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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
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77 公爵令嬢本気モードに惹かれて。

 読者の皆様どうもこんばんわ。更新遅いですが、何とか細々と投稿させて頂いております。そしてブックマークして下さった方々有難う御座います。


 さて、今回最後以外、最初の方の話に出て来た人物の視点です。分かる人にニヤッと笑って頂けたら幸いです。それでは本編をどぞ!


……………(???)……………



 会場の入口で招待状を受付に渡して確認してもらう。そして武器等を預かってもらい、会場へと向かった。


 会場の扉を担当者が開くと、そこには目を疑う様な信じられない光景が広がっていた。一瞬夢かと思って頬を抓ってみたが、確かに痛みが有ったのでこれは夢ではない…現実か。



 そこはまるで別世界だった………



 例えるなら伝承に有る喪われた楽園、理想郷(ユートピア)の一部。


 或はマル・コポロの旅記に描かれた異国『ジパング(黄金の国)』の“還らずの樹海”。



 まず、ここは王宮の一角であり建物だと言う事はまだ分かる…分かるのだが、床以外はその元形を留めていなかった。


 周囲を囲っているのは幻想的な森……まるで童話等に出てきそうな威厳も有るが優しく穏やかな。


 精霊や妖精達が姿を現しては消し、所々にクルクルと踊る光の輪が現れる。


 愉快な音楽とそれに合わせて踊る煌びやかな踊子達。そのパフォーマンスを楽しむ人々。


 上を見上げて何処までも続く壮大で魅惑的な夜の大空に思わず感嘆の息が漏れた。



 だが何より信じられない事は、これらが全て『幻』で有ると言う事だろう…実際に触れて見るとちゃんと温度や感触が有るのに信じられない。



 今回この舞踏会の企画・実行全て担当したのはあの有名な『ルナライト社』。数年前は弱小な商会だったのに一気に市場のシェアを独占し、今では国内外に関わらず市場を完全に掌握している。


 つまり、この辺の界隈では彼らを敵に回せば即破滅する状況となっているのだ。


 ちなみに私はルナライト社へ投資している筆頭株主の1人であり、先日も株主総会なるものに出席して赤字補填金の提供をした。


 その結果今日の舞踏会で何か特別なイベントに参加出来る権利を貰った。


 確か『優待』と言っていたかな?…中々期待出来そうだ。




 それにしても……今回の企画は中々斬新だ。


 ヴィンセント殿下はルナライト社の社員をしているらしく今回の自身の生誕会の企画も一部は彼が自ら関わったという話しを聞いた。


 ま、所詮噂だが。


 事実かどうかは知らないが、恐らく半分本当だろう…何せ、ルナライト社の真の創設者であるルーナ嬢は彼の婚約者なのだし、ちょくちょく2人で冒険者稼業をしているのはとても有名な話しだ。



 さて、本格的な舞踏会が始まる前にこの光景を他の連中と共に楽しむとするか。



………………………………



 ファンファーレが鳴り響き、会場の幻想的な光景が消える。


 一瞬ざわめくが、直ぐに止んだ……これから王族達とラウツェンスタイン公爵家の入場だ。



 だが、私を含めた多くの者達は周囲を見回していた……余りにがらりと風景が変わったので。



 それは前年度まで使われていたホールと同じなのに要所要所に使っている資材の色彩や品質等によって大分印象が変わっていた。


 確かに以前の様な煌びやかさは無い。けど正直今回の方が、好感が持てるのだ。


 ……何と言うか、前は何となくこう言っては何だが成金な印象を受けていた。だが今回は王族の生誕を祝うにしては質素に見えるのが全て以前に比べて上質な印象を受けるのだ。



 そうだな………素材が良く、誤魔化していない感じだろうか?



 会場に使われているのは主に暗銀と深緑色と群青色の落ち着きの有る上品な色彩が主。その中に然りげ無く紫色を散りばめている。


 恐らくこれは王子のリクエストなのだろう……彼自身と婚約者の持つ色彩を使っているのだから。


 そして前の舞踏会まで使われていた前王妃の拘った派手な金色のシャンデリアは外されている。代わりに不思議な魔道具が使われていた。


 光が不規則ではないので恐らく蝋燭は使っていないのだろう……代わりに何故か設置されている水晶そのものが光っている気がする。


 そしてそれを支えるのは一見無骨な銀色の骨組…ただ、見る人が見ればそれが全てミスリルだと分かるはずだ。



 ………一体どれ程アレを作成するのに掛かったのだろうか?



 他にも所々に設置されている椅子や卓が黒檀製の地味で高級なものになっていたり、給仕の着用している服装がやけに統一されていたりする等所々拘りを感じさせた。



 そうして観察している間に次々現れた王族と筆頭侯爵家。



 陛下の着用されている軍服は相変わらずだな……彼の唯一愛したと言われる方が亡くなられた頃から決まって黒一色だ。


 そして殿下にもそれを強要していたのだが、今回は違う様だな。


 殿下が身に纏っているのは確かに黒なのだが、そこには銀色と紫色の装飾が所々付けられていた。


 例えば裾の部分が銀色だったり胸元のスカーフが紫だったりする等。


 細かく見ていないので恐らく他にも色々有るのだろう……つまりあの噂は誠なのだろう…実は王子が婚約者にぞっこんだと言う事が。


 そしてその横に居るのは私から見ても見事な美しき令嬢。


 まだまだ11だと侮れないものだ……まだ幼さの残る部分が有るが出る所が出て来ている。その上で何処か表情が大人びておりその事がまた彼女の容貌から背徳的な雰囲気を醸し出している。


 美少女然としており一見すれば蝶よ花よと育てられた令嬢。


 だが見る人が見れば分かるはずだ…様々な分野で誰よりも自分に厳しく自身を限界まで鍛え上げている事に。



 —武を嗜む者の立ち方、姿勢をしている事。


 —賢者の如く一見温和だが鋭利な油断ならぬ眼光。



 これだけでもこの歳にしては異常、いや、一般的な貴族としても異常だろう。


 そして思い出すのは私が彼女と取引した時感じた事……


 そう、アレはまるで地味に目立たずだが長く生き残る実力派の高齢な貴族達と対峙した様な…穏やかなのに一歩間違えば噛み殺されてしまう様な雰囲気。



 だが、私が令嬢に対してそんな畏怖を抱いているのも恐らく私が事前に彼女の本性を有る程度“知っている”からだろう。




 以前の私は本当に愚かであった……


 あのラウツェンスタイン公爵家のお膝元で農民へ無礼伐ちの様な事をしようした事が有っただが返り討ちされ、今度は貴族として護衛の者達に武器を取らせようとした。


 今思えば以前の私は本当に愚図だった…


 私はその後爽快と現れた公爵令嬢に一掃され、父上の意向によって公爵家の家臣団の普段から行う“訓練”へ強制参加したのだった。


 アレは地獄だった………


 当時武官の家の癖に弛んでいた私は着いて行けるはずも無く初日から落脱し、彼女の執事に特別メニューを組んでもらったのだった。


 それでも駄目だったが何とか頑張り……1年で何とか並の騎士と同等の実力を着けた。


 御陰様で廃嫡の危機を脱したのだった。


 それから私は目が覚めた様に様々な事を学び、現在の王国における国政における問題点やら経済の流れやら、多くの事を理解出来る様になって来た。


 そして実家の借金を返済するためにルナライト社の『商業コンサルティング部門』で公爵令嬢本人からご教授頂いたのだった。




 その時私は思った……只物では無いと。


 この方は絶対に敵に回してならない………敵になった瞬間破滅すると。


 そしてあのお方ならば人の出来ない事をいとも容易く行えるだろうと。



 株主総会では確かに彼女の大叔父殿、ラマルク侯爵には負けていた。でもあれは仕方が無いだろう………あの御仁は業界で『バケモノ』だと言われている程なのだから。


 こと駆け引きにおいて比べられる方が気の毒と言うものだ。


 だが、それ以外の者達が彼女に太刀打ち出来るかどうか?恐らく集団戦を選択して掛かれば引き分けまでは行けるだろうが完全勝利は無理だろう。


 それ程手強い相手なのだ。


 その上彼女が仮に負けたとしても、彼女の背後には『悪辣公爵』と『バケモノ侯爵』が控えている。そう、あの2人が控えているのだ。


 正直彼らから同時に睨まれたら泣いていいと思う……恐らく一貫の終わりだろうから。


 彼女の父親であるラウツェンスタイン公爵はそのいともえげつなく優雅に相手を陥れる様から『悪辣』だと言われており、この方が敵に回っただけでも涙目である。


 彼女があれ程の神童である事も、無関係では有るまい。そしてそれは彼女の兄達にも同様の事が言える。


 確かに一時期あの2人も荒れていたが、現在ではそれぞれ違う方向で公爵家を守立てるために日々尽力している事を聞く。


 それこそ彼らの妹や使用人に頭を下げてまでも。


 あの家では普通なのだろうが、それは一般的な貴族の家ではまずあり得ない事なのだ…と言うより、普通雇い主にあれ程容赦の無い対応は取らない。


 取ったとしても不敬罪で最悪切り捨てられる。


 彼女の専属執事であるウォルター殿も雇い主やその周囲に対して非常に厳しい方であった。そして当然その配下達も…


 ……今思えば私も良く生き残ったものだ………


 アレは地獄なんて生易しいものではなく、拷問そのものでないだろうか……そんな風に思った事が何度も有った。


 ブルリ


 だが、ラウツェンスタイン領でのあの日々が有ったからこそ今の私がいるのも事実…何ともぶく雑な気分だ。


 故に、私は彼女、いや、彼ら、ラウツェンスタイン公爵家及びその関係者の本性を“身を以て”知っている。


 彼らが如何に厳しく容赦なく残忍で冷酷で……だが誰よりも慈悲深く良き領主、良き政治家、そして、良き人々で有る事を。


 私の様な矮小で愚かな人間と比べるのも烏滸がましい程高貴で奇特な方々で有る。




 そして、そんな方々の中でも特に思い入れを私の持ったルーナ嬢は朗らかな顔で王子と共に一礼した。


 彼女の身を包んでいる色彩は会場と同じ暗銀と深緑と群青色。ヴィンセント殿下の持つ色彩だ。


 暗銀のドレスは彼女の桜色の肌の瑞々しさを際立たせ、純度の高いエメラルドとサファイアが彼女の銀髪を鮮やかに飾る。



 ああ、やはり美しい……そして私では到底手が届かない。



 浅ましくも私は彼女に一目惚れしたのだった…悪行を働く私を身分に関係なく取り締る彼女の清々しく姿に。


 あの地獄の様な訓練で家臣団と戦う凛々しい姿に。


 そして、時折見せるあの儚い笑みに…消え入ってしまいそうな、泣きそうな、そんな笑みに。



 正直嫉妬しないといったら嘘になるだろうが、私はあの御方がヴィンセント第一王子と結婚して王妃となる事には何の抵抗も無い。恐らく彼女以上にこの国を支えられる程の女傑な居ないだろう。


 だが同じ意見を持つ人がどれ程少ない事か……


 彼女を認めない阿呆な令嬢達、そして王子を未だ認めない愚図な元王妃派の残党共……売国奴とも言う。


 そして、ルーナ嬢に惚れ・憧れ等の感情を抱き、王子の婚姻を認めない者達。


 きっとこの先様々な事が起こるだろうが、私は彼らの幸せを願いたいと思う。



……………(???)……………



 王子生誕の舞踏会ね……もしかしらイベントかな?


 でも確か乙女ゲーではそんな描写無かったはずなのだけど……もしかしたらずれただけなのかも知れないし。


 まあいいわ。



 それよりも今回嬉しい事に『ルナライト社』が取り仕切っているらしいのよね!!


 つ・ま・り、料理とかもルナライト社が提供するって事だね!!!


 あ〜嬉しい…ルナライト食品の異国シリーズとか多分色々出してくれるのよね?


 期待してもいいかも……


 ちなみにこの前領内のルナライト支店でおにぎり全てコンプしたらイケメンな店員さんがいつも御利用ありがとうって『優待』くれたわね…


 これはちょっと嬉しいわ。


 そうだ、お父さんに買って貰ったルナライト薬品製の化粧品と『LuNA』の新作ドレス着ていこう!!フェルマーは似合うって言ってくれたから大丈夫よね!!


 ああ楽しみ……待っていてね、王子様。



 分からなかった方へ答え合わせ⇒第8話の『はじめてのぼうけんしゃ①』参照です!


 ちなみに分かった方々へ


 実はルーナちゃん彼があの後どうなったか詳しく聞いておりません。故に、まさか1年間『Carl's Boot Camp』と言う名の只の扱きに参加しているとは思っていませんでした。更に取り引き時も「嗚呼聞いた事が有るな〜」程度にしか思われていませんw


 強く生きろよ、えっと…(名前は最後まで出てきませんでした)。


 前回の予告が全く反映されていませんwでも一応話題の人物は出しました。多分これから出てきます。


 それでは次回も宜しく御願い致します。

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