70 寝起きからの報告書
読者の皆様どうもこんばんは。更新が不定期になって申し訳ないです。
さて、今回は……またグロい話しが続きます………あ、戦闘ではないです一応。と言うか、多分1つの謎がまた開示されます(極小規模ですけど)。それでは本編をどぞ!
ピー、チュンチュン
あ〜…久々良く寝た。
いい朝だな……窓から切れなコバルトブルーの空が見え、小鳥(?)のさえずりが聞こえる。
これが所謂本物の”朝チュン”と言う奴だろうか?
ゴホン……さて、冗談は置いておくとして。
皆さん御早う御座います、ルーナ只今復活致しました!!
いや〜今回はこんなもんで済んで本当に良かったよ……戦場地帯でトップがいきなりダウンしたら全体の士気に関わるし、不測の事態が起こったときとかも対応出来なくなるからね。
後手に回ったらどれ程犠牲が出るか……特に、この現時点で感染拡大している危険な場所なら尚更でしょ。
それに倒れた原因が戦闘中の怪我でも何でも無くて、本人の体調管理の問題とか……間違いなく後で締められるね…特に親父の組織とかだったら……gkbl
ま、まあ一旦その事は置いておいて…あ、反省はちゃんとしているけど。
ウォルター何処いっ「おはよう御座います、お嬢様。」
「お、おう?おはよう。」
相変わらず気配が分からん………つか、変な所(天井裏)から登場しなくていいのに…忍者かよ。
ま、お陰で一気に目が覚めましたよ……寝起きなのに疲れた気がするけどさ。
お茶目に笑う腹黒執事をジト目で見ながら、彼の淹れてくれた紅茶を一口含む。
……………ああ美味いな。
飲み口はあっさりとしているが豊潤で甘やかな香りが舌の上をくすぐる…無糖ストレートなのに、とても甘味な風味……その上でこれ程の香りをホワイトティーで出すとは……
やはりウォルターは万能執事だ。
もう二口味わいながら頂いた。
前世ではそんな習慣も無かったが、此方に来てからは毎朝こうして紅茶を淹れてくれているので趣味になりつつ有る。
「本日の茶葉はラウツェンスタイン領、緑人族『特別保護区』から今朝方送られて来たものでございます。」
ふ〜ん、つまり……
「ウォルター………『新月』の研究結果は?」
「同封されておりました、此方に御座います。」
ウォルターへ飲み終えたカップを渡し、同時に資料を受け取った。そしてソレをファイルから取り出してパラパラと捲っていく。
詳細は後で見るとして、今はざっと目を通すだけだ………効能と効果期間を最優先に。
そして、大体私の目算が合致していた事を確かめて一安心した。
一応適切な処置は出来ていたみたいだな……今の所王子は大丈夫か。
私は目次へ戻り、もう1つだけ気になっていた項目を探した…あった。
そのページへと進み、そして驚愕の事実を知る事となった。
………………(???)……………
「おい、アレって何だよ……」
「余り近付かない方がいいよ、“伝染”して壊れたくないならね。」
「は?!そう言う事は先に言ってくれよ……危ないな…ったく。」
俺は同僚に文句を言いつつ、そのグロテスクな物体からは一切目を離さないようにしていた。
気になるからとかではなく、本能的な“警戒”から……先程から冷や汗が止まらない。
それにしても“ココ”では良く有る事だから特に驚く事も無いと思っていたのだが、まさかこれ程背筋を冷たくする醜悪な物体が存在するとは……
「……で、アレは一体何だ?」
この研究所に今日踏み込んだ時最初に聞いた質問をもう一度問うてみた。
「ああ、あれは今回御嬢の解析注文を受けた毒薬の“原料”。」
デスクの中央に安置された丸底フラスコに入っている蠢くどす黒い“ナニカ”。
………それは、まるで逃がしては駄目だと言わんばかりにしっかりと栓をして逃げられない様になっている。
それなのにコイツは“近付くだけで感染する”言った。
つまり、相当やばいブツだってことだろう……御嬢、一体今回はどんな危険に巻き込まれているんだよ…
つか、それで無くてもやばいストーカーに狙われていると聞いているんだが……
「………あんな得体の知れないものがか?」
「ああ………まあお前になら話してもいいか。」
そうして同僚からこのクスリが御嬢の婚約者殿に使われ、危うく消滅しかけたと言う話しをした。
同時にその後の対応と顛末等、詳細に。
つか、そんな重大な事が有った時に俺達は何も出来なかったのか…いや、危険過ぎで俺達を巻き込まないために御嬢の事だから情報を徹底的に遮断したんだろう。
だけど、一応その婚約者が毒薬を盛られて倒れたって話しは聞いていたんだけど、そんなやばい事になっていたとは知らなかった……
正直聞いた感想は、半分は”知らされていなかった”事に対しての悔しさと同時にそれ程やばい事を知ってしまった自分の軽率さへの後悔と恐怖。
そして、婚約者の野郎に毒を盛った奴、いや、このクスリをこの世界に“生み出した”奴への侮蔑と怒り………同じ“薬師”としての風上に置けねぇ…
いや、一応俺の場合は”元薬師”なのだが、そんな事などうでもいい……許されざる”禁忌”だと思う。人を巻き込んで殺す様な不細工で傍迷惑な薬を作り出し、その上でそれを散撒くとか、あり得ないから。
次に何が原料となっているのか聞き……正直俺はどん引きした。
「おま………それってマジなのか?」
「マジもマジも、大マジだよ……と言うか、俺だって最初は信じられなかったし信じたくもなかったよ…だけど、事実だよ?何度やっても同じ結果が出たんだから。
“生き物の魂”だってね…」
黒い物体がその瞬間ゴボリと濁った様な音を立てて波打った……同時に内部で気泡が発生し、それがフラスコの気体部分へと放出された。
そして、その瞬間俺には聞こえた………“数多”のヒトの嘆きを。
“タスケテ、タスケテ、タスケテ……”
“痛いイタイイタイイタイ………”
“もう嫌だ!!殺してくれ!!!”
“死にたくない、シニタクナイ、シニタクナイ……”
“ガギャアアアアァァァァァァァァァァァアアアアァァ…”
「……何だよコレは…………まるで」
そうだ……………こんな見た目でも“生きている”みたいじゃないか。
「生きているみたいだって?実際こんな状態でもこの中で“生きて”はいるし、“意識”もあるよ……ま、大概正気は失っているけどね。だけど、魂として“消滅”していないから“生きて”はいるよ?」
?!
「事実だ……この中に入っている“物体”はヒトや獣の魂を無理矢理引っ剥がして“合成”したものだよ。
それも1人2人何てレベルではなく、万人単位でね。」
………………。
「あり得ないだろう?!魂の融合自体、不可能だろうが!!!」
そもそも、魂に直接治療行為が出来るのは現段階で限られていると御嬢直々に聞いた事が有る……どうも、膨大な魔力をピコ単位に米粒を分解する程繊細な制御で何時間も使わなければ不可能だそうだ。
現在出来るのは、御嬢の他には一時期を除けばずっと彼女の側に居るあの有能過ぎる執事だけだと、本人が話していた。
それも、執事は専門知識が圧倒的に不足しているので現段階では不可能。恐らく自分だけ。そして、魂の融合何て術者・被術者双方共に危険極まりない事はやらないし、それに理論自体途中で建てていくのを辞めたと言っていた。
これらは全て、割と最近の事だ……具体的には先程の話しに出て来た婚約者殿の容態が安定した時期と合致する。
つまり、誰にも出来ない“はず”なのだ。
「いんや……それが、現在も調べている途中何だけど、出来る様なんだよね………本当に気味の悪い事にさ。」
それが事実だとしたら………気色悪い事も事実だが、寧ろ俺は警戒心がガッと上がった。だってどう考えてもやばいもん。
出来るんだったらより多くのヒト、それから獣の集まる“ココ”がターゲットになる可能背が高い。
「………で?そんなに魂どうやって集めたんだよ……」
「知らないよと言いたい所だけど、さっき聞こえた様に時々この物体から声がするんだけど、そこから出所は何処だか大体の検討は着いたよ。
正確には、ここ数年で起こった大規模な“虐殺事件”とか“集団失踪”とその声を関連づけて何となく予想しました程度だけどね。
ここ最近でもそんな事件は無かったかな?確かそう言う事には詳しいよね、“資料室館長”殿?」
ここ数年で起こっている大虐殺と失踪事件………確か御嬢の行った『ヴェネチモール』もその1つだったはずだ。
確か何処からとも無く湧いて出た『魔物』がスタンピード起こして街が1つ消えたって……街を“円陣”を組む様に中心へと向かって各方角から溢れ出て来ていたって御嬢が書いた報告書にあったっけ?
円陣………魔術式の基礎の基礎で使われるているアレか……そして、その上を大量虐殺によって多くの命が肉体から離れ…!?
“肉体から魂を無理矢理引っ剥がして融合させたみたいだよ”
……つまり、それを利用して魂を効率よく回収したって事なのか!!?
「おい、ソイツが事実なら……最近各地で起こった“惨状”って…」
「まあそう言う事になるよね。ま、この辺はまだ憶測でしか無いけどさ………ちなみにコイツらの“核”ってね、御嬢の見付けた『物体X』って言う魔王物質と同じ特徴が見られたよ。」
おいおいおい………ソレじゃあマジで“確定”じゃないかよ…
「ヒトだけじゃなくて他の魂も使われているみたいだから、辻褄が合うよね。
だけど1つだけ腑に落ちない事が有るんだよね……
肉体はとっくに死んでいるのに、何でこの中の魂はまるで“肉体”がまだ存在しているかの様に苦しみ喘いでいるんだろうね?
後、コレって『シャドウ』から購入した訳ではないらしいんだよね………尋問した結果下手人から得た話しだけど。」
首筋に昆虫が這う様な不快な感覚がしたと思ったら、前身鳥肌となっていた…………マジで気味が悪いし…もう何だか怖い。
「まだまだ分からない事だらけだけど、1つ分かっている事が有るんだ。
多分、その内、いんや、近いうちに“ラウツェンスタイン領”も狙われるだろうね…確実に。
何せ、この国の中で『王都』よりも人が、生物が集まっているからさ。」
今はまだ、御嬢が守ってくれているから、御嬢の契約している精霊が頑張っているから何も無い。
だけど、一時期不可解な病が発生した事は記憶に新しい。
どす黒い雲が急に空へ現れたかと思ったら、降り注いで来た黒い物体……それを浴びた奴は身体に異常を来したので慌てて医療特区で治療を受けて、大事に至る前に摘出したんだっけ?
そしてその間に、ルーナ御嬢が各地を“洗浄”して歩いたんだった。
資料館の館長をやっているから知っているが、その後確か分身の使い過ぎでぶっ倒れていたはずだ……あの方も本当に無茶をする。
その結果こうして俺や俺の身内も無事で居られるんだがな。
そしてそんな風に、時には自分の命も顧みずに危険極まりない事をしながらも俺達を守ってくれている御嬢に俺達が出来る事は……
「………俺はここ数年この国やその周辺で起きた死亡率の高い事件に関して洗って見るから、お前は…」
「ああそう言えば、今までの研究結果をまとめた資料はコレね。」
目的だったものを俺は受け取った。
「それで、俺は引き続きコイツに関しての研究を“病院送り”にならない程度に進めるよ。」
よくよく見ると、研究所にいる研究員の人数が減っていた……そして、目の前に居る『ライル・ダンクラーワルト所長』は相当窶れていた。
「ま、互いに倒れない程度にな。」
そして、俺は資料を片手に『ラウツェンスタイン邸』の書庫へと急いだ……ルーナ御嬢独自の調査によって集められる資料が保存されており、魔術式が掛かっているため誰も悪用出来なくなっている通称『魔窟書庫』。
彼女はあの“地獄”から俺や仲間達を救い出した上で衣食住を保証してくれ、更にあの場所を任せる程俺達を信頼してくれている。
そんな御嬢の期待に裏切らない様な働きをして、少しでも返し切れない程の“恩”を返したい。
そしてそんな“彼女”だからこそ、俺は力になりたい。
ちなみにこの魔術式の陣は、某練金術師の兄弟の物語に登場するアレとは無関係です……似ていますけど。つか、そもそもあんな奇麗な色はしていないです。
人造人間も出来ないし、自由に使う事が出来ません……つか、作中では”伝染”と書きましたが、近付いただけで発狂します…主に魂の群衆から発せられた”狂気”に伝染して。
いや〜本当に碌な事しない連中ですね、『シャドウ』とその不愉快な仲間達って…っと、奴がまた来そうなので、この辺でお暇させて頂きます。
それでは次回も宜しく御願い致します。
「チッ……逃げちゃったか。仕様がないな〜」 (ギクっ?!)




