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悪役放棄、更に自由人へ(仮)  作者: 平泉彼方
第一章 逸般人な悪役令嬢、好き勝手過ごす
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67 戦場と追憶

 読者の皆様どうもこんばんは。


 さて、今回もちょっとグロ注意報……そして、地味に重たい感じの駄竜の過去が明らかになります。それでは本編をどぞ!

………………(ジャンクリ)………………



 馬鹿王子がガックリと項垂れている様子を見て、俺は懐かしい様な情けない様な不思議な感覚に陥っていた。


 何と言うか………まるで自分自身を見ている様な変な感じだ。


 王子の戦闘能力を見せてもらったが、特に問題は無かった…まだまだ俺達の足下にも及ばないが、刀術を始めて数週間なのにも関わらず型通りの使い方は出来ているのだ。


 何だかマジで“俺自身”を見ている様な気分になる…俺も刀をかつて使っていたのだから。


 そして、これが極め付けなのだが………


 初陣で人の死体を前に気分が悪くなった理由が気持ちの悪い程“同じ”だったんだ…前世の俺自身と。


 人の死体に対しての嫌悪感で吐いた訳ではなく、その死体を見た事で“トラウマ”が刺激された結果吐いたと言う点がね…


 余りにも酷似しているんだよ…俺の“時”と。


 ま、分かりにくいだろうし、少しだけ俺の話しをするか……どうせ聞いてもつまらないどう仕様も無い糞ガキの話しだがな。



………………………………………



 俺の名前は『夜神・クリストファー・ジャンクリフ』。そしてこの名前は一部を除いて元の名前とは実は違う。


 そうだな……


 俺の名前は、元は『夜神恭弥』と言う普通の“日本人”の名前であり、更に幼少期、正確には3歳までは日本のど田舎に祖母祖父と暮らしていた…らしい。


 俺も良く憶えていない……幼い頃の記憶何てそんなものだ。


 そして、それが3歳半で一変する………俺が“誘拐”された事で。



 誘拐されたのは、祖父と共に遠出しているときだった……生活必需品を買うため少しだけ都会に出ていた時、目を付けられたらしい。


 まあ無理も無いかも知れない……ヨロヨロとした老人と、クウォーターの特徴が良く出た容姿の整っていた“俺”。


 そして如何にも“攫って下さい”と言わんばかりに2人して油断していたからな……


 祖父の知り合いが居ると言う歌舞伎町の街角へ向かっている時、祖父の手が離れた瞬間俺は薬物臭が鼻を掠めたと思ったら、薄汚い麻袋が被せられていた。


 そして、そのまま連れて行かれた。



 麻袋が剥がされると、俺はステージの上に居た……手錠足枷が嵌められた俺は、裸にされていた。


 そして、黒スーツの調子良さげな男の声が鳴り響いた…何の言語か分からない。


 ただ、ステージを眺める多くの大人の表情を見て、俺は何となく予想をつけた……これはひょっとすると、“俺”を競りにだしているのではなかろうかと…


 何故そんな発想を当時3歳児だった俺がしたか?そんなの似た様なものを見た事が有ったからだ。


 とは言え、俺がソレを見たのは築地市場で有り、競りの対象は“人”では無く“食品”だった……


 祖父が漁師だったので、そんな光景を見る様な機会があっただけだ。


 ただ、アレとは全然違う……


 あの光景は活気があって、互いに譲らず凄い決戦になるけど勝負は案外潔くて、それでいてこんなに“薄暗く”はない。


 対する“ココ”は、嫌な臭が漂っていて、薄暗くて嫌な視線が有って、それで、何と言うか……“汚い”感じがした。


 何と言えば良いのだろうか……ドロドロした様な、そんな感じか?


 ま、兎も角アレとは違う!と言う事は断言出来た。



 そしてまあ、俺は競り落とされたのだった……



 俺の“飼い主”となったのはショタコンなデブなオッサンではなく…運のいい事に独身のセレブな女性だった。


 凄く奇麗な人だったし対応も丁寧で、俺も最初はこの人だったら良いかな位には思っていた…ま、今思い返せばそんな“俺”を殴り倒したいけどね。


 俺は彼女と数名の使用人と共に、只広い屋敷で暮らしていた。


 俺には言語が通じないと困ると言う事も有って家庭教師が数名付き、それ以外は自由時間、何をしていても良いと言われた。


 珍しい玩具やゲーム等も用意されていた。


 だが……俺は元ど田舎で暮らしていた子供。それに、育ち盛りであり、身体を動かして遊ぶ方が好きだった。


 そんな分けで、いつも自由時間は庭で遊んでいたのだった。


 そんなある日、俺は庭の土を掘り返していた……何となくカブトムシの幼虫でも探したくなったからだと思うが。


 そして、そこで俺は恐ろしいものを発見してしまったのだった。



“死後土に埋めた遺体はどの位で白骨化するか?”



 そんな質問をされたら恐らく多くの人が3ヶ月もすれば白骨化するだろう等と、返答するかも知れない。


 だが、それは嘘だ。


 確かに骨は多少覗いた状態になるが、腐敗した肉片や内蔵、ソレ以外諸々残っているものだ。


 それも、蟲に集られた状態で。


 実際、俺が目にしたのもそんな“遺体”だった。



 前身に黒っぽい甲虫が湧いていて、その上腐った肉片には何か白っぽいダンゴムシから甲を取ったような容姿の蟲が大量に蠢いていた。


 顔だった所は目の部分が既に無くなっており、口が開いたと同時に中から羽虫が大量に羽ばたいて出て来た。


 そして、遺体はソレ“1つ”では無かった……



 今となっては何故か分からないが、俺はいつの間にかそこで遺体を掘る様になっていた。


 毎日毎日そこに通っては、シャベルで必死に土を退かして遺体を掘り出していた……凄まじい臭と湧いている蟲から逃げながら。


 そして、有る事に気付いたのだった……遺体が全て、小学校高学年くらいの大きさだって事に。


 まさか………俺の様に“競り”で落とされた子供の成れの果てか?


 その答えへ早々に行き着き…俺はこのまま何もしなければ、自分もここの共同墓地とも言えない所へ仲間入りする事を悟った。


 それからの行動は早かった…



 元から俺には自由時間が多くその上監視も少なかったため、家出の準備もばれず、あっさりと抜け出す事が出来た。


 ただ、1つ失念していたのはどうやって“都市部”へと出るかと言う一点だった。


 ま、まあそこはまだまだ子供だったのだし、見逃して欲しい……当時はまだ4歳だったからね。


 結局数日間森の中を歩き……舗装された道路に出たと同時に過労からぶっ倒れたのだった。


 それから数日後、俺は目覚めた………ベッドの上で。


 最初は連れ戻されたのだと思い、絶望しそうになった。だけど、直ぐに違う事が分かった。


 理由は………寝ていたベッドがそれ程上質では無かったからだ。


 マットレスは黄ばんでおり、布団も何だか安物で肌触りが良くなかった……人様に借りている訳だから、文句を言うのは悪いと思うが。


 そして暫くすると、部屋へ熊の様な容姿の男が入って来た。


 男は俺が目覚めた事を確認すると



「坊主大丈夫か?何か高速道の横でぶっ倒れていたが、どうしたよ?」



 等と聞かれた。


 俺は言い訳を考えていなかった訳で、一瞬迷ったが……その間に俺の腹が返事をしてくれた。



”グオオオオォォォォ……”



 腹が減った、と。


 一瞬固まった男は豪快にガハハと笑うと



「おう、ちっと待ってろ!今何か持って来る。」



 そう言うと、部屋を出て行った。そして一人きりになり、俺は色々考えた。


 さて、あの“女性”の事は触れない方が良さそうだ……碌な未来が待っていない様な気がするからな。


 なら、身の上話はどうすればいいか……


 幾つか候補が有ったが、結局祖父が涙を流しながら見ていたドラマのワンシーンを借りる事にした。



「それで、どうしたってあんな場所に行き着いたんだ?」


「………父さん、母さんが逃げるように言った。だから、家から逃げた。


 振り返ったら、1人になっていた……家が上から掛かって来た土に埋まってなくなっていた。


 助け呼ぶために頑張って歩いた………だけど、途中で分かる、もう駄目だって。


 だから生きるためにあそこまで行った。」



 設定としては、崖の下に家族でひっそりと暮らしていて、有る時崖が崩れて家が巻き込まれ、1人だけ生き残ったって感じか?


 ま、あながち嘘ではないけどね……両親の死に方はソレだったらしいから。


 どうも、大雨の後の土砂崩れに家ごと巻き込まれて死んでしまったらしい……残念ながら遺体が見付かっていないので、行方不明扱いだったらしいが。


 ただ、その現場に入院していた1歳児だった俺は居なかったので生き残った。


 そんな分けで全くの嘘と言う訳ではない。


 そして、一息にそう言い切り下を向くと………男からグスンと音がした。


 恐る恐る顔を上げると……

















「坊主辛かったな!!頑張ったよ、おじさん感動した!!!」



 ………号泣しながら熊に抱付かれたのだった。その時の感想と言えば…



”……髭が当たって地味に痛い…つか……凄いジョリジョリする!!!”



「ズビーッ、おじさんにドーンと任せな!!」



 その後その熊、もとい、『ルビウス・クリストファー・ドラン』の養子として引取られたのだった。


 ま、まさかあんな田舎暮らしのオッサンが傭兵として働いているとは知らなかったけどな。


 そんで、俺が戦場に行く事も含めて。



 数年後、俺と養父は傭兵として働いていた……とは言え、俺はまだヒヨッコだったが。


 それに、本格的な戦場へは行けていなかった……俺が『死体』に対して極度のトラウマを持っていたために。


 一度破損の酷い遺体を見た時、俺は過剰に反応してしまったのだ……“俺自身”がソレに仲間入りする幻想を見て。



“もしあの時抜け出していなかったら……”



 そう思うとぞっとした…同時に毎晩それが悪夢として蘇った。


 ドランには既に数年前、事実を話したので(何か、あの時以上に泣かれた…)気を使ってくれた様で、護衛の仕事等を主にこなしていた。



 それから数年後、ドランが亡くなった。



 どうしても外せない仕事が入って戦場へ行く事になったのだが……俺はその当時、まだ克服していなかった。


 恐らく甘えていたのだろう。


 そして、ドランは1人で行って来るから大丈夫だと言い……結局帰って来なかった。


 帰って来たのはドランが使っていた単発の銃のみ。


 俺はあの時多分、誘拐されてから始めて涙を流したと思う……思えば当時、相当“必死”だったので、感情が乏しくなっていたんだと思う。


 葬儀の後、ドランの元同僚が彼から伝言と居れようにと注文した武具を預かっている事を告げられた。


 取りに行き、俺はソレを見て号泣した。



“息子よ、強く生きろ。”



 そう一言書かれたカードと、大小弐振りの“刀”。


 ドランは暗殺用には真剣を使っており、俺も習っていた。そして、一人前になったらちゃんと渡してやるからと毎回言われていた。


 そして戦場に行く前、俺の誕生日に合わせてとある筋から入手してくれていたらしい……帰って来てから刀を渡すのだと同僚に語っていたとか。


 その話しを聞き、俺は決意した………ドランの様な凄腕の傭兵になると。


 俺はドランの同僚に頼み込み、傭兵組合に加盟させてもらう事にした……下働きとして。


 最初は大変だった……トラウマも有るし、知らない事だらけだったし色々初めて行う事も多かった。


 正直死にたくなる様な事は何度もあった。


 だけどそうも言ってはいられないので、俺は何とかグロい遺体を克服して戦場へ向かう様になった。


 その内ドランの仇を討つ事になったのだが、それはまた別の話し。


 それから数年、親父(ファーザー)と出会い、『サイレンサー』に師事を受けて(本人は最後まで俺を“弟子”とは認めなかったが…)、傭兵として歩んでいた。


 そして………ユキと出会った。


 ま、後は皆知っているだろう…どうやって戦場で生き、どうやって死んで逝ったか。



…………………………………………



 王子の事は認めない。それに、最近ルーナに構われており、元々いけ好かなかった訳だし気に入らないのは事実。


 だけど、一応“兄貴分”として今回は側に居てやる。今回だけはな………何故か同情してしまったからな。



 だから、さっさと回復しろ。


 そんな分けで、ラスボスタイプのキャラに一応ライバル?認定されました。良かったね、ヴィンセント君。


 彼はこれからどんどん成長していきます、成長期ですから。


 それでは次回も宜しく御願い致します。

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