質問①
残り2回になります。
まずは何を聞くべきか……。そうだな、まずは『何故読めない本なのか』をある程度はっきりさせておかなくてはいけない。読めないと言っても色々あるからな。最初に疑いたいのは、『文字』への仕掛けからだ。
「じゃあ1つ目の質問。俺は本文中の文字を、日本語として視認することはできるか?」
「できます」
「なるほどね」
へえ、「できます」か。自分の中で、最も望ましい答えが返ってきてくれたな。この答えから、早速幾つかの可能性を潰すことができそうだ。
・「一部できます」といった答え方ではなかったことから、問いの答えは本文中のすべての記述に対し共通であると言える。
・基本的には日本語以外の言語は本文中に存在しない。つまり『言語が理解できない』訳ではない。
・文字が小さ過ぎる、文字として読めないほど必要以上に書き込み過ぎているなど、『文字として認識できない』訳ではない。
こんな具合だな。まあ、元々『日本語じゃない』なんて、単純な仕掛けのはずはないとタカを括ってはいたからな。ある程度はこの答えを想定して質問してはいたさ。
しかしだ。この場合、数字や記号はどういう扱いをされているのだろうか。また、『9文字しか記述が存在せず、あとは全て空白』というような可能性も捨て切れる訳ではない。が、当然それらを一つ一つしらみ潰しにしていく猶予はある訳もないから……。
「……よし。2つ目。この本の中で、仮名表記に該当する文字が書かれていないページ数を教えてくれ」
「ございません」
こっちはきっぱり「なし」か。これが「499ページです」なんて答えであれば、『9文字しか記述が存在せず、あとは全て空白』説を考慮しなければいけないところだったが……。詰まる所この本、どこを開こうと仮名表記の文字でビッシリ。どのページを最初に開こうが、ハズレなしの安全圏だらけということじゃないか。
……まあ、極端な話をすれば、1ページ辺り1文字なんて書き方をしているなんて姑息な手法も考えられるけどな。だが、それは恐らく有り得ないだろう。何故ならそれは本当の意味で『読めない』訳ではないし、努力次第では読めないこともないからな……。ともあれ、ここまででまずは順調に実態が見えつつある。
・仮名表記以外の記述はされていない。つまり漢字は存在しない。『難解で読めない漢字がある』訳ではない。
・記号やそれによって顔文字やAAが作られているようなケースも存在せず、『なんと読めばいいか分からない』訳ではない。本文には句読点すら存在しない。
・仮名表記に該当する文字が書かれていないページはない。よって、白紙や挿絵のページも存在しない。最初の質問の時点で明らかにはなっていたが『全ページ白紙なので読めない』訳ではない。
・よって遊び紙もなく、表紙を開けばすぐに文字が目に入る。
こんなものか。これだけあれば『文字』にトリックが設けられている可能性はほぼ潰えたものと考えていいだろう。
しかし、漢字どころか句読点すらないだと? それって『意味のある文章は書かれていない』と見当をつけることができるんじゃないか?
もしそうだとすればそれって『文章の中で小手先の仕掛けを作らなくともそれ以外の部分で騙せる自信がある』からじゃないか? それなら、尚更文字のことなんて忘れて、さっさと視点を変えるべきだな……。
案外、「ああああああああ」とか500ページに渡って書いてあるだなんてオチも有り得るぞ……。
さて、次はどんな視点から「読めない」可能性を潰すべきでしょう?
次回の更新は明日、6/4の18時です。