6 報連相(+サプライズ)
読者の皆様どうもこんばんわ。
さて、今回は前回に引き続きルーナちゃんの報告です。それでは本編をどぞ。
……………………(公爵)……………………
娘から話しには物凄く驚かされた。同時に、今までずっと一人で誰にも相談する事無く思い悩んでいたのだと知って胸が痛くなった。
それにしても未来視か……
確かに疑われる事が多いが、今回に限って言えば信じるに値する内容だった。理由だが、大雑把では有ったが会った事も無い貴族や王族の家庭状態を割と正確に言っていたからだ。
例えばこの国の王族………第1王子のランドルフ殿下、第2王子パーシー殿下。そして、第3王子で庶子であったヴィンセント殿下。
末の弟であるヴィンセント殿下と2人の兄達との関係は…最悪だ。そして当然王妃様はヴィンセント殿下を毛嫌いしており、嫌がらせを通り越して命を狙っているらしい。
何しろ………魔力が1番多く、王族特有の特殊魔術属性が使えるからな…だがそれだけでは無かった。
殿下は、王族の色彩−金混じりの銀髪に緑と蒼のオッドアイ−を見事に受け継いでおり、初代様と瓜二つなのだった。
本来ならば、養子として我が家の様な公爵家等に送られるはずだったのが、持って生まれたそれらのせいで不憫な目に遭っている。
そしてこの事を正確に把握しているのは国王陛下と数名の上層部のみ。それを娘は……
「確かえっと…ヴィン何チャラって王子が上の人間の屑な馬鹿王子にいびられていて、王妃様も便乗している最悪な状態。命の危険も有るし、本当は逃げたいけど色彩と才能が確か邪魔をしている。多分そんな感じだった様な気がします……」
と見事に言い当てた……色々聞かれたら不敬罪で捕まりそうだが…。更にその上で…
「彼は初対面で私の事を他の兄弟と重ねて嫌悪して、私は確か一目惚れするんだったと思います。それで婚約したあとでヴィン何とか殿下は初恋をして、その恋を実らせるために私を排除した上で上手く我が家を没落させる。そんな感じだった様な…」
と、非常に聞き捨てならない事を言った。
「一目惚れ…するのか?」
「いや、多分しないでしょうね……私の見た映像ではタイプの方では御座いませんでしたから。ここから分かります様に、未来は変えられるのだと思います。ただ、私の見た未来は全て没落して病死するか処刑される等、悲惨な最期しか無かったので…その……熱を多分出したんだと思います。」
………当時2歳でこれを全て見せられたんだった…ご先祖様も何故幼い我が娘にこの様な……
「ちなみにご先祖様は、2歳時に干渉しなければ他の時には無理だったと言われていました。故に私の体調の事は一旦置いておき、今は未来の事を話しましょう?」
………それもそうだな。
………………………(ウォルター)………………………
………お嬢様が必死な理由が分かりました。確かに自分の命と家族の命運が掛かっている様ですからね。
ですが、それは何もルーナ様だけでは御座いません。
旦那様もそうですが、私従者も命運を共にすると皆決めていますからね。特にお嬢様は館でも皆から主君として慕われておりましたからね……上2人よりも。
……私としても、冒険者でなければこの家の次期当主になるのだと思っておりましたから。
さて、語って頂いた内容とお嬢様の行動から、婚約されたくないと言う事が十分伝わりました。私としても旦那様としても、嫁には出したくないと思っていたので丁度いいです。
出来ればずっとこのまま……
流石にそれは無理でしょうが私としても娘みたいに思っておりますので、相手が出来た時は遠慮無く殺……いえ、手合わせしたいと思っております。いえ、致しますかね…守る事が出来る相手か見るためにも。
ですが、そんな日が来ない事を私は願ってしまいます……旦那様もそれは同じなのでしょう。
……………………………………………
「ウォルター……少しだけ話しが有る。」
「かしこまりました、旦那様。」
ルーナ様御就寝後、旦那様から呼び出しが掛かりました。そして書斎へ入ると……深刻そうな顔でティーカップを傾けていました。
「実は……2人の居ない間に国王陛下から直々に御見合いの話しが来ていたんだ…ルーナとヴィンセント殿下の…。」
「それは……」
………既に状況が動いていましたか…
「ああ、本当は今日話す予定だったのだが…こうなってしまっては……」
「そうですね……私も旦那様や他の方々と違って一緒に居ながら……」
………多分この家の中で1番近くに居るのが私でしょう…それなのにルーナ様はなるべく気取られない様に過ごしていたのでしょう…年端も無い子供なのに我々大人は………全く情けない。
これではリラの時と変わりませんね……また私は失うのか…いや、守れないのか………
最悪元私の属していた裏社会に戻って………
悶々と考えていると、旦那様は頭を振りました。
「いや、流石に誰であってもあれは予想外だろう。だが、先程も言った様に娘の発言は信じるに値することは確かだ。以前も似た様な事態が有ったし、その上割と信憑性が有る。ただ、娘の言った様に“未来は変えられるもの”では有るが。」
「……私は絶対ルーナ様をお守りします…」
……手段は選びませんがね。
私はルーナ様の為なら、奥様を除くこの国の王家及びその関係者も気取られる事無く全員暗殺します……
「ああ、私の自分の力の及ぶ範囲でそうするつもりだ。だが、今回の御見合いの件は国王陛下がヴィンセント殿下を守るために打算したもの。故に断れない……どうしたものか。」
「ルーナ様ご本人に相談する他……」
その時扉が勢い良く開き………少し怒った顔のルーナ様がいた。一瞬幻覚だと思ったが、本人だった……………聞かれていたのか。
「ル、ルーナ!まだ寝ていなかったのか?!」
「………いえ、父上の挙動に違和感を覚えたので質問しに来ていたのですが…私の居ない間に色々有ったようですね。詳しく御聞かせ願いますか?」
「……済まない。」
「いいえ、一応予想はしていたので。それに仮に婚約したとしても、只の隠れ蓑と守護役を貸す言う扱いにしておいて、意中の方が現れたら互いに破棄出来る様に予めしておけば宜しいかと。その辺りは父上が国王陛下とご相談頂ければ……」
「お、おう。」
「あと、ウォルターには没落後の事も考えてこれから一般市民の暮らしが滞り無く行える様に指導をして貰う事と…そうですね、諸外国に亡命できるように言語や生活様式から文化、情勢等をご教授願います。それから……」
……お嬢様は、それはもうスラスラと必要だと思われる案を挙げて行きました。前々から良く考えていらしたのかも知れないです。
「父上、これが1番の懸念材料なのですが……上馬鹿2人は…」
「ああ、私とカールが直々に“指導”と言う名の鉄槌を下そう。」
「………御願い致します。」
そして方針は決まり、御見合いの了承を後は国王陛下に御伝えするだけとなった。
ちなみにカールとは、私が養子として引取って育てた元孤児現執事筆頭をしている使用人です。
当然武力教養共に、私には劣る者の並の貴族以上に有るので指導者としてはうってつけです。ただ指導となると、性格変わってその……“ド”の付くサディストになってしまうのですが。
多分私の指導が厳しすぎたのかもしれないですね……今更ですが。
まあでもお坊ちゃん達にはいい薬になるでしょう。今までさぼっていたつけですので、存分に学ばれるといいでしょう。
さて、その間に私もお嬢様の指示の元色々動きますかね。
………………………(end)………………………
何とか納得してもらえてよかった………
取り敢えず、私に出来る事は御見合いの席で相手に対して『無関心ですよ』とアピールして婚約破棄をして貰う事か…その辺りはまあ何とかなると思うし……多分。
さてと……あ、やばい。1番の地雷ネタって言うか…今回の帰宅理由忘れていた……よし、開き直ってサラッと煙に巻こう。
「あ〜、お父様。」
「何だ?」
「忘れていたのですが……私、竜と契約しましたので多分どの道陛下への謁見は必要かと………」
「…………………………………………………え?」
「あの、黒色の大型竜と契約したので謁見は必要だと思うのでその辺りを宜しく御願い致します。」
「……………………ウォルター?!」
「……残念ながら現実で御座います、旦那様。」
「……………だが大型だぞ?!それに竜等の最強生物だと……!!」
「父上、事実です。ほら、外見て下さい。お〜い、ジャンクリ!!」
『お、俺はジャンだ〜、ジャンと呼べ〜(泣)!!!』
「五月蝿いですよ。今何時だと思っているのですか(呆)。」
『…グッ………』
「近所迷惑だしさっさと父上に自己紹介。ほら。」
『………俺は黒竜種のジャン・クリストファー・ナイトロード…一応忠告だが、貴様の娘は既に人ガ……』
「(ボソッ)メテオストライク。」
ヒュン、ベキッバキッグシャッ…し〜ん………
「また余計な事を(ボソッ)……寝てしまいましたね!まあそう言う訳なので、お父様、宜しく御願い致します。」
「………なあウォルター…私の聞き間違えではないのだよな?」
「……旦那様の仰せられる通り信じられない話しですが、あの黒竜は確かに南部で白竜と盛大に喧嘩した伝説の竜で合っております…」
「…………何か頭痛が…私は疲れた。今日はもう休むとしよう。」
「……左様でございますか。後ほどカールを呼びます。」
パパ上様大変だな〜…さて、私も寝よう。
それでは皆様、おやすみなさい。
次回はルーナちゃんにとっての厄介な相手が登場します…攻略対象と言う名の婚約者です。さて、彼女はどうやって喋る死亡フラグに対応し、その結果どうなるのか?
それでは次回も宜しく御願い致します。