶりという訳ではないけれど、グランドピアノが埃を被っている。国内メーカーのピアノではなく、わざわざ海外から輸入したものだから大切にしなきゃ。父親からの多額の振り込みと、昔出たコンクールの賞金で買ったのに、こんな扱い方宝の持ち腐れ感が尋常じゃない。ちゃんと掃除しないといけないな。

 楽譜を譜面台に置いて弾いてみる。伴奏パートだけ追うなら、やはりそんなに大変じゃない。

途中で弾きなおしたり解釈を検討したりして、一時間弱かけて弾き終えた。だいたい解釈の方向性も見えてきたような気がする。

 この曲には、大きく分けて二つの弾き方がある。一つは、ピアニストとしても超一流だった作曲者ラフマニノフの本人のやり方、すなわち、感傷にあまり浸らず、速めのテンポでクールに弾くやり方。もう一つは、ロシアの大ピアニスト、リヒテルのようにひたすらロマンティックにゆっくりと弾くやり方。僕はどちらもいいところと悪いところがあると思うから、レイに合わせようと思うのだけれど、彼女はどっちのスタイルで弾くのだろうか。おそらく、折衷案になりそうな気がする。基本は快速で、粘るところはネチネチ弾きそうだ。そもそも、どっちのスタイルでもオケを振り回すこと間違いなしなんだけど。

 流石にどんな構想なのか全くわからないから、明日本人に聞いてみよう。

 その後家事を一通り終わらせ、僕は寝た。


 僕らはコンサートホールで座っていた。

 観客として、そして、演奏者として。

 僕の片方は、ピアノと対峙してまさにこれからベートーヴェンのピアノソナタ第二十一番「ワルトシュタイン」を弾こうとし、もう片方の僕はそれを客席から眺めていた。こんな状況を説明できるのは――

「これは夢だ」

 口に出しはしなかったが、確信していた。今の状況は、中一の時のコンクールに他ならない。僕は、中一の僕の演奏を観客席から聴いているのだ。

 僕が弾き始めた。最初は速すぎないで少し抑えたテンポで刻む感じ、まさに僕の理想の解釈だ。中世のヨーロッパの田舎を、貴族が馬車に乗りながら旅しているイメージ。ピアニストの多くは、速すぎて馬車じゃなくて自動車みたいだ。優雅な貴族ではなく、庶民のドライブみたいでちょっと品がないように感じる。

 一楽章は実に完璧な演奏だ。録音なんて取っていなかったから、もう二度と聞けないものだと思っていた。夢であれ、もう一度聞けるのは極めて幸運なことだ。

 二楽章。二楽章は非常に短く、そのまま三楽章に移ってしまう。二楽章は馬車の旅の雲行きが怪しくなってきた感じ。演奏の方は少しも曇りがない。もっとデーモニッシュな表現があってもいい。今の僕からすると、この演奏は中一という若さがそのまま出てしまっているように思われる。これまでの人生が短い分、当然経験も少ない。経験が少ない分、演奏のイメージ材料が乏しい。だからか、どうしても表現が甘い。

 三楽章。ワルトシュタインの一番楽しい楽章だ。そして、最もベートーヴェンらしい部分でもあるような気がする。最初はのどかな主題が穏やかな伴奏の下に提示されるが、だんだん激しくなっていく。ひたすら主題が使われて統一感ある曲になってくのは、ベートーヴェンの得意とするところだ。中一の僕は、湧き上がる興奮を抑えられないのか、だんだんヒートアップしていた。テンポがみるみる速くなっているのが、観客席からだと良く分かる。演奏者がコントロールしきれないのも、ライブならではの醍醐味だ。最後の方まで勢いよく疾走していく。自信満々の演奏だ。そして、最後の難所、オクターブグリッサンドにさしかかる。僕の記憶ではここで――。

「あれ、ミスをしない!?」

記憶ではミスをしたはずのオクターブグリッサンドを余裕綽々と華麗に決めて、そのままノーミスで曲を締めくくる。我ながら、素晴らしい演奏だ? いや、こんな演奏のはずではなかったはず。この演奏なら、このコンクールで優勝したのも納得だ。僕はまるで驚きと戸惑いを隠すかのように、周囲の人に合わせて自分自身にスタンディングオベーションを送った。

 と、その時、ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番の冒頭が聞こえてきた。

 はっ、と目を覚ます。夢の世界から戻ってきてもピアノの音が鳴りやまない。僕は急いでピアノのある部屋へと向かう。近づくごとにピアノの音は鮮明になっていく。そして、扉に手をかけ――

「やあ、おはよう、ワトソン君」

 そこには神垣麗衣がいた。彼女は悪巧みをするとき、決まってホームズを演じる。強引に人を振り回す点は、ホームズを演じていてもいなくても変わらないけど、「ワトソン君」と僕を呼ぶのには何かしらの意味がありそうだ。呼ばれると、だいたい僕にとって不都合な事実が判明するからだ。さて、今回は一体どんな不都合が僕を待ちうけているのだろう。

「なぜ、僕の家の中にいるんだい?」

 努めて動揺を抑えながら尋ねた。まずは、状況の把握が大事だ。

「それは家の中に入ったからだ」

「だ・か・ら、どうやって家の中に入ったの?」

「こいつがあるからさ」

 いつの間にか作ったらしい合鍵を見せつけてきた。

「いや、合鍵持っているのも意味わからないし怖いんだけど、それ以上にどうして僕の家の場所を知ってるの?」

「合鍵に関しては、以前君が私の家に来た時ありがたく作らせてもらったよ。もっと所持品の管理はしっかりしないと大事なものをなくしてしまうよ。家については、君が使ったのと同じやり方を用いたまでさ。かなり時間かかるから、あまり良い作戦ではなかったと後悔しているが」

「合鍵返して」

「返す? これは私のものだ」

「いや、人の家に侵入するの、普通に犯罪だからね!?」

「今回は緊急を要するのだから許してくれ」

「緊急を要する?」

「そう。ちょっと、これを見て」

 いつの間にかホームズを演じるのをやめたレイが見せてきたのは、一通の脅迫状だった。

「神垣麗衣

俺はお前を許さない。

お前のせいですべてが台無しだ。

俺はお前の音楽人生を終わらせる。

もし、お前が今後も音楽家でいたいのなら、音楽祭には出ないことだ。

俺はお前を見ている。

警察に相談したら、音楽人生が終わるなんてレベルじゃない危害を加えてやる」

 と脅迫状には書かれていた。ちゃんと新聞記事から文字を切り取って作っているのが妙に嘘っぽい。まるで掲示ドラマの模倣のようで、どこか子供っぽさを感じる。

「ずいぶんと下手な文章の脅迫状だね。彼は国語が苦手なのかな?」

「いや、そこそこ凝ってるわね。この文章、多分わざと口下手にしてる」

「わざと?」

「まず、『俺』という言葉から、犯人は男だと感じさせるのはミスリードね。どっかの誰かさんは、犯人を『彼』と呼んだけれど、『彼女』かもしれない。この文面だけで決めつけるのは早計よ」

 レイめ、僕をいじめて遊んでいるな。

「早計ですみませんでしたっ」

「いいのよ、こういうのは期待してないから」

 もっと胸に刺さるような言葉を言われた……。

「警察には相談するの?」

「まさか。おそらく学内の人間だし、私たちの仕事よ」

 何を張り切っているんだか。最近は僕も失念してしまうけれど、彼女は有名人なのだ。もうちょっと自分の身を大事にしてほしい。

「ところで、本当の目的はこれじゃなくて――」

 そう言いながら、彼女は脅迫状を破る。

「えっ、なんで破ってんの? 大事な証拠なのに」

「ふっふっふっ、甘いわね。今の時代、こういうのはデジタル化するの」

「なるほど、もうバックアップはとってあるのね」

「そう、だから本当の要件を言うわ」

 そう言うと彼女はバッグから楽譜を取り出した。さては、ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番の楽譜だな。

「今から練習よ、練習。まだ登校までは一時間はあるし」

「でも、ピアノ一台しかないから連弾できないよ?」

「何か勘違いしてない? 君が練習するんだよ?!」

「え? 何で僕が練習しないといけないの? ソリストはレイでしょ?」

「そう言うと思っていたから、わざわざここまできたのさ。君はきっと伴奏パートしか練習しない。でも、それで譜読みは十分なの? 自分だったらどう弾くとか、ピアノパートをさらってみないとわからないでしょ? きっとそこまで考えがいたっていないだろうから、わざわざ言いに来たの」

「一理あるけど、それを伝えるのって、電話でも良くない?」

「いや、君の練習時間を確保するために、なるべく早く練習を始めたかったの。来週のオケとの合わせの時に、できる限りオケを調教してほしいから」

 調教って、どんな女王様だよ……。

「なるほど。要は、レイがどんな風に弾きたいかみっちり教えておくから、再来週までにオーケストラを鍛えておけ、と」

「さすが、ものわかりがよくて大変よろしい」

 僕の返答がよほど良かったのか。レイはにっこりと笑った。さんざん振り回されているのに、この笑顔で救われた気がするのは美人のなせる業だ(が、実に罪深い)。

「まだソリストのパートは全然譜読みしてないんだけど、一回ソロの部分だけ弾いてもらえない?」

「ピアニストにただで弾いてもらうなんて良い度胸しているわね。今回は特別よ」

 そう言うと、彼女はピアノに向かう。深呼吸したのちに、弾きだした……。

 冒頭の和音。彼女は実は手が大きいのか、アルペジオにすることなく弾いた。比較的速めだ。ということは、クールなラフマニノフの解釈に近いみたいだ。

 その後も、演奏は続く。やはり巧い。技術も表現もケタ違いだ。姉も確かこのようなレベルで技術と表現を実現させていた。

 なんて気を取られていると、一楽章のクライマックスにさしかかる。オーケストラが最初のテーマを奏でる中、ピアノが暴れるところだ。ここにきてレイは、いきなりスピードを落とした。鍵盤のはるか上に手を持ち上げて、一気に凄まじいスピードで叩き下ろす。まるでハエを叩き潰すかのように鍵盤を下に押し込む。このピアノからこんなに大きな音が出るのかという爆音。なるほど、このクライマックスでピアノはここまで盛り上がるのなら、オケもそれに負けないくらいの音を出さないといけない。

 一楽章が終わった。僕は思わず拍手をしてしまう。夢の中の時とは違って、今回は自発的な拍手だ。

「やっぱりレイってすごいね」

「そうよ、私はすごいのよ……っていうのは冗談で、一楽章はこんなイメージね」

「とりあえず、レイの爆音に耐えられるようにオケにも音を出させないといけないということはわかったよ。いやあ、このピアノからあんな音が出るとは思わなかった」

「打鍵にいくら力を入れても音は大きくならないの。それよりも打鍵速度の方が音の大きさには大事。だから、脱力して高速で打鍵すれば、力があまりなくても大きい音が出せるの。こんな風にね」

 とレイが実演する。プツン。

「あ」

「ごめん、弦切っちゃった」

 レイが舌を出して気まずそうな顔をしている。こんな顔もするのか。それにしても、レイに家のピアノの弦を切られてしまった。これは全くの予想外だ。

「弦の張替えと調律代は私がもつから許して」

「いいよ、それくらい。それよりそろそろ登校の準備しないと」

 時計を指さす。もう猶予はあまりなかった。

「あら、もうこんな時間。じゃあ、私もそろそろお暇するわ。お邪魔しました~」

 彼女はすぐに荷物をまとめ帰っていった。

「あれ、楽譜忘れてる」

 そう思ってみると、楽譜にはメモがあった。

「楽譜置いてくから明日までに譜読みしといてね BY神垣麗衣」


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