2・ナンヤ寮の親
この状況をどうしよう。
「シュウ、こんな時間までどこ行っていたんですか?」
ナンヤ寮に入ると恐ろしいほど綺麗な笑みを浮かべた青年が立っていた。
怒っているのに崩れない敬語と笑顔に冷や汗が流れる。
「ほんとぉにごめんなさい!セン兄」
シュウが引き攣った表情で90度腰を折って頭を下げた。
「はぁ……今回だけですよ。それに勘違いしないで下さいね。シュウの日頃の行いで今回許すんですからね」
青年はにこやかに笑うとこちらに顔を向けてきた。
「にしても、シュウが男の子連れて来るとはね」
「何だよ?悪いかよ」
シュウがそっぽを向く。
「いやいや、珍しいなって」
シュウは男の子苦手だもんね
青年がよしよしとシュウの頭を撫でた。そして、僕の方を向いて微笑んでくる。
「ここのナンヤ寮の親を担当してます。繊都と言います。ボクのことは好きに呼んでね」
センでもセン兄でも何でも良いよ
何処か包み込むような空気を纏っているセンさんは僕に視線を合わせた。
「……ぁ、えっと。ハルです。お世話になります」
ちょこんと頭を下げる。センさんはニッコリとすると、膝を折って僕を見つめてきた。
「ハル君、ここに住むのは良いけど……家族とかは大丈夫?」
……家族、懐かしい言葉。僕の家族はもういないようなものだ。僕が居ようが居まいが変わらない。いや、いないほうが幸せかもしれない。
「大丈夫です。てか、家族なんて言ったらあいつに殺されますよ」
小さく苦笑する。センさんは少し悲しそうに表情を曇らせ、僕を撫でてきた。
「そう、じゃあ大丈夫だね。ここについて説明するよ」
センさん登場!
次回はナンヤ寮について説明します