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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
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68 残酷な天使の勧誘?

 読者の皆様更新遅れて申し訳御座いません。リアルが忙しいので多分今後もこんなペースで行きますが、何とか続けていきます。


 後誤字脱字等の訂正、本当に有り難いです。今日は残念ながら体力的に無理ですが、明日訂正致します。いつも本当に御迷惑おかけ致しております…申し訳ないです。


 さて、今回はとある魔獣族の義兄妹の話しです。それでは本編をどぞ!



………………(???)………………


 ………あれ?


 何だか温かい。それに何だか心地がいい……まるで噂に聞く“天使の羽衣”に包まれているみたいだ。


 え………温かい?


 孤児である私がいるのは路地裏の暗がり……年中寒くて仲間と身を寄せ合って暖をとっている所だ。


 …まして、“天使の羽衣”なんて高級品をお目にかかる事すらない。あれは、この街を取り仕切っている“ソンチョウサマ”位偉い人しか使っていない。


 だから、心地がいい事何てあり得ない。


 それに………私は死だはず。


 路地裏で病気になって、一歩も動けなくなった上に前身がガクガクしだして……目の前が真っ暗闇になっていたんだから。


 死んで逝った仲間達と同じ様に、冷たくなって動かなくなっているはず……



…………………………………………



 あの日はいつもと同じ様に村の隅に有る孤児院で皆と一緒に洗濯していた時だった。



 良く晴れた日で、それで風がとても心地よかった。


 貧しいながらも皆で協力し合って生きてきた私達は、その日もいつもと同じ様に皆で助け合っていた。


 だから………その日来た新たな仲間を迎い入れた。それは当然の事で、誰も疑わなかった。当然私も。


 だけど、今思えばそれが『間違い』の始まりだったのかも知れない。




 その日、新しく来た子供の数が余りにも多かった……具体的には、いつもは多くて月に5〜10人なのに、1日で20人も子供が来たのだった。


 年齢はバラバラで、中には身なりの良さそうな子供も居た。


 別に戦争が行われた訳でも無ければ、何も無く暫く平和だったはず……何でこれ程親が死んでいるんだろうか?


 そんな違和感は感じていたが、誰もその事を指摘しなかった。私も当然放置した。



 その後、数週間後に隣にいる“鬼”の人達と揉めた事が街に居る大人達の対話で分かった。


 その頃には街にも孤児院にも治りの悪い“風邪”が流行っていたのだが、その事に対しては何も話しは上がっていなかった……どうせいつもの事だろうと。


 ただの流行病……我々魔獣族(ビースタン)に掛かればよっぽど弱っていない限りは死なない。



“ひたすら通り過ぎるのを待てば良い。”


“死んだのは、その個体が弱かったからだ。”



 あの時には戻れないし、私達に出来た事なんて高が知れている。だけど、気付けていたら……それこそ風邪のない地域に逃げる事が出来ていたかも知れない。


 けど、もう遅い………皆死んでしまったから。



 孤児院に来たばかりの子供達は、来てから2日経たない内に皆酷い風邪の症状で倒れた………そして、酷いものはその日の内に前身から血を流しながら亡くなった。


 そして、次に倒れたのは看病していた子達……特に、死ぬ瞬間に酷い出血をした子達の看病に当たっていた子達だった。


 皆、半日しないうちに同じ方法で亡くなった。


 その頃には流石に異変に気付いていた……お金を稼ぎに出ている街の様子も何だか変だったから。


 だけど、何も考えなかった……


 まだ皆で助け合う、貧しいけど穏やかな日々が続くと思っていたんだと思う。




 鬼達との争いの噂が有った翌日の朝………孤児院が、私達の“家”が無くなった。


 街の大人達…いや、“バケモノ”と化した何者かが攻込んで来たのだった。



“止めて!痛いよ…死にたくない!!!”


“この、コイツめ!!オラ達の家から離れろ!!!”



 皆で頑張って撃退しようとしたけど、向かって行った子達は次々と文字通り“押し潰された”。



 そして、家を失った私達は仕方が無く無法地帯…“路地裏”へ行った。その途中も白目を剥いて血を撒き散らせながら襲って来た“大人達”によって、仲間は次々と減っていった。


 運良く無傷で誰も居ない“路地裏”にある私達の秘密基地へと辿り着けたのは、私を含めた3人。


 だけど、到着と同時に私と私達の妹フィーは倒れた……熱で。


 心当たりなら有る………逃げている途中私達2人は大人達の血溜まりの中を転び、擦り傷をあちこち作っていた。


 同じ様に傷だらけのボロボロだったけど、兄のセヴェルスは無事だった…熱も無く、元気そうだ。



“私達の分も、頑張って生きて欲しい。”



 私はそんな風に思いながら、彼の涙を流す姿を朦朧とした意識の中眺めていた。


 もう、長くないな………もう少し生きたかった。


 だけど、セヴェルスが生きていてくれるだけで私は嬉しい……好きだったから。



“独りにして、御免なさいね。”



 意識はそこで途絶えたのだった。



………………………………………………



「………リ…リリ!!リリ!!!目を覚ましてくれ!!お願いだから…独りにしないで……」



 ………段々とくぐもっていた意識が晴れて来た。



「お姉ちゃん!死んじゃヤダよ〜!!!」



 ………フィー……無事で良かった。


 それに、セヴェルスも大丈夫みたいだな……私は、どうなんだろう?


 正直分からない……だけど、声が聞こえている以上ちゃんと意識はあるのかな?


 私はゆっくりと目を開いた。



“ああ、思っていた通り、眩しい……”



 だけど、私は『生きて』ここにいる………嬉しさで、涙が出て来た。



「「リリ!!!」」



 同時に抱付く2人………2人とも無事で、本当に良かった。



………………………………………



「……あの噂は本当だったのね………」


「そうらしいな……」



 手渡された“カユ”と呼ばれるらしい白っぽくとろみの有るスープを匙で掬いながら、セヴェルスから私達の倒れた後の話しを聞いている。


 ………ああそれにしても、このスープは美味しいな……何と言うか、高級品である塩の味がちゃんとするし、それ以上にとても良い香りがする。


 そうだな………前に一度だけ祝いの席で食べた“海の魚”の香りを思い出す……


 アレ美味しかったからな………だけど、ここから“海”と呼ばれる塩水の沢山有る所は遠いので、塩以上にそこで獲れる魚はここでは最高級品だ。


 鬼達はこんな高級品を普段食べていたのか………


 そりゃ、生活もコレだけ違えば当然戦闘とかも色々違うだろうし私達が負けるのも仕様がないよね……凄く悔しいけどさ。



「だけどお姉ちゃん、鬼の人達とっても良い人達だよ!!おいしいご飯をくれるし、温かい服もくれたし、それにね、苦しかったのにぱぱっと治してくれたの!!」



 元気良さげにに妹はそう言った……まだ働きに出ていなかったフィーは鬼達との確執等をまだ知らなかった様だ。


 故に、もう既に“ここ”へ溶け込んでいるらしい。


 あ、現在我々の居る場所は一応『百獣連合』の領土内部だけど、それと同時に鬼達が作った“キュウキュウキュウゴシツ”なるものに居る。


 どうも、怪我を負ったり病気になったりした人達を治すための施設らしい。


 私達もまだ回復し切れていないので、ここで休んでいる。



 ああだけど、スープが今は美味しくて…鬼との確執もついつい忘れそうになる。


 ま、そう出来れば1番だけど、そうも行かないからな……少なくとも私とセヴ兄にとっては“仇”も同然の相手だからね。


 ………『百鬼会』の小鬼族の罠で私や彼の両親は戦後に命を落としたのだから。



「……それでセヴ兄、これから私達はどうする?」


「ああ……まだそれが、決まってはいない…このままでは駄目だって事も分かっているがな。」



 妹には聞こえない様に、私達は呟いた。



 多分だけど、妹とはここでお別れになる様な予感がする……彼女は既に鬼達と仲良くしているのが見られたから。


 ……それに、彼女ならやっていけるって分かっているし。



「そんな辛気くさい顔をして、どうしたの?」


「「?!!!?!!」」



 突然背後から声が掛けられる。


 振り返ると、私達よりも年下な“ニンゲン”が居た……美しく儚い“妖精”の様な美しい容姿をした。



—艶やかでやや暗目の長い銀髪


—理知的で透通った純粋な紫水晶の瞳


—品良く口角を上げた薄桃色の小ぶりな唇


—雪の様に白く、絹の様に滑らかな艶の有る肌



 まだ子供ながら大人の色気と柔らかな物腰を兼ね備えており、そのアンバランスさと言うか背徳感が更なる魅力を引き出している。


 思わず魅入ってしまい、そのままずっと視界に入れていたい程の美貌を兼ね備えた年下の少女……男装しているが、匂いで彼女が女性だと言う事は見抜いた。


 実際匂いが無ければ長髪で中世的な容姿の少年に見えなくない……と言うか、想像上の麗しの“若き精霊王”か”若き英雄”の姿に見えなくない。



 だが、それだけではない……



 彼女の奇麗な笑顔には、得体の知れない強大な気配がする。


 それは、何と形容していいか分からない程力強く………そして、とても残忍で冷徹な気配。


 そしてそれは、獰猛で居ながら理知的な野生動物の如き鋭く研ぎ澄まされた気配。



 きっと私達が少しでも敵意を出せば、直ぐさま命が狩られるのだろう。



 野生の勘は告げている………この人には絶対に逆らっては駄目だと。勝てないし、逃げようとしてもきっと容赦はしない。



“確実に『仕留められる』”



 そして一瞬先程まで鬼達に対して思っていた事を思い出し……………………私は酷い悪寒に襲われた。



“殺される……”



 正直怖い…この至近距離なら用意に私達の命を奪えると思うと、思わず逃げたくなる。


 だけど同時に、生きる芸術品の様で居ながら我らの牙の如き鋭く研ぎ澄まされたこの美しい“存在”のに出来る限り近付いてずっと見ていたいとも思ってしまう。


 そしてそれは、私だけに限らず兄も妹も同様な様子であった。


 セヴ兄は色気に当てられつつも私達を守る様に庇う体勢を取り、フィーは顔面蒼白で少し震えながらも彼女の事をじっと見ている…まるで見たくないけど見たいといった矛盾に満ちた表情で。


 そんな緊張した面持ちの我々に、彼女はやんわりとした笑顔を向け…



「治療後は好きにして良いよ?鬼のところがイヤなら別に『百獣連合』の別の村に行けば良いしね。トップと知り合いだから別に紹介する事もやぶさかではないしね。


 それからね………私の所へ来ると言う手段も有るよ?


 貴方達が見下している“ニンゲン”が多く居る領だけど、今現在の君達兄妹以上に皆強いと言う事は断言出来るよ……さっきから私の与えている“威圧”は少なくとも家の領民達は平気な顔でスルー出来るからね。


 ま、つまり今の貴方達では絶対“敵討ち”何て夢のまた夢でしょうけど、領内で上手く鍛える事が出来ればまた変わって来るとは思うよ?


 別に急がなくていいけど、ここに居る間にどうするかちゃんと決めておいてね?


 では御機嫌よう。」



 一瞬で彼女は消え去り、後に残ったのは長い沈黙。


 ……………突然嵐がやってきて散々引っ掻き回した後突然去られた時の、ポカンとした間抜けな表情を浮かべてて呆気にとられているのは一応自覚している。


 だけど、誰だってそうなると思うのは間違っているだろうか?


 だってね……急に現れた美貌と殺気を振りまく存在が、殺すのかと思いきやあんな風に”歓迎する”とかいうとは思わなかったんだから。


 と言うか、今更ながら私達の呟きは全て聞かれていたのね……良く殺されなかったな〜……


 思わず遠い目をしていた。


 だけど、彼女は選択肢をくれた………決めるのは私自身。


 私は………


 戦闘で街の様子を描きましたがこれだとどんな課程を経て街がゴーストタウンならぬゾンビタウンへと変貌したのか今一伝わらない感じがしたのでこの話しを入れました。


 後はそうですね……パンデミックの被害者視点で感染するとどうなるのかをちゃんと書いてみたかったと言う事も御座います。


 それでは次回も宜しく御願い致します。


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