90 準備完了、さあどこからでも掛かって来い
読者の皆様どうもこんばんは。
前回は若干鬱展開ぽい感じで色々賛否両論はあったかと思われます…今後の展開に必要だったのでつまらないかも知れないと思いつつ入れました。
今回は一言で説明、そしてルーナちゃん(特殊分身)が後半登場します。それでは本編をどぞ!
……………(narrator)……………
狂気に飲み込まれ、自我を失った元同僚の動向……それを監視して中立の立場から判断、報告するのが現在の主な仕事。
当然、世界のバランスが崩れた場合に限って介入する権限を持っている。
相手がそれ相応の能力を持っているがために、ね。
まあもっとも、それは最終手段だ。
介入権限で与えられる能力である『時空改編』は、使えば確実にバグが生じる外道な方法。極力使いたくない……
毎回使うと『あの時』の様な悲劇が起こる。
システムが乱れ、生じるはずのシステムが消える現象。転生した同僚が不幸になった時に起こった事は正にソレだった。
正直『あの時』の事件だけは、忘れられない。
“あの様な悲しい出来事を起こしてはならぬ。”
改めて自分を戒める……
あんな事態になるまで問題を放置などしない…私は先代達とは違う、と。
そう思いつつ、私は自分の任務を全うする。
現在の、とある大陸の一部を眺めた……これから起こる大戦の結末を粗方予想しなければ、遅れをとってしまう。
盤上は一見闇の布陣が有利に見える……
「だが、水面下での勝負は既に銀の布陣の勝利だな。」
呟きつつ、その事に改めて確信する………直接介入出来ないからヒントも与えられなかったが、あの子は既に自力で見つけ出した様だ。
そうだ、そうすればいい……
「だが、誰が勝っても負けても、痛みを伴うのだろう……その範囲を最小限度に留めてくれよ。
そうでないと、今後この世界の未来に支障を来すのだから。」
そして、もう一度観察してみる……すると面白い布陣が見えて来る。それも、闇や銀とは違う色彩。
そうだな……強いて言うなら透明。
「そうか……ようやく花開いたか。」
この世界へ余り干渉出来ない立場にいつつも、決してその手段が皆無と言う訳ではない。何事にも抜け穴はあるのだ。
使った手段は正にソレ。
只単に、湖へと小石を大量に投入して行っただけだ。そしてその結果投入して行った小石が起こした波紋が広がって行き、やがて銀と透明の布陣に反映された。
ただそれだけの変化だが、それは大きな一歩だと言える。
不完全とも言える人間と呼ばれる『思考するプログラム』が作ったあの物語、シナリオ……その通りに世界は進まない。
世界がそれを許さない。
我々は世界を観測し、管理する存在……この世界が自衛手段として作った1つの不完全なプログラム生命体。
世界は変幻自在で常に移り変わる存在。そして、誰からの拘束も受けずに自由気ままにその在り方を変える。
人間と呼ばれる生命プログラムはその様を“神”と人に寄っては捉えているが、正解でも不正解でもない。
その一面しかただ見えていないだけ……
世界は人間の想像する悪魔にも化物にも英雄にも、それこそどんな存在にだってなれるのだ。
そしてそれは感じる側の問題…その者にとって世界がどうあるか次第だ。
世界がバランスを崩せば、全てが“無”へと帰す。
完全なる静寂がそこには有り、それ以外は何も無い。空間も時間も、そして生命体も……文字通り全てが消滅する。
それを避けるために補正するプログラムとして我々が形成された。
けど、世界は不完全。
こればかりは仕方が無い事……元から無こそが完全な姿、世界は無から生じた異常によって生じたのだから。
それこそ小石の波紋と同じ。
一瞬で終わってしまうかも知れない、そんな微妙な変化で生じたのが世界なのだ。
故に不安定……いつ壊れても可笑しくない。
現在の管理者へと移行する前その当時の管理者に修正不能なバグが生じて観測者の仕事をし、観測者にも修正不能なバグがあったために停止出来なかった。
……その結果“強い感情”を得て職権乱用する様になり、彼らは『世界』へ介入した。
自分達のシナリオを世界へ押しつけ、その通り動く様に勝手に補正を入れ……そして世界は押し付けられた創造と秩序を拒む。
その繰り返し………歯車が擦り切れるまで。
到頭世界は反撃をする……秩序への反撃として、破壊と混沌をバグに作られた所へ発生させる。
世界自体を壊す自爆プログラム……恐らくは賭けだったのだろう。
賭けは見事に成功する。
そして修正不能で悪質な増殖型のバグは全て取り除かれた……壊れ、汚された世界を残して。
汚染、そして自爆……
その両方から生じた影響は計り知れず、現在でもその痕跡は所々残っており、その修正に負われている同僚も多い。
そしてそれは観測者の仕事の1つでもある。
修正内容は、世界を引っ掻き回す事……常に固定化された、シナリオ通りに沿った場所は必ず崩壊するものだ。
“秩序と混沌”
両方が揃って初めて世界が廻るのだ。
常に移り変わっていなければ、周囲の変化に対応出来なくなってその空間そのものが消え去る……後に残るのは完全な無のみで、その空間や時間があった事さえも残らない。
逆に秩序自体が存在しなければ、『世界』という存在自体が存在意義を見出せなくなる。
だから、どちらもバランスを取らなくてはならない……『中立』を求められるのはそれ故。
その点彼女は優秀だ。
常に世界を引っ掻き回してくれる……自由奔放で、気付いた時には既に呪われた悪役という運命をあっさり放棄していた。
けれど、その場所にとっては新たな秩序を生んだ。地球における『科学』と*****における『魔術』を同時に確立してはそれを発展させて行ったのが最も大きな功績の実例として挙げられる。
あの行為のお陰で、あの場の寿命は数兆年延長された。
そして今度も彼女がやってくれる。
彼女の周囲の存在も、もうそろそろ気付いて動く……その兆候は見えた。
後は様々な色彩が乱闘するだけ。
それで、この仕事もやっと終わって“個”を名乗る事がやっと許される様になる。
狂った元同僚もそうだった様に、長年観測者をしているとどうしても憧れてしまうのだ………個を持った世界の一部に。
所詮は不完全なプログラムだと分かっていつつも、自分もそうなりたい、個としての自我を得たいと、どうしても願ってしまうのだ。
何故か知らないが世界はそれを叶えてくれる……割とあっさりと。
仕事をミス無くきっちりと終わらせる事のできた観測者は、自分の希望した場所へ転生する権利を得る事ができるのだ。
強い願望とそれに則した能力だけが残り、観測者としての記憶と能力は無くす…けどそれが逆にいい。
狂った元同僚にどこか憧れている気がする……感情のプログラムも多少は入っているのでそれは確実だろう。
だからもう一度ここで言おう……
世界に『正しい』在り方何て無い。
世界とは、破壊と秩序。
世界は変革を…新たな安定を常に求める。
世界を引っ掻き回せ、転生者共!!
……………(end)……………
さて、一応やれるだけの事はやった。
領内に埋まっていた物体Xはヒロインちゃんの協力もあってあっさりと見付かった……残念ながら埋めたヤツは逃亡済みだったが。
ちくせう。
まあそれはいいとして……後国内で巨大な魔術式となっている部分を一部破壊して来た。
勿論許可を頂いた上でだけどね。
いや〜…国王陛下脅すの面白かったわ〜
え?見付かったらどうするって?
大丈夫!そんなヘマは致しませんよ……勿論私がやったって証拠も残らない手段を使ったしね。
夜中護衛含む全員が寝静まった時間帯を狙って、前世の技術と今世ウォルターに習った特殊な歩法を活かせば何て事はなかった。
あっさり寝室に侵入して最近出来る様になった魔獣式意識誘導でちょいと悪夢見せて来ましたv
悪夢は悪夢だし、私が見せた証拠は何処にも無いから何も指摘出来ないしね。
後はまあ、関連書類をちょこっと執務室の㊙本隠している場所へ置いて……
翌日会いに行ったら即行おk出してくれた。
こうかはてきめん。
こうおうは、いに50のダメージをうけた。
まあ少しだけ可哀想になったので、㊙本へ書類を置いた際彼の現在行っている他国との交渉ごとが有利に働く様にとその国の弱みを幾つかこそっとね……つい手が滑って。
さて相手の国はどうなるだろーね?
それと朗報1つ。
以前回収した物体Xの解析を『新月』と一緒に行っていた研究班が、反転術式を作る事に成功した。
実はそれを使ってヒロインちゃんとその彼氏(暫定)を隔離していました……だってヒロインちゃん物体X大量に持ち歩いていましたかね…
何でも、私をメインターゲットにしていたみたいです……アラヤダ〜、私貞操の危機だったみたいですね。
ま、もう終わった事だけど…相手の勘違いだったし。
まあそんな分けで、早速それを量産しています。
もう領内には粗方出回り、現在ルナライト社支部店舗を設置している領を優先して客へ無料配布している。
ちなみに赤字の心配は無い……『新月』の解毒剤と予防術式で現在荒稼ぎしているから。
その辺は抜かり無いです¥
さてと………私は一旦消えるかな。
分身体軍、契約者達、家臣団、領民達、ルナライト社社員諸君。そして、王国国民よ…
後の事は任せた!
健闘を祈る……どうか私が帰還するまで無事でいてくれ。
消える直前に掛ける最後の術式……起動。
これでよし。
そんな分けで、ナレーターが何者だったのか明かされました。ですが、その一方で増えて行く謎……
伏せんが増え過ぎて正直回収が最近怖くなって来ていますが、ちゃんと拾って行きます…ええ、その辺は頑張りますよ。
さて、次回から暫くルーナちゃんフェードアウトします。そしてもうそろそろ他の方々にも登場してもらいましょうかね……主に今まで未登場だった彼女の従魔達とか。
それでは宜しく御願い致します。




